うつ病に向いている働き方とは?仕事の選び方や就労支援について解説
更新日:2023年08月13日
2017年世界保健デーのテーマは「うつ病」でした。(厚生労働省HP)うつ病に罹患される方は年々増えており、現在100万人を超えております。うつ病は、一生の内15人に1人はかかるといわれる誰でもかかる可能性のある身近な病気です。在職中にうつ病になり復職を目指す方、発症後退職して再就職を希望する方、まず何をどうしたらよいのかわからないという方に、一例としてお伝えいたします。
目次
もしかしてうつかもしれない?
今まで何の不調もなくバリバリ仕事をこなしてきた方が、ある日を境に
・夜、布団に入っても中々寝付けない。色々な考えが頭に浮かんできて頭の中がぐるぐるしてしまう。朝まで目がさえて眠れない。
・原因がわからない不安な状態が続いている。 ・仕事を終えて自宅に帰るとぐったりしてしまう。着替えずにそのまま床の上で眠ってしまう、などの疲労感が残る。 ・今までしたことのないケアレスミスを繰り返してしまった。集中力の低下が目立つ。 |
上記のような症状が生じ、徐々に活力が低下することで日常生活に支障が出始める場合があります。
「なんか変だなぁ」と感じつつもそのまま働き続けたり、頑張り過ぎると、更にこれらの症状が悪化し、家族や職場の上司・同僚等から受診を勧められ、精神科・心療内科・メンタルクリニック等に受診した結果「うつ病」と診断される方がいらっしゃいます。
Aさんの場合
実例としてAさん(20代後半、男性、既婚者)のケースを紹介します。
Aさんは関東の某県の出身で、小・中・高と学業成績が良く、都内の有名大学に現役合格し、卒業後は「大学新卒者の就職希望企業ランキング」10位内に常に入っている大企業(金融機関)に就職しました。
就職後も順調に昇進し、結婚もしました。
Aさんに変化が起きたのは、入社6年目頃です。
入社以来配属されていた営業課から業務課へ人事異動があり、配属された部署には直属の上司である管理職が6人いるという、いわば「頭でっかち」な所でした。
Aさんは持ち前の前向きな思考と明るさで日々職務を遂行しておりましたが、ある日から
「不眠」
「上司が6人もいるけど、自分はどう評価されているのだろう?といった不安」
「食欲不振」
「思考力低下(ケアレスミスを繰り返す)」
「胃の違和感」
を覚えるようになりました。
また、勤務時間中にボーッとして何も手がつかないでいたり、時にはヒソヒソ声で自分の悪口が聞こえる事もありました。
妻に勧められ、初めは内科を受診しましたが、内科的には異常は見当たらず、大学病院の精神神経科を紹介され受診したところ、「うつ病」と診断され、入院となりました。
3ヶ月入院し、本人の希望と医師の判断により退院、また元の職場に復帰しました。
退院に際して、主治医から職場の上司にAさんへの配慮や対応について助言がありました。
上司はその助言に沿ってAさんへの仕事量を変えたり、Aさんへの対応に配慮しましたが、復職後 Aさんは1週間でまた症状が悪化し、再入院となり、今度は6か月入院しました。
今後の事について家族が集まって話し合いをした結果、Aさん本人も同意した上で「退職」し、Aさん夫婦はAさんの体調が回復するまでAさんの実家で暮らす事となりました。
今までの仕事や働き方について考える
医療機関を受診してうつ病と診断されたら、仕事をどうするかについては、医師や職場の上司にしっかりと相談し、対応を決めることをおすすめします。
具体的には、以下の2つの選択肢を検討することになります。
・休職または退職をして、まずは治療に専念したのち、回復具合を基に職場復帰の可否を判断する
・職場環境の改善や業務内容などの調整を行い、業務負荷を下げ、仕事を続ける |
うつ病の症状は人それぞれですが、欠勤・遅刻日数の増加やケアレスミスの増加、社内コミュニケーションの減少、仕事中の強い眠気、気分の落ち込みなど、業務遂行に支障が出る症状が多いです。
仕事を休むか休まないかの判断は、自分ひとりで悩まず、主治医に相談しましょう。
働きながらうつ病と付き合うポイント
うつ病の方にとって大事なことは気分の波と上手く付き合っていくことです。
仕事や働き方でうつ病と上手く付き合い働き続けることができる方もいらっしゃいますが、Aさんのように競争の激しい職場で、「何とか同僚との遅れを取り戻したい」「絶対にクビになりたくない」「そもそも自分は精神病ではない」と頑張り過ぎてしまい、その時の状態ではこなすことが困難な仕事を遂行しようと無理し過ぎてしまうと、一度回復期になってもまた症状が逆行することがあります。
うつ病と付き合いながら働くには、以下のポイントを注意しましょう。
●環境調整をする
