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アンガーマネジメントとは?仕事への影響・効果について

更新日:2022年03月18日

職場では対人コミュニケーションが求められ、ストレスを感じている人がたくさんいます。そのようなストレスが溜まると、怒りとなって爆発してしまうことがあります。職場での怒りは人間関係に亀裂が入ったり、生産性が低下するなど、さまざまなリスクとなります。今回は、怒りの感情と上手く付き合うための「アンガーマネジメント」について解説します。

アンガーマネジメントとは

「アンガーマネジメント」は、怒りの感情と上手く付き合うための心理教育や心理トレーニングのことです。怒らないことを目的としたものではなく、怒る必要がある時には上手く怒り、怒る必要が無い時には怒らなくても済むようになることを目指します。

 

1970年代にアメリカで生まれたとされ、当初は犯罪者を矯正するためのプログラムとして活用されていました。また、司法分野でもアンガーマネジメントが導入されていて、傷害やDV、危険運転などの軽犯罪を犯した場合に、裁判所からアンガーマネジメントを受講するよう命令が出ることもあります。

 

時代の変化とともに、アンガーマネジメントは、一般的にも活用されるようになって、現在では企業の研修などにも取り入れられています。

アンガーマネジメントが注目されている背景

一般社団法人日本産業カウンセラー協会は、世界自殺予防デーにあわせて2020年9月10日から3日間、「働く人の電話相談室」を全国19カ所で実施しています。相談内容で一番多かったのは「職場の悩み」で36.6%、次いで「キャリアに関する悩み」24.4%、「メンタルの不調・病気の悩み」14.6%でした。

 

このうち「職場の悩み」の内訳を見ると、「パワハラ」が17.6%、「セクハラ」が1.2%、「その他ハラスメント」6.5%となっていて、「職場の悩み」の1/4を占めています。このように職場でのハラスメントの相談は年々増える傾向にあり、政府も対策に力を入れています。

 

令和2年には「労働施策総合推進法」と「男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法」が改正され、職場における「ハラスメント」を防止するために、事業主が雇用管理上必要な措置を講じることが義務となりました。

 

参考:一般社団法人日本産業カウンセラー協会「第14 回働く人の電話相談室結果報告」

 

 

「怒り」のメカニズムや種類

そもそも、なぜ怒りの感情が生まれるのでしょうか。

 

怒りのメカニズム

怒りの元となるのは、不安や不満、苛立ち、つらい、悔しい、悲しいといったネガティブな「一次感情」です。この「一次感情」が満たされずに、蓄積して限界を超えた時に「怒り」という「二次感情」となって現れます。

 

「怒り」の種類

日本アンガーマネジメント協会が公表している「アンガーマネジメント診断」では、「怒り」を次の6つのタイプに分類しています。

 

 

①公明正大タイプ

「公明正大タイプ」は、正義感が強くて、ルールやマナーから外れることに対して強いストレスを感じるタイプです。曲がったことが許せず、自分の正義から外れた言動を見ると、自分の役割に関係なく介入してしまう傾向があります。

 

 

②博学多才タイプ

「博学多才タイプ」は、完璧主義な点があるため、物事に明確な答えを求めるタイプです。自分だけでなく周りの人にも厳しくなってしまう傾向があるため、はっきりしない事や人に対して、イライラしてストレスを溜めやすい傾向があります。

 

 

③威風堂々タイプ

「威風堂々タイプ」は、自尊心が高く、他人からの評価を気にするタイプです。マイナスの評価を受けたり、自分の思い通りにならないことがあるとストレスや怒りを感じやすい傾向があります。

 

 

④天真爛漫タイプ

「天真爛漫タイプ」は、自分の感情や意見をストレートに表現できるタイプです。自分が感情を表に出している分、他の人がはっきり意思表示できなかったり、思う通りに行動できないとイライラしてストレスを感じます。

 

 

⑤外柔内剛タイプ

「外柔内剛タイプ」は、表向きは柔和な性格に見えますが、内面には確固たる意志を持っているタイプです。自分の意思を優先して、自分と異なる価値観や意見には興味を持てません。表向きと内面にギャップがあるため、他の人から誤解されやすく、感情を表に出さずにため込むためストレスとなりがちです。

 

 

⑥用心堅固タイプ

「用心堅固タイプ」は、他の人に対する警戒心が強く、自分にも他人に対しても固定観念を持ちやすいタイプです。パーソナルスペースが広く、他の人と接すること自体にストレスを感じます。

 

アンガーマネジメントの必要性や効果

職場におけるハラスメント防止の取り組みが義務化される中で、アンガーマネジメントの必要性や効果が注目されています。

 

 

アンガーマネジメントの必要性

インターネットの普及による情報化や、人口減少、ライフスタイルの変化などの影響を受けて人々の価値観が多様化しています。

 

