障害者雇用の除外率とは?計算方法と今後の動向を解説します
更新日:2023年12月20日
障害者雇用の除外率が令和7年4月に引き下げられます。一方で法定雇用率は今後も段階的に引き上げられることから、民間企業はさらに障害雇用に取り組む必要があります。本記事では除外率の引き下げの概要と、障害雇用の今後の動向などについて解説します。
目次
障害者雇用の除外率とは
障害者雇用促進法では、事業主に対して従業員のうち一定割合の障害者を雇用することを義務づけています。この割合を「法定雇用率」といい、令和5年度の民間企業の法定雇用率は2.3%です。したがって、43.5人以上の従業員を雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。
しかし、中には障害者の雇用を進めるのが難しい業種もあります。障害のある方が働くのが一般的に難しいと認められる業種については、雇用する従業員の数を計算する際に従業員数を控除できる制度(障害者雇用の義務を軽減する制度)があります。これを障害者雇用の除外率といいます。
具体的には建設業や運送業、医療業、林業などの業種に除外率が適用されています。
除外率制度の現状と今後について
障害者雇用の除外率については、法律が改正されて平成16年4月に廃止されています。しかし、経過措置として、当分の間は除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げるとされています。
平成16年4月と平成22年7月にそれぞれ10%引き下げられており、令和7年4月もそれぞれ10%引き下げられます。(現在、除外率が10%以下の業種は除外率制度の対象外となります)
●令和7年4月1日からの障害者雇用除外率
参考:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
障害者雇用における除外率の計算方法
除外率は、雇用する従業員の数を計算する際に従業員数を控除できる制度です。令和5年の民間企業の法定雇用率は2.3%なので、従業員を1,000人雇用している企業は、23人以上の障害者を雇用する義務があります。
除外率がある場合は、
従業員数×(100%-除外率)×法定雇用率
という計算式になります。
例えば、除外率20%の設定業種に含まれる企業の場合、雇用しなければならない障害者の計算方法は次の通りです。
1,000人×(100%-20%)×2.3%=18.4人
となり、雇用義務数は18人となります。
障害者雇用市場の状況と必要な対応について
これまで解説してきた通り、令和7年4月に障害者雇用の除外率が引き下げられますが、一方で法定雇用率は引き上げられるため、民間企業はさらに障害者雇用に取り組む必要があります。
障害者法定雇用率も引き上げ予定
令和5年度の民間の法定雇用率は2.3%で、従業員43.5人の事業主が障害雇用の義務の対象の範囲です。今後、法定雇用率は令和6年4月に2.5%に、令和8年7月に2.7%と段階的に引き上げられます。
障害者雇用の状況
厚生労働省が公表した「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」によると、令和4年6月1日現在における民間企業に雇用されている障害者は、613,958.0人で雇用率は2.25でした。これは19年連続で過去最高です。
このうち身体障害者は357,767.5人(前年比0.4%減)、知的障害者は46,426.0人(前年比4.1%増)、精神障害者は109,764.5人(前年比11.9%増)で、知的障害者と精神障害者の雇用は前年から伸びていますが、身体障害者は微減となっています。
また、厚生労働省の「令和4年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめ」を見ると、障害種別の新規求職申込件数を平成24年度と令和4年度で比較すると、障害者全体の求職申込件数は増えていますが、身体障害者の求職申込件数は減少しています。一方で大きく増えているのが精神障害者の求職申込件数です。
平成30年4月より精神障害者が障害者雇用義務の対象に加えられたことや、精神障害の患者数が年々増えていることから考えると、今後もこの傾向は続くと予想されます。
障害者の算定方法が変更
また、令和6年4月以降は週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、雇用率上0.5カウントとして算定できるようになります。
このような状況から、今後ますます精神障害者の雇用は増えると考えられます。
参考:厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」
参考:厚生労働省「令和4年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめ」
障害者雇用を促進するためのポイント
企業が障害者雇用を促進するためのポイントについて紹介します。
障害者雇用の理解促進
障害者を雇用するのが初めてというケース、すでに身体障害者の従業員は在籍しているが、精神障害者を雇用するのが初めてというケースもあるでしょう。
まずは人事担当者が、 障害別の特徴や配慮すべき事項など、障害について理解しましょう。さらに職場への定着を図るには、人事担当者だけでなく他の従業員の理解や配慮も不可欠です。
そのために社内研修会や説明会を実施して、職場全体が障害者雇用に対する理解を深めることが重要です。
受入れ体制の整備
障害者が従業員として採用された後は、持てる能力を十分に発揮して、職場に定着できるように職場環境を整備することが求められます。どのように整備してよいかわからない時は、本人に実際の仕事を見てもらって意見を聞いてみる方法もあります。
採用前に職場実習を実施すると、職場の障害理解や障害のある方との関わり方、業務の切り出しについて見極める機会になります。
職務の選定
障害者が担当する業務については、障害の特性だけでなく本人のスキルや希望など、一人ひとりの状況に応じて決めることが重要です。障害の特性によって不向きな仕事もありますが、周囲の合理的配慮や職場環境の改善、支援機器の導入、適切な教育訓練などにより、障害があってもスムーズに業務遂行できるケースがあります。