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片麻痺や脳性麻痺のある方の仕事や働き方ってどんなものがあるの?

更新日:2023年03月08日

麻痺には、動かすことが完全にできない「完全麻痺」や、動かすことはできるが動かしにくさがある「不全麻痺」、神経や呼吸に使う筋肉など目に見えない部分の麻痺など、麻痺している部位や麻痺の程度はさまざまなです。麻痺があると身体を自由に動かすことが難しくなり、日常生活はもちろん仕事にも影響が出るため、仕事の内容や働き方を選ぶ必要があります。本記事は、片麻痺や脳性麻痺のある方の仕事や働き方について解説します。
 

片麻痺・脳性麻痺とは

麻痺とは、中枢神経や末梢神経の障害によって、部分的な運動機能や感覚が喪失または低下した状態です。麻痺は症状や症状が出る部位、麻痺の原因などによってさまざまな種類があります。

 

 

片麻痺

片麻痺は、身体の片側、左右どちらかに麻痺が見られる状態のことを言います。

 

麻痺が出る部位による分類では、他に左右両側に麻痺が見られる「対麻痺(ついまひ)」、全身に麻痺があり動かせない「四肢麻痺」、手の指や左足など一部だけが麻痺している「単麻痺(たんまひ)」があります。

 

 

脳性麻痺

脳性麻痺は、出生前の「胎児期」から、分娩中、出生後の「新生児期」までの間に、脳に何らかの障害が生じて運動や姿勢に異常をきたす病気です。

片麻痺・脳性麻痺の原因

片麻痺は脊髄の病気でも見られますが、原因の多くは脳卒中によるものです。

 

脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで、脳に血液が届かなく障害を受ける病気です。脳が障害を受けると身体機能や言語機能が失われたり、場合によっては死に至ることもあります。脳卒中には、脳の血管が破れる「脳出血」や「くも膜下出血」、血管が詰まる「脳梗塞」があります。

 

脳性麻痺は、出生前後における脳損傷、分娩中の酸素欠乏や感染症などによって脳が障害を受けることによって引き起こされることがあります。また、原因が特定できないケースもあるようです。

 

片麻痺・脳性麻痺の症状

片麻痺と脳性麻痺の症状は次の通りです。

 

 

片麻痺の右・左それぞれの症状

片麻痺には、右麻痺と左麻痺それぞれ特有の症状と、左右共通して見れれる症状とがあります。

 

【右麻痺】

右麻痺は、脳の左側に損傷があって身体の右側が麻痺しているケースです。脳の左側は、論理的思考や言葉を司っています。そのため脳の左側が損傷すると、失行(しっこう)や失語症といった症状が現れます。

 

失行とは、運動器官(手足の筋力や感覚)には問題がないのに、意図的に何かをしようとするとうまく動作が行うことができなくなる症状です。

 

失語症は、聴く・話す・読む・書くといった言語機能が低下する症状をいいます。

 

 

【左麻痺】

左麻痺は、脳の右側に損傷があって身体の左側が麻痺しているケースです。脳の右側は、自分の体や空間の認識や、感情のコントロールなどの役割があります。そのため脳の右側が損傷すると、失認(しつにん)や性格変容といった症状が現れます。

 

失認とは、脳に情報が取り込まれたにも関わらず、正しく認識することができない状態です。

 

例えば、見えているのにそれが何なのかわからない、聞こえているのに、その内容がわからない、人の顔がわからないなどのケースがあります。

 

自分の身体の半分(左側または右側)の空間が認識できないという症状がでることもあります。

 

性格変容とは、穏やかだった人が怒りっぽくなったり、優しかった人が急に自分勝手になるなど、突然性格が変わってしまう症状です。

 

右麻痺と左麻痺共通の症状

右麻痺と左麻痺の両方に共通する症状としては、「片側の手足、顔半分の麻痺やしびれ」「視野の欠損」「構音障害(うまく話せなくなる)」があります。

 

 

脳性麻痺の症状

脳性麻痺の症状は、人によって大きく異なります。主な症状には次にようなものがあります。

・手足のつっぱり

・不随意運動(アテトーゼ)

