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うつ病の人の外出はいつ?~外出するタイミングや過ごし方について~

更新日:2024年05月28日

身内や近しい人がうつ病になった経験があるでしょうか。あんなに元気で働き、明るかった人が性格が変わったようにしゃべらなくなり、悲壮な顔つきになり、やがて仕事を辞めて、家に引きこもってしまう。それが家族やパートナー、親友などなら心配せずにいられません。そんな閉じこもりっきりの人を見れば、だれもが外出が気分転換になるのではと考えます。しかし、うつ病の人の外出にはタイミングがあり、また本人の意思決定も重要なのです。この稿では、うつ病の人の外出のタイミングや仕事復帰へ向けた過ごし方などについてご紹介していきます。もちろん、当事者の方も焦りは禁物、ご参考になれば幸いです。
 

うつ病治療で大切なこと

うつ病とは

気分が強く落ち込み、憂うつ、何をしても楽しくないなどの精神的症状とともに眠れない、食欲がないなど身体的な症状が現れる病気で、気分障害の一つです。日本や国際社会でも、もっとも患者数の多い精神疾患で、自殺につながるケースも少なくありません。

 

大切なのは「休養」

うつ病治療で最も大切なことは「休養」です。人とのかかわりや、職務を遂行する上での責任にストレスを感じることは誰にでもあります。そのため、そのようなストレスからくる落ち込みや、食欲不振がうつ病の症状であると気が付かないことが多く、無理して働き続けて悪化することはまれではありません。

うつ病になったら、とにかく自分が安心できる場所でゆっくりと休むことが回復につながります。

 

生真面目で仕事熱心な人はうつ病になりやすい傾向にあります。仕事を休んで会社に迷惑がかかることをひどく気にして休めなかったり、療養中も仕事が気になり、中途半端な状態で復帰する人も少なくありません。回復を焦らず、無理しないことが大切です。

うつ病発症から回復までの流れ

急性期(診断~3ヶ月程度)

・うつ病と診断された場合、十分な休養を取りながら薬物治療を行うことで、症状が軽快する方が多くいます。しかし、薬物治療の効果には個人差もあり、普段の生活環境や生活リズムも影響するため、人によっては半年ほどかかるケースもあります。

 

急性期はとにかく休養を取り、心身を休めることが何よりも大切です。急性期は症状がもっとも出ている時期でもあり、無理をすると長引いたり、重症化のもとになってしまいます。

  

回復期(4~6ヶ月以上)

調子が良い日と悪い日が波のように繰り返されます。調子がいいときは、まるで何もなかったかのように症状もなく、気分もよくなりますが、悪いときはどん底にいるような辛さがあります。

 

・調子が良い日があっても通院や服薬をやめたり、社会復帰を焦ってはいけません。そのようなケースでは決まって再発・悪化します。仕事に復帰してみたものの、1か月も続かないなんてこともうつ病ではよく見られます。

 

・急性期と比べると少し楽に過ごせるようになるため、生活リズムを整えたり、認知行動療法(物事の捉え方や考え方を変える療法)を行ったりします。

 

再発予防期(1~2年)

・症状が安定して社会復帰した後、再発予防として薬物治療を継続します。

 

主治医の指示に従って治療を継続し、決して自分の判断で服薬をやめないようにしましょう。通院や治療を途中でやめて再発する人が多くいます。

 

・うつ病になってしまった原因を探り、環境調整を行います。うつ病の場合、その原因(ストレス要因)は明確でなかったり、複数の場合もあります。自分だけでは究明できない場合、主治医やカウンセラー、信頼できる家族や友達などと一緒に考えるのも手です。

外出や運動は「回復期」になってから

調子の良い日は散歩や軽い運動を

回復期に入ったら調子のよい日には自ら外に出たいと思うようになるでしょう。外出や運動は自分がそう思えるようになったら始めればよいのです。

 

周囲に人がいる生活に戻るためにも「外に慣れる」ことが大切です。いきなり人が多い場所に行かず、最初は人気の少ない場所や時間帯を選ぶのもよいでしょう。また、身体的な健康の面でも適度な運動はリラックスや質のよい睡眠につながりますが、まずは短時間の散歩などの軽い運動から始めるようにします。

 

当然、回復期では、調子の悪い日もあります。外に出たくない日は無理に出ず、カーテンを開けて外の景色を見たり、風にあたるだけでもよい効果があるでしょう。

 

うつ病を持つ方が家族やパートナーにいる場合

 

・どうしても家に閉じこもっているのが心身に余計よくないと思ってしまいます。実際、そうなのですが、「気分転換」として外出や運動をすすめたり、無理やり連れだしたりしてはいけません。本人が自分の意思で行動するまでは見守る姿勢を心がけることが大切なのです。

 

・うつ病を発症しやすい方は、がんばり屋で真面目な方が多いため、「頑張れ」など励まさないほうがよいです。ついつい応援の気持ちを「頑張れ」と表してしまいがちですが、「頑張りが足りていない」、「頑張りを認めてもらえない」と受け取られてしまい、前向きになれないのです。励ますのではなく、本人の話に耳を傾けることが大切です。

 

