聴覚障害の人が仕事に就く時に気をつけるべき5つの事
更新日:2021年11月04日
聴覚障害者が仕事に就くのは何かと大変です。聞こえにくさについてもその大変さは違います。手話通訳者が必要であったり、同僚に手話を覚えてもらう、時には手話以外でのコミュニケーションを取る必要もあります。そのように、自分自身で障害を対処する方法を身に着けなければなりません。そういった聴覚障害者の仕事に就く上で気をつけることを5つに分けて解説します。
目次
聴覚障害の人が仕事に就く上で考慮すべき事項
聴覚障害者が働くうえで考慮すべき事項について5つに分けて解説します。
聴覚障害者が仕事をしていく上でとても大切なことです。この準備が不十分な場合、企業側も効果的な配慮ができず、聴覚障害者が仕事をすることが困難になります。
働き始めてから困らないように就職・転職前にしっかり準備していきましょう。
【1】自分の聞こえにくさについて説明出来るようになる
一口に聴覚障害といっても様々です。
全く聞こえない人もいれば、聞こえにくいけれど少しは聞こえる人、補聴器があれば私生活や仕事に支障がないくらい聞こえる人もいます。
手話を使う人もいれば、補聴器を使って聞いて話す人もいます。
一般的に、聴覚に障害の無い人は聴覚障害について全くと言っていいほど知りません。場合によってはその人なりの聴覚障害者のイメージに偏っている可能性もあります。
そこで食い違いがあるまま過ごしてしまうとだんだんコミュニケーションが取れなくなる恐れが出てきます。
誤解を恐れずに言えば、聞こえにくさを説明することは当の本人の責任だったりします。また、一度言えばすべてわかってもらえると思ったらそれも大きな誤解です。
「人間は忘れる動物」ということをよく認識して、あきらめず、根気よく時間をかけてでも自分の聞こえなさ、聞こえにくさについて発信していくことが大事になってきます。
これは快適な就業環境を手に入れ、長く安定して働くための一歩目となります。
自分の聞こえにくさを伝える為には、聞こえる人にどうやって聴覚障害について伝えれば理解してくれるのか、自分なりの説明の仕方を考え、研究し身につけましょう。
自分の障害について伝えるプロになるのです。
【2】コミュニケーション方法を複数使いこなせるようにする
補聴器の人は補聴器に頼りがち、手話の人は手話に偏りがちですが、仕事をするに際しては、一つのコミュニケーション手段に偏っては仕事がやり難くなる場合があります。
一つのコミュニケーション手段にこだわらずその時その場で最適な手段を選んで使いこなせるようになりましょう。
補聴器や人工内耳がいつでも有効に機能するとは限りません。急に故障してしまうといったことが起こらないとも限りません。また、騒がしい場所では手話や筆談のほうが有効な場合もあります。
手話も手話通訳者がすぐに準備できないといった事態も想定されます。手話通訳者がいない・相手が手話を理解出来ない、また薄暗い場所だったりすれば手話は使えません。そうしたときはパソコンやスマホ、タブレットPCなどを使用することで対話がはかどる可能性もあります。
聞こえる人とのやり取りでさえ考えなければいけないことがたくさんあるのに、聞こえの程度が違う聴覚障害者同士の会話であればなおさら複雑になります。
色々な手段を使いこなせるようになっておき、例えイレギュラーな出来事が起きても、どんな場面でもコミュニケーション不全が起きないよう備えを万全にしておきましょう。
【3】快適な就業環境を自ら作る
聴覚障害は一人一人特性が違うと書きましたが、それは仕事をする上でも影響してきます。
ですので、聴覚障害者は自分の特性に合わせて会社側に様々な配慮をしてもらう必要が出てきます。
例えば耳で聞くことにまだ頼れる場合は、座席などを工夫させて貰って少しでも自分が聞き取りやすい環境を整えましょう。
雑音がなければ問題なく聞き取ることが出来るけれど雑音があると途端に聞こえにくくなる方は、なるべく反響音などが少ない環境を用意してもらうように会社側に配慮してもらいましょう。
聞き取ることがどんな状況でも困難、または全く聞こえない(手話の出来る人も周りにいない)場合は、色々な情報を視覚化(文字化)してもらって視覚から物事を判断出来るようにしてもらいましょう。(ホワイトボード、掲示板、ポスターや注意書きなどを使用してもらう。)
