障害者雇用とは?メリットや制度、一般雇用との違いを解説
更新日:2024年05月04日
障害者雇用促進法によって、企業には障害のある人を雇用することが義務づけけられ、法定雇用率として常用の雇用者に対する障害のある人を雇用する人数が定められています。しかし、厚生労働省が発表した「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」によると実雇用率は2.25%dで過去最高を記録していますが、法定雇用率の2.3%には届かず、法定雇用率を達成した企業は48.3%しかありません。企業が障害のある人を雇用することは法的な義務であり社会的責任でもあり、積極的に取り組まなければなりません。そのためには、人事担当者は、障害者雇用と一般雇用の違いや障害者雇用のメリットとデメリット、障害者雇用に関連する法律や制度などについてしっかりと理解する必要があります。
目次
障害者雇用とは?
「障害者雇用」とは、障害のある人を通常の雇用とは別に、「障害者雇用枠」を設けて雇い入れることです。障害のある人の中には優れた能力を持った人も多くいますが、一般的に障害のある人は、障害のない人より就職が難しい状況にあります。そのため、障害のある人の能力や適性に応じて就業できるように設定された採用枠です。
障害者雇用の対象
障害者雇用の対象となるのは、原則として障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っている「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」です。
以前は法律によって企業に雇用義務を定めていたのは、身体障害と知的障害がある人だけでしたが、2018年に精神障害の人も対象に加えられています。
参考:障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました|厚生労働省
日本の民間企業における障害者雇用の状況
日本の民間企業における障害者雇用率の達成割合は、厚生労働省が2023年12月22日に公表した「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」によるとは50.1%でした。対前年比1.8ポイント上昇となっています。
▼企業規模別の障害者雇用状況参考:令和5年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省
主に、従業員1,000人以上の大企業で障害者雇用が進んでいます。また、100~300人未満や500~1000人未満の中小企業でも、積極的に取り組みを行っている企業が半数以上です。
一方で、厚生労働省から障害者雇い入れ計画の適正実施勧告を受けたにもかかわらず障害者の雇用状況に改善が見られない企業は、令和4年度5社(うち3社は再公表) 厚生労働省によって企業名が公表されました。企業名が公表されるからというわけではありませんが、43.5人以上の従業員を雇用しているすべての企業にとって、障害者雇用は前向きに検討していくべき案件なのです。
障害者雇用と一般雇用との違い
障害者雇用と一般雇用との違いは、以下の通りです。
・一般雇用:障害者手帳の有無にかかわらず、企業の応募条件さえ満たせば誰でも応募できる求人
・障害者雇用:障害者手帳を持っていることが条件。身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所持者向けの採用
一般雇用で働く場合
企業が求める一般雇用枠の条件をクリアしていれば、誰でも応募できるため、選べる職種や求人数が多く、選択肢も多くあります。給与をはじめとする待遇面も一般雇用として評価を受けることが期待できます。
ただし、一般雇用は障害への配慮を前提としていないため、障害に対する理解や配慮が得られない可能性があり、定着しにくいという傾向もあります。
障害者雇用で働く場合
企業が障害の特性などを把握した上で雇用しているため、働く環境や体調などの面で配慮を受けやすくなります。
反面、通常の雇用と比べると、障害者雇用枠での求人は件数が少なく、職務内容についても限定されていることが多いため、自分が希望する仕事に就くのが難しい状況です。
また、一般雇用に比べて給与が低く設定されていることもあります。
特例子会社で働く選択肢
特例子会社とは、障害者の雇用促進と安定を目的として設立される子会社のことです。そのため、バリアフリー等の設備面や、相談員などのサポート体制が充実しています。
また、一般企業では障害のある人とない人が同じチームで働くという場面がありますが、障害のある人が多く所属する特例子会社は、同じような障害のある人との仕事が中心となる環境のため、人間関係が築きやすいというメリットもあります。
ただ、特例子会社は全国で598社(令和5年6月時点)と、まだ数が少なく、働きたいと思っても通える人ばかりではないというのが現状です。
障害者雇用の手順
障害者雇用を始めようとする場合は、段階的に雇用を進めることで、雇用する側とされる側の双方が働きやすい環境を作りやすくなります。
企業によって障害者雇用に対する課題に違いはありますが、ポイントを紹介します。
障害者雇用に取り組む意義と方針を立て、社内理解を深める
