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家族が難病になってしまった場合に利用できる公的支援などを解説

更新日:2022年11月04日

家族がもし難病になってしまった場合、難病になった本人を気遣うとともに今後の生活について不安を抱いてしまう方も多いのではないでしょうか。難病になった本人が生活しやすいように、周囲の人はどのような接し方をすべきか悩まれる方もいらっしゃるでしょう。しかし難病についての相談ができる機関や、利用できる支援について知っておくことで難病の人も周囲の人も、心配や困りごとを軽くすることができます。ここでは難病とは何かということや、周囲の人の接し方、難病になってしまった場合に利用できる公的な機関や支援について解説していきます。

難病とは

難病とは、医学的に明確に定義された病気のことではなく、治療法が無いかまた困難で慢性の経過を辿る病気のことをいいます。

難病は完治することはないとされていますが、適切な治療や自己管理を行うことで普通に生活できるものも多くなってきています。

そのため現在では、「難病を抱えながら働く」ということが非常に大きな課題となっています。

現在では338種類の病気が「特定疾患」として認定されており(2022年1月現在)、その種類は多種多様です。

家族が難病になったときに周りの人ができること

家族が難病になってしまった場合、周囲の人は難病当人と同じぐらい、またはそれ以上に不安や心配に悩まされることもあります。

大切な家族が難病に苦しんでいる様子を傍で見ていることは、非常に辛いことです。

治療方法が確立されていなかったり、治癒が難しかったりする難病に対して周囲の人は「自分は難病になってしまった家族のために何もすることができない」と、無力感を感じることもあるでしょう。

しかし、難病の人に対して周囲の人ができることはあります。

周囲の人が難病の人に対してまずできることは、難病についての正しい知識を持つことです。

難病に対する正しい知識を持つことで、周囲の人ができる物理的なサポートが明確になってきます。

また、難病の人の傍にいて見守ることも非常に大切です。

傍にいてコミュニケーションをとることで、難病の人がどのようなサポートを望んでいるかといったことや、自分の病気の状態を正しく理解して欲しいという願いに寄り添うことができるようになります。

このようなサポートは、医師や看護師にはできない家族ならではのものです。

このような家族だからこそできるサポートを、無理を感じない程度から始めてみることをおすすめします。

難病になった場合に経済面を支える支援制度

家族が難病になってしまった場合、治療費が大きな負担になることもあります。

しかし、難病の治療費を軽減する公的な支援制度があります。

ここでは、その支援制度について解説していきます。

 

難病医療費助成制度

難病医療費助成制度の対象となるのは原則として「指定難病」と診断され、なおかつ「重症度分類等」に照らし合わせた病状の程度が一定以上の場合です。

確立された対象疾病の診断基準とそれぞれの疾病の特性に応じた重症度分類等が、個々の疾病ごとに設定されています。

難病医療費助成制度は、都道府県または指定都市に申請を行います。

 

高額療養費制度

高額医療費制度とは、医療機関や窓口で支払った金額が月の初めから終わりまでの一か月間に、定められた上限額を超えた場合にその超えた金額を支給する制度のことです。

この金額には、入院時の食事の費用や差額ベッド代は含まれないので注意しましょう。

金額の上限は、加入者が70歳以上であるかどうかという点や、加入者の所得水準によって違いが出てきます。

また、70歳以上の人は外来のみの上限額も設定されています。

高額医療費は、治療を受ける人が加入している公的保険に高額医療の支給申請書を直接または郵送などの方法で提出すると支給を受けることができます。

この際に、病院の領収書などを同時に提出する必要がある場合もあります。

 

医療費控除(税制上の軽減制度)

医療費控除とは、直接医療費の軽減措置を受けることができる制度ではなく、支払った医療費の金額に応じて税金が軽減されるというものです。

一年間に10万円以上の医療費を支払った場合に、医療費控除を受けることができます。

医療費控除を受けるために申請する特別な手続きはなく、確定申告の際に確定申告書と医療費の明細書を作成して税務署に申請します。

 

