特例子会社での障害者雇用はどのようにすればよいのか?
更新日:2023年03月08日
障害者雇用促進法に定められている特例子会社制度については、法定雇用率の対象となる事業主の方には周知の制度かと思います。この制度はある程度の事業規模がある会社であれば法定雇用率達成、さらにそれ以上の障害者を雇用することも不可能ではありません。しかし、特定子会社を設立しても必要な数の障害者を採用できなければ意味がありません。今回は特例子会社制度を設立した際、障害者雇用をどのように進めていけばよいのかを中心に詳しく述べていきます。これから特例子会社の設立をご検討の事業主の方のご参考になれば幸いです。
目次
特例子会社とは
親会社や関係会社の障害者雇用率を特例子会社で担うことができる
まず、特例子会社の概要について説明します。
特例子会社については障害者雇用促進法の第44条に「子会社に雇用される労働者に関する特例」として定められています。
通常、障害者雇用は親会社や関連会社があってもそれぞれの会社で行っていく必要がありますが、この制度の特徴は、特例子会社で雇用した障害者が親会社やグループ会社全体の雇用率として算定できることにあります。つまり、特例子会社を障害者雇用に特化させ、親会社やグループ会社では障害者を雇用しないということも可能になります。
本当の意味での共生社会という観点からは課題も残りますが、労働したい障害者、障害者の社会参加を推進したい国、法定雇用率を達成したい事業主のすべてにとってメリットがある制度といえるでしょう。
特例子会社の要件
1. 親会社が子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること
2. 親会社から子会社への役員派遣、従業員の出向など、人的交流が密であること
3. 子会社は株式会社であること
4. 子会社に雇用する障害者が5人以上で、かつ全従業員の20%以上を占めること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の合計数割合が30%以上であること
5. 障害者の雇用管理を適正に行うに足る能力を有していること(障害者のための施設改善ができる、障害者職業生活相談員の配置など)
6. その他、障害者雇用の促進および雇用の安定が確実に達成されると認められること
特例子会社による障害者雇用のメリット
設備投資や業務・コストを集中させ効率化を図ることができる
まず特例子会社の大きなメリットとしては、会社自体を障害者雇用に特化して設立できることです。親会社やグループ会社に障害者雇用の実績がない、または少ない場合、そこに新たに障害者を雇用するためにバリアフリー化などの設備投資や業務の切り出し、従業員の障害者雇用への理解を高めるなどは、コストはもちろんのこと、準備や体制の構築などにも時間がかかり非常に効率が悪くなる可能性があります。
しかし、特例子会社を設立することによって、障害者雇用の問題に設立段階から取り組むことができ、効率化を図ることができます。
多様な障害者に合わせた雇用管理や職場環境の構築が可能
障害者雇用を最初から視野に入れた特例子会社なら様々な障害を持つ障害者雇用に対応できます。そもそも、特例子会社では、上述したその要件にもあるとおり、雇用すべき障害者数や種別割合が決められているため、これらに対応した雇用管理や職場環境の構築が必要となってきます。それぞれの障害に応じた勤務シフトや個別性に配慮し、働きやすくするためのマニュアルやツールなども初期段階で導入することも可能です。
職場定着率や生産性の向上
このように設立段階で障害者雇用に対応した特例子会社では、障害者への配慮が通常の事業所よりも行き届いているため、必然的に職場定着率があがり、定着率が上がることで仕事に慣れた障害者が増えるために生産率も向上するというメリットがあります。
障害がない人に比べて、障害者の職場定着率が低いことは障害者雇用における大きな課題です。事業所にとっても定着してもらうことによるメリットは大きく、特例子会社はその面でも障害者雇用の体制が整わない既存の事業所よりも有利といえます。
障害者雇用のノウハウを蓄積、活用できる
障害者雇用に特化し、多くの障害者を雇用する特例子会社は、グループ内において障害者雇用を推進する際に蓄積したノウハウを共有し、活用することができます。グループ全体の規模を拡大する時も障害者雇用は継続しなければなりませんので、特例子会社での障害者雇用はそういう面でもメリットがあります。
特例子会社はどんな企業に向いているか
社員数が多い企業
2022年4月現在の法定雇用率は2.3%ですから、法定雇用率達成の義務がある43.5人以上雇用する事業所だと1人の障害者を雇用すればよいことになります。しかし特例子会社では5人以上の障害者を雇用する必要がありますし、大規模な企業であれば雇用すべき障害者数も多くなります。特例子会社を設立するにはそれなりの資金や準備が必要となるため、少数の障害者を雇用するためであれば、逆に特例子会社を設立するメリットは少ないといえるでしょう。
現状では障害者雇用が難しい企業
現状で親会社やグループ内で雇用率が達成できていない場合は、特例子会社の設立を検討してみる必要があります。例えば、障害者に対して切り出す業務が見つからない、多様な障害種別に合わせたバリアフリー化が難しい、定着率が悪い、社内での理解が難しいなどの課題がある場合は、むしろ障害社員の個々のニーズに合わせて体制を構築できる特例子会社を設立する方がうまく行く可能性が高いでしょう。
