高次脳機能障害とは?その症状や治療法、復職や転職について
更新日:2023年03月08日
高次脳機能障害は、別名「見えない障害」とも呼ばれるため外見から障害があることが分からず、周囲の人の理解を得ることができないケースもある障害です。このような高次脳機能障害のある方は、この障害が持つ特性から周囲だけではなく自分自身も高次脳機能障害を抱えているという認識が浅い方も少なくないようです。このような状態では、高次脳機能障害の治療を根気よく行うことはおろか、その特性を理解して就職や転職を行うことも容易ではありません。ここでは高次脳機能障害とはどのような障害なのかといったことや、どのような治療が必要なのか、就職や転職を希望する際に利用できる機関について解説していきます。
目次
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、くも膜下出血や脳梗塞といった脳血管障害や、転倒などの事故による脳の外傷、心肺停止状態になったことによる低酸素症などが理由で脳が損傷してしまい、物覚えが悪くなったり、何かにこだわりすぎるようになったりといった今までその人に見られなかった症状が現れることをいいます。
高次脳機能障害という障害のある方は、このような症状が出てしまうため日常生活に不便を感じることが多くなってしまいます。
高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害の症状には、以下のようなものがあります。
記憶障害
記憶障害には、高次脳機能障害を発症した後に新たに経験したことを思い出せなくなる前向性健忘と、高次機能障害を発症前に経験したことが思い出せなくなる逆行性健忘の2種類があります。
前向性健忘と逆行性健忘の例を挙げると、前向性健忘の場合は発症前に知っていた家族の名前などは問題なく思い出すことができても新しく出会った人の名前などが思い出せない、逆行性健忘の場合は発症前のことは思い出せないが発症後新たに覚えたことはきちんと覚えていられる、というものです。
注意障害
注意障害とは、物事に集中できなかったり、周囲に注意を向けることができないという症状のことをいいます。
注意障害には、表情が乏しくなりぼーっとした状態になったりして、すべての面で反応が遅くなる覚醒度低下、周囲の音や声などに注意が向いてしまい本来注意を向けるべき対象に集中して取り組むことができない持続力低下、周囲の状況に応じて次の行動に上手く移ることができない転導性低下、状況に応じた注意の変換が上手くできないために同じような行動を繰り返してしまったり同じことを何度も言ってしまう転換性注意力低下の4つの種類があります。
遂行機能障害
遂行機能障害の症状には、物事の段取りが悪いといった事や、事態の変化に臨機応変に対応できないといったものがあります。
遂行機能障害の種類には、未来の目標を具体的に設定することができない目標の設定の障害、目標達成までの段取りを立てることができない計画立案の障害、計画を正しい手順で実行したり遂行したりすることができない計画の実行の障害、目標に近づくために自分の行動を評価し、必要に応じて修正することができない効果的かつ効率的な行動の障害があります。
・社会的行動障害
社会的行動障害とは、自分では良くないと分かっていても怒りを爆発させてしまう、自分から何かを始めることができない、ひとつのことに固執してしまうといったものがあります。
社会的行動障害の種類には、何に対しても意欲を持つことができず1日中ボーっとして過ごす意欲や発動性の低下、いらいらした気分が徐々にエスカレートしてしまい怒りを爆発させる、または突然大声を出したり暴力や性的行為などの反社会行為を起こす情動コントロールの障害、他人に対する親密すぎる発言や言動、急な話題転換に対応できない、抽象的な指示に対する対応が困難な対人関係の障害、人格機能が低下し退行を示す依存的行動、習慣的な行動であれば問題なく行うことができるが、新たな問題に対応することができずに1つの事柄に固執してしまうといったものがあります。
失語症
失語症とは、言葉が出てこなかったり話の内容を理解できないといったもののことをいいます。
失語症の種類には、話を聞いて理解することはできても自分から話したいと思ったときに言葉が出てこなくなる運動性失語と、話しはすらすらできても言い間違いが生じてしまい、話を聞いたときの理解も上手くできない感覚性失語があります。
失行症
失行症とは、手や指の機能に問題がなくても食事や文字を書くといった日常の簡単な動作を行うことができなくなることをいいます。
失行症の種類には、特に行動を意識しない場合には問題なく行うことができる行動が、意図的に行おうとした場合にできなくなる観念運動失行、ズボンの履き方が分からなくなるなどの行為の順番や道具の使用方法などが分からなくなる観念失行があります。
失認症
失認症とは、視力や聴力感覚に問題がないにも関わらず、見たり聞いたり触ったりしたものが何であるか分からないといった症状のことをいいます。
