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自分に合った仕事をみつける!発達障害の人の就活のポイントやコツ

更新日:2022年07月05日

自閉症、注意欠如・多動症(ADHD)や学習障害などの発達障害。ひと昔までは学校でコミュニケーションが難しい、空気が読めない、授業中徘徊する、勉強ができないなどの子どもはただ単に大人が扱いにくい、風変りな子として扱われていました。家庭でのしつけや教育が原因として、保護者が責められることも多かったのです。しかし、発達障害の研究が進むにつれて、このような子どもたちの多くは脳の機能的な障害から起こる発達障害だということがわかってきました。このようにして、ここ20年ほどで発達障害への理解や支援も増えてきましたが、やはり発達障害を抱えたまま就職できるのか不安な方も多いと思います。ここでは発達障害を持つ人でも就活をうまく進めていくためのポイントやコツを紹介していきます。しっかりとご自分の発達障害と向き合い、自分のできることとできないことを理解し、適性を考えて目指す職業に就いてください。就活を終わらせることはゴールではなくスタートです。就活を成功させることはもとより、職場で活躍して、公私ともに充実した人生にしていただきたいと願っています。

そもそも発達障害とは

発達障害という言葉は身体障害、知的障害、精神障害に比べるとその障害の認知度は一般的に低く、日本でも発達障害者支援法という福祉法ができたのも2005年のことです。発達障害者支援法の第2条には次のように定義されています。

 

「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」

 

上記によれば、発達障害はなんらかの脳機能の異常であることがわかります。※自閉症スペクトラム(ASD)は広汎性発達障害、アスペルガー症候群、自閉症などを一括りにした呼称です。

 

一般的には発現から早期発見、早期療育をおこない、その後も継続的な支援をしていけばある程度コントロールできるようになり、大人になってからは発達障害が目立ちにくい、あるいは発達障害を抱えつつも社会に適応していけるという研究結果も出ています。

発達障害の人が就活で困るポイント

就活で困るポイント自分をうまく伝えられない

発達障害の中でも自閉症スペクトラム障害の特徴的な症状として、「意思伝達の質的な障害」があります。つまり言い換えれば、自分の意志や考えを相手に上手く伝えることが困難な障害なのです。ですので、他者との会話のキャッチボールもうまくありません。就職の面接で自己PRをするとか、自分の仕事に対する情熱などを話すという形で表現するのが苦手というのは、大きな問題といえます。

 

就活で困るポイントコミュニケーションが苦手

自閉症スぺクトラム障害の特徴の一つに「対人的相互作用の質的な障害」があります。先に述べた”自分をうまく伝えられない”のと、違いが分かりにくいかもしれませんが、こちらの問題は相互のコミュニケーションが難しいということです。例えば、身振り、手振りなどのジェスチャー、喜怒哀楽の表情、アイコンタクトなど非言語的コミュニケーションの手法が不足、あるいはまったくないというケースもあるようです。当然、このような対応だと、やる気があるのか、何を考えているのかもわからないという評価を受けてしまいます。

 

就活で困るポイント空気が読めないと感じられてしまう

自閉症スペクトラム障害の一番よく知られている特徴が「こだわり」です。言い換えれば、同一性を保持したがる傾向が強いのです。自分の慣れていること、気に入っていること、やりたいことをどうしても優先させてしまい、周囲の状況が見えず、言葉も耳に入らないこともあります。こうなると、社会の中で人間関係を築くために必要な同調性や、状況判断が難しく、周囲に空気が読めないと感じられてしまうことがよくあります。

 

就活で困るポイント計画的な行動が苦手

注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴の一つが「衝動性」です。思い立ったらすぐ行動、といえば長所に捉えられがちですが、裏を返せば自分で計画を立てて行動することが難しく、指示されたとおりの計画に沿って行動するのも苦手だったりします。衝動的な行動がコントロールできないことも手伝って、時間にルーズであったり、発言も思ったままをしゃべることが多く、勝手な人間と思われたりしがちです。場合によっては衝動的な言動は自他を危険な目に合わせたり、相手を傷つけたりすることになります。いくつもの就活を掛け持ちしたり、面接スケジュールを管理したりするのも自分一人では難しいかもしれません。