在職中の方は、ストレス負荷を抑えた仕事を選定(上司に配置換えや職制変更等を相談)することは再発防止に有効です。
業務過多が原因であれば仕事量を減らし、人間関係に問題があるなら配置転換を希望するとよいでしょう。
●無理せず、職場に相談する
悩みを抱え込まずに職場内で相談することも大事です。
無理に働きつづけると、症状を悪化させてしまう可能性があるため、積極的に上司や産業医に相談しましょう。
日中に服薬の必要がある方は、思い切ってうつ病の治療に取り組んでいることを職場内でカミングアウトすることも一つです。
●自己判断で治療を中断しない
症状が良くなったからと言って、自己判断で薬を減らしたり中断したりすると再発する可能性があるため、薬について不安や疑問がある時は、医師に相談しましょう。
うつ病で退職した後の働き方
うつ病を発症し、Aさんのように退職した方で、症状が回復期や維持期になっているので、「再就職したい」とお考えの方は多いでしょう。
今まで一度も就労した経験が無く、仕事をするという事がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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うつ病の人に向いてる仕事の選び方
自分の障害を自覚した方は「今の自分にできることは何か」「どういう仕事に就けるのか」「どういう働く場があるのか」などを考えましょう。
ところで、うつ病を抱えながらできる仕事や職種には、どんなものがあるのでしょうか。
●一般事務や軽作業などのプレッシャーがかかりにくい仕事
一般事務や軽作業の仕事は、ダブルチェックなど業務のフォロー体制が整っていて、マニュアルも明確化されていることが多いので、うつ病の人におすすめの仕事です。
梱包や出荷などの商品管理、検品といった倉庫管理など、いわゆる「軽作業」と呼ばれる仕事やデータ入力などの一般事務の仕事があります。
●在宅ワークなどの自分のペースでできる仕事
在宅ワークの仕事は、自分の生活リズムや働ける時間に応じて仕事量を調整できるため、負担が少ない働き方と言われています。
在宅ワークの種類としては、シール貼りやアンケート記入のような軽作業から、文章を書くことが好きでストレスを感じにくいのであればライティング、ほかにも専門的なスキルが必要とされるデザインやプログラミングなどがあります。
●最低限のコミュニケーションで済む仕事
うつ病の症状の1つとして、他者とのコミュニケーションを避けるようになるというものがあります。
そのため、自分の作業に集中できるプログラマーやWebデザイナーのような専門職、テレワークで完結するタスク管理やクリエイティブな仕事などがうつ病の人に向いていると言えます。
うつ病に向いてない仕事
うつ病を患ってしまうと、心身共に不調が表われ、仕事や日常生活に支障をきたしてしまいます。
症状の強まりによって、仕事中の細かいミスが増えたり、遅刻や当日欠勤が増えたり、人と関わることを避けるようになったり、さらに、意欲の低下によって仕事そのものに取り組めなくなることもあります。
それでは、どんな仕事がうつ病の方に向いていないでしょうか。
●ノルマのある仕事
仕事において「ノルマ」はプレッシャーが大きく、ストレスに繋がりやすいです。
うつ病の人にとって、プレッシャーがかかること自体が大きな負担になってしまいます。
また、ノルマのある仕事の多くは、高いコミュニケーション能力が求められる仕事で、ストレスがさらに高まる可能性があります。
銀行員や証券マン、保険の営業の仕事、自動車の営業マン、アパレル店員などの仕事はあまりおすすめできません。
●人との関わりが多い仕事
対人関係でストレスを溜めがちな方には、ホテルやレストランのスタッフなどの接客業や営業職、テレフォンオペレーター、または多くの人数でチームとなり業務を進めるような仕事は、精神的に負担がかかりやすいため、向いていない可能性があります。
●納期が厳しい仕事
うつ病を抱えながら働くには、ある程度の自由や融通がきく環境であることが非常に大切です。
自分のペースを保てず、無理をすると、症状の悪化や再発を招く可能性があります。
そのため、納期が厳しい仕事を避けることが望ましいでしょう。
なお、自分一人では中々難しい課題です。ここは一つ専門機関の力を借りましょう。
「障害者就業・生活支援センター」に相談することも良い方法の一つです。
障害者就業・生活支援センターは、通称「ナカポツ」あるいは「ナカポツセンター」と呼ばれており、全国の都道府県から334か所が委託されています。他に指定都市長や中核都市長から委託を受けているところもあります。