失認症には、目で見ているものが何であるか分からない視覚失認、マヒがないにも関わらず自分の体が認識できない身体失認があります。
高次脳機能障害の治療とは
高次脳機能障害には、薬物療法やリハビリテーションによる治療がメインとして行われます。
何らかの原因によって一度低下してしまった機能を改善させるためには、リハビリテーションが特に重要な役割を果たします。
多くの場合には発症後1年程度の時期までは著しい改善が見られ、発症後2年程度経過すると症状はほぼ固定してしまうため、早期のリハビリテーションの開始が重要になります。
高次脳機能障害の方の復職へ向けた準備
高次脳機能障害の方が行うべき復職に向けた準備には、生活訓練プログラムと就労移行支援プログラムの2つのプログラムを受けておくことです。
この2つは医学的リハビリテーションが終わった後に行われるプログラムで、生活訓練プログラムとは日常生活能力や社会活動力を高め、日々の生活を安定させ積極的な社会参加を行うことができるようになることを、就労移行支援プログラムとは病気や障害のある方の中で就労を希望する方に対して障害者支援施設が提供するスムーズな終了と長期就労を目的としたプログラムのことをいいます。
復職する前には必ずこれらのプログラムを受けておくことをおすすめします。
高次脳機能障害の症状とうまく付き合いながら仕事を行うためには、いくつかの工夫や雇う側の配慮が必要となります。
ここでは、長期間にわたって同じ職場で働き続けるために必要な工夫や配慮について解説していきます。
勤務時間の調整
高次脳機能障害のある方の中には、体が疲れやすいといった症状が出る方もいらっしゃいます。
そのような方は時短勤務を行ったり、体力を消耗するラッシュアワーを避けた時間帯に通勤できるようにしたりといった勤務時間の調整が必要となります。
メモやチェックリストの活用
高次脳機能障害の方は、記憶力や注意力が一般的な方より低いという特徴のある方がいらっしゃいます。
そのため、忘れてしまっても後で思い出すことができるように仕事の指示を受けた場合などにはメモ帳に記入したり、ルーティンワークの場合にはチェックリストを活用して自分の作業がどこまで進んでいるかをすぐにチェックしたりすることができるようにしましょう。
スケジュールやタスクは常に書き出す
業務を行う上でその全体を常に書き出すことで「見える化」し、思考力や記憶を整理することで、何をすればよいかということが明確になり集中力が高まったり安心感が生まれたりします。
症状の特性を周囲の人に伝えて理解を得る
高次脳機能障害の方が仕事を始めて職場に長期定着するためには、自分の障害が持つ特性と周囲の人にお願いしたいサポートについて、面接時または入社後の早い時期に周囲の人に説明し理解を得ることが重要になってきます。
業務上配慮してほしい事柄を伝えておくことで、高次脳機能障害のある方もその周囲の方もスムーズに仕事が行えるようになります。
向いている業務を選ぶ
高次脳機能障害のある方には、向いている職業というものがあります。
それは物流センターなどでの軽作業、店舗内での清掃や商品陳列、オフィス内での事務作業などです。
前職のスキルを活かして再就職できない場合には、このような仕事を選んで就職すると長期就労につながりやすいでしょう。
高次脳機能障害の方が転職や再就職をする際の仕事の探し方
高次脳機能障害の方が転職や再就職する際には、利用できる機関があります。
ここでは、その利用できる機関について解説していきます。
ハローワーク
ハローワークには「専門援助部門」というものがあり、ここでは障害や難病のある方の就職や転職をサポートしてくれます。
・障害者就労・生活支援センターなどの行政サービス
障害者就労・生活支援センターは通称「なかぽつ」と呼ばれる機関で、障害や難病のある方の就業及び生活上の支援を行ってくれる機関です。
就労移行支援
就労移行支援とは、障害や難病のある方向けの福祉サービスで、就職支援を行ってくれます。
この就労移行支援では、体調管理の方法から職場でのコミュニケーションのスキルに至るまで身に付けることができます。
障害者専用転職サービス
障害者専用転職サービスとは、企業と障害のある方にどのような配慮や対処が必要かを共有し、最適な求人を提案してくれます。
atGP(アットジーピー)とは
atGP(アットジーピー)とは、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する各種障害者就職および転職支援サービスの総合ブランドです。
20年以上障害者の就職や転職の支援を行ってきた日本の障害者雇用のパイオニアともいえる存在が、このatGPです。
就職や転職に関するサービスは、基本的に無料で受けることができます。
障害や難病のある方に将来のビジョンも含めて、ひとりひとり異なる不安や悩みに関して専属のエージェントが二人三脚で寄り添い、サポートを行ってくれます。
高次脳機能障害のある方が就職や転職をしたいと思った場合には、atGPに相談することをおすすめします。