【4】聞こえに伴う体調を理解してもらう
天候によって体調が悪くなる方などもいますよね。
例えば気圧の変化により耳鳴りやめまいが生じる人などがそうです。
天候によって、気圧の変化によって体調が悪くなる方は、そうした症状が現れ、兆候を感じた場合は速やかに上司に伝え休憩や休暇をとれるようにしておきましょう。
「自分は天候や気圧の変化によって体調が悪くなります。そういった際にはお伝えするので休憩をいただければ助かります。」
といったことを事前に上司に伝えておきましょう。
また、手話や口話で会話を長時間読み取ることは思いのほか体力、気力(集中力)を要することです。
傍から見ると普通に問題なくコミュニケーションが取れている、耳の聞こえる方が会話をしているのと変わらない、と思っている方も少なくありません。
ですので、あらかじめ会社側にそのことを伝え、適宜休憩をとれるように準備をしておきましょう。
【5】緊急時の対応についてあらかじめ取り決めしておく
災害が起こる度にニュースなどでも取り上げられますが、聴覚障害者は避難警報などを耳で聞き取ることが困難な場合があるので、聴覚障害者は災害時にはとても危険な状況にさらされることになります。
またテレビの災害情報も音が聞こえない場合には、視覚からの情報もあるといっても音声による情報が多くを占めるのであまり役に立ちません。また、仕事中にテレビを見ることが出来るような職場はほぼありません。
そこで、聴覚障害者は災害時には視覚的に情報を知らせてもらうことが出来るような準備を会社側にしてもらえるようにしておきましょう。
人によっては聴覚障害者が災害時に避難することが困難だということを知らない方もいるので、そういった情報は事前に会社側に伝えて配慮をしてもらう必要があります。
会社によっては避難訓練がある場合もあります。
避難訓練などの機会を利用して逃げる際は、肩を叩いて教えてもらうなど、避難時の段取りを決めておくようにしてもらいましょう。
他にも災害時の対策準備として緊急連絡先を会社に伝え、有事の際に家族と連絡が取りあえるようにしてもらうことが大切です。
伝え方に自信がないときは
聴覚障害のある方が仕事をする際には、障害に対して必要とする配慮をはっきりとさせることが重要です。
配慮の伝え方に自信がない……そんなときに利用できるのが、聴覚障害のある方にあった就労移行支援事業所です。
事務などのスキルを磨きながら、コミュニケーションや聞こえの程度を人に伝える等、聴覚障害に特化したトレーニングをすることで、転職に向けて自信をつけることができます。
しごとLABOを運営するatGPの就労移行支援事業所「atGPジョブトレ 聴覚障害コース」では、聴覚障害の方に特化した就労移行支援サービスを提供しています。
聴覚障害の人が仕事に就く時に気をつけるべき5つのこと まとめ
ここまで聴覚障害の人が仕事に就く時に気をつけるべき事項を5つに分けて説明してきました。
ポイントを整理すると以下になります。
>>自分の聞こえにくさについて説明出来るようになる
「人間は忘れる動物」ということをよく認識して、あきらめず、根気よく時間をかけてでも自分の聞こえなさ、聞こえにくさについて発信していくことが大事
>>コミュニケーション方法を複数使いこなせるようになる
一つのコミュニケーション手段にこだわらずその時その場で最適な手段を選んで使いこなせるようになりましょう。(タブレット、スマホ、PCなども利用する。)
>>快適な就業環境を自ら作る
座席の配置を工夫してもらう、雑音の少ない場所に配置してもらう、ホワイトボード、掲示板、ポスターや注意書きなどを使用してもらう、など自分の障害の特性に合った環境を準備してもらいましょう。
>>聞こえに伴う体調を理解してもらう
天候によって、気圧の変化によって体調が悪くなる方は、そうした症状が現れ、兆候を感じた場合は速やかに上司に伝え休憩や休暇をとれるようにしておきましょう。
>>緊急時の対応についてあらかじめ取り決めしておく
聴覚障害者は災害時には視覚的に情報を知らせてもらうことが出来るような準備を会社側にしてもらう、避難時の段取りを決めておく、有事の際の連絡先を会社側に伝えておくなどしておきましょう。