「ナカポツ」は、就職を希望されている障害のある方や在職中の障害のある方が抱える課題に応じて、身近な地域において、雇用、保健福祉、教育等の関係機関の連携拠点として、就業面及び生活面における一体的な相談支援を実施します。(参照:厚生労働省HP)
障害者手帳を取得し支援を受ける
うつ病は外観ではわかりづらい病気です。長期にわたり社会生活や日常生活に支障がある場合は、十分に社会復帰に対する障害になりえます。
長期間うつ病を患っている方は障害認定を受けることも視野に入れてみてはいかがでしょうか?障害認定とはすなわち、「精神障害者保健福祉手帳」の取得です。「精神障害者福祉保健手帳」を取得すれば、税金の免除や医療費の助成といったさまざまな支援を受けることが可能です。
▽精神障害者保健福祉手帳で受けられる福祉サービス
・医療費の助成 ・税金の所得控除 ・各種公共料金の割引 ・障害者雇用枠で働くことができる |
もちろん本人の取得意思があってのことですので、通院先の病院の主治医とPSW(精神保健福祉士)によく相談してみましょう。
自分の障害を受け入れるということは、確かに辛いことです。
人が障害を負ってからそれを受け入れるまでには、ショック期 → 否認期 → 混乱期 → 解決への努力期 → 受容期という段階を辿ることがわかっています。
人によってはうつ病を発症し患って10年経ってから精神障害者保健福祉手帳を取得した方もいらっしゃいます。
しかしながら、前へ進むためには最初の一歩が必要です。
自分の障害を自覚することで、次に進める場合もあります。
うつ病の人が活用できる就労支援サービス
就労までの道筋は、「一般就労に復帰する」以外にも選択肢があります。
例えば、精神障害者福祉手帳を取得し、障害者雇用枠で就労することも選択肢の一つです。
あるいは、就労継続支援事業所に通所し、そこで作業などを通じて工賃を得る福祉的就労という可能性もあるでしょう。
就労継続支援事業所以外にもうつ病の方が利用できる就労支援があります。
●地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害のある方に対し、ハローワークと協力して専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。
職業評価、職業指導、職業準備訓練および職場適応援助を提供します。
支援対象は、障害者手帳を取得している方に限らず、難病のある方、及びその他障害があると認められる方も利用可能です。
●障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害者の職業生活の自立を目的として、障害者の住む地域で、就業面と生活面の両方におけるサポートを行っています。
障害者手帳を所持していない方の利用も可能です。
●ハローワーク
ハローワークには、障害のある方のために専門の職員や相談員が配置されています。
障害への専門的な知識のある担当者が、求人情報の提供や紹介、就職相談、就職活動の支援、及び就職後の定着支援など、幅広いサポートをおこなっています。
また、「在宅ワーク」や「テレワーク」という働き方を選ぶこともできます。
「在宅ワーク」は、ご自宅にパソコンとインターネット環境が整っていれば、インターネット上で仕事を受注し、納品する事で収入が得られます。
ただし、仕事の単価は全体的に低めの事が多く、必要な収入を得るには相当のパソコンのスキルが求められます。
「テレワーク」も「在宅ワーク」と似ていて、パソコンとインターネット環境を整える必要があります。
会社と雇用契約を交わし、勤務時間数に応じて雇用保険や社会保険が付きます。
会社によっては、専用の機器を貸与してくれる所もあります。
参考:厚生労働省ホームページ 関連情報
▶厚生労働省HP 「障害者雇用対策について」 ▶厚生労働省HP 「障害者総合支援法に定められた障害者福祉サービスを利用する方法。障害者に対する就労支援」 ▶厚生労働省HP 「地域活動支援センターについて」 |
まとめ
うつ病を発症し、長期間にわたって患ってきたために実例のAさんのように辛い経験をした方、今まで仕事を経験していなくてこれから先どうしたらよいのか悩んでいらっしゃる方に「仕事」や「働き方」にも色々な選択肢がある事をお話してきました。
障害とともに、あせらず、頑張り過ぎず、今の自分にできる仕事から始め、スモールステップで階段を一段一段踏みしめながらステップアップする事をおススメします。
少しでもご参考になれば幸いです。
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