障害者雇用を進めるにあたっては、どのような理由で取り組む必要があるのか、会社としての方針を明確にして社内で共有することが必要です。ハローワークなどの支援機関などへ相談し、障害者雇用への理解を深めましょう。経営層も含めて社内の全員が障害の種類や特性について理解することが大切です。
業務を考える
障害者を雇用する際に大切なのは、採用する前にどのような業務を担当させるのか検討しておくことです。業務とのマッチングがうまくいかないケースでは、離職につながってしまう可能性があります。まずは、社内の全ての業務を棚卸しして、障害があってもできる業務と作業内容や作業工程を改選することで、できる業務を洗いだしてみましょう。その上で、雇用する本人の障害特性や個性、意欲などに合わせて任せる業務を決めるのがよいでしょう。
職場実習の受け入れ・採用前実習の利用
一定期間の実習を通して、障害者の特性について理解を深めることができるほか、業務を遂行するために必要な職務能力やスキルを見極めることができ、入社後のミスマッチによる早期離職を防ぐことができます。
受け入れ態勢を整え、採用活動を行う
受け入れる部署の設備などを確認し、必要であれば施設の改造や就労支援機器の無料貸し出しなどを活用します。また、指導担当者を決め、募集人数、業務内容などを決定しましょう。
採用活動を行う際、ハローワークや障害者雇用に特化した民間の求人サイトなど、自社にあったサイトを活用しましょう。障害者就職面接会や障害者職業センター、特別支援学校などとの連携も効果的です。
職場定着に取り組む
障害者を雇用した際に、最も大切なことは早期離職せずに職場に定着して、安定的に就業を継続できるかどうかです。職場定着のためには、障害者本人が就業に対して意欲を持ち続けることに併せて、企業は障害者が安定して就業して能力を発揮するための適切な配慮が不可欠です。
障害者雇用を支援する機関と連携して、職場定着に向けた相談や支援を受けられるような体制を作っておくことが大切です。
企業が障害者を雇用するメリット
障害のある人が障害雇用で働くメリットとデメリットを紹介しましたが、企業側には障害者を雇用することに、どのようなメリットがあるのでしょうか。
業務改善、最適化・効率化がはかれる
障害のある人を雇用すると、個々の障害の特性や程度、職務能力に合わせて、職場の環境や業務内容を見直すことが必要となります。厚生労働省が発表した「平成30年度障害者雇用実態調査結果」において、企業が障害者を雇用しない理由として最も多かったのは「該当障害者に適した仕事がないから」でした。
言い換えると、障害のある人を雇用するためには、障害があっても取り組むことができるよう、今ある仕事の成り立ちを見なおさなければならないということです。
障害がある人が取り組むことができる仕事に設計し直すためには、現在の業務を棚卸しすることが必要です。無駄な業務や非効率な業務を見直すきっかけになり、障害のない人の仕事の最適化や効率化にもつながります。また、業務の見直しや改善は、障害があっても特性を活かして活躍できる業務を新たに創出するチャンスでもあります。
生産性向上
従来の業務の中から、障害がある人ができる仕事を切り出すことは、今までその仕事を抱えていた人の負担を軽減することになります。
その分、より付加価値の高い仕事をすることができ生産性の向上が期待できます。また、障害のある人も含めて従業員の能力や適性を把握して、それぞれ適切な部署や職務に配置することは、生産性の向上につながります。さらに人事評価制度やマネジメントを見直すことで、さらなる生産性向上が期待できます。
「平成30年度障害者雇用実態調査結果」では、障害者を雇用しない理由として「施設・設備が対応していないから」という回答も多くありました。
しかし、障害者を雇用する際、施設や設備の整備が必要な場合には、国から助成金が支給される制度もあります。障害のある人が働きやすいように職場の環境を改善することは、他の従業員にとっても働きやすい状況を生み出し、生産性が向上する可能性があります。
助成金についてより詳しい情報はこちら
社会的責任(CSR)を果たし企業価値創出
企業が障害のある人を雇用することは、障害者雇用促進法によって定められた義務であり社会的責任です。障害のある人が活躍できる場を提供することは大きな社会貢献につながります。
また、企業が法定雇用率以上に障害のある人を雇用することは、社会的責任を果たしている企業、コンプライアンスを遵守している企業と評価され、企業価値の向上につながります。
障害者雇用促進法に定められている法定雇用率以上に、障害のある人を雇用した場合には国から給付金が支給されますが、反対に法定雇用率を達成できない常用雇用労働者数が101人以上の企業は、不足する障害者に応じて障害者雇用納付金を納めなければなりません。
障害者雇用率が一定基準を下回っていると障害者雇用計画書の作成命令が出され、作成しても障害者雇用率が未達成の場合には社名が公表されます。
社名が公表されれば、社会的信頼を失うことになりかねません。
多様性のある企業文化・組織作り
近年、ダイバーシティに取り組む企業が増えています。ダイバーシティとは多様性のことで、企業経営においては人種や民族、国籍、性別、年齢、障害を問わず人材活用する人材と働き方の多様性を意味しています。
