「障害者雇用率」について、分かりやすく解説します。
更新日:2019年05月21日
厚生労働省が開催した労働政策審議会により、平成30年4月1日から民間企業における法定雇用率が2.2%に引き上げられました。さらに平成30年4月1日から3年以内に2.3 %に引き上げられることを多くの皆様もご存知かと思います。しかし、そもそも「法定雇用率はどんな仕組みなのか?」「雇用する側として持っておくべき心構えは?」そんなお話を本日はやさしく、くわしくご説明します。
目次
そもそも法定雇用率ってなに?
事業主は雇用している全ての従業員に対して一定割合以上の障害者を雇用しなければならないと「障害者雇用促進法」にて義務付けられています。「常時雇用している労働者数(※)」と雇用しなければならない障害者の割合を示したものを「法定雇用率」と呼びます。民間企業だけでなく、国や地方自治体などの行政機関でもこの法定雇用率を達成させることが義務づけられています。法定雇用率から算出された「常時雇用している労働者数」と「雇用しなければならない障害者数」の割合に相当する人数以上の身体障害者、知的障害者、精神障害者を雇用することがマストとなっています。
(※)「常時雇用している労働者」とは、期間の定めのある労働者も、事実上1年を超えて雇用されている、あるいは雇用されることが見込まれるものも含まれています。20時間以上30時間未満の労働時間のパートタイマーも短時間労働者として算定基礎に含まれます。
これは「障害者雇用促進法」に基づき、少なくとも5年に1度、見直しが行われています。法定雇用率は今まで、2013年4月から2.0%とされていましたが、この時の算定式では、身体障害者と知的障害者のみが対象とされていました。
しかし、下の図のように、平成30年4月から算定式に精神障害者も含めることになりました。
それにより法定雇用率はアップ。平成30年4月からは2.2%へと法定雇用率が定められています。例えば1000名の会社だと今まで20人の障害者を雇わなければいけなかったところを、今回の法定雇用率アップで22人に増やす必要があるのです。
また、1名以上障害者を雇用しなければいけない企業が、今までの50名以上の企業から45.5名以上に引き下がるという側面もあります。
段階的に法定雇用率を上げていく施策をとっており、さらに平成30年4月1日から3年以内に2.3 %に上がることとなっています。そして今後は、さらに法定雇用率が上がることが予想されています。これにより、各企業が雇用すべき障害者の割合は年を追うごとに増加することとなり、障害者の雇用機会がさらに広がるであろうと見込まれています。
障害者雇用については、「障害者雇用促進法」という法律で義務付けられていますが、障害者雇用促進法には、他にも障害者差別の禁止や合理的配慮の提供の義務などが定められています。
障害者雇用にまつわるメリット・デメリットをはじめ、最低限知っておきたい基礎知識をご紹介します。
この資料でわかること
・障害者雇用とは?
・障害者を雇用するメリット
・障害者を雇用しないデメリット
・障害者雇用が進まない企業が抱える課題
・課題を解消するポイント
・押さえておくべき障害者雇用の法律・制度
障害者雇用納付金制度ってどんな制度?
障害者を雇用する際に、障害配慮としてバリアフリー化やインフラ面の整備などが必要になる場合があります。その際に事業主は環境を整えるために経済的な負担を伴うことがあります。その場合、受け入れ態勢を整え積極的に障害者の社会進出に寄与している企業と、障害者雇用に消極的で受け入れ態勢を整えていない企業の間に経済的なアンバランスが発生します。
そのアンバランスを調整するために設けられているのが、「障害者雇用納付金制度」です。法定雇用率が未達成の事業主に対し「納付金」を納める義務を課し、雇用率を達成している事業主等へ「調整金等」として支給し、障害者を雇用するにあたり被った経済的負担のバランスをとるというものです。障害者雇用に積極的に取り組む事業主とそうでない事業主の間での経済的な負担を助成などによる調整をすることで、障害者雇用の促進と障害者が安定して働くことができる環境整備を図るのです。
詳しくは、障害者雇用納付金制度の概要(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)(http://www.jeed.or.jp/disability/koyounoufu/about_noufu.html)をご覧ください。
このように雇用を推進する企業を助成しバックアップすることで、より障害者が安定して働きやすい環境づくりに貢献しているのです。
実際に障害者雇用でどんな仕事についているのか?
