就労移行支援事業所とは?メリットやデメリット、期間等を徹底解説!
更新日:2021年06月22日
就職を考える上でこの様なお悩みはありませんか?「働き続けられるか不安・・・」、「自分に合う仕事がわからない・・・」、「『障害』とどう付き合いながら働いたら良いかがわからない・・・」。その様なお悩みを持っている方に知って頂きたいサービスが「就労移行支援事業所」です。今回は、就労移行支援事業所とは、どの様なサービスなのかをわかりやすく説明します。
目次
就労移行支援事業所とは?
「就労移行支援事業所」とは、障害のある方の一般企業への就職をサポートする通所型の福祉サービスです。
就労移行支援事業所は、地方自治体から指定を受けてサービスを提供しており、全国には約3300ヵ所以上の就労移行支援事業所があります。
あなたのお住まいの地域にも、おそらく就労移行支援事業所があるのではないでしょうか。
次に就労移行支援事業所で受けられるサービスについて説明します。
【就労移行支援事業所で受けられるサービス】
就職前は通いながら一般企業にて働き続ける力を身に付ける職業訓練や就職活動のサポート、就職後は職場定着のサポートを受けることができます。
職業訓練では、職業スキルはもちろん体調管理やコミュニケーションなど働き続けるために必要な知識を研修や職場実習で学ぶことができます。
また、就職活動ではキャリアカウンセリングや応募書類作成、面接対策などのサポート、職場定着支援では入社後の相談対応や企業への環境調整依頼などを行っています。
【就労移行支援事業所を利用できる方】
就労移行支援事業所を利用するために必要な条件は次の4つです。4つすべての条件を満たしている方が利用できるサービスです。
①一般企業で働くことを希望する方
※就労継続支援A型やB型等の福祉的な支援を受ける就労を目指す場合は当てはまりません。
②身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがあること
※障害者手帳を持っている方はもちろん、持っていない方も医師の診断や自治体の判断によって利用できます。
③18歳以上で満65歳未満の方
④離職中の方(例外あり)
就労移行支援事業所の就職事例
「就労移行支援事業所」の利用を通して一般企業への就職が決まった事例を2つ紹介します。
体験談1:未来を生きるための考え方が身についた
プロフィール:40代、抑うつ・広汎性発達障害・ADHD、WEB制作職として入社、通所6ヵ月
就労移行支援事業所に通所するまで:私は数年前に抑うつ・広汎性発達障害(PDD-NOS)・ADHDの診断を受けました。それまで漠然とした生きづらさは感じていたものの、それを障害だと自覚しないままクローズで働いていました。
しかし、あるとき体調を崩したのをきっかけに障害者枠での就労を視野に入れ、就労移行支援事業所に通うことにしました。
就労移行支援事業所のココがよかった:半年間の通所を経て、私は自身の障害と向き合い、未来を生きるための考え方や行動を身につけることができました。
例えば、ストレス源となる出来事に出遭ったときも、客観的な視点で事実だけを捉え、悩みが深みにはまる前に気持ちを切り替えられるようになりました。
また、以前は人並みでありたいがために苦手なことも必死で取り組み、空回りしていましたが、今は素直に、好きなことにかかわって心を満たし、自己肯定感を高めていきたいと考えるようになりました。就労移行支援事業所での半年間は、自身の障害に無自覚だった自分が、その障害と向き合い、受け入れるために必要な時間だったと改めて思います。
言葉にできない生きづらさを感じていた日々の中で、今までとは違う1歩をようやく踏み出せた思いです。障害を抱えたことで、将来が立ちゆかなくなっている方、本当に自分に合った仕事を探したい方、少しだけ勇気を出して体験通所していただければと思います。
体験談2:通うことで就職への意欲が高まった
プロフィール:30代 、発達障害(LD)、人材派遣会社へ庶務職として入社、通所期間25ヶ月
就労移行支援事業所に通所するまで:以前は人と比べてしまいその都度、些細なことでマイナス思考におちいる日々を送っていました。
仕事や私生活も上手く行かず、仕事をやめてからは昼夜逆転して全体的に不規則な生活をしていました。悩みを相談できる人もおらず漠然とした不安感だけが募っていました。
就労移行支援事業所のココがよかった:事業所に通うことで日中活動を行うようになり生活にメリハリがついたことはもちろん、日頃の悩み相談や生活の基盤を固める中で自分自身が大きく変わったポイントが2つあります。
