【障害者雇用】オープン・クローズ就労のメリットやデメリットとは
更新日:2023年03月31日
障がいのある方が就職活動を進める上で一度は突き当たる課題、「障害者採用枠で働くか、それとも一般採用で働くか」というものがあると思います。今回はそれぞれの働き方のメリット、デメリットについてまとめてみました。今後の就職活動の参考になれば幸いです。
目次
障害者雇用におけるオープン・クローズ就労とは
求職中のみなさん、この様なお悩みはありませんか?
「障がいのことを伝えると、職場で浮いてしまわないか・・・」
「障害者採用だと安定した収入と雇用を確保できるか・・・」
「障害者採用ではやりがいを持てる仕事を任せてもらえるのか・・・」
一方で、障がいのことを伝えないと体力的に働き続けられるか不安・・・という方も少なくないのではないでしょうか?
ハローワークを通じた精神障がい者の新規就職件数は年々増加し、2016年4月からは障害者差別禁止法も施行され、障がいがあることを職場へ伝えやすい時代となりつつありますが、まだまだためらう方もいらっしゃいます。
将来のキャリアや、周囲からの評価などが気になり、「本当に伝えて良いのか」と思い悩むケースが大半です。今回は、求職中でオープンかクローズかに悩む方にとって、働き方を検討する材料になればと思いこのテーマを取り上げました。
「自分一人で就職活動するのが不安、、」
そんな方は、どのように障害を企業に伝えればいいかなど、障害者専門の転職エージェントに一度相談してみることをおすすめします。
まずは改めて、オープン・クローズとは何かについて説明します。
【オープン・クローズとは】
身体や精神に障がいがあることを職場へ伝えることを「オープン」、伝えないことを「クローズ」と言われています。
ではそれぞれどの様なメリット・デメリットがあるのでしょうか。
【オープン・クローズのメリット・デメリット】
オープンのメリット
ご自身の体調や障がい状況に対し必要な配慮を頂けることです。
うつ症状のある方と、発達障がいのある方の2つの例を挙げたいと思います。
例えばうつの症状のある方への配慮の場合、残業を避けることや、体調に合わせて勤務時間を短くすること、体調管理に影響を与える業務を避ける(例えば、電話や来客対応、難しいかけ引きや交渉が発生しやすい業務を避けるなど)ための職場配属、体調に変化があった場合に周囲から気付きをうながすなどのフォロー、定期面談の実施、通院のためのお休み等の配慮を頂けるため、長期的に無理をせずに就業できる環境が整いやすくなります。
聴覚過敏があって聞き取りを苦手としている発達障がいのある方の例では、 一般採用であれば自分で工夫をして対応する必要が生じますが、(メモが取れるように練習する、そもそも電話対応のない仕事を選ぶなど)オープンであれば電話対応を自分の担当業務から外してもらうことができるかもしれません。
感覚過敏で締め付けられる感覚が苦手な発達障がいの方の場合、ネクタイを締めるのが苦痛だったり、スーツや制服の着用が苦痛になることもありますよね。一般採用であればそうした点を解消するためにオフィスカジュアルで問題のない業界を選択したり、私服勤務の会社を選ぶなど就職先のリサーチが必要になってきます。障害者採用であればネクタイの着用の免除や、私服着用の許可といった配慮が得られるかもしれません。
過集中することで人一倍疲労を感じやすい発達障がいの方の場合、一般採用の場合はアラームを使って自己管理するなどの工夫をする必要があります。 障害者採用であれば定期的な休憩をとることの理解や残業しないよう周囲が声掛けをしてくれるなど配慮を得やすいでしょう。
身体障がい(内部障がいや免疫障がいなど目で見て判断しづらい障がい)においても同じです。フルタイムで働けるだけの十分な気力、体力があったとしても休職期間があったりした場合は当面のラッシュアワー時の通勤を避けたり、残業はできるだけしないほうがよいこともあるでしょう。また定期通院が必要であったり、食事のとり方で周囲の理解が必要なこともあるかもしれません。そうした場合、障害者採用であれば就労上の配慮事項として検討いただけるでしょうし、一般採用の場合には仕事に影響がないことを踏まえたうえで就職する必要があるでしょう。
「オープン」では自分の特性をオープンにすることによって働きやすい就業環境を手にする可能性が高くなります。
障害をオープンにして就職・転職を考えているなら、障害者専門の転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。