・手足などの麻痺

・呼吸障害

・咀嚼障害

・嚥下障害

片麻痺・脳性麻痺の治療について

片麻痺と脳性麻痺のどちらも脳の損傷が原因です。脳の損傷による障害を全く無くすことはできませんが、リハビリテーションによって症状の改善が期待できます。

 

リハビリテーションは、片麻痺や脳性麻痺の症状による生活の不自由を少しでも減らして、自分らしい生活を送るために行う訓練です。障害のない状態を目指すのではなく、「できることを一つずつ増やす」「自分でできる動作を増やす」といった意識を持って継続的に取り組むものとなります。

 

仕事で見られる麻痺がある方の特性

仕事をする上で障害となる特性には次のようなものが考えられます。

 
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簡単な動作はできても意図的な動きがうまくできない

片麻痺でも左の脳に損傷がある右麻痺の場合には、失行という症状が現れます。失行とは、その名の通り何かの行動を失うことです。典型的な失行には、次のようなものがあります。

 

 

観念運動失行

意識しない時には問題なく行える簡単な動作や習慣的動作が、意図的にしようとしたり、他に人の真似をしようとするとできなくなります。

 

 

観念失行

動作の一連の順番や、道具の使用方法などが分からなくなるなど、目的にかなった行為の遂行が困難になります。

 

 

着衣失行

自分の体と衣服を空間的に認識できずに、衣服の上下や裏表の区別がつかない。ボタンがかけられないなど服を着ることができなくなります。

 

 

歩行失行

歩き始めるときに床から足を離せなくなるなど歩けなくなります。

 

 

肢節運動失行

手や指、足、顔、体幹などが柔軟な動きをすることができなくなり、机の上に置いたペンをつかむ、紐を結ぶなど慣れた動作も難しくなります。

 

構成失行

立体などの構成物の認識が上手く出来なくなり、立方体や六角形といったの複雑な図形がうまく書けなくなります。

 

 

頭でやることが理解できていても体をうまく動かせない

脳性麻痺で不随意運動の症状がある場合には、自分の意思とは関係なく手足がふるえたり勝手に動いてしまいます。また片麻痺と脳性麻痺のどちらも、手足のしびれや麻痺、つっぱりなどの症状がある場合には、細かな作業や動作がうまくできない可能性があります

 

 

喋りにくく、うまく言葉が話せなくなる

右麻痺の場合には、言語に関する役割を担う左脳に障害があるため、聴く、話す、読む、書くといったの能力が低下する「失語症」の症状が現れます。症状には個人差がありますが、失語症による症状には次のようなものがあります。

 

・聴く

聴いた言葉の意味がわからなくなったり、大勢での会話を聴き取ることが難しくなる

 

・話す

言いたいことが浮かんでこない、実際の言葉とは違うことを言ってしまう、文章にして話すことが難しくなる、話し方がたどたどしくなる、前に言った言葉が続けて出てしまう

 

・読む

文字や文章の意味が理解できない

 

・書く

文字が思い出せない、文章を書くのが難しい

 

また、右麻痺と左麻痺に共通して、正しく発音ができなくなったり、呂律(ろれつ)がまわらなくなるなどうまく話せなくなる構音障害の症状が現れることもあります。

 

 

視野が欠損しており、ものが見えづらい

片麻痺の場合には、麻痺している側の視野が欠ける視野欠損の症状が出て、ものが見えづらくなることがあります。

 

また、左麻痺では対象物を認識できない失認という症状が出ることがあります。

 

失認では、左側にあるものを見落としてしまったり、左側にある障害物に気づかずにぶつかってしまうなど、左側が見えていても右側にしか注意が行かなくなります。

麻痺がある方が働きやすい職場・業界・職種とは

片麻痺や脳性麻痺であっても働きやすい職場や業界、職場にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

働きやすい職場

片麻痺や脳性麻痺の方の症状は人それぞれのため、合理的配慮を基本に、柔軟に職場環境の改善や調整してくれる職場が働きやすいと言えます。

 

具体的なポイントはこの3つです。

①バリアフリーが整備された職場

②通勤に配慮がある職場

③勤務時間や通院に配慮がある職場

 

