精神障害者の方も雇用義務対象に!障害者の就職・転職市場について知ろう
更新日:2023年11月13日
2018年4月、障害者雇用促進法の改正により①法定雇用率の引き上げ②雇用義務対象に精神障害者を追加が行われました。精神障害者が正式に雇用義務対象になったことは、障害者雇用の歴史の中でも特筆すべき出来事です。本記事では障害者の就職・転職市場の動向を説明するとともに、法律の改正によって起こる変化について解説します。
目次
データから見る障害者の就職・転職市場の動向
民間企業における2017年度の雇用障害者数は約50万人(49万5,795.0人)で、14年連続で増加しています。
その内訳は以下の通りであり、3つのカテゴリに分類することが可能です。
・身体障害者は 333,454.0人(対前年比1.8%増)、約33万人が雇用
・知的障害者 は112,293.5人(同7.2%増)、約11万人が雇用
・精神障害者は50,047.5人(同19.1%増)約5万人が雇用
身体障害者の割合が圧倒的に多いですが、これは障害者雇用促進法が当初は身体障害者のみを雇用率の対象にしていた歴史が関係しています。
身体障害者が対象となったのは1976年からと、知的障害者の1998年や精神障害者の2018年に比べ圧倒的に長い歴史を持っているのです。
ただし、伸び率でみると身体障害者が1.8%増、知的障害者が7.2%増、精神障害者が19.1%と精神障害者の伸び率が圧倒的に高くなっています。このままの増加率で推移すれば、3障害間の差はなくなっていく可能性が高いです。
精神障害者の伸び率が高いのは、①精神障害者雇用義務化を前に企業が雇用を進めている②ADHD(注意欠陥・多動性障害)、SLD(限局性学習症(学習障害))をはじめとした発達障害の診断を受ける方が増加しているのが主な原因として挙げられます。
ストレスでうつ病を患い退職した方が、精神障害者として社会復帰し再就職するパターンも多いです。
ただし、精神障害者として雇用支援を受けるには精神障害者保健福祉手帳の申請が必要なので注意が必要となります。
手帳の取得には手続きと半年ほどの期間がかかるので事前の行動が必須です。
障害者の民間企業への雇用人数は年々増加しており、就職・転職市場が活発化しているのがデータから読み取れます。
労働人口の減少や、だれもが安心して暮らせる共生社会の実現を目指す政府の方針もあり、この傾向は今後も継続して続くと予想されます。
障害者を対象とした就職エージェントや就職イベントなど、サービスも拡大傾向です。
障害者雇用にまつわるメリット・デメリットをはじめ、最低限知っておきたい基礎知識をご紹介する資料がダウンロードできます。
この資料でわかること
・障害者雇用とは?
・障害者を雇用するメリット
・障害者を雇用しないデメリット
・障害者雇用が進まない企業が抱える課題
・課題を解消するポイント
・押さえておくべき障害者雇用の法律・制度
障害者雇用促進法改正によって起こる変化
平成28年4月より、改正障害者雇用促進法が施行されました。
法律の改正で、障害者の雇用状況はどのように変化するのでしょうか。
順を追って見ていきましょう。
大きな変化の一つとして、一定規模以上の企業が雇用すべき障害者の法定雇用率が引き上げられます。
民間企業が2.0%から2.2%へ、国や地方公共団体が2.3%から2.5%へ、都道府県などの教育委員会は2.2%から2.4%へ増加しました。
障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲も、これまでの従業員50人以上から45.5人以上と拡大されました。
これにより障害者の雇用需要が増し、就職・転職市場がさらなる活況を見せていくことが予想されます。
2021年3月までにはさらに0.1%(例えば民間企業であれば法定雇用率が2.2%から2.3%に)引き上げられることが決定されており、法定雇用率の引き上げは今後も断続的に行われる可能性が高いです。
もう一つの変化は、雇用者義務の対象に新たに精神障害者が加えられたことです。
今後、企業は身体障害者・知的障害者・精神障害者の3つのカテゴリから雇用する障害者を選ぶことになります。
法定雇用率の引き上げにより新たに障害者雇用が必要な企業にとって、選択肢が増えることは大きなメリットです。
精神障害者の雇用は以前から行われていましたが、義務化されることによって就職率はさらに増加することが見込まれます。
近年認知されてきた発達障害の方も、障害者枠での就職を目指す場合は追い風です。
これまで発達障害は診断される人間が少なく、多くの方は一般企業で生きづらさを感じながら働いてきましたが、今後は自分の特性や能力にあった企業を選択しやすくなります。
高い集中力や豊かな想像力など、一部の仕事で高いパフォーマンスを発揮する発達障害者もいると言われており、企業も獲得に動いています。
今後の障害者雇用の課題
法律改正により改善されつつあると言え、障害者の就職率は高いと言えません。
日本の障害者の数は約860万人、18~65未満の就労人口は全体で350万人となっています。
日本全国で約50万人の障害者が民間企業に雇用されていますが、全体の就労人口の7分の1程度にすぎないのです。
日本全体の労働力人口は7600万人、その内就業者数が6530万人であることを考えるとまだまだ低い数字です。
多くの障害者が、働きたいと思ってもなかなか職に就けないのが現状です。
企業側に障害者雇用の促進を求めようにも、なかなか難しい一面もあります。
障害者を新たに雇用するとなった場合、施設や設備を改修したり新たにマニュアルを作成したりと様々な負担がかかるのです。
大企業ならともかく、人員に余裕のない中小企業では実行し難いと判断され雇用を行わない所が数多くあります。
政府は障害者を雇用した企業に助成金を援助、ハローワークから行政層を行う、悪質な企業に対しては企業名を公表するなどの措置をとっていますが、障害者の社会参加にはまだまだ時間がかかると予想されています。
このような状況を打破するには、政府が助成金の援助など間接的な支援をするだけでなく、中小企業でも障害者を雇用できる仕組みを作るなど直接的な支援を行うことが必要です。
雇用対象の障害種別が増えたこと、法定雇用率の引き上げにより障害者雇用数はこれからもっと多くなると思われます。
副業の解禁も始まり、様々な人々が多種多様な形態で生活できる社会の基盤が整いつつあります。
この流れを維持し、どんな人間でも自分らしく生きられる社会を築くのが企業や行政に求められた課題です。
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障害者雇用については、「障害者雇用促進法」という法律で義務付けられていますが、障害者雇用促進法には、他にも障害者差別の禁止や合理的配慮の提供の義務などが定められています。
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