それは①安定して業務を続けるための意識改革です。真面目なため頑張りすぎで体調を崩す方も多く中々難しいですが、自分自身を大切にできる様に「頑張り過ぎない」ことをいま頑張れる様になりました。
そして、②納得して会社を選べる様になりました。私は通所中に複数社から内定を頂いたのですが断ったことがあります。それは職場の雰囲気や業務の難易度が自分には合わない企業だったためです。とても勇気がいりましたが、その決断をしたことで納得した職場を選ぶことができました。
数々の問題が出てきた際、職員だけでなく同じ通所者である仲間と励まし合いながら数々の困難を乗り切ることができました。
就労移行支援事業所の特徴
就労移行支援事業所の特徴をご理解いただくために、メリットとデメリットをお伝えします。
【メリット】
就労移行支援事業所を利用するメリットは次の5つです。
①企業が最も重要視する「健康管理の力」を身につけることができる
②働き続ける上で課題となる「障害」への対応策を身に着けることが出来る
③希望する就労に向けた専用のプランを障害者就労に詳しいスタッフに立ててもらうことができる
④通いながらスキルアップ研修やトレーニングを受けることが出来る
⑤就職サポートはもちろん、職場定着サポートも受けることが出来る
【デメリット】
一方の、就労移行支援事業所を利用するデメリットは次の4つです。
①障害者雇用枠での就職を希望する方向けのプログラムや就職支援メニューを用意している事業所が多いため、一般枠での就職のみを希望される方は、提供されるプログラムや就職支援メニューが希望する内容と合致しない可能性がある
②就労移行支援事業所の利用料が発生する場合がある(無料で利用できる場合もあり)
③通所期間中は短時間であってもアルバイト等の就労をすることができず(例外あり)就業準備に専念する(実習等で職業体験を通してスキル向上や適性の把握をすることは可能)
④求人紹介を受ける場合は、ハローワークや人材紹介会社を利用する必要がある(就労移行支援事業所は、求人紹介のサポートを受けられる場所ではなく、働き続ける力や入社後に活躍するための力を身に着ける場所です。ただし、就労移行支援事業所独自のネットワークで企業見学や、企業との座談会、企業実習などの機会をきっかけに就職に繋がるケースも多くあります)
就労移行支援事業所のメリットとデメリットを理解して上手に活用しましょう。
就労移行支援事業所の選び方は?
【就労移行支援事業所の選び方】
全国に約3,300ヶ所もある就労移行支援事業所の中から、自分に合う就労移行支援事業所を見つけることは大変です。ここでは、就労移行支援事業所の選び方をご紹介します。
まず、あなたは就職して働き続けるにあたってどの様な不安がありますか?
その不安を解消するために何を解決する必要がありますか?
健康管理や人間関係、職業スキル、就職活動など人によって不安は様々ですが、その不安を課題に変え、解決できる場所が就労移行支援事業所です。
就労移行支援事業所は施設によってカリキュラムや支援メニューも様々です。ご自身の解決したいカリキュラムや支援メニューが充実した就労移行支援事業所を見つけましょう。見つける手段としては以下の3つがあります。
①市区町村へ相談:お住まいの市区町村の障害福祉課で就労移行支援事業所について尋ねてみる方法があります。市区町村によっては、市内の就労移行支援事業所の所所在地や特徴を一覧でまとめて冊子化しているところもあります。
②専門機関へ相談:通院先(主治医、ケースワーカー)、障害者就業・生活支援センター、就労支援センター、相談支援事業所、ハローワーク等の職業紹介事業者などがあげられます。
③就労移行支援事業所の検索サイト:世の中にはレストランや旅館を紹介するサイトがたくさんある様に、就労移行支援事業所を検索できるWEBサイトも複数あります。
就労移行支援事業所の検索サイトでは、各就労移行支援事業所の特徴や所在地、カリキュラム等の情報を得ることができます。
沢山の就労移行支援事業所があるため選ぶのは大変ですが、上記の方法を使うとスムーズに見つけやすいためお勧めです。
就労移行支援事業所を利用する流れ
気になる就労移行支援事業所を見つけた後の流れについて説明します。
問合せ
電話やメール、WEBサイトを通じて気になる就労移行支援事業所へ連絡を取ってみましょう。不明点を質問できるほか、見学の予約を取ることもできます。
見学
実際に就労移行支援事業所へ足を運び、スタッフの方とお会いしながらサービスの説明や実際のトレーニング風景を見学できます。見学は予約制となっている就労移行支援事業所が多いので、事前にご確認ください。
見学では、就職への相談もできますので、就労移行支援事業所への通所がご自身の不安を解消できるかを確認しましょう。
体験通所
見学を終えたら、体験通所を行いましょう。体験通所は無料です。
