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特例子会社を設立するには?~特例子会社の基本情報と設立要件について~

更新日:2023年11月13日

障害者雇用促進法に基づいた法定雇用率は、原則的には5年ごとに改訂されています。2023年に施行された改正障害者雇用促進法では、2026年に障害者雇用率を2.6%に引き上げることが決定されています。そのような状況で、事業主は自社の利益と共に、インクルーシブ社会の実現への寄与が求められており、その一つの具体的な方法として、特例子会社制度があります。今回は障害者雇用促進法に定められる特例子会社について、その基本情報と設立要件などを詳しくご紹介していきます。

特例子会社とは

まず最初に、特例子会社とはどういうものか、簡単に説明します。

 

特例子会社については障害者雇用促進法の第44条に「子会社に雇用される労働者に関する特例」として位置づけられています。

 

法律のとおり、この特例子会社は障害者の雇用促進に寄与するものです。

 

特例子会社を設立することで、一般事業主がなるべく無理をせずに障害者を雇用し、法定雇用率を達成するためにメリットをもたらす制度なのです。

 

障害者雇用にまつわるメリット・デメリットをはじめ、最低限知っておきたい基礎知識をご紹介する資料がダウンロードできます。

この資料でわかること
・障害者雇用とは?
・障害者を雇用するメリット
・障害者を雇用しないデメリット
・障害者雇用が進まない企業が抱える課題
・課題を解消するポイント
・押さえておくべき障害者雇用の法律・制度

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特例子会社による障害者雇用のメリット

 

障害者雇用に合わせた制度設計がしやすい

 特例子会社は最初から障害者雇用に特化する、または多くの障害者を雇用する職場として計画できるため、雇用する障害者の特性に合わせた仕事の提供や、適切な配慮ができる職場環境の整備ができる点が大きなメリットと言えます。

 

例えば、障害者の体調や特性に合わせた出退勤時間や勤務時間の調整、通院の際の特別休暇、身体障害者が働くことを想定し、リフォームではなく、最初から物理的バリアフリー設備を導入できるなど、障害者の能力を最大限に引き出す会社作りが可能となります。

 

 

設備投資や雇用管理の効率性が高まる

設立時から障害者雇用を視野に入れた子会社では、障害者雇用を想定していない会社で雇用することと比較して障害者に配慮した設備投資をしたり、雇用管理における難しい調整が最低限で済み、会社の経営面での効率性を高めることができます。

 

職場定着率の効果向上

最初から障害者雇用に配慮ができる会社では、当然、雇用された障害者の定着率が必然的に高くなります。そのため、安定して長く働いてもらうことで生産性の向上も期待できます。

障害者雇用のマーケットは今や大きな注目を浴び、日本全体における平均実雇用率も年々上昇していますが、胃一般雇用よりも高い離職率が課題となっています。その点でも特例子会社はアドバンテージを持っていると言えます。

 

障害者雇用のノウハウ蓄積が可能

  特例子会社では通常の事業所よりも多くの障害者を雇用するため、必然的に多種多様な障害者雇用の事例を蓄積でき、それは他のグループ内事業所での障害者雇用や新たな特例子会社の設立などの際にノウハウとして役立つことは間違いありません。

 

  

障害者雇用は社会的責任

  特例子会社の設立そのものに障害者雇用率の達成という目的があるはずですので、それ自体が社会貢献になり、障害者にとっても雇用機会の拡大につながります。

 

また、設立された特例子会社は厚生労働省で毎年リスト化され、厚生労働省や自治体から表彰を受けたり、メディアで取り上げられる可能性もあります。

特例子会社による障害者雇用のデメリット

特例子会社は障害者雇用の万能解決策ではない

特例子会社は最初から障害者雇用に特化した事業所として設立できるため、様々な障害者雇用の問題を軽減、緩和できますが、障害者雇用におけるすべての問題を解決する万能なモデルではありません。

 

