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発達障害のグレーゾーンとは?グレーゾーンの方の就活の進め方について

更新日:2023年07月26日

発達障害のある方は、障害の特性によってさまざまな生きづらさを感じています。そして、就職活動においてもいろいろな困難なシーンに出会う可能性があります。一方で、発達障害の診断基準を満たしていない、いわゆる「グレーゾーン」と称される方々は、周囲の理解や配慮が得られにくいなど、さらに就職活動を進めるのが難しいことがあります。本記事では、発達障害のグレーゾーンの方の就職活動の進め方について解説します。

発達障害のグレーゾーンとは

「発達障害」とは、生まれつき脳の働き方が違うことが原因で、幼少期の頃から行動や情緒の面で特徴が見られる状態です。ひとことで発達障害と言っても特性の現れ方によって、「注意欠如・多動症(ADHD)」「自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群・ASD)」「学習障害(LD)」に大きく分けられます。

 

発達障害の診断には、国際的に使われている「DSM-5」という診断基準があります。その基準をすべて満たした場合には発達障害と診断されますが、1つでも満たさなければ確定診断はおりずに「グレーゾーン」となります。

 

なお、グレーゾーンといっても症状が軽いわけではなく、「DSM-5」の診断基準を満たしていない状態を指しているので、発達障害の診断を受けた人以上に特性が強くでるケースもあります。

発達障害の特徴


前章で紹介した通り発達障害は、特性の現れ方によって「注意欠如・多動症(ADHD)」「自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群・ASD)」「学習障害(LD)」に大きく3つに分けられます。それぞれの特徴は次の通りです。

 

注意欠如・多動症(ADHD)

忘れ物や紛失が多い、ケアレスミスが多い(不注意)、落ち着きがなく席にじっと座っている事ができない、待てない、静かにしなければならない場面でもずっと話してしまう(多動性・衝動性)、整理整頓が苦手、段取りができないなどの特性(症状)があります。多動性・衝動性と不注意の両方が認められる場合も、どちらか一方だけの特性が認められる場合もあります。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)

言葉や表情、身振り、視線などで、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりする対人コミュニケーションが苦手です。また、こだわりが強く、特定のことに強い関心を持ったり、反対に他人に興味がないなどの特性が現れることもあります。感覚の過敏さを持っている場合もあります。

 

学習障害(LD)

全般的な知的発達に問題がないので「知的障害」とは診断されませんが、「読む」「書く」「計算する」など特定の学習が極端に苦手な状態をいいます。

発達障害の傾向がある方が就活で困ること

発達障害と診断された方や発達障害の傾向があるグレーゾーンの方は、就職活動を進める際にどのようなことで困るのでしょうか。

 

注意欠如・多動症(ADHD)の方が就活で困ること

注意欠如・多動症(ADHD)の方が、就職活動で一番困るのはマルチタスクが苦手という点です。就職活動では、複数の企業に向けてエントリーシートを作成する、会社説明会への参加、インターンシップ体験、企業訪問、面接試験の準備などを、自分でスケジュール管理しながら進める必要があります。就職活動だけでなく授業やサークル、バイトなど色々なタスクが入ると、どれも上手く進行できない状態になってしまう恐れがあります。

 

また、不注意の特性が強い方は、応募書類の記載漏れや記入間違い、未提出、面接日をうっかり忘れるといった失敗をしてしまう可能性があります。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)の方が就活で困ること

自閉症スペクトラム障害(ASD)の方は、対人コミュニケーションが苦手なことが多いため、そもそも就職活動自体に向いていない場合があります。就職活動では、面接試験やグループディスカッションなど、対人コミュニケーションの機会が非常に多くあります。コミュニケーション能力が評価される就職活動においては、発達障害のない方と比べるとどうしても不利になります。

 

学習障害(LD)の方が就活で困ること

学習障害(LD)の方は、面接試験やグループディスカッションなどでは、あまり困ることはありませんが、面接試験の足きりで実施される適性検査で不利になる可能性があります。

 

適性検査の学力(能力)検査は、一般的に「言語分野」と「非言語分野」に分かれています。言語分野は、熟語の意味や文脈の理解など、主に国語の知識が問われます。非言語分野では、計算問題、割合・速さ・推論など主に数学の能力が問われます。

 

発達障害の方の就活の進め方

発達障害のある方や発達障害の傾向があるグレーゾーンの方が、就職活動を進める際には次のポイントについて意識しましょう。

 

自分について知る

一言で発達障害といっても、「注意欠如・多動症(ADHD)」「自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群・ASD)」「学習障害(LD)」の種類があり、特性や症状などは同じではありません。まずは自分の病気の特徴や状態について知ることが大切です。

 

その上で、「自分にはどのような強みがあるのか」や「自分にはどのような仕事が向いているのか」など、しっかりと自己分析を行いましょう。

 

面接試験では「得意なこと」と「不得意なこと」、「強み」や「弱み」について質問されるケースが多くあります。自分の発達障害の特性を強みとして言い換えることができないか考えてみましょう。

