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強迫性障害の方のお金事情 ~どんな公的な保障や支援があるのか~

更新日:2022年11月09日

強迫性障害は強迫観念と強迫行為をともなう精神疾患ですが、その発症率はおよそ2%、100人中1~4人程度と、うつ病ほどではありませんが、割合身近な精神疾患と言ってよいでしょう。ある特定の行為をしないと不安、他のやるべきことに集中できないなどは一定数の人にあるのではないかと思いますが、それが度を越して日常生活をするのに支障が出るレベルになると強迫性障害と診断されることがあります。今回は、そのような強迫性障害になって労働に制限を受けたり、治療費に負担が多くなった時、どのような公的な経済的保障や支援があるのか、そのお金事情をご紹介していきます。公的な制度や支援は知らなければ申請できませんし、原則、申請しなければ利用できません。この記事がそれらを知り、利用のきっかけになれば幸いです。
 

強迫性障害とは

強迫性障害は強い「不安」や「こだわり」によって日常に支障が出る病気です。強迫性障害には、強迫観念と強迫行為の2つの症状があります。

 

強迫観念 … 意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考え

強迫行為 … ある行為をしないでいられないこと

 

代表的な強迫観念、強迫行為としては以下のものが挙げられます。

 

・不潔恐怖および洗浄

・加害恐怖

・確認行為

・儀式行為

・数字にこだわる

・場所や配置にこだわる

強迫性障害の方が受けられる支援やサポート

障害年金

国民年金または厚生年金加入者が障害状態になったときに、定められた程度により等級に分けられ、それぞれの算定方法により年金が支給されます。

 

障害基礎年金は1級97万2250円、2級は77万780円、それぞれ子の加算あり

 

厚生障害年金は1級96~192万円(目安)、2級は72~144万円(目安)、それぞれ配偶者の加給年金あり

 

自立支援医療制度(精神通院医療費の公費負担)

障害者総合支援法による各種障害を除去、軽減するための医療費について自己負担を最大1割に軽減する制度です。

 

対象となるのは?

・精神通院医療⇒精神疾患があり継続的な通院治療を必要とする者

・更生医療⇒身体障害者手帳を交付されていて、その治療により確実に障害の除去、軽減の期待できる18歳以上の者

・育成医療⇒身体障害のある18歳未満の児童でその治療により確実に障害の除去、軽減の期待できる者

 

精神通院医療の制度利用には精神障害者保健福祉手帳は要件ではありませんが、その通院する病院が制度の対象指定を受けている必要があります。

 

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は条件に当てはまる精神疾患の状態になった人に対して地方自治体が同手帳を交付し、税金や公共料金等の減免、その他の付加サービスが利用できるようにするものです。等級は障害の程度によって1~3級があり、等級により受けられるサービスが違う場合があります。

 

障害年金

障害年金保険とは国民年金保険、もしくは厚生年金保険に加入している状態で同制度上の障害状態に該当する場合は障害年金を受給することができる制度です。厳密にはいわゆる身体、知的、精神のような障害でなくとも、その他の傷病でも生活や仕事が制限されるようになった場合に年金を受け取ることができます。

 

障害年金について詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください:障害年金とは?対象となる障害から申請の流れまで徹底解説! | atGPしごとLABO

 

強迫性障害は障害年金の対象となるのか?

強迫性障害が障害年金の対象になる可能性はあります。ただし、自己治癒可能性や疾病利得を理由に一定範囲のものが認定対象外とされています。

 

具体的にどのような症状や状態ならばというのは明示されていませんが、「精神病の病態を示している」こと、例えば、 日常生活、社会的適応性からのずれにおいて、通常レベルを超えているといった状態が認定対象となりやすくなっています。

 

障害年金の申請をした方が良いケース

うつ病を併発しているような場合は、うつ病は「気分障害」にあたるため、認定対象から外されることがありませんので、障害年金を申請するほうがよいでしょう。

 

統合失調症の一部症状と認められる場合

統合失調症の一部症状と認められる場合も障害年金の認定対象となります。しかし強迫性障害が統合失調症の一部症状とであることが明確である必要がありますので、診断書や病歴申立書の書き方に注意が必要です。

 

