学習障害(LD)のある方とはどのようにコミュニケーションをとればいい?
更新日:2023年11月06日
学習障害(LD)という障害をご存じでしょうか。学習障害(LD)は、発達障害の一種で、英語では“Learning Disorder”または“Learning Disability”と呼ばれ、日本ではこの言葉を略してLDと呼ぶことがあります。
学習障害(LD)のある方の多くは、子どものころから学習の困難さに気付き、そこから学習障害(LD)であると分かるケースが多いようです。
ここでは、学習障害(LD)とはどのような障害であるかということや、学習障害(LD)の方とスムーズにコミュニケーションを取る方法について解説していきます。
目次
学習障害(LD)とは
学習障害(LD)とは、発達障害のひとつで、全般的に知的な発達には遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」といった能力に困難が生じる障害です。
学習障害(LD)は、その特性により大きく「読み書き障害」と「算数障害」に分けられます。
読み書き障害とは
「読み書き障害」とは、文字通り読んだり書いたりすることが困難な学習障害(LD)の種類です。
難しい表現になりますが、文字の読み書きに関する流暢性や正確性に障害が現れるという特徴があります。
例えば文字の形を認識することが苦手だったり、実際に本人が書いた文字に問題がなさそうに見えても、実は漢字や文字を思い出すのに時間がかかってしまったりするなどのケースがあります。
しかし、日常的な会話は問題なく行うことができることがほとんどなので、普通に接しているだけでは学習障害(LD)を持っていることが分からないこともあります。
算数障害とは
一方の「算数障害」は、先天的に「計算や数の概念を捉える」ことや、例えば算数の文章問題などの内容を「推論する」ことに困難さを抱えることを指します。
「算数障害」と聞くと、単純に「算数や数学が苦手な障害」であると思われがちですが、「算数障害」は「読み書き障害」と同様に、認知能力のアンバランスさが要因となっています。
「算数障害」は短期的な記憶が弱かったり、視覚的な認知が弱かったりなど、認知能力の発達に凹凸があります。
従って算数や数学の試験を受ける必要がない大人になっても、仕事や生活の中で不自由を感じるケースが少なくありません。
学習障害(LD)の方が仕事でよく生じる困りごと
困りごと①資料やマニュアルを読むことが難しい
学習障害(LD)の方は、資料やマニュアルを読むことが難しいことが多いです。
その理由としては、読字障害の特性が強い方は、文字を一文字ずつ追って読んだり、文章を読むときの正確性が無かったり、文字の意味を理解することが困難な場合があったりするためです。
そのため、マニュアルを読まなければ遂行できないような業務を行う職場環境では、困難が生じてしまいます。
困りごと②メモを取ることが難しい
また、文字を書くことが苦手な方もいるため、メモを取ることが難しいケースがあります。
見たことや聞いたことをすぐにメモにとったり、メモを書き終わるのに時間がかかったりするため、スムーズなコミュニケーションを取るのが難しいこともあります。
困りごと③スケジュール管理が出来ない
算数障害の特性が強い方は、時間の概念を捉えることが難しいこともあり、そのため時間管理ができずスケジュール管理が出来ない方もいます。
困りごと④数の概念を用いた業務が困難な場合も
このような方は、数の概念を用いた業務が困難な場合もあります。
公式があれば問題なく計算などをこなすことができるケースが多いのですが、自分で数式を考えるのが難しいといった困り事を抱えることもあります。
しかし、学習障害(LD)には程度の差があるため、全ての人がこのような困難さを抱えるわけではありません。
学習障害(LD)の方のコミュニケーションのコツ
学習障害(LD)がある人が仕事を行う上で重要なことは、できる限り周囲の人に理解と協力を求めることです。
学習障害(LD)の方は仕事で困りごとを抱えていても、本人に学習障害(LD)であるという自覚が薄いケースもあるため、特に周囲の支援が大切になります。
そこで以下のような方法を使って周囲の人に理解や協力を求めるようにしましょう。
自分自身の障害の特性と状態をしっかりと理解する
学習障害(LD)は、人によって特性の強さや程度が異なるため、自分はどの程度のことまでできるのか、どのようなことに対して困りごとを感じるかをしっかり認識しましょう。
このようにして自分の障害の特性と状態をしっかりと把握しておくことで、周囲とのコミュニケーションもスムーズに取ることができるようになり、周囲の方からの理解も得やすくなります。
資料やマニュアルはマーカーを引いたり、読み上げ機能を活用する
長い文章を読む事には困難を感じても、短い文章であれば理解しやすいという方は、今読んでいる箇所にしるしをつけたり、マーカーでラインを引きながら読むようにすると文章を理解しやすくなります。