障害者雇用の進め方
障害者採用計画を立てる
複数人の障害者を雇用するには、まず特例子会社の規模や雇用人数を把握し、採用の準備を進めていきます。特例子会社が雇用すべき人数は、親会社やグループ全体の雇用率をカバーする目的があるのであれば正確に把握しておく必要があります。また、特例子会社自体が健全に経営され、利益を出し、継続性が望めることも綿密な計画があってのことです。
また、当然ながら雇用した障害者の数だけ任せる業務が必要になってきます。業務がなければ障害者を雇用する意味がありません。障害者は同じような障害であっても一人一人に個別性がありますので、すべての障害者が同じ業務をできるとは限らないことも念頭に置いて業務の創出や切り出しを行いましょう。一定期間働いている様子を見て、業務のレベルを再考していく必要があります。またその障害の程度や特性に合わせて正規雇用や短時間労働など適切な雇用形態をとることも考えなければなりません。
募集
雇用計画が整ったら、次に求人を開始します。求人には様々な方法がありますので、事業所の方針や予算などに応じて適切なものを選びましょう。
・ハローワーク:障害者雇用で中心的な役割を果たす公的機関です。障害者雇用が初めての場合は基本的にはハローワークに相談しながら雇用を進めるようにします。特例子会社についても相談できます。ハローワークを通じて雇用した場合に得られる給付などもあります。
・特別支援学校:特別支援学校は障害を持つ児童がそれぞれの障害に合った支援を受けながら学ぶ学校で、この場合は高等部を指しています。高卒現役の人材が欲しい場合は特別支援学校へ求人票を提出しますが、実際にその事業所で実習をした児童のみに対しての指名求人しかできませんので、各学校の進路指導部に相談する必要があります。
・民間職業紹介業者:障害者への障害者雇用枠での求人を紹介する、厚生労働省に認可を受けた民間事業者で、就職・転職エージェントとも呼ばれます。障害者を採用したい事業所には求人掲載から面接、内定、就職後のフォローまでおこなう頼もしい存在です。
・合同面接会:求職する障害者と採用したい事業所をつなぐために行われる、多数の企業や障害者が一堂に会する場です。ハローワークが開催するものと、民間業者が開催するものとがありますが、民間業者が行うものは企業側の参加は有料となります。
・求人サイトへの求人票掲載:インターネットが普及した現在では気軽にスマホからアクセス・登録できる障害者専門の求人サイトが有効です。雑誌や広告などの紙媒体もありますので、方針や予算に合わせて媒体を選ぶようにしましょう。選ぶ媒体によってそれを見る年齢層なども変わってきますし、掲載される情報や期間も変わってきます。
選考・面接
求人に対して応募があれば、選考・面接をおこないます。障害者の選考や面接の際には、合理的配慮が求められます。応募した障害者に対して、どのような障害でどのような配慮が必要なのかを確認するのがよいでしょう。例えば、視覚障害がある場合、自分で書類に目をとおしたり、試験の問題を読むことはできませんので、会社側の人間がそれらを読み上げる等の対応の必要があります。
さらに面接の場面でも、障害特性や、必要な配慮、希望する働き方や、やりがい、給与、雰囲気、昇進など事業所や仕事に対してどのような要望を持っているのか、詳細に聞くようにしましょう。
atGPとは
atGPは障害者雇用実績No.1
私たち、atGPは企業様の障害者雇用をサポートして20年、業界での実績No.1の障害者雇用支援のパイオニアです。障害者雇用を推進する企業様に最適な支援を提供いたします。
atGPのサービスのポイントは3つ
①障害者専門の採用のプロが採用活動をサポート
②採用はもちろん業務の切り出しから定着まであらゆる課題をサポート
③採用でリーチ可能なatGP登録者60,000人以上(2019年4月時点)
障害者雇用の初めから終わりまであらゆる課題に対応する支援
障害理解・業務切り出しフェーズ
・コンサルティングサービス(業務設計・業務創出)
採用フェーズ
・採用代行サービス
定着フェーズ
・定着コンサルティングサービス
atGPの雇用支援サービスの詳細は下記のリンクからご覧ください
→atGP 法人向け障害者雇用支援サービス
まとめ
法定雇用率を達成し適切に障害者雇用を推進していく上で、特例子会社は非常に有効な手段といえます。ただし、特例子会社設立には一定の条件があるため、企業規模が大きい事業所や現在の体制では障害者雇用に課題がある事業所に向いています。
特例子会社での障害者雇用の進め方のポイントは、
①綿密な障害者採用計画
特例子会社といえども、会社ですので健康な経営を継続していく必要があります。障害者雇用を成功させるためには最初の段階でしっかりした採用計画を立てて、障害者に適切な業務を切り出していきます。
②募集
ハローワーク、民間職業紹介業者、求人サイトなど様々な方法で求人募集ができます。方針、費用対効果などで自社にあった募集をします。
③選考・面接
選考・面接の場面でも、合理的配慮を行ない、受け入れ態勢が整っていることを応募者にアピールする必要があります。面接ではさらに詳細に必要な配慮や要望を聞き取り、採用後の定着につなげていきます。
これらのポイントに留意していただいて、特例子会社での障害者雇用を有効に推進していただきたいと思います。