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発達障害で会社を辞めたいとき、行きたくないときにできること・利用できるもの

更新日:2022年09月06日

せっかく周囲の協力もあり、自分も最大の努力をして発達障害を抱えながらも勝ち取った採用。意欲をもって働き始めたけど、自分の想像していたものと何かが違う・・・障害があってもなくても初めて働く場所の職務や雰囲気が自分に合っているかどうかは、正直、働く前にすべてを把握することは困難です。働き始めてからしかわからない会社のこともあれば、自分の特性に合わないことや、心身の健康面の問題もあるかもしれません。しかし、できれば採用されてからミスマッチに気づいたり、辞めたい、行きたくないと思う状況は避けたいところです。ここでは、ミスマッチを避けるために発達障害に向いている仕事、向いていない仕事、辞めたいと思った時に取るべき行動や頼れる機関などをご紹介していきます。

発達障害とは?

ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)

ASDとはAutism Spectrum Disorder(自閉症スペクトラム障害)のことで、発達障害の一種です。自閉症スペクトラムはこれまで別々の診断名であった自閉症、広汎性発達障害やアスペルガー症候群などを自閉症的症状のある一つの疾患の連続体として捉えた呼称で、以前からこれらの疾患を一つのものとして捉えようとする試みはありましたが、2013年に発表されたアメリカ精神医学会のDSM-5において、これらの自閉症性の疾患は自閉症スペクトラムとしてまとめられました。

 

DSM-5によると、自閉症スペクトラムの特徴は以下のとおりとなっています。

■社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥がある

■行動、興味、または活動などで限定された反復的な身体の運動や会話、固執やこだわりなどが2つ以上ある

■発達早期から1と2の症状が存在している

■発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されている

■これらの障害が、知的障害や全般性発達遅延ではうまく説明されない

 

 

詳細についてはまだ解明されていませんが、原因は遺伝的な要因を含む先天的な脳機能障害で発症率はおおよそ1/100と言われています。男性では女性の約4倍の発症率となっています。

 

ADHD(注意欠如多動性障害)

ADHDとはAttention Deficit Hyperactivity Disorder (注意欠陥多動性障害)と言われる発達障害の一種です。DSM-5ではADHDの特徴は以下のとおりです。

 

■不注意と多動・衝動性が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められる

■いくつかの症状が12歳以前から認められる

■学校や家庭など複数の状況において障害となっていること

■発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されている

■その症状が、統合失調症、または他の精神障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明できない

 

 

有病率は小児のおよそ3%~7%と言われており、脳内の伝達物質であるドーパミンの機能障害が原因と考えられています。遺伝的な要素も排除できません。

 

LD (学習障害)

LDとはLearning Disability(学習障害)と呼ばれる発達障害の一種です。文部科学省の定義によると、学習障害とは、知的な発達の遅延は見られないが、聞く、話す、推論するなどの学習に要する能力の障害とされています。

 

医学的な立場ではLDはLearning Disorderとなり、読み書きの特異な障害、計算などの算数的な特異な障害を主に指すようです。小児期に発生する特異的な読み書きの障害は発達性ディスレクシアと呼ばれています。

 

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発達障害の人が仕事を辞めたくなる原因

仕事内容

仕事内容が自分に向いていない、適職ではないということは障害者だけでなく、誰にもあることで、離職の際の理由の上位に入ります。特に発達障害者の場合は、同じ発達障害でもASD、ADHD、LDは特性が違いますので、向いている仕事、得意な仕事もそれぞれで変わってきます。就職することに重きを置きすぎて、就職した後が続かないということは実はケースとしては多く、仕事内容と自分の障害特性との適性をしっかり考えないと短期間で色々な事業所を転々とすることになりかねません。

 

人間関係

離職理由でも1,2位を争うものとして人間関係が挙げられます。個別の育ち方や経験にもよりますが、若い世代ではより一層、職場での濃厚な人間関係は苦手で、プライベートと仕事はきっちり分けたいという傾向にあります。

 

発達障害者の場合も、ASDであればコミュニケーションは障害特性上、不得意ですので、同僚や上司との意思疎通に問題が発生する場合があります。協調的にコミュニケーションを取ることを苦手としているため、相互理解や円滑な人間関係の構築ということが難しく、仕事を辞める際の大きな理由となります。

