はじめての障害者採用でよくあるトラブルと失敗しないためのポイント
更新日:2023年08月08日
厚生労働省の発表によると、2020年度の労働力人口(15 歳以上人口のうち,就業者と完全失業者を合わせた人口)は2019年度より18万人減少しました。実に8年ぶりの減少です。この減少には少なからず、コロナ禍の影響があると思われますが、中長期で見ると、すでに日本は少子高齢社会に突入しており、これからの人材確保には戦略が必要となってきます。そんな状況下で注目を浴び、実際に増加しているのが障害者雇用です。しかし障害者を採用することに不安もあるでしょう。実際のところ、障害がない人の採用よりも注意しなければならない点がいくつかあります。本記事は障害者雇用に興味がある、実際に障害者雇用を考えているという事業主、採用担当者の方に、初めての障害者採用の際によくあるトラブルやその基本的な対処法などについて解説していきますので、是非参考にしてください。
目次
障害者雇用をする際によくあるトラブル・失敗事例
障害者雇用や障害を正しく理解できていない
基本的な部分として、障害者雇用にまつわる法制度や、障害や障害者に対する理解がないことはトラブルの原因となります。なぜ障害者の雇用ついて障害者雇用促進法という法律があるのか、雇用率制度が定められているのか、ただ単に法律で定められているから障害者を雇用するという考え方では成功は難しいと言えます。
ケース①合理的配慮ができていない
差別や偏見は人権侵害です。障害者差別解消法により事業主側に障害者に対する合理的配慮が求められていることが理解できておらず、トラブルになることがあります。
具体的な例:
・面接時に聴覚障害者に対して視覚的に理解できる資料を用意していなかった
・採用後、車いすの障害者に出勤時刻の調整をしなかった ・採用後、視覚障害者が廊下のゴミ箱につまずいてケガをした |
ケース②障害の症状や特性を理解していない
障害と一口にいっても様々な障害があり、また人によって症状の現れかたが違うということを理解していない場合もトラブルが多くあります。
具体的な例:
・他の職員とも問題なく接していた精神障害者がある日突然出勤しなくなり退職した
・バリアフリーが整っていないためいつも他の従業員に移動を手伝ってもらっていた車いす利用の身体障害者に「あまり構われるとしんどい」と相談された
・発達障害者を雇用したが遅刻が多く、スケジュール管理など社会人として基本的なことができておらず指導したが直らない |
障害者雇用が一般雇用と違う部分は、当然のこととして障害者が対象であるということが前提にあります。障害者雇用にまつわる法制度の理解は必須であり、同時に障害者の人権、そして障害そのものへの理解が事業主、従業員ともにできていなければ面接の際や採用後の合理的配慮や定着に向けた適切な支援などができるはずがないのです。
現場の理解を深めずに推し進めてしまう
具体的な例:
・自閉症のある障害者を雇用したが、会社から現場の従業員に「障害者を雇用する」という説明しかなかった。その障害者は自分から積極的に仕事のことを聞いたり、会話に参加してこないので、現場の従業員が受け入れることができず、障害者は退職し、従業員は経営陣に不信感を持ち、信頼関係が損なわれ、雰囲気も悪くなってしまった。 |
障害者の採用についてまったく現場に知らせないということは考えられませんが、障害者を雇用する理由や意義を知らなければ、心の準備ができません。知らされなかったという不信感は従業員を軽視していると捉えられる可能性もあり、会社も、従業員も、採用された障害者も誰も得をしません。
障害者の採用とフォローを丸投げしてしまう
具体的な例:
・事業主が多忙だったため、障害者雇用の全般を採用担当者に一任した結果、担当者は採用することに重点を置き、採用した障害者への配慮や現場の理解が不十分だった。採用された障害者は誰かに相談することもなく1か月で退職した。 |
事業主が一担当、一部署にいわゆる”丸投げ”をした状態です。事業所が大きければ障害者雇用の部門や担当者を設置することは逆に合理的と言えますが、丸投げをするというのはそもそも、事業主が障害者雇用についての理解を放棄したともいえます。
