障害者雇用における配慮事項の書き方、伝え方のコツ
更新日:2024年06月17日
弊社は障害者雇用に関するさまざまなサポートを行っていますので、障害のある方から会社に対する不満を直接お聞きする機会も多いのですが、その中でもよく聞く不満の一つが、「障害に対して、会社側の配慮がない」という不満。障害に対する配慮は、障害のある方が会社で長く勤めていく上で重要な要素だと思います。ではご自身が「どんな障害で、どんな配慮が必要か」を、きちんと会社に理解してもらうにはどんな工夫が必要でしょうか。ここではそのヒントをお伝えしたいと思います。
目次
障害者雇用における合理的配慮とは
障害に対する配慮を伝えること
障害に対する配慮を伝えることは、障害者が会社で長く勤めていく上で重要な要素だと思います。
ここに興味深いレポートがあります。
障害者総合研究所が障害者雇用で入社した方に行った「現職または前職での、障害への理解や配慮についての満足度」というアンケートでは、54%の方が「あまり満足していない」「全く満足していない」という結果がでました。半数以上の方が不満と回答しているのです。
「現職または前職での、障害への理解や配慮についての満足度」に関してのアンケート結果こうした不満を持たれている方の中には、
・「入社前に採用担当にきちんと伝えたのに、入社後にその配慮がなかった。」
・「現場のスタッフには伝わってなかった。」
・「最初は良かったけど、だんだん障害に対して配慮がなくなっていった。」
という声も聞きます。こういった不満については、「合理的配慮」という観点から企業側の改善が必要な場合も多いと思います。
一方で、「入社前にきちんと障害の事、必要な配慮を伝えられなかった」という方も少なくないようです。
障害者総合研究所が障害者雇用で入社した方を対象に実施した「現職または前職では、入社前までに障害や必要な配慮について、企業へ伝えられましたか?」というアンケートの結果では、障害者全体では74%の方が「十分伝えられた」「まあまあ伝えられた」と回答していますが、精神障害の方に限定すると62%まで数値が落ちます。
精神障害の方は、約4割の方が入社前の段階で「自身の障害や配慮について十分に伝えられていない」ことになります。
「面接時に聞かれなかったけど、あまり時間もなかったし、採用担当者は採用のプロだから概ね理解できているだろう」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、企業の採用担当者は皆が皆、障害者雇用のスペシャリストなわけではありません。障害に対して詳しい方もいますが、もちろん詳しくない方、勉強中の方もいます。
ましてや障害の症状や必要な配慮は、一人ひとり異なります。ご自身でしっかりと障害について伝えなければ、会社側も「合理的配慮」を求められても一体何をしたらいいのか?
その人にとってのベストな配慮がわからないことがほとんどです。ご自身が「どんな障害で、どんな配慮が必要か」を、事前にきちんと時間をかけて整理をして、きちんと言葉で伝える準備をしておくことが大切です。
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「自分一人で企業に必要な配慮を伝えられるか不安・・」
そんなあなたは、障害者専門の転職エージェントに一度相談してみることをおすすめします。
配慮事項の書き方、伝え方のポイント
ポイント①「伝える」から「伝わる」へ
単に自身の障害や必要な配慮を伝えるだけでなく、相手が理解できるように情報を伝えることが重要です。
例)「私は光過敏症があり、強い光が頭痛を引き起こします。したがって、照明を調整できる場所で会うことができれば助かります。」
例)「私は自閉症スペクトラムに属しており、大きな音や人々の多い場所では過敏に反応してしまいます。ですので、静かな場所でのミーティングを希望します。」
ポイント②具体的に自身の必要な配慮を明示する
自分がどのような配慮が必要なのか具体的に伝えることで、相手がどのように対応すれば良いのかを明示します。
例)「私は車椅子を使用しています。そのため、エレベーターやスロープのある場所での会議を希望します。」
例)「私は糖尿病のため、定期的に血糖値を管理する必要があります。会議中でも短い休憩を取ることができれば助かります。」
ポイント③自分が理解しやすいコミュニケーション方法を示す
自分がどのようなコミュニケーション方法を好むのか、または理解しやすいのかを伝えます。
例)「私は視覚障害があるため、文章や図表の情報は音声で説明していただくと理解しやすいです。」
例)「私はADHDで、長い話を聞くのが苦手です。ポイントを箇条書きにしていただくと、情報を把握しやすいです。」
ポイント④自分がどのように発信しやすいかを示す