 

障害・疾患を隠しての勤務

障害者が仕事を辞めたくなる原因のひとつとして、障害・疾患を隠して就職している場合があります。当然、会社側はその障害・疾患については知らずに採用していますので、もし採用後に発覚したり、カミングアウトした場合(発達障害だからという理由で差別されたり、不当な扱いを受けることがあってはなりませんが)、同僚や上司との信頼関係が失われる可能性が大きいです。そもそも、障害を隠して働いていれば、そのことに対して罪悪感や不安を感じたりして気持ちよく働くことは難しいかもしれません。

 

このように、障害・疾患を隠して就職した場合、のちのち、時間が経てばどうしても障害の特性が目立ってきます。最初から障害があると納得していれば、会社や同僚はそれに対応した受け入れをしたかもしれませんが、知らなければ厳しく指導されたり、低い評価を受けることは免れません。そうするとどうしても追い込まれて辞めざるを得ない状況になっていきます。

 

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発達障害の人に向いている仕事とは

ASDの人が向いている仕事

ASDの大きな特徴としてコミュニケーションが苦手、こだわりの強さがあります。「それってできる仕事あるの?」と思われるかもしれませんが、人とあまり話す必要がない、そして一つのことに集中できると考えれば、例えば、アート、創作、ICT・機械系などの技術系の専門職、各種研究職、また、同じ作業、動作を繰り返す簡単な作業、工場のラインや清掃作業なども非常に向いていると言えるでしょう。一つのことにひたすら打ち込んで成功した著名人の中にはASDの特徴を持っている人も少なくはありません。

 

ADHDの人が向いている仕事

ADHDの特徴は不注意、衝動的、多動ということを考慮すると、計画性があまり必要なく、自由度が高い仕事、デスクなど一ヶ所にとどまらない、動きがある仕事が向いていると言えます。

 

では、例えばどのような仕事が考えられるかですが、自由度が高い、色々な束縛が少なく、同僚とのストレスもないという意味では、どのような仕事でもフリーランスや自営業が当てはまります。同僚や上司はおらず、時間配分もある程度自由です。また、似たような理由で、インターネットなどを利用した在宅ワークもおすすめです。在宅で出社不要、仕事内容もさまざまですので、普通の会社に勤めるとそれだけで色々と制限されますが、家で一人でできるのなら選択肢も広がるでしょう。

 

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一方で、どのような仕事でも自己管理ができないと生活するのに十分な収入が得られないことになりますので、スケジュール帳やスマホのカレンダー機能を使うなどして自分で管理できるようにするか、サポートしてくれる人が必要となるでしょう。

 

会社に勤めるような職種なら、オフィス仕事ではなく、外に出る営業、特に単独行動で飛び込むような営業がよいでしょう。行く先々や時間が決まっていると難しいかもしれません。人間関係が煩わしくなければ店舗内である程度自由に動ける接客業なども向いています。お客を不快にさせないよう、コミュニケーション・トレーニングなどは必要となります。

 

LDの人が向いている仕事

LD(学習障害)がある場合、仕事の向き不向きは、読み書き計算におけるどの部分の学習障害なのかによります。字を読むことができない場合、字を読むことがない仕事、書くのができない場合、書くことが必要のない仕事、計算ができない場合、計算をすることがない仕事ということになります。しかし実際はそれぞれの能力が低い時、本当にそれらをその人本人が出来なければならないのかということは自分でも考え、求人に応募する際、事前に会社側に相談してみてもよいでしょう。

 

例えば、計算をすることが苦手な場合、実際に暗算や手計算をしないと成り立たない仕事というのはどれぐらいあるのでしょうか?字が書けない場合、手書きが必須の仕事とはなんでしょうか?できないことに代わる手段や方法について自分でも解決法を持っていて、会社側に提案できることは重要です。

