認知症の方が利用できる支援制度やサポートについて詳しく紹介
更新日:2024年03月15日
「認知症」は、脳の病気によって脳の神経細胞の働きが悪くなって、記憶や判断力などの認知機能が低下して、社会生活や日常生活に支障をきたしている状態をいいます。年齢が高くなるほど発症する可能性が高くなりますが、65歳未満で発症する「若年性認知症」もあります。自分自身や親などの家族が認知症と診断されたら、介護や医療費の負担などの悩みを抱えるケースがほとんどです。本記事では認知症の方が利用できる支援制度やサポートについて紹介します。
目次
認知症を支えるさまざまな支援制度
自分自身や家族、友人など周りの人が認知症になった時には、1人で悩まず専門機関に相談しましょう。公的な相談先としては「地域包括支援センター」があります。「地域包括支援センター」では、認知症疾患医療センターなどの関係機関と連携しながら、保健福祉サービスや制度の利用に関する支援をしてくれます。
なお、認知症の方が利用できる主な支援制度には次のようなものがあります。
・介護保険サービス
・自立医療支援制度
・高額医療費制度
・障害者手帳
・障害年金
詳しくは、次の章以降で詳しく紹介します。
支援制度1 介護保険サービス
「介護保険サービス」とは、介護保険制度に基づいて提供されるサービスです。
自宅で暮らしながら受けられる「在宅介護サービス」と、施設に入所して受けられる「施設・居住系サービス」の2つに大きく分けられます。
在宅介護サービス
自宅で暮らしながら受けられる在宅介護サービスは、次の3種類に分けられます。
種類 | 内容 | 主なサービス |
自宅で介護を受ける訪問サービス | ホームヘルパーや看護師、理学療法士などのリハビリ専門の職員が、自宅に訪問して提供するサービス
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居宅介護支援・訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・訪問入浴介護など |
日帰りで施設に通う通所介護サービス | デイサービスセンターや病院の通所リハビリテーションなどに通って受ける介護保険サービス
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通所介護(デイサービス)・通所リハビリテーション(デイケア)・認知症対応型通所介護など |
施設に短期間泊まる短期入所・小規模多機能 | 介護施設や病院などに短期間入所して、日常生活上の世話や機能訓練などを受けるサービス | 短期入所生活介護・短期入所療養介護・小規模多機能型居宅介護など |
施設・居住系サービス
施設で受けられる介護サービスは、次の3種類に分けられます。
種類 | 内容 | 主な施設 |
介護保険施設に入所して、ホームのスタッフから介護を受ける | 介護保険施設では食事や排泄、入浴などの日常生活上の世話や機能訓練、療養上のお世話などの介護サービスが提供されます。
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介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設(老健)・介護療養型医療施設(介護医療院) |
施設系サービス以外の介護施設に入居して介護を受けるサービス | 施設によって提供される介護サービスや費用などが異なるため、ニーズに合わせて選べます。
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介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・ケアハウス |
専門スタッフの支援を受けながら少人数で共同生活を送る | 職員のサポートを受けながら、日常生活に必要な行為を自身のできる範囲で行って、少人数で共同生活を送る施設。 | グループホーム(認知症対応型共同生活介護) |
支援制度2 自立支援医療制度
「自立支援医療制度」は、精神疾患のため通院治療が必要な方の経済的な負担を軽減することを目的とした制度です。適用されると、病院や薬局、訪問看護などを利用した時の自己負担額が1割になります。また、1ヶ月間に支払う医療費の上限も設定されます。
「自立支援医療制度」を利用するには、市区町村の障害福祉課や保健福祉課に申請が必要です。認知症と診断された方は、申請すれば適用される可能性があります。
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支援制度3 高額療養費制度
「高額療養費制度」は、病院や薬局の窓口で支払った金額が1ヶ月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度です。上限額は年齢や所得によって異なります。
なお、差額ベッドや入院時の食事代の一部負担、65歳以上の方が医療療養病床に入院する場合の食事代や居住費の一部負担、公的医療保険の対象とならない特殊な治療費などは「高額医療費制度」の対象にならず自己負担となります。