障害者雇用における問題は、ある部分は社会や雇用する側の理解、配慮不足にあり、またある部分は本人のトレーニングや通院治療、服薬などによるセルフコントロールにあります。これらを原因とする作業効率や体調不良による生産性の低下などの問題は特例子会社であってもなくなりません。

 

また、障害者が自己の能力を発揮し、意欲をもつためにはキャリアパスや職域の拡大という課題も必ず持ち上がってくるもので、グループ内で障害者ができる単純な仕事を集約することが多い特例子会社では、対応が難しいケースも出てきます。

  

一般企業と同じように売上をあげて経営する必要がある

特例子会社であっても会社には違いありません。そのため、当然、健全に経営し、利益を上げることが求められます。継続して利益を上げることができなければグループ全体の不利益であり、雇用した障害者への責任も果たせません。そのため特例子会社の経営は、通常の子会社よりも難しい場合もあります。

 

特例子会社は本当に目指すべきゴールか

現在、厚生労働省を中心に日本が取り組んでいる障害者雇用は義務化されているため促進されているという背景があります。

 

本来、共生社会とは事業所はもちろんのこと、国民一人一人が自発的に自然と自分と違う他者と共生する意識が必要とされます。法律によって定められた特例子会社の存在を考えると、雇用は創出するものの、障害者を一カ所に集めて仕事を提供することは、これまでの隔離政策となんら変わりなく、本当の意味でのソーシャルインクルージョン(社会的内包)とは言えないという問題もあります。

特例子会社の制度について

要件を満たし、認定を受けると親会社やグループ全体で実雇用率を算定することができる

特例子会社という制度では、事業主が厚生労働省による一定の要件を満たす子会社を設立することで、子会社の障害者の実雇用率を親会社の実雇用率に算定できるとしています。

 

また、障害者雇用促進法の第45条に基づき、厚生労働省の認定を受けることで、事業主が展開する特例子会社以外の関係会社における実雇用率も、親会社に合算して算定することができます。

 

特例子会社設立の流れ

特例子会社の要件などの策定

特例子会社を設立する場合、既存の会社を特例子会社にすることも、新設することも可能です。いずれの場合も、ハローワークに特例子会社を設立する意思があることを告げ、助言を仰ぐようにします。

 

会社設立の手続き

続いて、会社設立登記の準備をします。必要な手続きとしては、就業規則等の作成、事業所設置届の提出、障害者募集準備(求人提出)などをハローワークに対しておこないます。

 

障害者採用

ハローワークや障害者雇用を支援する民間企業を通じて障害者の採用をおこないます。

 

特例子会社認定申請

子会社特例認定申請書等をハローワークに提出し、審査、承認を得ます。

 

 

特例子会社の認定要件とは

実際に特例子会社を設立するための要件を見ていきましょう。

 

親会社の要件

特定の株式会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること

特例子会社は実質、子会社は株式会社であることが要件となります。

例として、親会社が子会社の議決権の過半数を有することなどが挙げられます。

確認書類の例

定款、登記簿謄本、親事業主の直近の有価証券報告書(写)又は付属明細書(写)、子会社の株主名簿(写)又は出資口数名簿

 

 

子会社の要件

①親会社の事業との人的関係が緊密であること

具体的には親会社からの役員派遣、従業員出向等が挙げられます。

確認書類の例

親会社から派遣されている子会社の役員名簿、子会社の社員名簿

 

 

②雇用される障害者が5人以上で、かつ全従業員に占める割合が20%以上であること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者又は精神障害者の割合が30%以上であること

確認書類の

子会社の障害者雇入れ通知書の写し

 

 

③障害者の雇用管理を適正に行うに足る能力を有していること

”雇用管理を適正に行うに足る能力”とは、具体的には障害者のための施設改善、専任の指導員の配置などが挙げられます。

確認書類の例

障害者の職業生活に関する指導員の配置状況(障害者職業生活相談員の選任届等)、子会社の就業規則・給与規定

 

 