障害のある人を雇用するには、企業はもちろん職場の上司や同僚にも合理的配慮が必要になります。障害のある人と一緒に働くことによって、お互いの理解を深めて配慮しようという企業文化や風土を生み出すことができます。
障害のない人でも、能力や個性は人それぞれで、一緒に仕事を進めるにはそれを理解することが大切です。障害のある人に対して、理解や配慮をすることによって、お互いを思いやる絆の強い組織作りが可能となります。
企業が障害者を雇用するデメリット
障害者雇用には、さまざまなメリットがありますが、厚生労働省が発表した「令和4年 障害者雇用状況」の集計結果では、民間企業の障害者雇用率は法定雇用率2.3%に対して、実雇用率2.25%とまだ達成していない状況です。これには、企業が障害のある人を雇用することに対して、下記のような課題やデメリットを感じていることもあるようです。
障害者雇用の問題点・課題
障害者を雇用しない企業は、「障害者を雇用すると雇用するためのコストや管理するためのコストがかかる」や「障害者のために、業務を作ったり職場環境や、人事制度を整備するための手間やコストが発生する」「障害者に対するサポートが必要になり、生産性が下がる」などのデメリットを不安に思い、雇用が進まないようです。
実際に、厚生労働省の公表した「平成30年度障害者雇用実態調査結果」で企業が障害のある人を雇用しない理由で多かったものには、「該当障害者に適した仕事がないから」や「施設・設備が対応していないから」の他に、「職場になじむのが難しいと思われるから」「障害者雇用について全くイメージが湧かないから」「当該障害者の雇用管理のことがよくわからないから」がありました。これらは障害のある人の特性や障害雇用に対する情報不足や理解不足が原因で、障害者雇用を進める上での課題となっています。
障害者雇用のデメリットをメリットに変えるポイント
これまで紹介してきた通り障害者雇用は、企業にさまざまなメリットを生み出します。課題やデメリットと考えられる点も、考え方や社内の体制を変えることでメリットにすることができます。
社内理解を深める
障害者雇用は、障害者雇用促進法に定められた義務ですが、経営層を含めて社内の障害者雇用に対する理解を深めることができなければ、障害のある人が活躍して定着する職場はつくれません。社員全員に対して、障害のある人を雇用することは企業の社会的責任であることを説明したうえで、なぜ障害者雇用をするのか、や、どのような理念や方針に沿って雇用を進めるのかを理解してもらうことが大切です。
大切なのは障害者雇用が、企業理念や経営方針に沿ったものであることです。障害者雇用を検討する際に、企業理念や経営方針を見直して障害者雇用の必要性について確認しましょう。
障害や障害のある人に対する知識や経験が少ないと、障害者雇用に対して漠然と不安に感じることが多くあります。そのような場合に社内理解を深めるためには、障害に対する研修を行うことも効果的です。まずは人事担当者や採用担当者が、障害者雇用について理解を深めることが大切です。
障害者を雇用している企業に見学に行ったり話を聞いたりするとよいでしょう。さらに、障害者の実習を受け入れると障害者雇用に対するイメージがつきやすくなります。
障害のある社員のサポート体制構築
障害者雇用において、雇用した障害のある人が職場に定着させることは企業によって大きな課題です。せっかく雇用しても社内のサポート体制が不十分なケースや、現場の理解が不足している場合には、雇用しても早期退職となってしまう可能性があります。
障害のある人は職場で働く上で多くの不安を感じています。その不安に対して、現場では障害特性に合わせた配慮やサポートが必要となります。それらは現場に丸投げすることなく、会社全体でサポートする体制を作りましょう。障害者雇用に対する社内理解を進めるには、障害者雇用は会社の方針として取り組むこと、それに関して必要なサポートは組織全体で取り組むという姿勢を見せることが重要です。
また障害者雇用では、地域の障害者職業センターや障害者就労支援センター、障害者就業・生活支援センターなどの障害者の就労を支援する機関と連携することも重要です。日頃から相談できる体制や関係を作っておくようにしましょう。
障害特性・能力、配慮事項を事前に把握
雇用した障害のある人に対して合理的な配慮を行うには、採用した時や現場に配属する前に本人としっかりと話し合って、障害の特性や能力、どのような配慮をして欲しいのかについて把握しておく必要があります。その情報は個人情報保護の観点から本人の了解を取る必要がありますが、配属先の上司やスタッフと共有します。
また配属した後も、現場から上がってくる不安や疑問などには、しっかりと対応できるような体制を作っておくことが大切です。定期的に障害者本人と現場の上司と面談して、課題があれば解決するために取り組みます。
助成金を活用し雇用を促進
企業が障害のある人を雇用する際には、障害者雇用促進法に基づく制度を利用して、さまざまな助成金を受けとることが可能です。
制度の例としては、特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、障害者雇用安定助成金があります。
◎特定求職者雇用開発助成金
障害者を含む特定の就職困難者(高齢者や母子家庭の母等)を継続して雇用する労働者として雇い入れる場合に助成されます。支給額は障害の程度や労働時間により異なり、30万円~240万円の間で支給されます。