窓口での支払が高額になる場合、医療機関に「限度額適用認定証」を提出すると、自己負担額を所得に応じた限度額にすることができます。「限度額適用認定証」を提出しない場合には、高額療養費の申請により後日払い戻されます。なお、マイナンバーカードに医療保険のデータを登録すると、「限度額適用認定証」がなくても、限度額を超える支払いが免除されます。
支援制度4 高額介護サービス費
「高額介護サービス費」とは、介護サービスを利用して1ヶ月に支払った自己負担額が、一定の上限を超えたときに、申請すると超えた分が払い戻される制度です。自己負担の上限額は所得によって異なります。
なお、介護サービスでも次のサービスは対象になりません。
・福祉用具の購入費(ポータブルトイレや入浴用品など)
・住宅の改修費
・施設サービスの食費や居住費、日常生活費など
・介護保険給付の対象とならない利用者負担分
・支給限度額を超え、全額自己負担となる利用者負担分
支援制度5 障害者手帳
認知症で日常生活に支障をきたす場合は、「精神障害者保健福祉手帳」の申請ができます。脳血管性認知症やレビー小体型認知症など、身体症状がある場合には「身体障害者手帳」に該当するケースもあります。基本的には、医療機関で認知症の診断を受けて、定期通院を続け6ヶ月経過した時点で障害者手帳の申請ができます。
障害者手帳を取得すると、福祉サービスや税金の優遇措置、公共交通料金や施設の利用料の割引などが受けられます。また、企業の障害者雇用枠で働ける可能性もあります。
支援制度6 障害年金
65歳未満で発症する若年性認知症で、障害の程度が日本年金機構が定める等級と認められた場合には、「障害年金」を受け取ることができます。認知症の認定基準の障害の状態は次の通りです。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 高度の認知障害や高度の人格の変化、その他の高度の精神神経症状が顕著なため、常に援助が必要なもの
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2級 | 認知障害、人格の変化、精神神経症状が著しいため、日常生活が著しく制限を受けるもの
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3級 | 1)認知障害や人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があって労働が制限を受けるもの
2)認知障害のために労働が著しい制限を受けるもの
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障害手当金 | 障害年金に該当するより軽い状態であるものの、認知障害のために労働が制限を受けるもの |
その他支援制度
前章で紹介した支援の他にも、利用できる可能性のある支援制度があります。
傷病手当金
「傷病手当金」とは、病気やけがなどで会社を休み、給料がもらえない時に、その間の生活を保障する制度です。
傷病手当金を受けるためには次の4つの条件を満たす必要があります。
1.療養のために会社を休んでいること
2.今までの仕事に就けない状態である
3.3日以上継続して会社を休んでいること
4.休んでいる期間に給料の支払いを受けていないこと
特別障害者手当
「特別障害者手当」は、精神や身体に重い障害があって、常に日常生活において特別な介護を必要とする自宅療養中の方に、月2万7千円が支給される制度です。
成年後見人制度
「成年後見人制度」は、認知症や知的障害、精神障害などが原因で判断能力が低下した本人のために、お金の計算や入院、介護の契約の手続きなどの法律行為を成年後見人がサポートする制度です。成年後見人(後見人・保佐人・補助人)は、弁護士や司法書士などの専門家が就任するケースもありますし、親族が就任することもあります。ただし、最終的に誰がなるか決定するのは家庭裁判所です。
日常生活自立支援事業
「日常生活自立支援事業」とは、高齢や障害によって一人では日常生活に不安のある方が、地域で安心して生活が送れるように、本人との契約に基づいて福祉サービスを利用する援助などを行う事業です。
就労支援
障害のある方の就労を支援する仕組みには「就労継続支援A型・B型」と「就労移行支援」があります。就労継続支援には年齢制限はありませんが、就労継続支援A型と就労移行支援は原則18歳から64歳までの方が対象です。65歳未満で発症する若年性認知症の方が、退職や休職に追い込まれた場合、就労支援を利用することができます。
atGPとは
まとめ
高齢化が進む日本では認知症の方も増えていて、2025年には約675万人と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。一方で、2018年時点で全国の若年性認知症の患者数は3.57万人と推計されています。認知症によって、社会生活や日常生活が困難になった場合には、記事でご紹介したようなさまざまな支援制度が利用できます。まずは、住んでいる地域にある「地域包括支援センター」に相談してみましょう。