発達障害の人に向いていない仕事とは

ASDの人が向いていない仕事

自閉症スぺトクラム障害の特徴の一つに「対人的相互作用の質的な障害」があります。相互のコミュニケーションが難しいということです。言語的なコミュニケーションだけではなく、身振り、手振りなどのジェスチャー、喜怒哀楽の表情、アイコンタクトなど非言語的コミュニケーションの手法が乏しい、もしくはまったくない場合もあります。そうなると当然、同僚が多い仕事や接客業は向いていません。また、仕事の幅が広く、一人で何役もこなすような仕事、お客の質問や苦情、ハプニングなどに臨機応変に対応しなければならないような仕事も難しいと言えます。

 

ADHDの人が向いてない仕事

注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴は大きく、衝動的、不注意、多動であることです。衝動的に行動することが目立ちますので、計画に沿って行動するのも苦手です。不注意というのはケアレスミスや忘れ物が多い、多動は落ち着きがなく、同じ姿勢、態勢でいること、動きがないことが苦手です。

 

ある程度決まった時間に決まった場所に移動するような仕事(複数個所の配達やルートセールス)や、計画を立てたり、スケジュール管理する秘書やマネージャーのような仕事、落ち着いて集中しないとできないような、一ヶ所にずっと同じ姿勢で動きがないような仕事(オフィスワークや精密性が求められる製造や加工)は向いていないと言えるでしょう。また、ちょっとしたミスが多くの人に影響を与えるような仕事や、人の安全や人命に関わるような仕事(各種乗り物の運転手や大型重機、機械の操作、医療行為、危険物を取り扱う)なども避けるのが無難です。

 

LDの人が向いてない仕事

LDの場合、向いていない仕事というのは具体的に「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」、「推論」のうち、どれができないのかによります。場合によっては複数の重複もありますが、自分がどの部分での学習障害なのかをしっかりと把握していれば問題はありません。ただし、自分の想像だけで、「この仕事は計算はしないだろう」とか、「この仕事は字を書かなくてもできる」と決めつけるのは間違いの元です。

 

わかりやすい例で言いますと、教員は生徒に教えるうえで、読み書きは必須で、小学校などでは複数の科目を担任が教えるケースも多く、算数を教えたり、その他の場面でもプリントや生徒の数を数えたり、均等に割ったりと計算はつきものです。事務仕事の場合、事務所内でのコミュニケーション、窓口での金銭のやり取り、電話応対(メモ取りを含む)など一通りどの能力もある程度必要になり、LDの人には向かないと言えるでしょう。やりたい仕事や気になる求人募集ではどのようなスキルが必要なのかは、しっかり調査するようにしましょう。

 

仕事を辞める前に考えたいこと

職場の休職制度を調べて効果的に利用する

本来、職場の雇用契約の条件や、福利厚生、就業規則などは後でトラブルにならないためにも可能な限り、採用される前、少なくとも採用後にはしっかりと確認しておくべきものです。実際のところ、それらは必要性を感じて改めて調べてみることが多いのも事実です。仕事を辞めたいと思う時も、まず有休休暇や休職制度はどうなっているのか調べてみましょう。

 

通常、休職制度を利用するには傷病、家庭の事情など適切な理由が必要です。ある一定の期間休むことで、辞めたいと思う原因について対策を考えられたり、ストレスがなくなったり、会社側で対応を検討してくれるなど、問題が解決できる可能性もあります。ただし、休業制度を含む就業規則などは正規や非正規など雇用形態によって違う場合もあります。そもそも休職制度を設けることは会社の義務ではありませんので、休職制度がないというケースもあります。休職制度があればいきなり辞めるという決断をするよりも、有効に使って少し休養してみる、落ち着いて考えてみることができれば退職を回避できるかもしれません。

 

心身の不調があれば迷わず医療機関へ

どうしても、職場に行く気がしない、眠れない、食欲がない、体がだるいなどの心身の不調があれば、無理をせず病院で診察を受けましょう。仕事を辞めたいほどの心理状態になっている場合、バーンアウト(燃え尽き症候群)や抑うつ状態(うつ病の一歩手前)、さらに進んでうつ病の可能性もあります。このような状態では、物事を前向きに考えることは難しく、休養や適切な治療が必要となってきます。医師の診断書がある場合は、休職も視野に入れましょう。これから先の長い人生のことを考えれば、病気を治すことが何よりも優先されます。