 

例えば、「注意欠如・多動症(ADHD)」の衝動性は「行動力がある」、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の「こだわりの強さ」は「妥協しないでやり抜く」というようにポジティブな表現に言い換えることができるでしょう。

 

応募企業について知る

業界研究や企業研究は、発達障害のある方でなくとも就職活動では重要です。発達障害のある方や発達障害の傾向があるグレーゾーンの方の場合には、入社後の働きやすさに関わるためしっかりと行う必要があります。

 

就職活動で応募企業を選ぶ際には、業種や職種といった仕事の内容や待遇も大切ですが、職場の雰囲気や社風が自分に合ってることも重要です。もし、希望した企業に入社できたとしても職場の雰囲気や社風が合わなければ、ストレスを感じて二次障害を引き起こすこともあります。

 

最近では、リモートワークや短時間勤務など、多様な働き方ができる企業が増えています。自閉症スペクトラム障害(ASD)の人などは、リモートワークで基本的にチャットなどでコミュニケーションを行う仕事を選ぶと良いでしょう。

 

サポート体制がしっかりとした企業を選ぶ

応募企業を選ぶ際に、もう一つ重要なことは障害のある従業員に対するサポート体制がしっかりとしているかどうかです。入社後、働く上でどのような支援やサポートが受けられるのか確認しましょう。

 

企業の採用枠には、一般枠と障害者枠とがあります。障害者枠での求人の場合には、職場で周囲の方からの配慮が得やすいといったメリットがあります。しかし、障害者枠で雇用されるには、発達障害と診断されていて精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得していなければなりません。発達障害の診断条件を満たしていない「グレーゾーン」の方は障害者枠に応募することができないので、障害のない方と同じ一般枠で応募しなければなりません。

 

一般枠の求人であっても、障害者の方や発達障害のある方が働いている企業の場合には、支援やサポートの体制が充実していることが考えられます。応募企業を選ぶ際には、障害者の雇用状況についても調べてみましょう。

仕事選びについて

発達障害の種類や程度、特性、そして個人の能力によって向いている仕事は変わってきますが、一般的には次のような仕事が発達障害のある方に向いていると言われています。

 

注意欠如・多動症(ADHD)のある方に向いている仕事

注意欠如・多動症(ADHD)の方は、ケアレスミスが多かったりマルチタスクが苦手といった特性があるため、スピードや正確性を求められる仕事には適性がありません。

 

しかし、ダブルチェックする仕組みがある仕事や、1つ1つ業務を進められる環境が整った職場であれば事務職がおすすめです。発達障害の特性は、個人の努力だけで解決することは難しいですが、周囲から適切なサポートを受けることで、負担を軽減して業務を遂行できます。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)のある方に向いている仕事

 自閉症スペクトラム障害(ASD)のある方は、コミュニケーションが苦手な人が多いので営業職や販売職など人と接する仕事には向いていません。

 

しかし、こだわりが強く特定の分野に強い関心を持つという特性があるため、エンジニアやWebデザイナーなど専門的な仕事に向いているとされています。

 

学習障害(LD)のある方に向いている仕事

 学習障害(LD)は、「読む」「書く」「計算する」など特定の学習が苦手ですが、全般的な知的発達には問題がないので、苦手な分野を避けることができれば、向いている仕事の幅は広いと言えます。コピーペーストで入力する仕事や、Excelで計算する仕事であれば事務職で働くことも可能です。

 

atGPについて

発達障害のある方や発達障害の傾向があるグレーゾーンの方が、自分に合った仕事が見つけられない、応募してもなかなか採用されないと言った悩みを持ってる場合には、就労移行支援サービスなどを利用するのがおすすめです。

 

「atGPジョブトレ」は、障害のある方が就職に必要なスキルを身につけるトレーニングや、就職活動のサポートを受けることができる「通所型」の福祉サービスです。発達障害特化コースなど5つの障害別のコースがあり、障害の特性に合わせた実践的なトレーニングを受けることができます。

→atGPジョブトレを見てみる

 

就労移行支援事業所を通じて働くイメージをつけた上で、「atGP就活エージェント」を活用すれば、自分にあった働き方で社会人生活をスタートできるでしょう。atGP就活エージェントは、新卒専任のスタッフが、あなたの就活をサポートします。

就職活動の際には、ぜひ一度相談をしてみるのはいかがでしょうか。

→atGP就活エージェントを見てみる

まとめ

発達障害の基準をすべて満たさなければ発達障害とは診断されません。1つでも満たさなければ確定診断はおりずに「グレーゾーン」となります。グレーゾーンの方には精神障害者保健福祉手帳や療育手帳が交付されないため障害者枠の求人に応募できず、発達障害の方より就職活動が難しいことがあります。この記事でご紹介した就職活動の進め方のポイントを参考に、働きやすく自分に合った仕事を見つけてください。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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