◎トライアル雇用助成金
就職が困難な障害者を一定期間雇用することで、その適性や業務遂行可能性を見極め、障害者の早期就職実現や雇用機会を拡大するために一定の要件を満たすと助成金が支給されます。支給額については、精神障害者は月額最大8万円を3か月、もしくは月額最大4万円を3か月(最大6か月)、それ以外の障害者は月額最大4万円を3か月となります。
◎障害者雇用安定助成金
障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫などの措置を講じる事業主に対して助成されます。
下記の7つの措置を講じる場合に受給することができます。
参考:障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)|厚生労働省
障害者雇用の事例紹介
アコム株式会社様
アコム株式会社は、atGPのサポートを活用し、事務未経験者も含めて障害者を積極的に採用しています。各部門の責任者にアンケートを実施し、受け入れ体制を整備。入社後は資格認定講習を受けた社員がサポートを提供します。具体的な取り組みとして、社内アンケートによる体制構築、資格認定講習によるサポート、入社前後のフォロー強化があり、これらはatGPの利用によって実現されました。
詳細はこちらをご覧ください。
株式会社グロービス様
株式会社グロービスは、専門スキルやキャリアを活かしたプロフェッショナルとして障害者を採用し、一般雇用枠と同等の高いレベルのポジションを提供しています。ゼネラルパートナーズの支援により、障害に応じた配慮やサポート体制を整備し、入社後のミスマッチを防いでいます。
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三菱UFJ国際投信株式会社様
三菱UFJ国際投信株式会社は、人物重視の採用を行い、障害種別に関係なく長期的な職場定着と活躍を実現。具体的な取り組みとして、社員同士の信頼関係を重視し、必要な配慮事項をしっかりと理解しサポートしています。ゼネラルパートナーズの支援により、適切な配慮とフォローが行われ、採用後のミスマッチを防いでいます。
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全日本空輸株式会社(ANA)様
全日本空輸株式会社(ANA)は、atGPのサポートを活用し、障害者雇用を推進しています。1993年に特例子会社を設立し、2012年に「グループ障害者雇用推進室」を設立しました。行動規範「3万6千人のスタート」を策定し、全社員が障害の多様性を理解し、共に働く環境を整備。ゼネラルパートナーズとの連携で、合同面接会や社内セミナーを実施し、障害者雇用の質を高めています。
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株式会社リクルートオフィスサポート様
株式会社リクルートオフィスサポートは、1990年に設立され、現在は従業員の8割以上が障害者であり、総務、人事、経理、ウェブサイト運営サポートなど多岐にわたる業務を展開。特例子会社として、バリアフリー環境やキャリア支援制度を整え、個々の成長をサポートしています。atGPの活用により、適切な採用とフォローが実現されています。
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企業が抑えておくべき障害者雇用の法律・制度
障害のある人を雇用する際には、企業は国が障害者を支援するために定めた法律や制度について、よく理解しておく必要があります。
障害者基本法
「障害者基本法」は、障害者への施策に関わる法律や制度などについて基本的な考え方を定めた法律です。そして、障害者の自立や社会や経済、文化その他あらゆる分野へ参加するための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としています。
障害者差別解消法
「障害者差別解消法」は、正式な名称を「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といい、平成28年4月に施行されました。障害者基本法の基本理念に則って、障害者基本法第4条にある「差別の禁止」を具体化するものとして位置づけられ、障害を理由とする差別を解消して、全ての国民が分け隔てられることなく、共生できる社会の実現を目的としています。具体的には「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」です。
「不当な差別的取扱いの禁止」は、国や都道府県、市町村など役所や会社やお店など事業者が、障害のある人に対して、障害を理由としてサービスの提供を拒否したり、障害のない人とは違う扱いをしたりするなどの差別を禁止しています。
「合理的配慮の提供」については、障害のある人が、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としていると意思を伝えた場合に、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者は対応に努めること)を求めています。