読むことに強い困難を感じても、聞き取ることで内容を理解できるという方は、パソコンやスマートフォンの読み上げアプリを活用したり、職場の人に読み上げてもらうことで内容を理解しやすくなるでしょう。
また、資料やマニュアルには図や写真を入れてもらうように周囲の人にお願いするのも有効な手段のひとつです。
メモを取るのが難しい場合には、指示内容を録音したりあらかじめメモに書いてもらう
文字を書くのが困難な特性のある方は、なるべく文字を書かなくて済むような手段を考えましょう。
周囲の方に自分の特性を伝えた上で、指示は早い段階でメールなどに書いてもらったり、許可をもらって録音や写真撮影を行い、目と耳で情報を拾うようにするのも有効な方法です。
時間管理はアラームやリマインダー機能を活用する
スケジュール管理が苦手な方は、決まった時間にアラームやリマインダーにより通知を受け取ることで、スケジュール管理が容易になります。
また、個人作業ではなくチームで仕事をしている部署に配属してもらえるのであれば、上司や同僚に声かけを行ってもらうことができるため、周囲の方とタイミングを合わせて作業を進めやすくなります。
計算業務には電卓や計算アプリを活用
計算に時間がかかるタイプの学習障害(LD)の方は、電卓や音声入力に対応している計算アプリなどを活用することで、業務をスムーズに進めることができます。
毎月同じ方法で計算するなどの業務がある場合には、あらかじめ表計算ソフトで数式を組んでおくこともおすすめです。
数式を自分で組むことがむずかしい場合には、周囲の方に作成をお願いしておきましょう。
情報伝達の手段を統一する
文章の読み取りに困難な特性を持っている方は、聞き取りが出来たり短文なら読み取りができるなど、自分の特性に合った方法で情報を伝達してもらえるように、周囲の人に伝えておくことも大切です。
情報伝達の手段を統一してもらうことで、スムーズなコミュニケーションを取ることが可能になります。
困りごとがあったら無理せずに支援機関を活用しよう
学習障害(LD)の方が困りごとを抱えている場合には、一人で悩まずに困りごとの種類に合った機関に相談することが大切です。
相談できる期間には、以下のようなものがあります。
【相談窓口】
一般的な困りごとの相談窓口には、以下のようなものがあります。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、学習障害(LD)などの発達障害を抱える本人や家族、関係機関への支援を行う専門機関です。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保険、福祉、教育などの関係機関と連携し、障害者の身近な地域において就業面及び生活面に置ける一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進と安定を図ることを目的とした機関です。
日常生活自立支援センター
日常生活自立支援センターとは、認知症の高齢者や知的障害者、精神障害者などの方々に、自分に必要な福祉サービスを選んだり、利用するための契約を結んだり、日常的な金銭の管理などについて支援を行う機関です。
【仕事に関する相談先】
仕事に関する困りごとを相談できる機関には、以下のようなものがあります。
障害者就労・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保険、福祉、教育などの関係機関と連携し、障害者の身近な地域において就業面及び生活面に置ける一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進と安定を図ることを目的とした機関です。
障害者職業センター
障害者職業センターには、障害者職業カウンセラーなどが配置されていて、ハローワーク、障害者就労・生活支援センターと密接に連携しながら、就職や職場復帰を目指す障害がある方や障害者雇用を検討している事業主の方、障害がある方の就労を支援する関係機関の方に対して、支援やサービスを提供する機関です。
ハローワーク
ハローワークは、障害がある方の就職活動を支援するため、障害について専門的な知識を持つ職員や相談員を配置し、仕事に対する情報を提供したり、就職に関する相談に応じてくれる機関です。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、事業所に通いながら就職に向けたサポートを受けることができる機関です。就職に役立つ知識やスキルを学ぶことができ、就職の準備や就労支援員に就職や体調に関する相談をするなど、必要なサポートを受けることができます。
障害者虐待防止センター
障害者虐待防止センターは、虐待を発見した人の通報や虐待を受けた本人からの届け出の受付窓口です。
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