自分の特性を見つめなおしたとき、自己管理できること、配慮を得たほうが良いことを総合的に判断したうえでオープンかクローズかを決めるというのも大事になるでしょう。
オープンのデメリット
障害者採用の求人では一般採用の求人と比較すると職種の選択肢が狭くなり、求人件数が減る場合が多いです。オープンにして就労をする場合に、多くの方が障害者採用の求人を選択します。
職種の選択肢が狭くなるというのは、障がい者採用の求人は一般事務が多く、営業職や開発職等の求人件数が少ないためです 。
クローズのメリット
一般採用の求人も加わるため、求人数も多く職種の選択肢がひろがります。
クローズのデメリット
必要な配慮を頂けないため職場への定着に不安が残ります。通院の為のお休みも申請しづらいため、通院頻度を減らしてしまったり、通院ができなくなってしまったという経験談も聞きます。また、服薬も周囲に気付かれないようにと気を遣います。
転職直後は慣れない環境への順応に加え、仕事内容、人間関係などすべてが新しくなるため、誰でもストレスが掛かるものですが、そこへ病気を隠しているという大きなストレスも加わり、体調を悪化させてしまうケースもある様です。
また、一般採用において自分の障がいを会社に伝えないことに不安を感じることもあるかもしれません。職場の人に障がいのあることを隠し続けること自体が心身のストレスにもつながりかねません。
内定が出た後、多くの企業では入社時健康診断がありますが、自分の障がいが企業にわかってしまうのではないかという心配を抱く方もいるかもしれません。
とはいえ、企業も社員(これから入社する人)も安全配慮義務を果たすために社員の健康状態を把握しておかなければならないという事情もあります。
会社所定の病院で健康診断を受けるにせよ、事前に健康診断を提出するにせよ、「かかりつけ医に定期的にかかりフォローアップができている」といったことを産業医、問診医に伝えるなど仕事はしっかりできることをアピールする必要があります。
メリット・デメリットを整理すると、オープンは「就職の機会はクローズと比較すると減るが長く働くためには有効」、クローズは「就職の機会は増えるが長く働くためには不安が残る」となります。しかし、多くの方は「就職」と「長く働く」ことの両方を実現したいと考えるものです。両方を実現するための手段はないのでしょうか。
オープンとクローズ、自分にとってはどっちが良い?
オープンかクローズかの判断をする前に考えて欲しいことが、「今、自分は長く安定して働き続けられる状態か?」ということです。
精神症状のある方はどんな時に体調悪化の傾向が出ますか?そして、悪化傾向を止めるための対処法をお持ちですか?また、体調悪化しないような予防法を身に着けていますか?
発達障がいのある方はご自身の苦手なこと、得意なことを理解していますか?苦手なことはどうやってカバーしますか?また、それを人に伝える準備はできていますか?
見た目では判断できない内部障がいのある方は必要な配慮、ご自身のできること・できないことを伝える準備はできていますか?
まずは、ご自身の症状の理解を深め、長く働き続けるための課題と対策、予防法などをまとめてみることをお勧めします。
ご自身の症状の理解が不十分で、悪化の傾向や予防法もわからないまま入社してしまうと、オープン・クローズのどちらであっても体調を崩した時に周囲に負担を掛け、やりがいを持てる仕事を任せてもらえず待遇も不安定になってしまうリスクが高まります。
長く働き続けるための課題と対策と予防法がまとまれば、それを実現できる環境がオープン・クローズのどちらかを考えてみましょう。その際はぜひ長い人生を見すえて考えて頂ければと思います。オープン・クローズを一度選択したからと言って、次も同じ選択をしなければならない訳ではありません。
自分の障がいについてしっかり理解し、いい状態を維持することはもちろん、状態が悪化したときでも自分なりの対処法を身につけており、長期化させない術を身につけるなど、社会人として自立できているかどうかを見つめなおしてみることが重要です。これができていないと、どちらを選択するにせよ、長く働き続けることは難しくなります。
長く働き続けるための課題と対策と予防法がまとまれば、それを実現できる環境がオープン・クローズのどちらかを考えてみましょう。クローズを選んだからといって将来的にもクローズで働き続ける必要はありません。その時その時の自身の体調と照らし合わせて選択をすればよいのです。