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高次脳機能障害の方が一人暮らしをするために注意すべきポイント

更新日:2023年04月20日

高次脳機能障害になってしまうと、日常生活に支障をきたしてしまう場合があります。このような状態になった際に、一人暮らしをすることは可能なのでしょうか。高次脳機能障害の方が一人暮らしをする際には、一般の方とは異なる点に注意する必要があります。ここでは高次脳機能障害の症状や一人暮らしを行う際の準備、そして困りごとが起こった時に相談できる機関の紹介などを行っていきます。
 

高次脳機能障害とは


高次脳機能障害とは、脳に何らかの損傷が起こることによって生じる障害です。
その障害の種類には、記憶障害や注意障害、性格の変化などさまざまなものがあります。
高次脳機能障害は交通事故などによる他の怪我や病気などのように、目に見える怪我や病気ではありません。
そのため、他の人からは高次脳機能障害の方が抱える悩みや苦しさなどが理解されにくく、本人も自分の障害を受け入れづらいという特徴があります。

高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害の症状には、以下のようなものがあります。

 

記憶障害

記憶には、起こった出来事を覚えておく「記銘力」と、覚えていたことを思い出す「想起力」の二つがあります。
高次脳機能障害はこの二つの記憶の力のうち、「記銘力」に大きな影響が出ることが多い傾向があります。
「記銘力」に高次脳機能障害の影響が出ると、新しいことを覚えることが難しくなってしまうので、約束を忘れたり内容を間違って覚えてしまったりなどといった形で日常生活に支障をきたしてしまいます。

 

注意力障害

注意力が低下し、一つのことに注意を向け続けたり注意の対象を切り替えることが困難になる障害のことを注意力障害といいます。
周囲の環境に気をとられすぎてしまうあまり落ち着きがなくなったり、逆にひとつのことに没頭しすぎてしまうため、複数の作業を同時に行うことができなくなったりしてしまいます。

 

遂行機能障害

物事を行う時に、自分で手順を決めたり段取りを考えたりすることができなくなってしまう症状を、遂行機能障害といいます。
何かを行う時には、一つ一つ指示されないと行動に移せなくなったり、融通を効かせることができなくなってしまうのが、この遂行機能障害です。

 

社会的行動障害

社会的行動障害とは、感情をコントロールすることが難しくなり、状況に応じた行動が取れなくなってしまう障害です。
すぐにイライラする・子どもっぽくなるなどの症状が出るため、対人関係に影響をきたすことも少なくありません。
それ以外にも我慢することができずに、浪費を繰り返してしまうという症状が出ることもあります。
また、疲れやすくなったり、気力がなくなったりすることで引きこもりがちになってしまうこともあります。

 

半側空間無視

空間の半分を認識することができなくなってしまうのが、この半側空間無視という症状です。
多くの場合、左側を認識することが難しくなってしまうため、この症状が出ると右側を向いてしまい、そちらにばかり注意が向いてしまいます。
半側空間無視の症状がある人の目の前に横向きにピンと張った状態の糸を差し出し、真ん中をつかむように指示しても、右寄りにつかんでしまいます。
また、食事の際に左側の食べ物だけを残してしまったりします。

 

失語症

失語症とは、言語を扱う能力に障害が生じてしまい、話す・書く・聞く・読むなどの行為が困難になってしまいます。
そのため他人に意思を伝えたり、言われたことを理解することが困難になることがあります。

高次脳機能障害のある方は一人暮らしできる?

高次脳機能障害がある人でも、その症状が軽い場合には一人暮らしをすることは不可能ではありません。
しかし、症状が重い方は難しい可能性があります。
高次脳機能障害の症状が軽い方が一人暮らしをする場合には、症状の特性にあわせて生活のしかたを工夫したり、支援機関によるサポートを受けることでスムーズに一人暮らしができるようになるでしょう。
身体に障害がある場合には、バリアフリーや特別な設備が必要になることもあります。
そのような場合には、設備が整った物件を見つけるのが難しいことも考えられるため、入居に時間がかかるケースがあります。

高次脳機能障害の方が一人暮らしをする前にやっておくべきこととは

高次脳機能障害の方が一人暮らしをする前には、やっておくべきことがあります。
ここでは、その「やっておくべきこと」について解説していきます。

 

自分自身の障害の特性や症状について自己理解を深める

まずは、自分自身の障害の程度のものなのか、障害の特性としてどのようなものがあるのかをしっかりと把握しておきましょう。
また、どのようなときに症状が出やすいかを知っておくことも大切です。
このように自分の障害についてしっかりと理解をしておくことで、どのような支援が必要かを把握したり、緊急時の対策が立てやすくなります。

 

家事に慣れておく

高次脳機能障害を患う前にしっかりと家事ができていた人でも、高次脳機能障害の症状が出ると家事をそつなくこなすことが難しくなることもあります。
また、それまで家事をあまりしてこなかった人は、当然ながら家事を一通りこなすことができるように練習しなければなりません。
一通り家事をやってみることで、どれぐらい体力や時間が必要になるかを把握しておく必要があります。
また、症状によっては一人で行うことが難しい家事がないかを確認しておき、できない家事がある場合には、支援機関に相談しサポートを依頼しましょう。

 

必要な生活費を把握するとともに貯金もしておく

一般的に一人暮らしを行う際に必要とされる費用は、総務省の家計調査によると平均で17万8542円といわれています。
この金額は一人暮らしを行う際の家賃により大きく変動するため、一人暮らしをしようとしているエリアの家賃相場を事前に調べておきましょう。

 

何かあった時や困りごとがでてきた時の相談先や対処方法を決めておく

症状の悪化や、それ以外の日常生活での困りごとがでてきた時に相談できる機関を決めておいたり、対処法を把握しておくようにしましょう。

一人暮らしをする際に必要なこと

一人暮らしを始める際には、以下のようなことが必要になります。

 