 強迫性障害単独で請求する場合

診断書に強迫性障害としか記載されていなくても、「精神病の病態を示している」「精神病水準」にあることを診断書に記載してもらえれば、認定対象となる可能性が高くなります。「精神病の病態を示している」とは、例えばうつ病や統合失調症のように幻覚や幻聴などの病態がともなう場合を言います。

 

自立支援医療制度

自立支援医療制度は障害者総合支援法下の医療費減免制度です。定期的・継続的に精神科治療に通院している場合に、その治療にかかった医療費を本人の収入状況により最大で1割負担とし、後は公費負担になります。

 

このうち、精神疾患がある場合に利用できる精神通院医療は、外来や精神科デイケアなど通院による医療費が対象となっており、入院費は適用されません。

 

自立支援医療制度の自己負担は1割に軽減(健康保険の自己負担は3割)されます。精神科や心療内科の治療や治療薬は一般に比べて割高なことも多く、通常の健康保険の3割負担から原則1割負担(所得額に応じて毎月の自己負担額に上限が定められている)になることは利用者にとって大きなメリットとなります。

 

自立支援医療は自治体に指定された医療機関のみ利用できますので、事前に確認が必要です。自立支援医療の詳細については各自治体の担当窓口や、通院している病院の受付などでたずねてみてください。

自立支援医療の詳細や申請方法などについてはこちらの記事をお読みください

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は都道府県、政令指定都市、中核都市などによって発行される障害者手帳の種類の一つで、一定の条件下の精神疾患、発達障害のある方が取得することができます。

 

障害の程度によって1~3級に分かれており、取得することで交通機関の割引や、税金の優遇制度、公共料金の割引など、様々な経済的・福祉的サービスを受けることができます。

 

具体例としては、障害者雇用促進法による障害者雇用枠での求人に応募することができたり、所得税、住民税、自動車税などの減税措置、配偶者・扶養控除への加算、公共料金の割引、公共交通機関料金の割引、文化施設や商業施設、娯楽施設などでの割引などがあります。詳しくは手帳を発行する市区町村の障害福祉担当窓口(福祉事務所や福祉担当課)でたずねてみてください。

 

精神障害者保健福祉手帳の詳細や申請方法などに興味がある方はこちらの記事がおススメです

 

強迫性障害の治療をしながら仕事をするために

強迫性障害と診断されたら仕事はどうするべきでしょうか?

 

これら強迫性障害だけでなくその他の精神疾患の多くに言えることですが、大抵の場合、不安症をともなうような場合は、仕事をすることは大きなストレスとなり、症状を悪化させる可能性が高いです。

 

心身ともに疲れてしまった場合にはまずは療養するのが最優先です。退職をしてしっかり療養することもよい選択ですが、休職するという選択肢もあります。

いずれにせよ精神疾患には十分な休養が必要です。

 

復職の際にはリワーク支援(職場復帰支援)を活用するとスムーズに復職がしやすいでしょう。

 

退職を選択した場合は、十分に休養し、医師に相談したうえで心機一転、就職活動を行いますが、就職したいけど、自信がない、就職に必要なノウハウを身に着けたいという思う場合は、就労移行支援サービスを利用することもできます。

転職活動をする場合は、ハローワークや障害者専門の転職支援サービスの活用がおすすめです。自分ひとりで不安や悩みを抱えながら就職活動をする必要はありません。公的な就職支援サービスや民間のサービスをフル活用しましょう。

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まとめ

強迫性障害があっても症状が軽ければ働くことは可能です。考え方としてはできる限り無理せずに労働を含む社会参加を自分のペースで継続することも一つの方法です。

 

重要なのは、強迫性障害をふくむ精神疾患がある場合無理をしないことです。無理をして同時にうつ病などの別の精神疾患を併発することもあります。

 

このような時のために社会福祉サービスをふくむ社会保障があるのです。強迫性障害があっても障害年金や、医療費を軽減する精神通院医療や、取得することで税金や各種料金を減免したり、公共交通機関が割引となる精神障害者保健福祉手帳などいずれも取得できる可能性があります。

 

働きたいけど、働けない。そういうときは無理するほど精神疾患が悪化する可能性があります。ぜひ、公的・私的な制度やサービスをうまく利用して療養に努め、しっかりと心身の健康を取り戻して、元気に長く働いていただきたいと思います。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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