自分がどのようにコミュニケーションを発信するかを説明し、それに対する理解を求めます。
例)「私は言葉にするのが難しいため、筆談を用いてコミュニケーションを取ることが多いです。」
例)「私は表情やボディランゲージをうまく使えないため、直接的な口頭表現を多用します。その点を理解していただけると助かります。」
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事例別 合理的配慮の伝え方の例
例1:書類上での伝え方
書類、特に応募書類において配慮事項を伝える際の注意点と例を紹介します。
・障害の特性
障害の性質を客観的に説明します。具体的な症状や障害がどのように作業能力や対人関係に影響を及ぼすかを明記します。この際、専門用語だけでなく、一般的な言葉でも説明します。
・自分の工夫
障害を管理するために自分自身がどのような工夫をしているかを具体的に書きます。これにより、自己管理能力や問題解決能力をアピールすることができます。
・企業に求める配慮
具体的な配慮事項を明記します。可能ならばその配慮がどのように自身の働き方に影響するかも説明します。
例)「私はADHDを持っており、集中力が短時間しか続かない特性があります。そのため、タスクを細分化し、一つ一つに取り組む工夫をしています。また、定期的な休憩を取ることで効率的に仕事ができます。その点を考慮していただき、柔軟な休憩制度を提供いただけると助かります。」
例2:時短・時差通勤
時短勤務や時差通勤を希望する際の伝え方について見ていきましょう。
・障害の特性と、その特性がなぜ時短勤務や時差通勤につながるのかを説明します。
・具体的な勤務時間帯や勤務日数などを提案し、その理由も説明します。
・あなたが企業の業務にどのように貢献できるか、時短勤務や時差通勤でも成果を出せる自信があることを伝えます。
例)「私の自己調整力の特性上、早朝に一日のタスクをこなすことが最も効率的です。そのため、早朝の出勤と早めの退勤を希望しています。このスケジュールにより、私は一日のタスクを効率良く処理することができます。また、通常の業務時間外であっても、緊急の連絡にはメール等で対応できます。」
例3:電話応対の免除
電話応対を避けたい場合の伝え方について詳しく説明します。
・自身の障害が電話応対にどのような困難を生じさせるかを説明します。
・代替案を提案し、その代替案が業務遂行にどのように貢献するかを説明します。
例)「私は聴覚障害を持っているため、電話応対には困難を感じます。しかし、メールやチャット等の書き込み型のコミュニケーションには慣れています。そちらを主要なコミュニケーション手段とすることで、情報の取り違えを防ぎ、より確実に業務を遂行できると考えています。」
例4:通院
通院により、遅刻や早退、休みが必要な際の伝え方について解説します。
・あなたの病状とその管理法を説明し、その中で通院の頻度や時間帯を伝えます。
・その通院スケジュールがあなたの業務にどのように影響するかを詳述します。
・業務への影響を最小限にするための提案や調整案を示します。
例)「私は週に一度の通院が必要で、その時間帯は午前中です。そのため、毎週水曜日の午前中は出勤が遅くなります。しかし、遅刻による業務の遅延が生じないように、事前にタスクを整理し、必要な場合は他のメンバーに分担をお願いするなど、柔軟に対応します。」
「伝える」から「伝わる」にするためには、ご自身の障害について幅広く知識を取り入れ、その障害について知らない人にも分かりやすく伝えられるだけの説明力を持つことが必要です。
最初は難しいかもしれませんが、「伝える」を「伝わる」というコミュニケーションに変えることで、よりご自身の障害を理解し、配慮してくれる会社に出会える可能性もあがるでしょう。
「それは分かるけど、自分で整理して言葉で伝えるのが難しい。。。」
そんな方は就職・転職のプロにサポートしてもらうのも選択肢の一つです。
今は障害者専門の人材紹介会社も複数あります。障害者雇用での就職・転職活動をトータルでサポートしてくれますので、あなたが会社に伝えたいこと、伝え方を一緒に整理してくれるかと思います。
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atGPとは、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する各種障害者就職および転職支援サービスの総合ブランドです。
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視覚障害を抱える人が生活や就労に関する困りごとを抱えている場合には、atGPに相談することを念頭に置いておくことをおすすめします。