 

自己理解を深める

これは障害者だけでなく、一般の就職活動でも同じですが、就職での失敗を繰り返さないための秘訣は自己理解を深めることです。求人が出ている職種と自分の適性のミスマッチをなくし、長く働ける可能性を高め、離職の可能性を低くできます。端的に言えば、自分の長所と短所、出来ること、出来ないことなどをしっかり把握することが大事です。ただし、自己理解とは、”自分がそう思っていること”ではなく、第三者的な視点が必要となりますので、家族や友達の意見を聞く、障害者の就職をサポートする公的機関や就職・転職エージェントなどのサービスを利用するとよいでしょう。そして短所や出来ないことについては訓練や研修などで改善していく努力が必要です。

 

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atGP(アットジーピー)とは?

atGP(アットジーピー)とは、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する各種障害者就職および転職支援サービスの総合ブランドです。

 

20年以上障害者の就職や転職の支援を行ってきた日本の障害者雇用のパイオニアともいえる存在が、このatGPです。

 

atGPの就職や転職に関するサービスは、基本的に無料で受けることができます。

 

障害や難病のある方に将来のビジョンも含めて、ひとりひとり異なる不安や悩みに関して専属のエージェントが二人三脚で寄り添い、サポートを行います。

 

発達障害のある方が就職や転職をしたいと思った際にには、atGPに相談することをおすすめします。

atGPエージェント

仕事を辞めたい時・辞めた後の支援や相談先は?

発達障害専門医・精神科・心療内科などの医療機関

すでに発達障害に関して主治医がいる場合は、仕事をやめたい時はまず主治医にも相談してみましょう。休職や離職にも診断書が必要になってきます。もし、特定の医療機関に通院していない場合、最良なのは発達障害の専門医です。発達障害の専門医なら同じような相談に対して経験豊富ですので、的確なアドバイスをしてくれるでしょう。ただし、心身の不調がひどく、近隣に発達障害専門の医院がない時や予約が取れない時はまずは精神科・心療内科を受診しましょう。抑うつやうつ病である場合、まず早期発見、早期治療は重要です。必要であれば発達障害の専門医も紹介してくれます。

 

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは発達障害者支援法に基づく、発達障害児・者専門の総合的な相談支援、情報提供などを行う機関で、各都道府県や政令指定都市に設置されています。就労に関する相談支援も行なっています。必要に応じて適切な専門機関やサービスを紹介してもらえます。

 

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構が設置する、就職、職場復帰などについて、専門の相談員をおいてハローワークや障害者就業・生活支援センターなどの機関と連携し、支援を行なう機関です。仕事を辞めたい時も、離職し再就職したい時も気軽に相談できます。

 

同じ境遇の仲間と出会える地域若者サポートステーション

就職・再就職などに関する不安や問題を抱える若者に対して、登録をすることで、個別の支援計画を作成し、さまざまな講座や訓練プログラムをとおして、一人一人に合った支援を職場に定着するまで行なう、全国に170カ所以上ある厚生労働省の委託機関です。発達障害の特性からくる人間関係が作れない、コミュニケーションが苦手など、同じ悩みを抱える同世代との交流もあり、障害者専門の機関ではなんとなくハードルが高いという方は一度足を運んでみるべき機関です。対象年齢は15~39歳となっています。

 

まとめ

発達障害を持ちながら就労を含む社会参加をしている人たちは大勢います。見た目だけではわかりにくいこともあり、その悩みや苦労は他者に理解してもらうには難しいことがあります。しかし、発達障害から来る特性や困りごとも、しっかり自己理解し、うまく付き合い、訓練したり、カバーする方法を見つけることで、また適性のある仕事に就くことで上手に問題を回避していくことができます。でも、そういう努力をしながらも、仕事を辞めたいと思う状況や実際に辞めてしまうこともあるでしょう。そんな時に自分だけで悩んだり、苦しんでもなかなか事態は好転しません。困ったときに利用できるさまざまな制度や公的機関、その他の社会資源を知っていることは発達障害と向き合いながら仕事をする上では非常に重要だと言えます。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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