法定雇用率のUPは、障がい障害者にとっての追い風?
今回の法定雇用率アップに関して、一部メディアでは「企業は必ず精神障害者を採用しなければならなくなった?」「精神障害者に有利になる?」という誤解を招く表現がされています。
しかし正しくは、法定雇用率の算定式に精神障害者が追加になっただけであり、精神障害者の「雇用義務」が発生するわけではありません。例えば極端な話として、社内に身体障害者だけしかいなくても、法定雇用率を達成するということもありうるのです。
つまり、今回の法定雇用率アップで、企業が雇用する人数は増えますが、それにより有利になるのは精神障害者だけではなく、本当は障害の種類を問わず「企業が雇いたいと思う障害者全員」なのです。
法定雇用率UPに対する企業の反応や対応は?
次に、今回の法定雇用率アップに伴い、障がい者総合研究所で企業に対して実施したアンケート調査を参考に、企業側の反応や対応をご紹介します。
まず、「2018年度4月時点で法定雇用率が2.2%になることは予想通りでしたか。」との問いに対し、従業員1,000人以上(以下、大企業)、従業員1,000人未満(以下、中小企業)の企業ともに90%以上が「予想通りだった」もしくは「予想よりも低かった」と回答しました。
この事から、企業としては想定内の引き上げ率であったことが分かります。
(「2018年度4月時点で法定雇用率が2.2%になることは予想通りでしたか。」アンケート結果)
しかし、「2018年4月1日の時点で2.2%の雇用率は達成できると思いますか?」との問いに対しては、大企業の83%が「達成できると思う」と回答している一方、中小企業では44%が「達成できると思わない」と回答しました。
つまり、2.2%の引き上げは想定していたものの、中小企業では実際に達成する見込みは立てられていない企業が多いことが分かります。
(「2018年4月1日の時点で2.2%の雇用率は達成できると思いますか?」アンケート結果)
ではなぜ、中小企業は達成する見込みが立てられていないのでしょうか。
以前、同じく障がい者総合研究所が実施したアンケート調査から、「現時点での御社の雇用率の目標を教えてください」という問いに対して、大企業の66%が、来年からの法定雇用率である2.2%以上を目標にして雇用していました。
一方、中小企業の39.6%は、現在の法定雇用率である2.0%目標まででしか雇用を進められていませんでした。
つまり、大企業はすでに今回の法定雇用率アップを見越した目標設定をしていたため、達成を見込める企業が多い一方、中小企業は今まで余裕を持った目標設定が出来ていなかったことで見込みが立てられていないことが伺えます。
(「現時点での御社の雇用率の目標を教えてください」アンケート結果)
まずは現場の意識から「共に働く」ということ
平成30年8月、中央省庁の水増し問題が発覚しました。同年10月に公表された検証結果では、中央省庁の28の機関で合計3,700人余りが不適切に計上されていました。障害者雇用の見本となるべき中央省庁の不正は、積極的に障害者雇用に取り組もうとしている民間企業の士気を下げかねない事態でした。しかし、厚生労働省の「平成30年障害者雇用状況の集計結果」では民間企業(法定雇用率2.2%)の雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。雇用障害者数は53万4,769.5人、対前年7.9%(3万8,974.5人)の増加をみせています。障害者を雇用することで発生する障害配慮やインフラ整備等にかかる労力は少なくないかもしれません。しかし、障害のある方の自立を促進し「共に働いていく」という気持ちをまずは現場から伝えていくことが障害者雇用推進にとって何よりの起爆剤になっていくでしょう。
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障害者雇用については、「障害者雇用促進法」という法律で義務付けられていますが、障害者雇用促進法には、他にも障害者差別の禁止や合理的配慮の提供の義務などが定められています。
障害者雇用にまつわるメリット・デメリットをはじめ、最低限知っておきたい基礎知識をご紹介します。
この資料でわかること
・障害者雇用とは?
・障害者を雇用するメリット
・障害者を雇用しないデメリット
・障害者雇用が進まない企業が抱える課題
・課題を解消するポイント
・押さえておくべき障害者雇用の法律・制度
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