物件探し

まず、一人暮らしを行う物件を探します。
このときにかかりつけの病院へのアクセスが良いか、スーパーなどが遠すぎて買い物が負担にならないかなど、日常生活を便利に行うことができる場所にエリアを絞って物件探しを行うことをおすすめします。

 

生活必需品や家具の購入

「物件が決まったら、生活必需品や家具を購入する必要があります。
家具を購入する際は、その家具を置く部屋の縦横の長さを測っておき、そこに納まる大きさのものを選びましょう。
生活必需品については、障害の種類やその程度によっては一般のものでは使いづらいものがある可能性もあるため、よく考えて選びましょう。

 

住所変更などの必要書類を役所に提出する

引っ越しの前に、そして引っ越しが終わったら転出届や転入届など住所変更に必要な書類を役所に提出します。

 

料理、掃除、洗濯、水道光熱費の支払い、服薬管理などの日常生活を一人で行う

ここまでの手続きを経て、一人暮らしが始まります。
料理・掃除・洗濯などの家事に加えて、水道光熱費などの支払い、服薬管理などを一人で行う必要があります。

高次脳機能障害がある方が一人暮らしをする際の注意点

高次脳機能障害がある方が一人暮らしをする際には、以下の点に注意する必要があります。

 

メモをとる習慣を身に付けておく

高次脳機能障害の方の中でも特に記憶障害の症状がある方は、メモをとる習慣を身に付けるようにしましょう。
そのメモを目につくところに貼っておき、そのタスクが終了したらメモを廃棄するといった工夫をすることをおすすめします。
また物の置き場所は決めておき、使い終わったら必ずもとの場所に戻すことで、物の紛失を防ぐことができます。

 

スケジュールはカレンダーやアプリで管理を行う

1日のスケジュールをカレンダーやアプリで可視化し、常に見られる状態にしておきましょう。
遂行機能障害がある方は、時間単位でスケジュールを決めておくと、次に行うべきことが分かりやすくなり、一人暮らしをスムーズに進めることができるようになります。

 

「ながら作業」はしない

高次脳機能障害がある方の中でも特に注意障害がある方は、同時に2つあるいはそれ以上のことをしようとせずに、1つ1つ行いましょう。
特に調理などで火を使っているときに症状が出てしまうと、火災の原因になってしまうこともあるので、他に気をとられてしまう場合には張り紙などで自分の注意をそらさないような工夫をしておきましょう。

 

家族や友人などとコミュニケーションをとる

一人で生活していると、精神的に不安定になりやすい傾向があります。
そのため、電話やメールなどで家族や友人と定期的にコミュニケーションをとることをおすすめします。

困りごとが出てきたときの相談窓口・支援機関

高次脳機能障害の方が日常生活や仕事で困りごとが出てきた際には、以下の機関に相談することができます。

 

【生活に関する相談先】

地域生活支援事業

地域生活支援事業とは、障害者や障害児が基本的人権を享受する個人としての尊厳にふさわしい日常生活や社会生活を営むことができるよう、市町村等が実施主体となって地域の特性や利用者の状況に応じ、自立した生活ができるよう支援を行う機関です。
判断能力が不十分な方が地域において自立した生活を送れるよう、利用者との契約に基づいて福祉サービスの利用援助などを行ってくれます。

 

日常生活支援事業

日常生活支援事業は、全国的なネットワークを有する都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会が主体となって実施している事業です。
生活支援員が、日常生活のサポートを行ってくれます。

 

【仕事に関する相談先】

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者雇用促進法により創設されたしくみで、働きたいと思った障害がある方の、何から始めたらいいか、どのような支援を受けることができるのかといった課題を解決するための相談に乗ってくれる機関です。

 

障害者職業センター

障害者職業センターとは、障害者の雇用に関する事業主のニーズや雇用管理上の課題を分析し、専門的な助言や援助を実施する機関です。
障害者就業・生活支援センター、障害者雇用支援センターなどからの依頼に応じ、技術的・専門的な事項についての援助を実施します。

ハローワーク

ハローワークでは、個々の障害の状況や適正、希望職種に応じて職業相談、職業紹介、職場適応のためのアドバイスを行っています。
また、障害者に限定した求人以外にも一般の求人に応募することも可能です。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、国からの補助を受けて障害のある方や難病を抱えている方の就職をサポートするサービスです。
就労するためのスキルや労働習慣を身に付けたり、働き続けるための自己管理を身に付けることができます。

 

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atGPとは

atGPとは、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する各種障害者就職および転職支援サービスの総合ブランドです。
20年以上障害者の就職や転職の支援を行ってきた日本の障害者雇用のパイオニアともいえる存在が、このatGPです。
atGP就職や転職に関するサービスは、基本的に無料で受けることができます。
障害や難病を抱える人の将来のビジョンや金銭的な課題も含めて、ひとりひとり異なる不安や悩みに関して専属のエージェントが二人三脚で寄り添い、サポートを行ってくれます。
高次脳機能障害を抱える方が一人暮らしや就労に関する困りごとを抱えている場合には、atGPに相談することを念頭に置いておくことをおすすめします。
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まとめ

ここまで、高次脳機能障害の方が一人暮らしを行う際の注意点などについて解説してきました。
高次脳機能障害の症状にはさまざまなものがあるため、それぞれの症状に合った工夫を行いながら一人暮らしをする必要があります。
また、大切なのは悩み事や困り事が起こったときに相談できる人や機関を知っておくことです。
一人暮らしといっても行政の支援やサポートを受ける必要が出てくることもあるので、困り事が出てきた場合には、どこに相談したらよいかをきちんと把握しておきましょう。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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