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統合失調症の人が生活で気をつけるべきポイントとは?

更新日:2023年12月25日

統合失調症は、うつ病と並ぶ罹患率の高い精神疾患で、日本には約80万人の患者がいます。主に思春期から30歳ぐらいまでに発症し、幻覚や妄想などを主症状とする病気で、一昔前までは治療が難しいと言われていましたが、現在では治療法も進歩し、回復する病気となってきています。ここでは、統合失調症を持つ方がどのように病気と向き合い、普段の生活をすればよいのか、そのポイントを中心に解説していきます。是非ご参考にしてください。
 

統合失調症とは


統合失調症は、精神疾患の1つであり、脳の様々な働きをまとめることが困難になるため、幻覚や妄想などの症状が発生する病気です。

 

原因は正確には不明ですが、統合失調症になりやすい要因を持つ人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚などの人生の転機で感じる緊張などがきっかけとなり発症する可能性があると考えられています。

男女ともに、思春期から30歳頃に多く発症し、特に女性の場合は40代でやや多くなる傾向があります。

 

なかなか自分で気づくことができない精神疾患であり、統合失調症の場合は、幻覚、幻聴、妄想などが主な症状です。周囲が異常な動作を見つけたら、専門医への相談を進めてみましょう。早期発見・早期治療は、どの病気にもとても重要だからです。

統合失調症の症状


統合失調症には大きく分けて陽性症状、陰性症状、認知機能障害があります。

 

【陽性症状】

陽性症状とは、統合失調症の発症に伴う、これまでにない特有の症状のことです。主に幻聴、幻覚、妄想があり、本人にとっては実際に見えていたり、聞こえていたり、事実であるというように思えてしまい、周囲の人に信じてもらえないという状況に陥ることがあります。

 

【陰性症状】

陰性症状とは、統合失調症により、以前持っていたものが失われたり、低下したりする症状のことです。主な症状としては、感情が乏しくなること、過度な意欲の欠如ややる気の無さ、思考力の低下、人との関わりを嫌うようになるなどがあります。

 

【認知機能障害】

情報を取り入れて判断することが困難になり、注意力が低下し、物忘れや危険な目に遭う可能性が高まるほか、過去の記憶や経験からものごとを判断できなくなる、ものごとを頭中で整理分類して考えることができなくなるなどがあります。

 

また、よくある症状としては、疲れやすい、周囲の目や大きな音が気になって集中できないなどが見られます。

 

統合失調症発症から回復までの流れ

【前兆期】

目立った症状はありませんが、頻繁に眠れなくなったり、苛々したり、集中力が低下したり、ミスや忘れ物が多くなったりする症状が続きます。

 

【急性期】

幻覚や妄想の症状が出て、自分が変だと感じながらも、自分が病気だと思えず、他人から見ておかしな行動をとることがあります。これらは実際は脳の働きによるもので、本人にとっては事実ですが、周囲からおかしいと思われたり、意見が合わないため、自身も他者に不信感を持ったりします。

 

また、周りの出来事に敏感になり、不安や緊張を強く感じることが多くなります。

 

悪口を言われたり、誰かに狙われているように感じたりすると、不安や緊張が大きくなり、学校や仕事に行けなくなることがよく見られます。しかし、無理に登校や勤務を続けると症状が悪化したり、うつ病など2次障害を発症する危険性もあります。

 

【消耗期(休息期)】

消耗期に入ると、目立った症状(幻覚や妄想など)は少なくなりますが、元気ややる気がなくなります。言葉数も減り、家から極端に外出せず、他者と会うのも億劫になり、必要な連絡以外の交流をしなくなります。

 

この症状は、急性期に心と体のエネルギーを多く使ってしまったことが原因と考えられます。そのため、薬を飲み続けながら、十分にゆっくり休むことが必要です。

 

【回復期】

少しずつ元気が出て安定してきている時期です。焦らず、休息をとりながらゆっくりと生活の範囲を広げていくようにしましょう。

 

回復期では、再発予防のために薬を忘れずに飲み、医師の指示に従って治療を続けましょう。統合失調症は再発しやすいため、症状が落ち着いても治療を続けることが大切です。

 

統合失調症の方が生活で気をつけること

統合失調症について正しい知識を身につける

統合失調症に限らず、全ての精神疾患では、本人が自分で病気に気づくのは困難なものです。多くの場合、家族や友人などが変化に気づき、受診することが病気に気づくきっかけとなります。

 

一旦理解できれば、後は前向きに治療に取り組むことが早期改善のための近道となります。

 