障害者総合支援法

障害者総合支援法とは、障害や難病の人が基本的人権のある個人としての尊厳にふさわしい社会生活や日常生活を営むことを可能にするために、必要になる福祉サービスに関する給付や地域生活支援事業、その他の支援を総合的に行うことを定めた法律です

障害者総合支援法によって障害や難病の人が受けることができるサービスは、自立支援給付金という給付金の支給です。

障害者自立支援法のサービスを受けたい場合には、お住いの市区町村の窓口で申請を行います。

指定難病の医療費助成の申請方法

難病指定の医療費助成を受けるためには、以下に記述する手順に沿って申請を行い、支給認定を受ける必要があります。

ここでは、難病指定の医療費の申請を行う手順について解説していきます。

 

都道府県の窓口で必要書類をもらう

都道府県の窓口で、必要書類をもらいます。

担当窓口は多くの場合、市の保健所や健康福祉事務所の「健康増進課」や「保健予防課」となっています。

 

「難病指定医」を受診する

臨床調査個人票を持参して、難病の診断や治療の経験が豊富な「難病指定医」を受診します。

難病指定医が在籍している医療機関は、難病情報センターの「指定医療機関・指定医のご案内」というページから探すことができます。

 

臨床調査個人票とその他の必要書類を都道府県に提出する

難病指定医により記入済みの臨床調査個人票とその他の必要書類を、都道府県の担当窓口に提出します。

 

都道府県から指定難病医療費受給証が送付される

審査が行われたのちに認定が下りた場合には、「医療受給者証」が自宅に送付されます。

申請から交付までにかかる期間は、約3か月かかります。

 

難病がある人が受けることができる福祉支援

 

福祉制度上の「難病」の定義とは、医療費助成の対象である指定難病よりも広く、2019年7月1日の時点で361疾患となっています。

具体的な疾患名は、厚生労働省のホームページから確認することができます。

このような「難病」を患っている場合、障害者手帳の交付を受けてさまざまな支援を受けることができますが、障害者手帳の交付を受けていなくても受けられる支援もあります。

ここでは、それぞれのケースでの受けられる支援について解説していきます。

 

障害者手帳による支援

難病の人の中には、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を取得している人もいます。

このような障害者手帳の中でも身体障害者手帳は1級から6級の等級が定められていて、等級に応じて医療費や補装具の費用の助成、所得税、住民税、自動車税の減免や控除、公共交通機関の運賃やNHKの受診料、携帯電話利用料金、美術館や動物園などの公共施設の入場料、上下水道料金の割引、公営住宅への優先入居、企業の障害者雇用義務の対象としての採用などの支援を受けることができます。

また、条件を満たすことにより障害年金の受給が可能になります。

 

障害者手帳を取得していなくても利用できる福祉的支援

障害者総合支援法の対象疾患がある人は、障害支援区分の認定や支給決定などの手続きの後、障害者手帳の交付を受けていなくても障害福祉サービスを受けることができます。

障害支援区分とは、その人に必要な障害福祉サービスの度合いのことです。

使用できる障害福祉サービスの内容は、障害支援区分により異なりますが、介護給付(居宅介護や重度訪問介護など)、訓練等給付(自立訓練や就労移行支援事業、就労継続支援A型・B型)の3つに大きく分けることができます。

なお、就労系福祉サービス等の訓練等給付は、難病の区分に関わらず利用することができます。

 

難病のある方が相談できる窓口

難病と診断されたとき、今後の生活に関する事やまず何をしたら良いのかなど、さまざまな不安を抱くケースも少なくありません。

しかし、地域には難病について相談できる窓口や情報源が整備されているので、一人で悩まずそのような機関を利用することをおすすめします。

 

難病相談支援センター

難病の人やその家族が、日常生活や難病の療養、仕事を行うにあたっての悩みを持っている場合には、難病相談支援センターに相談しましょう。

難病相談支援センターは、難病の人の生活の維持向上を支援することを目的に、都道府県及び指定都市に設置されています。

 