価値観が異なる人と接する機会が増え、自分とは異なる価値観を持つ人に対して、苛立ちやストレス、怒りを感じることが多くなりました。

 

その結果、人間関係のトラブルが増加していて、そのようなトラブルを避けるための方法としてアンガーマネジメントが必要と言われています。

 

また、職場における上司や先輩社員の怒りは、若手社員にとってはパワハラに感じるケースが多くなります。職場でのハラスメントを防止するためにも、怒りをコントロールするためのアンガーマネジメントは必要です。

 

 

アンガーマネジメントの効果

アンガーマネジメントの効果は、主に次の通りです。

・自分の感情をコントロールできる

・ストレス軽減

・コミュニケーションの円滑化

・ハラスメントの予防

・価値観の多様性を理解できる

等が挙げられます。

アンガーマネジメントがもたらす仕事への影響

怒るスーツ姿の男性の写真

 

アンガーマネジメントはハラスメントの予防だけでなく、仕事へ良い影響を与えます。

 

具体的には、怒りの感情をコントロールすることで、「苛々して仕事に集中できない」といった状況がなくなり仕事が効率化できる、 コミュニケーションが円滑になり、チーム内の仕事が進みやすい環境になるなど生産性の向上が期待できます。

アンガーマネジメントを実践する

メモ帳とペンだけでできる!自分の「べき思考」を整理しようの画像

アンガーマネジメントを実践するための方法について解説します。

 

アンガーマネジメントの3つのステップ

アンガーマネジメントは、「衝動」「思考」「行動」の3つの要素をコントロールすることで、怒りと上手く付き合います。

 

 

①「衝動」のコントロール

怒りの「衝動」をコントロールする代表的な方法が「6秒ルール」です。これは怒りを感じてから、理性を司る前頭葉が機能するまでに6秒かかるためです。怒りを感じても、すぐに表現せず6秒我慢することで、怒りの衝動を落ち着かせることができます。

 

 

②「思考」のコントロール

怒りは、不安や不満、苛立ち、つらい、悔しい、悲しいといったネガティブな「一次感情」が元となっています。この一次感情は、期待が裏切られたり、願望が叶わなかったなどが原因で起こります。

 

「こうするべき」や「こうあるべき」といった考えを捨てることで、価値観の多様性を理解して、「思考」をコントロールすることができます。

 

 

③「行動」のコントロール

怒りは誰にでもある感情です。アンガーマネジメントは怒らないことを目的とはしていません。しかし、ビジネスにおいては、怒ることで問題が解決するかどうかを判断することが大切です。

 

怒りによって問題解決が難しいことを理解することで、行動をコントロールして怒り以外の言動に切り替えることができます。

 

 

怒りを自己分析する

アンガーマネジメントでは、自分が抱いた怒りを分析することも効果的です。怒りの感情が沸き起こってきたら、今の怒りの度合いが、1〜10の間でどの程度なのか点数化してみましょう。点数を考えることで怒りの感情をリセットすることができます。

 

また、点数と合わせて、本当の自分は「どうしたかった」や「どうして欲しかった」など内容も書き加えることで、自分の怒りを客観的に見ることができます。

 

アンガーマネジメント研修の活用

では企業でアンガーマネジメント研修を実施するには、どのような点に気を付けたら良いのでしょうか。

 

研修の対象は「新入社員」から「管理職」まで

アンガーマネジメント研修は、「管理職」だけではなく、「新入社員」にも必要といわれています。新しい環境や慣れない業務で、トラブルが発生した際に、怒りの感情が起こったとしても、それをコントロールして問題解決することが求められるからです。

 

 

研修内容を社内で共有する

アンガーマネジメント研修は、全社員が参加するか、受講した社員が研修で学んだことを社内に共有する機会を作ることが大切です。アンガーマネジメントについて全社員が理解している状態になれば、社内のコミュニケーションが活性化します。

 

 

研修を振り返る機会を設ける

研修を受講しても、時間が経てば忘れてしまうものです。また、頭では理解していても、それを実践するためには訓練が必要です。研修後のフォローアップとして、アンガーマネジメントの基礎的な内容を社内で振り返る機会を設けましょう。

 

社内で研修を受ける機会がない場合、外部で受けることも一手

atGPの就労移行支援事業所「atGPジョブトレ」では、それぞれの障害に特化した障害理解・対処スキルが身につくプログラムを受けることができます。プログラムでは、アンガーマネジメントの研修もカリキュラムに取り入れています。

 

まとめ

ここまでアンガーマネジメントについて紹介してきました。怒りという感情は誰にでも起こるもので、それ自体は悪いことではありません。怒りを無理に抑えることで、逆にストレスとなることもあります。

 

アンガーマネジメントは、怒らないことが目的ではなく、怒りの感情と上手く付き合うための心理トレーニングです。研修で学ぶだけでなく、継続して取り組み続けることで効果が高まります。

 

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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