合理的な配慮の例としては、読み書きが困難な人にタブレットや音声読み上げソフトを使って学習できるようにしたり、肢体不自由な人が自力の異動が困難な場所にエレベーターやスロープを設置する、複雑な指示の理解が難しい人に対して、わかりやすく指示を分けて伝えたりイラストを使って説明するなどです。
障害者雇用促進法
「障害者雇用促進法」は、障害者の雇用義務などの措置や、職業リハビリテーションの措置などを通じて、障害者の雇用の安定を図り、障害者が自立した職業生活を送れるようにすることを目的としています。
民間企業、国や地方公共団体、特殊法人、都道府県等の教育委員会などの事業者に対しては、「障害者雇用率」に相当する人数の障害者を雇用することを義務づける「雇用義務制度」を定めています。また、障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図ることを目的として「給付金制度」も設けられています。
法定雇用率を達成できなかった事業者からは、障害者雇用納付金を徴収して、一方で法定雇用率を達成した事業者には、障害者雇用調整金が支給されます。また他にも、障害者作業施設設置等助成金や障害者介助等助成金などの各種助成金があります。
障害者本人に対しては、職業リハビリテーションの実施によって、地域の就労支援関係機関が連携して障害者の職業生活における自立を支援する取組が定められています。
障害者雇用促進法についてより詳しい情報はこちら
障害者総合支援法
「障害者総合支援法」は、正式名称を「障害者や障害児の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」といい、障害者の日常生活と社会生活を総合的に支援することを目的とした法律です。障害者総合支援法では、80項目におよぶ調査を行って、その人が必要とする支援の度合「障害支援区分」を測って、区分に応じた支援が受けられるようになっています。
「障害者総合支援法」による福祉サービスは、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つに分けられます。
「自立支援給付」は、障害の程度や勘案すべき事項をふまえて、個別に支給が行われる全国一律のサービスです。介護給付・訓練等給付・自立支援医療・相談支援・補装具の事業があります。
「地域生活支援事業」は、理解促進研修・啓発事業や自発的活動支援事業、手話奉仕員養成研修事業、移動支援事業など、障害者や障害児が自立した日常生活と社会生活を営むことができるように、地域の特性や利用者の状況に応じて柔軟に実施される事業です。
障害者雇用率制度(法定雇用率)
障害者雇用促進法では、民間企業、国や地方公共団体は、一定割合以上の障害者を雇用することを義務づけています。この割合が法定雇用率で、常用労働者に対して障害者が何人いるかで計算されます。
2021年4月1日に法定雇用率は引き上げられ、民間企業では2.3%、国や地方公共団体等は2.6%、都道府県等の教育委員会は2.5%と定められています。したがって従業員数が43.5人以上の民間企業は、最低1名は障害者を雇用する義務があり、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。
また、2022年に障害者雇用促進法が改正され、2024年には民間企業の法定雇用率が2.5%、2026年には2.7%に引き上げられることが決定されました。それに伴い、対象となる事業者数も引き下げられます。
雇用対象となる障害者のカウント方法は、下記の表の通りです。法改正に伴う2024年4月から、これまで対象になかった重度身体・知的障害のある人の雇用率算定に含まれることになりました。
「障害者雇用の基礎知識」資料が無料ダウンロードできます
障害者雇用については、「障害者雇用促進法」という法律で義務付けられていますが、障害者雇用促進法には、他にも障害者差別の禁止や合理的配慮の提供の義務などが定められています。
障害者雇用にまつわるメリット・デメリットをはじめ、最低限知っておきたい基礎知識をご紹介します。
この資料でわかること
・障害者雇用とは?
・障害者を雇用するメリット
・障害者を雇用しないデメリット
・障害者雇用が進まない企業が抱える課題
・課題を解消するポイント
・押さえておくべき障害者雇用の法律・制度
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まとめ
企業が障害のある人を雇用することは、障害者雇用促進法に定められた義務というだけでなく、社会的責任を果たすといった意味もあります。しかし、社内のサポート体制を調えずに、法定雇用率を達成することだけを目的として障害のある人を雇用しても、障害者本人も受け入れる現場も大きな不安を抱えることになります。
障害のある人を雇用する際には、社内のサポート体制や関連機関との連携を十分に整えることが大切です。
日本は高齢化社会になり、今後ますます高齢者でも障害者でも使いやすいユニバーサルデザインの商品やサービスが必要とされます。
こうした商品やサービスを開発する際には、障害のある人の意見や経験がとても重要です。ぜひ、障害のある方の特性を活かした新たな仕事を創出するなどに取り組んで、障害のある方が活躍できる職場環境を作り出してください。