障害者雇用において雇用する必要のある障害者の人数は?法定雇用率について解説
更新日:2023年09月28日
障害者の雇用に関する法律である障害者雇用促進法では、一定数以上の常用労働者が在籍する企業に一定割合の障害者を雇用することを義務づけています。 雇用義務を果たさない場合には、納付金の納付や行政指導、企業名公表などのペナルティが課せられます。この障害者を雇用しなければならない一定割合の率を法定雇用率といいます。 この記事では、法定雇用率と企業が雇用しなければならない障害者の人数の計算方法、障害者を雇用する際のポイントなどについて解説します。
目次
障害者雇用率制度について
障害者雇用率制度とは、従業員が一定数以上の事業主(民間企業や国、地方公共団体など)は、従業員に占める障害者(身体障害者・知的障害者・精神障害者)の割合を「法定雇用率」以上にする義務がある、という制度です。
障害者雇用率制度については、障害者雇用促進法の43条第1項に定められています。障害者雇用促進法は、「障害者の職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、持つて障害者の職業の安定を図ること」を目的とした法律です。
法定雇用率は1976年に義務化されて以来、これまで何度か引き上げられています。現在の法定雇用率は、2021年4月から下記のようになっています。
民間企業の場合、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を雇用する義務があり毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。
企業が雇用すべき人数の計算方法
それでは、実際に企業が雇用すべき障害者の人数はどのように計算したらよいのでしょうか。
障害者雇用率の計算方法
障害者雇用率は、次の式で計算されます。
障害者雇用率=(身体障害者+知的障害者+精神障害者)の常用労働者数+失業者数 常用労働者数+失業者数 |
民間企業が雇用すべき障害者の計算方法
法定雇用率を満たすために、障害者を何人雇用しなければならないのか計算する方法は次の通りです。
自社の法定雇用障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率(2.3%) |
上記の計算式で、常用労働者とは1年以上継続して雇用される人(見込みを含む)をいいます。そのうち、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合は短時間労働者として、1人を0.5人として計算します。所定労働時間が20時間未満の人は、障害者雇用率制度の計算では常用労働者に含まれません。
なお、2つの事業主に雇用されている労働者や昼間学生でも、週所定労働時間が20時間以上の場合には常時雇用する労働者にカウントされます。
厚生労働省が公表している「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者は18年連続で増加しています。一方で、法定雇用率達成の割合は47.0%で、未達成企業の57.7%にあたる約3万2千社は障害者を1人も雇用していませんでした。
障害者を雇用する上でのポイント
実際に障害者を雇用する場合、障害の無い人の採用と比べると注意すべき点があります。この章では障害者を雇用する際のポイントについて紹介します。
配属先と業務内容の検討
ミスマッチによる離職を防ぐためにも、障害者を採用する前に配属先と業務内容をしっかりと検討することが大切です。職場定着や入社後の活躍のためには、今ある業務から障害者に担当してもらう業務を切り出したり、新たに創り出すことが必要です。
一般的な採用と同様に、担当してもらう業務を決定した上で、その業務を遂行できるのはどのような人材かを、障害の特性や必要なスキル、提供ができる配慮などの観点から検討しましょう。
経営層から障害者雇用や障害について理解を深める
障害者雇用促進法には、雇用の分野での障害者に対する差別の禁止と合理的な配慮の提供が義務づけられています。障害者を雇用する際には、障害者雇用に関する法律や制度、障害の種類や特性などについてしっかりと理解しておく必要があります。
募集や採用、賃金、配置、昇進、教育訓練などに関して、
・障害者であることを理由に障害者を排除すること
・障害者に対してのみ不利な条件を設けること
・障害のない人を優先すること
これらは障害者であることを理由とした差別に該当するとして禁止されています。
雇用の分野での合理的な配慮としては
・募集および採用において、障害者と障害者でない人との均等な機会を確保する
・採用後、障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保。または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善する
などが示されています。
現場の理解を深め定着できる環境を作る
採用後、実際に合理的な配慮が必要とされるのは配属された現場です。部署の上司や同僚にも配慮の内容について理解してもらう必要があります。合理的配慮を考える上で大切なのは、障害者が必要とする配慮は障害者自身の障害の状況や職場環境によって異なるという点です。
そのためどのような配慮が必要かは、障害者と職場で関わる人がよくコミュニケーションを取って、お互いの理解を深める必要があります。
初めての障害者を雇用する企業で、どのように受け入れの準備を進めるか不安な場合には、ハローワークや地域障害者職業センターなどに相談するのがおすすめです。
障害者雇用を成功させるために
障害者雇用を成功させるために一番大切なことは、採用した障害者が定着して活躍できる環境を整えることです。そのポイントを紹介します。
面接に障害の状況や必要な配慮について確認する
障害者雇用では、採用予定者の障害に関する情報について把握しておくことが重要です。本人にどこまで聞いてよいか迷うかもしれませんが、情報がなければ合理的配慮をすることができません。企業としては適切な配慮を提供したいという意思を示して、次のような内容について確認しましょう。
・障害の状況や特性
・医療機関への通院頻度や服薬の状況
・職場でして欲しい配慮
また企業と障害者の双方が理解を深める方法として、職場体験実習も効果的です。実際に業務を体験してもらうことで、障害者雇用のノウハウを得ることができます。
定期的に面談を行って状態を把握する
職場への定着を図るには、定期的な面談が効果的です。面談のポイントは、企業や現場、障害者側のそれぞれの不安を理解して解消することです。面談では次のような点を確認すると良いでしょう。
・業務の内容や作業量は適切か
・配慮が必要な事項
・職場内の人間関係
・体調について
障害者の採用方法
障害者を採用する方法には次のようなものがあります。
ハローワークに求人を出す
国が運営する公共職業安定所(ハローワーク)は、障害者採用の手段としてもっとも一般的です。全国各地に設置されていて無料で利用することができます。ハローワークには障害者専用の窓口があります。また求人票にも障害者雇用に関する項目があるため、障害のある求職者も安心して利用できます。
求人情報サイトや自社サイトで募集
さまざまな企業の求人情報が掲載されていることから、就職や転職活動を行う人の多くが利用しているのが求人情報サイトです。求人情報サイトの中には障害者の採用に特化したものもあります。掲載料が発生しますが、たくさんの障害のある求職者に求人をアピールすることができます。
また、自社ホームページの採用ページに障害者の求人を掲載する方法もあります。掲載のコストはかかりませんが、人気企業や知名度が高い企業でなければ見てもらうことが難しいというデメリットがあります。
就労移行支援事業所や特別支援学校との提携
就労移行支援事業所は、障害者が一般企業に就職するための支援やサポートをする施設です。また特別支援学校は、心身に障害がある児童や生徒が通う学校です。これらと普段から連携して、就職希望者を紹介してもらうことも可能です。
障害者向け転職エージェントの活用
転職エージェントとは、民間が運営する人材紹介サービスです。転職エージェントにはさまざま種類があり、中には障害者採用に特化したものもあります。