その部門や担当者が障害者雇用の正しい理解やプロセスを行なっているか評価できず、失敗すれば余計な負担が会社そのものにも、担当者にも、採用した障害者にもかかるだけです。
専門的な知識がなく独自の雇用方法で失敗
具体的な例:
・初めての障害者雇用でハローワークや専門家に相談せず、うつ病のある人を採用した。面接でも明るく、本人の説明ではちゃんと薬も服用し、普通の生活ができているとのことで安心して採用したが、次第に休みがちになり、2か月で退職した。 |
障害者雇用に関しては、一般雇用との大きな違いはやはり障害があるということです。特別視するということではなく、やはりその人の大きな特徴として理解する必要がありますが、それぞれの障害により症状や困りごとは違い、同じ障害でも人によって症状の現れかたが違うのです。
専門機関・専門家のアドバイスを受けずに独自に雇用すればトラブルが多くなると考えましょう。
障害者に適した採用要件や採用プロセスが設計できない
具体的な例:
・初めての障害者雇用で障害者を採用したものの、適切な仕事が準備できなかった |
障害者雇用における雇用計画は一般雇用に似ていますが、障害者が対象なだけに配慮すべき点があります。例えば「切り出し」と呼ばれる、採用しようとする障害者の希望や適性に合わせた上で任せる仕事であったり、障害特性に応じた採用面接や筆記試験の実施方法など、初めての場合はそのあたりのプロセスを事業所だけでイメージし準備を整えるのが困難でトラブルに発展しやすいのです。
障害者雇用にまつわるメリット・デメリットをはじめ、最低限知っておきたい基礎知識をご紹介する資料がダウンロードできます。
この資料でわかること
・障害者雇用とは?
・障害者を雇用するメリット
・障害者を雇用しないデメリット
・障害者雇用が進まない企業が抱える課題
・課題を解消するポイント
・押さえておくべき障害者雇用の法律・制度
障害者雇用で失敗しないためのポイント
責任者が障害者雇用や障害について正しく理解し社内に共有する
障害者を雇用する場合、障害者雇用にまつわる制度を事前にしっかりと理解する必要があります。
核心的な法律としては障害者雇用促進法があります。特にその中の制度である雇用率制度については、従業員を43.5人以上雇用する事業主には障害者の雇用状況をハローワークに報告する義務がありますので、ご存じの方も多いかもしれません。
雇用のルールや助成金のこともありますので、初めて障害を採用する際はこれらを熟知する必要があります。また、同時に障害者差別解消法も必読で、余裕があれば障害者基本法、障害者総合支援法など障害福祉政策を事業主が理解してなければ事業所全体が正しい障害者やその雇用について理解するのは難しいでしょう。
これらの制度については厚生労働省のホームページからわかりやすいパンフレットなどがダウンロードできますし、障害者の就労支援をするハローワークやその他の公的機関に相談すればわかりやすく丁寧に教えてもらえたり必要な資料をもらえます。
現場の障害や障害配慮についての理解を浸透させる
まず事業主や採用担当者が障害者雇用や障害理解ができていなければ、雇用された障害者と働く現場の従業員がそれを理解できるはずがありません。少なくとも、現場の担当者や従業員に以下のことについて研修を行いましょう。
・会社が障害者を雇用する理由と意義(障害者雇用制度の概要を含む) ・人権と差別やハラスメントについて(障害者を雇用していなくても社内で行うべき内容です) ・障害者差別解消法の概要や事例について ・障害別の特性や接し方について(時間が取れない場合は採用予定がある障害者の障害についてのみでも可) |
正しく障害者の雇用を理解するにはこれらのことはセットと考えるべきでしょう。もちろん一度に行うには時間がかかる内容ですので、障害者雇用の計画にこれらの研修を組み込み、分割して定期的に行うようにしましょう。研修に適切な講師についてはハローワークに相談するとよいでしょう。
専門機関への協力を依頼する
初めて障害者を雇用する場合、まず障害者雇用の中心的機関であるハローワークに相談することをお勧めします。障害者雇用のプロセスを段階を追って説明してくれますし、質問や相談にも応じてくれます。必要に応じて障害者の就労を支援する公的機関である地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなども紹介してくれます。