体験通所とは、事業所で提供しているトレーニングや就職支援メニューを実際に体験できるシステムです。
体験通所の内容や日数は事業所によって異なります。体験が5日間の事業所もあれば、1日だけの事業所もあります。
実際のトレーニングを体験し、通所することがご自身の将来に繋がるかどうかを検討しましょう。
また、既に通所している方々から積極的に情報を得たり、就職支援メニューの内容を職員に確認しておくことも施設選びの参考になるためお勧めです。
体験通所が終わり、申し込みたい事業所が決まったら受給者証の申請手続きを行います。
受給者証申請・契約
お住まいの市区町村にて、受給者証の申請手続きを行います。受給者証申請の手続き方法については就労移行支援事業所よりご案内があります。申請手続きが完了したら事業所と個別の利用契約を締結し利用開始となります。
利用開始・個別支援計画
就労移行支援事業所の利用が決まったら、就労移行支援事業所のスタッフがあなたの希望を聞いた上で、理想の就労生活を実現するための計画が立てます。これを個別支援計画といいます。個別支援計画では、
希望する就労の実現に向けた支援メニューやプログラムの計画を記載します。
スタッフが立てた個別支援計画は、利用開始時にあなたへ説明がありますので、ご自身の意向に合ったものかをご確認下さい。また、ご不明点があれば早めにスタッフへお伝え下さい。なお、個別支援計画は3~6か月単位でスタッフが見直しをしていきます。
プログラムに参加
一般の企業で働くために必要な「ビジネスマナー」や「就職活動」の研修が受けられます。
その他には、事業所が強みとする「就職分野」や「障害分野」によって、様々なスキルアップ研修が提供されています。
事業所によっては、強みとする特定の障害分野がある事業所もあります。例えば、うつ症状専門の就労移行支援「atGPジョブトレ うつ症状コース」の場合はオフィスワーク系職種への就職を強みとしており、下記の研修を行っています。
・Word、Excel、PowerPoint(基礎~中級)
・ビジネス文書
・仮想のオフィスワーク業務
・ストレスマネジメント
・グループワーク
製造系職種への就職を強みとする事業所では、「作業訓練(仕分け、組み立て、清掃など)」や「ピッキング」などの研修を行っています。その他、事業所の特徴に合わせて「プログラミング」や「接客」、「調理補助」、「デザイン」など様々なスキルアップ研修が行われています。
また、何より大切なものは働き続ける上で課題となる「障害」への対応策を身に着けることです。障害の状態は人それぞれ違います。職業スキルの向上だけではなく、「障害」への対応策を身に着けることが長く働き続けるためには重要です。
就労移行支援事業所では、支援員が通所されている方の障害の内容に合わせ、生活や健康面、コミュニケーション、業務遂行面での課題や必要な配慮を明確にしたり、工夫して対処するなど解決に向けてサポートを行います。
取り組む内容は、配慮の伝え方や、服薬・睡眠・食事等の生活リズムの安定や体力向上、報告・連絡・相談や悩みを抱え込まない対策、認識のズレを防ぐスキル方法など対象者に合わせ様々です。
就職支援、職場定着支援
就職に必要なスキルや障害への対応策を身に付けることができた方は、就職支援をスタートします。
就職支援の内容は、キャリアカウンセリング、選考ポイントを押さえた応募書類添削、面接練習、企業実習、ハローワークや人材会社との連携等を行います。事業所によっては、企業ネットワークがあり、そこから就職に繋がるケースも少なくはありません。
また、入社後に「何の不安も不満もなく幸せです!」という方も少ないのではないでしょうか。
入社が無事に決まったら、職場に定着できるためにサポートが開始されます。
職場に適応できるように、就労移行支援事業所のスタッフの職場訪問や相談対応を受けることができます。
就労移行支援事業所を利用するためには何が必要?
受給者証の発行・サービス利用計画面談
就労移行支援事業所を利用するためには、お住まいの市区町村の「障害福祉課」で受給者証の申請書の提出が必要です。
これを「就労移行支援事業所受給者証の申請手続き」と言います。
手続きの方法は、自治体ごとに異なります。詳細は各自治体にご確認ください。
基本的な流れは、市区町村の「障害福祉課」で申請書を提出すると、次に認定調査員による訪問調査」が入ります。これは、あなたの生活状況や働く意欲を確認するための面談です。
面談の内容で、サービス利用の可否が判定されます。ここで、無事にサービス利用が認められ相談支援専門員が作成したサービス利用計画を提出すると、「就労移行支援受給者証」が発行されます。
障害者手帳は必要?