まずは統合失調症について正しく知識を得、どんな時に自分がストレスを感じるか、何が病気の症状なのかなど自身の状態について知ることが大切です。

通院し、医師の話を聞けば、統合失調症は短期には治療できないものであることも理解できるはずです。必ず、医師の指示に従い、自己判断で治療をやめてはいけません。焦らずに治療に取り組むようにしましょう。

 

主治医や看護師とコミュニケーションを取る

統合失調症の場合、病気の症状から、他者とコミュニケーションを取ったり、アドバイスを素直に受け取れないことがありますが、治療をする上では主治医や看護師とのコミュニケーションは重要です。自身の症状や困っていることを直接伝えることで、より適切な治療を行うことができます。

 

また、統合失調症の治療は長い期間が必要なケースがあるため、医師との連携がスムーズにできるかが重要なのです。しかし、本人が通院を拒んだり、薬の服用をやめることもあり得ますので、家族や周囲の方は本人と適切な距離をとり、治療に適した穏やかな環境を整える必要があります。周囲が一生懸命になるあまり、通院や服薬を無理強いすると、かえって行かなくなる恐れもあります。

 

医師や看護師とのコミュニケーションが重要であっても、本人の性格や病状によっては、通院しても自分の症状や困りごとをスムーズに話せるわけではありません。話を集中して聞いて理解することが難しいこともあります。そんな時、本人が信頼できる家族やパートナーが病院に同行し、医師の話を聞き、本人の言いたいことを代弁するということも考えられます。しかし、信頼できる人が同行しない場合も、かえって本当のことをしゃべりにくいということも起こり得ます。同行については、しっかりと本人と話し合い、納得したうえで行う必要があります。

 

家族が統合失調になったらどう接すればよいのか?気になる方はこちらの記事をご覧ください:家族が統合失調症になった場合のサポートや接し方について | atGPしごとLABO

統合失調症の方が社会復帰を目指す場合

回復期に入った際、社会復帰を目指す場合はリハビリや復職支援プログラムを受けることが可能となります。

 

しかし、いくら回復期に入ったとしても、社会復帰のタイミングは必ず主治医と相談するようにしましょう。

 

統合失調症の治療と復職支援

リハビリ 

リハビリは就労などの社会復帰をするためにおこなう訓練等のことです。他者とのコミュニケーションに必要なスキルを学ぶソーシャルスキルトレーニングや、統合失調症の症状からくるストレスの抑制や、行動や思考法などを変える認知行動療法や作業療法などがあります。ソーシャルスキルトレーニングは障害福祉サービスとして自己負担額が原則1割となる就労移行支援事業所や、有料で行われる一般事業所で受けられるものなどがあります。

 

作業療法・認知行動療法は精神科病院等で開設されている精神科デイケアに通所することで受けることができます。これらの療法以外にも社会復帰に役立つ様々なプログラムやグループワークなども用意されており、自身の統合失調症の症状が障害者総合支援法の精神通院医療の対象となれば費用は1割負担で利用できます。

 

リワーク(復職支援プログラム)

リワークは、精神障害によって休職し、回復期を経て復帰する際に利用できる支援制度です。ビジネススキルやコミュニケーションスキルの習得、生活習慣の改善などがプログラムに含まれています。精神科病院や障害者の就労やリハビリを支援する公的機関、一般事業所などで行われています。リワークを希望する場合は、通院しているクリニックや障害者の生活や就労を支援する障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターなどで問い合わせてみるとよいでしょう。

 

仕事選びのポイント

統合失調症などの精神疾患がある場合、働き方や職場環境が重要な要素となります。一足飛びに正職員や無理な長時間労働を避け、最初は短時間勤務や、自身の症状・特性に適した環境が整った職場を慎重に検討しましょう。その際には、主治医に相談し、場合によっては、精神障害者保健福祉手帳の取得をした上での障害者雇用も視野に入れてみましょう。

 

統合失調症と向き合いながら仕事をしたいという方はこちらの記事がおすすめ:統合失調症と上手につきあうための働き方と環境選びのポイント | atGPしごとLABO

 

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まとめ 

統合失調症は、比較的若い世代で発症しやすいメジャーな精神疾患です。その症状は、幻覚・幻聴、妄想などの陽性症状がよく知られていますが、陰性症状や認知機能障害からくる思考力の低下や、過去の経験から判断ができない部分もあります。

 

統合失調症のある人に理論的に話しても理解を得られることは困難で説得も難しいことが多いため、無理に説得しようとすると反発を招きかねません。そのため、本人と周囲の人間がしっかりと統合失調症の症状を理解し、正しい治療を継続することが大切です。治ったと自己診断して治療を辞めて就職し、そして重症化するというスパイラルを繰り返さないように、医師や家族とともにゆっくりと歩みを進めることが重要です。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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