④その他、障害者の雇用の促進及び雇用の安定が確実に達成されると認められること

確認書類の

直近の6月1日における親事業主の障害者雇用状況報告書、申請日現在における親事業主(当該子会社含む)の障害者雇用状況報告書

 

参考:厚生労働省「特例子会社制度について」

特例子会社における障害者雇用の現状

障害者雇用の法定雇用率を達成するうえで、設立には一定のメリットがあると考えられる特例子会社ですが、実際の設置状況を見てみましょう。

 

厚生労働省の「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」では、令和4年現在で全国に設置された特例子会社数は579社、平成18年以降、令和4年まで、毎年継続して20~30件ほど全国で設置されています。

 

設置数の増加は特例子会社の設立はデメリットよりメリットの方が大きいという事業主の判断があると考えることができます。

特例子会社における障害者雇用の課題

特例子会社の設立は年々増加している一方で、経営や労務管理に関する点において課題があります。

以下で何点か見ていきましょう。

 

障害社員の個人的なことに関して企業として関わる範囲や限度

一般雇用の社員と違い、障害者のある社員の雇用管理には、職場や仕事に対する適応を促すためにはある程度、日常生活に介入する必要があります。障害特性や適切な服薬、定期的な通院治療などが規則正しい生活リズムを維持し、職場での能力発揮や、出退勤状況に影響を与えるからです。

 

 ただし、プライベートに介入することは人権の面からも、管理者や専任の指導員の仕事量の面からもどこまで関わるべきなのかは範囲や限度の捉え方が問題となってきます。

 

障害に対する専門的な知識が必要となることも考慮し、ハローワークやその他の障害者就労支援の専門家や、産業医、各障害者の主治医などと綿密な連携を取ることは重要なポイントとなってくるでしょう。

 

特例子会社内の人材育成

  特例子会社であっても会社であることには変わりありません。最初のうちは親会社などから出向してきたベテランや経験者を中心に運営されますが、当然、人材育成という視点は必要になってきます。

 

特例子会社には障害者と障害のない従業員がいるわけですが、人材 育成も障害があるなしによって分け隔てがあってはいけない点に注意する必要があります。

 

そのような空気があれば、特例子会社としての発展は期待できません。障害者である従業員とそうでない従業員が相互理解できるような取組が不可欠です。

 

障害への配慮とキャリアアップとのバランス

特例子会社に限ったことではありませんが、障害者である従業員のキャリアアップについても当然、その道筋を創る責任が事業主にはあります。

 

キャリアアップがない、基準が明確でない職場での離職率は障害があるなしに関係なく高くなります。障害があることによってできることが制限されていることは確かですが、できること、できないことは一律ではなく、各個人によって違うことを会社側が理解することはとても重要です。

 

一人一人の障害者が安定して最大限の力を仕事で発揮できるかは、適切な合理的配慮がなされているかに掛かってきます。配慮があれば仕事もでき、もっとキャリアアップしたいと思うものです。

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まとめ

特例子会社の最大のメリットは、その子会社での障害者の実雇用率を親会社のそれと合算できることと言えます。

 

今まで、会社の規模や、設備、職務内容など様々な理由から、思うような障害者雇用ができていなかったという事業主の方には検討の余地がある非常に魅力的な制度です。

 

事業主にとっては無理なく障害者の法定雇用率をグループとして達成でき、働く障害者の方にもより整備された施設、設備、制度などが導入されている理想的な環境といってよいでしょう。

 

特例子会社の設立はハローワークとの共同作業と言っても過言ではありません。しっかりと設立要件を理解し、必要な手続きを行ないましょう。

 

自社の人材不足を補うだけでなく、障害者と障害がない者が共生する社会の実現という社会貢献にも寄与する特例子会社づくりを目指すためにも、ぜひ利用したい制度です。

 

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障害者雇用については、「障害者雇用促進法」という法律で義務付けられていますが、障害者雇用促進法には、他にも障害者差別の禁止や合理的配慮の提供の義務などが定められています。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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