就労移行支援事業所とは、障害者総合支援法に定められたサービスですが、障害者手帳を持っていない方も利用をすることができます。
障害者手帳を持っていない場合は主治医の意見書が必要となりますので、まずは主治医にご相談されることをお勧めします。
就労移行支援事業所の利用料金は?工賃は出るの?
就労移行支援事業所の利用料
収入の状況により、無料で利用できる場合と自己負担が発生する場合があります。自己負担の上限金額は、前年度の住民税に応じて月額0円/9,300円/37,200円の3区分が設定されています。
【区分】 | 【世帯の収入状況】 | 【負担上限月額】 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
厚生労働省ホームページより作成
ご自身の利用料がいくらになるかは、市区町村の障害福祉課へお問い合わせください。なお、atGPを運営するゼネラルパートナーズの就労移行支援事業所「atGPジョブトレ」の場合、半数以上が無料でご利用頂いています。
就労移行支援事業所の交通費
その他、通所に必要となるのが「交通費」です。交通費は、市区町村によっては補助が出る可能性があります。
「利用料金の自己負担額」同様、「交通費の補助があるか」についての確認は、市区町村の「障害福祉課」へ相談しましょう。
就労移行支援事業所の工賃
就労移行支援事業所では、基本的に工賃の支払いはありません。
就労移行支援事業所内のプログラムの一環として業務を行うこともありますが、多くのケースでは一般企業で働き続けるために知識と能力を訓練するための仮想の業務となっています。
但し、一部のケースでは外部から実際の業務を委託し、就労移行支援事業所の訓練の一環として業務を遂行している事業所もあります。その場合は業務遂行の対価として工賃が支払われます。
就労移行支援事業所の利用期間は?
就労移行支援事業所の利用期間
利用開始から就職が決まるまでが利用期間です。但し、最長でも原則2年間と定められています。
就労移行支援事業所は再利用できる?
「退職後に、もう一度就労移行でトレーニングして再就職したい」、「通っている就労移行支援事業所が合わないので別のところに行きたい」という方もいらっしゃるかと思います。
就労移行支援の利用期間である2年間以内であれば就労移行支援事業所を利用することが可能です。
但し、こちらもケースバイケースになるため、市区町村の障害福祉課や就労移行支援事業所にご確認頂くことをお勧めします。
就労移行支援事業所の延長の有無
就労移行支援事業所の最長利用期間である2年間を過ぎてしまった場合に、市区町村と事業所により就職の見込みがあると判断された時は短期間の延長が認められるケースもあります。
「誰でも必ず延長できる」ということではないので、ご注意ください。
就労移行支援事業所と就労継続支援の違いは何?
就労移行支援と就労継続支援の違い
就労系福祉サービスには他にも「就労継続支援」というサービスがあります。
名前は似ていますが、「就労継続支援」と「就労移行支援」はまったく違うサービスです。
就労移行支援と就労継続支援の違いは、「2年以内に一般就労が可能か」という点です。
2年以内に一般就労が可能な場合には「就労移行支援」が利用できます。
2年以内で一般就職できるイメージが持てないという場合には「就労継続支援」で実績を積み自信を付けるという手段があります。
「就労継続支援」は、さらに種類がわかれて就労継続支援A型と就労継続支援B型の2種類のタイプがあります。
就労継続支援A型とは?
すぐの一般就労が難しい障害のある方に対して、生産や事務などの実際の業務を遂行する機会の提供、知識および能力の向上のために必要な訓練を行うサービスです。
利用期間の制限はなく、対象年齢は18歳~65歳となっています。サービスの利用にあたって雇用契約を締結し、実際の業務に応じて賃金が支払われます。
また、一般就労に必要な知識や能力が高まった方を最終的には一般就労への移行を目指すサービスとなっています。
就労継続支援B型とは?
就労継続支援A型での就労が難しい等の障がいのある方に対して、生産や事務などの実際の業務を遂行する機会の提供、知識および能力の向上のために必要な訓練を行うサービスです。
年齢制限、利用期間ともに制限はありません。雇用契約は締結せず、労働の対価は工賃として支払われます。就労に必要な知識や能力が高まった方は、就労継続支援A型や一般就労への移行を目指します。
まだまだある!福祉サービス「自立訓練」
他にも、通所型の福祉サービスがあります。
「自立訓練」というサービスで、障害がある方の生活に関する相談や助言などを行うサービスです。
通所して自立した日常生活を送るための訓練を行います。利用期間は2年間です。
「生活や体調が不安・・・」という方は、就労移行支援事業所や就労継続支援の前に自立訓練からスタートするという手段もお勧めです。