 

就活の進め方

自分の特性の理解

まず就職活動において、障害のあるなしに関わらず重要なのは自己理解です。誰でも行動や考え方などに自分なりの傾向があるわけですが、就職活動では、人材を採用する企業側にとっても、会社で欲しい人材、活躍できる人材なのか知りたいところなのです。

 

しっかりと時間を取って相手に対して自分がどういうタイプの人間で、どんなところがこの仕事に向いているのかを伝えられるようにしましょう。当然、できることのアピールばかりではなく、できないこと、苦手なこと、直さないといけないことなどを整理しておくことも必要です。履歴書の原本と一緒にご自身のできること、苦手なこと、長所と短所についてまとめた文章を残しておくのもよいでしょう。

 

この自己理解が、発達障害の人の場合は障害特性を伝えるうえでも必要となってきます。ご自身の発達障害とその特性について、自分で把握している、思っているだけの特性だけでなく、改めて医師やカウンセラー、またはご家族などに客観的な理解を聞いてみてもよいですね。

 

ご自身の苦手なことや短所については「リフレーミング」という心理学的な手法でポジティブな捉え方をすることもおすすめです。例えば自閉症スペクトラムのこだわりは一つのことに打ち込める、集中力があるとも言えますし、注意欠陥多動性障害(ADHD)の衝動性はすぐに実行に移せる、失敗を恐れないとも言えます。

 

企業・業界研究を

ご自身の性格や障害特性について理解ができたら、次は自分にどんな業界や仕事が合うのか考えてみましょう。業界や職種だけではなく、その会社の社風も調べてみましょう。新しいベンチャー企業などは比較的、一人一人の個性を大事にしますし、外資系の企業はダイバーシティやノーマライゼーション、あるいはインクルージョンの取り組みが長く、発達障害者にも理解が深かったりします。

 

IT(ICT)系の企業ならコミュニケーションの手段も会話や電話や文書より社内SNSやチャットなどのコミュニケーションツールやメールでの仕事が多く、評価も結果(成果物)でというケースもあります。直接のコミュニケーションが難しいのならIT系に進んでみるのもいいかもしれません。

 

逆にどうしても人を相手にしないといけない、深いコミュニケーションや相手への配慮が必要な接客業や福祉関係は避けたほうがよいかもしれません。

 

仕事選びについて

仕事というものの枠組みについて一度柔軟に考えてみる必要があります。一つは雇用されるだけが仕事ではないということです。どうしても、雇用されれば会社の一員としてコミュニケーションが発生します。同僚や上司、顧客との関りがゼロというのは難しいことです。

 

自営業やフリーランスという選択肢も考えてみてよいのではないでしょうか。オフィスや作業場も自宅、連絡はメールやSNS、スカイプなど、成果物のやり取りもPCを通じて、インターネット上でできてしまうなど、発達障害のある人にも向いていると言えます。社会経験を積んだり、その業種や業界に慣れるまで最初の数年は会社で働き、後は独立するという人もいます。

 

一般枠または障害者枠で応募

発達障害だけでなく、他の障害のある方も就活する際に考えなければならない大きなポイントは、障害がない人同様に一般枠で働くか、障害者枠で働くかということです。「障害者雇用促進法」で定められている障害者雇用率において、公的機関や、ある一定規模以上の企業で障害者を一定率雇用しなければならないという制度があります。この制度については別の記事で詳細をご紹介しています。

 

一般枠と障害者枠のどちらがよいかですが、これは一概には言えません。自分の可能性や実力を試すという意味では、一般枠への挑戦はよい機会と言えるでしょう。障害がない人たちと同じ土俵で採用枠を競うわけですから、特性が場合によってはハンデになる可能性が高くなります。