・回復期は調子の良い日に自己判断で薬を飲むのをやめたり、お酒を飲んでしまうケースがよく見られます。薬は主治医の指示による量や時間を守り継続することが重要です。また、お酒をたしなむ場合、お酒の量によっては薬の本来の効果を妨げることがあります。またその時は不安を忘れたり、眠りやすくなるため、薬ではなくアルコールに依存してしまう可能性もあり危険です。主治医からの指示がある場合には、自己判断で行動させないように注意しましょう。

 

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回復期におすすめの過ごし方

まずは心の状態を整える

いきなり本格的に外出や運動を始めると、却って不安やストレスがかかってしまうためまずは自分の好きなことから少しずつ始めてみるのがよいでしょう。うつ病の症状が重い間は趣味や好きな活動もやる気がなくなって中断してしまいます。室内でやるようなことで もそういう好きなことから初めて、気持ちをよい方向にもっていくことができます。

 

・必ずしも、外出だけがいい効果を持つわけではありません。家の中でもできることとして、家事や掃除をしてみる、部屋の模様替えをしてみる、音楽を聴く、興味のある映画やドラマを見るなども心に張りを与えます。

 

自宅でできるストレッチやマッサージを取り入れる

・体をほぐすことでリラックス効果が得られます。お風呂に入り、寝る前に簡単にできるストレッチや体操、ヨガなどを数分おこなうだけでもリラックスできて、睡眠導入にもなります。

 

・雨の日や暑い、寒いなど外出や運動が難しい日は、自宅でできることを取り入れるとよいでしょう。

 

外出や運動は少しずつ頻度・時間を増やす

・外出や運動は1日10~30分程度から始めてみましょう。少しずつ外に慣れていくことが大切です。慣れれば自然と外で過ごす時間は増えていきます。

 

・家族やパートナー、ペットと一緒に散歩してみたり、近所のお店に買い物へ行ってみたり、ドライブをしてみたりなど自分ができる範囲で外出の時間を増やしていきます。買い物や、ペットの散歩などは目的のある毎日の生活活動なので外出しやすいでしょう。

 

・ウォーキングやランニングは運動にもなるので、無理ない範囲で取り入れるようにします。人によってはウォーキングやランニングは飽きてしまうので、今まで自分が取り組んできたスポーツや相手がいる遊び(バドミントンなど)などのほうが長続きする場合があります。

 

食事と睡眠も大切に

栄養バランスのよい食事と、十分な睡眠をとるよう心がけましょう。その際、生活習慣を整えていくために、ある程度、時間を決めて起床・就寝し、朝食・昼食・夕食を摂るようにします。

 

・朝はカーテンをあけて太陽の光をあびたり、お風呂上がりにストレッチをしてリラックスするなど生活習慣を整えていくことは、メンタルヘルスの維持に重要であることを理解しましょう。

復職・転職する際は焦らずに

復職・転職する場合のタイミングは必ず主治医と相談する

うつ病を抱えながら仕事をすることは、症状や仕事の量などにもよりますが、慎重になる必要があります。仕事やそれに付随する人間関係などがストレス要因になっている可能性も高いのです。回復期になると、調子が良い日が増えていき、また元来、生真面目な性格な人が多いため、仕事のことを考えてしまいますが、復職や転職は必ず主治医と相談し、アドバイスに従うようにしましょう。

 

リワーク(復職支援プログラム)を活用する選択肢もある

リワーク(復職支援プログラム)とはうつ病などの精神疾患で休業した人の職場復帰を支援する制度・プログラムのことです。いきなり復職することは本人にとっても不安が大きく、また再度休業や退職にいたるケースも少なくないことから、厚生労働省は事業所のリワークへの取り組みに対して助成、推進しています。大きな事業所なら独自にリワーク制度がありますが、ない場合は精神科医院や就労移行支援事業所などがおこなうリワークを利用することになります。

リワークの詳細についてはこちらの記事をご参照ください:リワーク(復職支援プログラム)って何? 取組内容や効果について徹底解説 | atGPしごとLABO

 

転職は再発しにくいような仕事を選ぶ

長期にわたって休業するのが難しい場合は、退職、そして転職という方法もあります。環境が変わるほうがやりやすいこともあります。そういう場合でも、軽作業、事務職、在宅ワークでも可能なウェブライター、ウェブデザイナー、入力作業など自分に合ったストレスになりにくい仕事を選ぶことも大切です。

 

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うつ病などの疾患がある場合、ハローワーク、障害者に特化した転職サイト、転職エージェントを活用するのもおすすめです。これらの機関や事業所は障害者の転職や就職に対して専門的な知識をもっており、あなたの希望や適性にあった支援をしてくれるでしょう。

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まとめ 

うつ病は精神疾患の中でも、気分障害と呼ばれる気持ちの浮き沈みのコントロールが難しい病気です。症状が重いときは、とてもじゃありませんが仕事や人とかかわることにポジティブになれません。しかし、適切な治療を受けることができれば、発症から半年ぐらいで回復期が訪れます。この期間は長いかもしれませんが、うつ病やその他の精神疾患では十分な休養こそが大事で、焦りは禁物なのです。外出や職場復帰に向けてのリハビリはこの回復期以降に開始するのがよいことを当事者も周囲の人間も覚えておくとよいでしょう。うつ病からの復職、転職は自己判断ではなく主治医と相談しながら進めてください。
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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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