難病情報センター

難病情報センターは、公益財団法人難病医学研究財団が厚生労働省の補助事業として運営しているWEBサイトで、難病に関する情報が記載されています。

このサイトでは指定難病の解説や、各種制度の概要及び相談窓口などの情報を収集することができます。

 

難病の患者団体

難病の人やその家族達が発足した団体のことで、県団体の難病関連団体や、疾患別の団体などがあります。

同じ難病を持つ人と交流したり講演会などに参加したりすることで、自分の難病に対する理解を深めたり、日常を快適に過ごすための新たな工夫などの情報を入手したりすることができます。

難病がある方の就職と仕事について

難病になってしまっても、仕事をしたいと思う方もいらっしゃるでしょう。

そのような場合には、以下のような機関に相談することをおすすめします。

 

ハローワーク

ハローワークでは難病の人に対して、難病の種類や程度に応じたきめ細やかな就職相談や職業の紹介、就職後のアフターケアを行っています。

またハローワークには難病患者就職サポーターが配置されており、難病相談支援センターと連携を取りながら就職を希望する難病の人に対して、その症状の特性を踏まえて就労支援を行ったり、在職中に難病を発症した人の雇用継続の支援を行ったりするなどの総合的な支援を行っています。

 

就労移行支援

就労移行支援事業所は、一般企業への就職に向けたサポートを受けることができる通所型の障害福祉サービスで、難病の人でも利用できます。

就労移行支援を利用する人はサービスを提供している事業所に通い、職業トレーニングや自己分析、企業インターン、面接や履歴書対策などの就職活動のサポートや、就職後の定着支援などのサービスを受けることができます。

 

地域障害者職業センター

地域障害者センターは各都道府県に設置されており、難病の人を含む障害者に対する職業評価や職業相談を行います。

それとともに、職業準備支援や職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を行います。

 

難病相談支援センター

難病相談支援センターとは、難病の人の療養生活に関する各般の問題について、難病の人本人及びその家族などの関係者からの相談に応じてくれる機関です。

相談の内容は日常生活上のことや難病の人の自主的な支援に関すること以外にも、適切な就労支援サービスを受けられるようハローワークや障害者就職センター、就業・生活支援センターと連携して就労に関する相談支援を実施しています。

 

職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業

ジョブコーチとは、難病の人が就業するにあたって職場に長期定着できるよう支援を行う人のことをいいます。

難病の人に対して仕事への理解を深める助けを行い、仕事をどのように進めていけばよいのかをアドバイスしたり、毎日勤務できるよう生活リズムの見直しや通勤に対しての支援を行います。

 

障害者就業、生活支援センター

難病の人が就業及びそれに伴う生活上の支援を必要とする場合、就業に関する相談支援と生活習慣や健康管理等の生活面での支援を一体的に行うとともに、事業主に対する雇用管理に関する助言を行っています。

atGPジョブトレとは

atGPジョブトレとは、難病の人が就職のために必要になるスキルの習得から、就職活動のサポート、就職後の職場定着までトータルでサポートしてくれるサービスのことです。

具体的なサービスの内容は、難病への対処スキルやPCなどのビジネススキルを身に付ける就職準備、実際の職場を想定した模擬業務や企業実習を行い実践力を身に付ける実践トレーニング、求人紹介や書類作成、面接などの就職活動に関するサポート、就職後も長期に渡り安定して働くことができるよう最長三年半の定期面談による職場定着サポートがあります。

難病の人で就職を希望している方は、atGPのジョブトレを利用して希望の職場・職種で長期に渡り働くことができるようサポートを受けてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

ここまで難病とは何かということに始まり、難病になってしまった際に受けることができるさまざまな支援制度や相談に応じてくれる機関、就職を希望する際にサポートしてくれる機関について解説してきました。

難病の人でも難病の種類や程度によっては、就職し社会とのかかわりを持ちたいと思う方も少なくありません。

そのような場合には希望の企業や職種の仕事に就職するために、公的な機関やatGPジョブトレを活用することをおすすめします。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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