 

募集する企業や職種も障害者枠で探す時よりも範囲が広がり、就職した場合、給与など待遇が非常に良い業界や企業もあります。一方その分仕事の要求度もハードルが高くなります。特性があることによって色々と厳しい状況もあるでしょう。当然、一般枠でも障害への合理的配慮の提供は義務ですが、障害者枠ほどは配慮が充実していないと考えられます。

 

障害者枠への応募は各種障害者手帳の取得が必須条件となります。発達障害者の場合は精神保健福祉手帳が必要です。障害者枠は障害者専用の雇用枠ですので、各種障害に対する配慮を義務付けられています。当然、多くの障害者には仕事内容も簡単でやりやすく、障害特性に合った様々な配慮がされるため一般枠で働くよりも安心、安全に働けますが、仕事や成果の要求度が低い分、賃金は高くないことを覚えておきましょう。

就活の際に気をつけたいポイント

適職をしっかりと考えたり、体験談などを読みイメージする

就活の第一歩として、自分に合う適職とはなんなのかをしっかりとリサーチする必要があります。ここで大事なのは、自分だけの視点、自分だけの考え方ではいけないということです。自分と同じような障害特性を持つ人の就活・就職体験など、知人や先輩などから話を聞かせてもらうべきです。

 

周囲にそういう人がいなくても、今はインターネットで多数見つけることができます。このような人たちの成功・失敗体験を通じて、自分の就活・就職をイメージしてみることは非常に有効なリサーチと言えます。

 

支援者・専門家の意見や評価を取り入れる

自分の障害特性について、障害者支援の専門家や主治医などに評価を受けたり、就職の相談などもしてみましょう。第三者の評価や意見はできるだけ多く聞きたいところですし、発達障害について専門的知識がある人の評価や意見は大いに参考にするべきです。受診をしている医師やカウンセラー以外にも、就職という面ではハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどで相談に乗ってくれます。

→atGP就活エージェントで相談してみる

 

一般枠や障害者枠などを使い分けて柔軟な働き方を模索する

職場で信頼されたり、充実感をもって仕事に取り組めたりすれば自然と一つの職場で長期に安定して仕事をすることができます。発達障害を含む障害者の一般求人での離職率は一般の離職率よりも高い傾向にあります。離職は誰にでもあり得ることと思ったほうがよいかもしれません。

適職を探すことが目的であれば、社会的ルールやマナーを守ったうえでの離職は逆に考慮に入れてもよいでしょう。一度の就職で適職に出会うということはなかなかありません。ですので、一般枠での就職がだめだったら障害者枠、障害者枠で納得がいかなかったら一般枠など、自分の適応の状態や職場の雰囲気なども踏まえてそういう柔軟な考え方をする方が、自分に合う職業にめぐり合いやすいのではないでしょうか。

(当然、短期間で安易な離転職を繰り返すことは、就活時に履歴が荒れているという印象を与えかねないため、一つ一つの転職活動は慎重に行うことが望ましいです)

発達障害を持つ人の就活のまとめ

発達障害がある場合、就活する上でどうしても困るポイントがあります。それは自分のことがうまく伝えられない、コミュニケーションをとるのが苦手、空気が読めない、計画的な行動が苦手など発達障害の種類によっても変わってきます。

 

発達障害を持つ人の就職活動で、まずすべきことはこのような苦手なことを含めた自己理解です。本来自己理解とは自分の性格などの長所や短所、得意や苦手などを理解していることです。発達障害がある場合、その特性を理解し、そのうえで自分に合った仕事はなんなのかをといったことまで考える必要があります。同じような障害を持った人の体験談から学んだり、自分の特性について専門家の意見を聞くことも就活に役に立ちます。自分の特性や適性を把握し、柔軟な働き方を検討することも自分の適職を探す一つの方法と言えます。

 

これらのノウハウが発達障害を持つ人の就活に少しでも役立つことを願っています。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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