雇用計画、適切な仕事の切り出し、必要な配慮、従業員の研修など不安や事業所だけではできないことにもアドバイスや支援を受けることが可能です。
採用した障害者の早期離職を防ぐポイント
ハローワークなどの公的機関のサポートがあれば、初めての障害者採用も難しくはありません。しかし、障害者就労で重要なのは、採用後いかに離職を防ぎ長く安定して働いてもらうかです。障害者の離職を防ぐポイントとしては以下のとおりです。
ハローワークなどの公的機関の支援を受け、必要に応じて就労継続支援サービスを受ける
ハローワークやその他の障害者の就労支援をおこなう機関や施設は就労継続支援(定着支援)も行います。ジョブコーチによる支援は助成金の対象になりますので、ハローワークに問い合わせるか、厚生労働省のホームページなどで制度を確認しましょう。
雇用された障害者が話したり、相談しやすい体制や雰囲気を作る
具体的な方法としては、小さい事業所では事業主や採用担当者が定期的に本人と話す機会を持ち、信頼関係を築くのがよいでしょう。中、大規模の事業所では部署の担当者がその役割を果たします。可能であれば、採用している障害者が5人以下でも障害者の相談指導担当者を任命し、専任的に相談指導を行うのがおすすめです。
atGP(アットジーピー)は障害者雇用のサポートをしています
総合的な障害者の転職・就職サポート事業を展開するatGPでは、法人向け雇用支援サービスもご提供しています。障害者雇用支援サービスのパイオニアとして20年の実績を持つatGPのサービスのポイントは大きくは3つあります。
①障害者専門の採用のプロが採用活動をサポート
②採用はもちろん業務の切り出しから定着まであらゆる課題をサポート
③採用でリーチ可能なatGP登録者60,000人以上(2019年4月時点)
障害者雇用のフェーズごとに企業様のニーズに応じたきめ細やかなサービスを展開
【障害理解・業務切出しフェーズ】
コンサルティングサービス:管理者・配属先への研修の実施、障害理解の促進、業務の 創出など幅広くサポートします。
【採用フェーズ】
①エージェントサービス:企業様の障害者採用を、専任のコンサルタントが採用の成功までサポートします。
②障害者専門求人サイト:国内最大級の登録者を誇る障害者専門求人サイト「アットジーピー転職」への求人情報の掲載と、条件にマッチした登録者にスカウトメールを送ることができます。
【定着フェーズ】
定着コンサルティングサービス:採用の後の定着も障害当事者と支援者への支援の両方を行います。
atGPの法人向け雇用支援サービスの詳細はこちらからご覧ください
障害者雇用サポート事例
atGPではこれから障害者雇用を始めたい企業様に向けた、弊社の障害者雇用サポートの事例等をホームページに掲載しています。
弊社のサービスをご導入いただいている企業様の生の声をご覧ください。
導入事例:株式会社グロービス
専門スキルやキャリアを活かしたプロフェッショナルとして活躍!株式会社グロービスの障害者雇用
取り組み紹介:アコム株式会社
まとめ
今回は初めての障害者雇用でよくあるトラブルについてご紹介させていただきました。障害者雇用では、一般雇用とは違い、より多くのことを理解することが求められます。
①障害者雇用関連法制度(障害者雇用促進法、障害者雇用率制度、障害者差別解消法など)の理解
②障害者の人権の理解
③障害理解(原因、特性、障害別の配慮や関わり方など)
これらの理解は事業主および現場の従業員の両方が知っておくべきことといえます。従業員に関しては法制度は概要だけでもよいでしょう。それよりも共に働く仲間となる従業員に関しては、正しい人権の理解と障害理解こそが重要となるでしょう。障害者を採用した後の定着も現場の従業員の正しい理解と受け入れが最大の要素になるといえます。
また、これらの理解は簡単ではなく、時間もかかることが想像できます。無理をせず、正しい理解をするためにはハローワークなどの障害者の就労に関わる機関や施設に相談するようにし、初めての障害者雇用を是非成功させてください。