令和3年6月に改正障害者差別解消法が公布されて、これまで努力義務となっていた民間事業者も合理的配慮の提供が義務化されました。

 

合理的配慮とは、障害者と障害の無い人が平等に機会や待遇を享受できるように、支障となっていることを改善するための措置です。

 

厚生労働省では、合理的配慮指針を作成して公表していますが、これに沿って職場環境を改善している職場は働きやすいといえます。

 

指針では、肢体不自由の障害がある方への合理的配慮としては、次のようなポイントが示されています。

 

・募集、採用

面接の際にできるだけ移動が少なくてすむようにする。

車での移動を希望する方へは駐車場を確保する。

ラッシュ時間を避けて面接時間を設定する。

 

・採用後

移動の支障となるものを通路に置かない、机の配置や打合せ場所を工夫するなどにより職場内での移動の負担を軽減する。

机の高さを調節するなどで作業を可能にする工夫を行う。

職場内にスロープや手すりなどを設置する。

出退勤時刻や休憩・休暇に関して、通院や体調に配慮する。

 

参考:厚生労働省「合理的配慮指針集 第3版」

 

 

おすすめの業界

厚生労働省が調査公表している「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」によると、身体障害者の方が、多く働いている産業は製造業、卸売業・小売業、医療・福祉、サービス業となっていました。

 

この中でも、すでに片麻痺や脳性麻痺の方を採用している企業は、合理的配慮についても取り組んでいると思われるので、働きやすい職場環境が整えられている可能性が高いでしょう。

 

また、医療や福祉関係は、障害に対する理解が高いためおすすめの業界です。

 

参考:厚生労働省「令和2年 障害者雇用状況の集計結果

 

 

おすすめの職種

片麻痺や脳性麻痺で、歩行が困難で車いすや杖を使用している方は、歩くことなく自分のデスクでできる事務職やエンジニアなどの仕事が働きやすい職種といえます。

 

最近では新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、テレワークやリモートワークを進める企業が増えています。在宅でも働ける仕事は、通勤の負担が軽減されるため働きやすいといえます。

 
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仕事の探し方

片麻痺や脳性麻痺によって障害者手帳を取得している方は、一般雇用枠と障害者雇用枠の両方の求人に応募することが可能です。

 

障害者雇用枠での採用は、障害があることを前提としているため、職場での理解や周囲のサポートが受けやすく働きやすい職場が多いでしょう。障害者雇用枠での仕事の探し方には次のようなものがあります。

 

 

ハローワーク

ハローワークには、障害について専門の知識を持った職員や相談員が配置された障害者専用窓口があります。窓口では求人の紹介だけでなく、就職に関する相談もできます。求人は、障害者雇用枠だけでなく一般雇用枠の求人を紹介してもらうこともできます。

 

 

障害者専用転職サービス

障害のある方の就職・転職に特化した転職情報サイトや転職エージェントもあります。転職情報サイトでは、多くの求人情報が掲載されていて、自分の希望する条件で求人を検索することができます。転職エージェントは人材紹介サービスです。障害者の就職に詳しい担当者が、応募から面接、入社までのさまざまなサポートをしてくれます。

atGP(アットジーピー)とは

atGPは障害のある方に特化した求人転職情報や就職支援サービスです。障害者の就職・転職に詳しいキャリアプランナーが、個別相談によって希望条件や障害の状況を伺い、最もマッチした求人を紹介します。また、就職・転職活動、志望動機や自己PRなどの書き方などのアドバイス、模擬面接などのサポートもしています。

 

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まとめ

今回は、片麻痺や脳性麻痺のある方の仕事や働き方について紹介しました。一言で片麻痺や脳性麻痺といっても、麻痺している部位や程度など症状は人それぞれ違っています。

 

 

片麻痺や脳性麻痺のある方が、就職や転職で長く働ける職場を探すには、障害について理解があり合理的な配慮を行ってくれる企業の求人を見つけることが大切です。

 

 

障害者雇用枠での仕事探しには、ハローワークや障害者に特化した転職エージェントを利用するのがおすすめです。どちらも障害者の就職転職に詳しい専門家がさまざまなサポートをしてくれます。無料で利用できるので、まずは相談してみましょう。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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