発達障害がある人の家族に対する支援にはどのようなものがある?
更新日:2022年10月25日
発達障害と診断されていたり、診断されていなくてもその疑いがあったりする場合には、その家族は発達障害がある人との接し方について悩みを抱えているケースが多くあります。そのような悩みを家族だけで抱え込んでいても、解決するのは難しいでしょう。その結果、家族は大きな負担を負ってしまうことも少なくありません。発達障害がある人が学校や会社で円滑な生活を送るためには、その家族に対しても支援や悩み事を受け付けてくれる機関を知っておくことが大切になります。ここでは、発達障害がある人の家族が受けられる支援について解説していきます。
目次
発達障害の特性
発達障害には自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)の三つの種類があります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害(ASD)の症状や程度は、年齢などによって非常に多です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の主な特性は1歳から2歳程度の頃から現れるようになり、
「人と目を合わせない」
「他の子どもに関心を持たない」
「言葉が遅い」
といった症状から、自閉症スペクトラム障害(ASD)に気付くケースが多くなっています。
その後成長していくにしたがって、
「一人遊びが多い」
「指さしをしない」
「他人の真似をしない」
「本人の名前を呼んでも振り向いたりしない」
「表情が乏しい」
「癇癪が強い」
「落ち着きがない」
などの症状も現れるようになってきます。
また、感覚に鈍さや敏感さなどムラがあるケースもあり、
「大きな音を怖がる」
「プールやお風呂が苦手」
「人が多い場所を嫌う」
といった傾向が見られるようになることもあります。
学齢期以降になると、主に学校内で
「友達ができづらい」
「しばしば一方的な関わり方をし、相手が嫌がっても話を続けてしまう」
などの症状が現れ、他人と感情を共有したり対人的な相互関係を結んだりすることが難しいという傾向が見られるようになります。
成人期では就労や仕事関係でつまづくことも多く、
「仕事の全体像とらえて優先順位を付けることができない」
「現場のニーズに合わせて柔軟な対応をとることが難しい」
という傾向が見られるようになります。
学齢期以上になると対人関係が複雑化してくるため、コミュニケーションにすれ違いが生じたり、社会的なマナーを理解することができないためにトラブルに発展することもあります。
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症(ADHD)は、幼児期から
「落ち着きがない」
「癇癪が強い」
「異常なほど活発である」
などの症状が見られますが、症状が似ているためASDとの違いが分かりにくいという特性があります。
そのため、就学以降に
「授業に集中できない」
「忘れ物が多い」
「時間管理が苦手」
「すぐに気が散ってしまう」
といった特徴から、ADHDではないかと疑われることも少なくありません。
仕事を遂行する上で
「ケアレスミスが多い」
「納期や約束事が守れない」
「物事を順序だてて取り組むことが難しい」
「長時間机に向かって事務作業を行うことができない」
といった傾向が見られます。
また、日常生活においては
「片付けができない」
「ごみを溜めたままにしてしまう」
「途中で作業を中断しているものが多くある」
などの特徴が見られます。
学習障害(LD)
学習障害(LD)は、教科学習が始まる小学校時代に気付くことが多く、国語や算数などを学ぶ際に
「読むのが遅い」
「読んだ内容を理解することができない」
「誤字・脱字が多い」
「数の概念が理解できない」
「計算が遅い」
などの特性が見られるようになります。
しかし、就学以前に
「言葉の遅れ」
「上手く数えることができない」
「手先が不器用」
といった傾向が見られることもあります。
成人してからは、
「メモを上手に取れない」
「マニュアルを読むのが苦手」
といった傾向があるため仕事に支障をきたしたり、計算が苦手で経理の仕事や家計簿を付けることが難しいといったケースもあります。
発達障害のある方の家族が抱える悩みとは
発達障害には3つの種類がありその症状は多岐にわたるため、それぞれの症状にあった方法で対応する必要があります。
しかし発達障害は発達障害がある人だけではなく、その家族も正しい対応方法が分からずに悩みを抱えることがほとんどです。
ここでは、発達障害がある人の家族が抱える代表的な悩みを紹介していきます。
接し方やコミュニケーション法が分からない
発達障害をのある人と接するためには、一般的な人とは異なるアプローチで行う必要があるケースがほとんどです。
発達障害のある人と接する際には、その発達具合をチェックしながら適切な方法で接する必要があります。
しかしその方法が分からずに、発達障害のある人とその家族が上手くコミュニケーションをとることができないという悩みを抱えるようになってしまいます。
進学や就職に関する不安
発達障害のある人が子どものうちであれば、親が手助けすることができます。
しかし、大人になるにつれて親がサポートできることは少なくなっていき、発達障害の人が自力で社会生活を送っていく必要が出てきます。
そのため、自立できるのかといったことやスムーズに就職できるのかといったことに関して、特に親は悩みを抱えるようになってしまいます。
親の疲弊(相談先が見つからないことから親が鬱などの心身症にかかってしまう)
発達障害のある人の家族のうち、特に親は子どもが学校や社会でスムーズに生活を送ることができるよう細やかに面倒を見るケースも少なくありません。
しかし、問題や心配事があっても親だけで抱え込んでしまうことで、鬱などの心身症になってしまい、最悪の場合には家庭が崩壊してしまうこともあります。
発達障害の家族支援でできること
2013年4月1日に施行された障害者総合支援法には、発達障害のある人に対しスムーズな生活を送ることができるよう、福祉サービスや生活支援の提供を行う目的があります。
本法律で定められた制度では、以下のような支援を家族に対して行うことができます。
情報共有の場を作る
発達障害は外見から障害があることが分かりにくいことから、周囲の理解を得ることが難しい障害です。
しかし、一般的な人には予測がつかない行動をとることが多いため、単純に「変な人」と位置付けられてしまい、学校や職場、ひいては地域で孤立してしまうことも多く、疎外感を抱いてしまいます。
近年では発達障害がある子どもを持つ家族、特に親同士が集い情報共有やコミュニケーションを図って発達障害への理解を深めるための場が提供され始めています。
支援センターへの相談
発達障害のある人の家族の相談は、全国に設置されている教育センターや支援センターで受け付けています。
発達障害がある人の個々のケースにあわせて、実施しやすい対応方法などのアドバイスを行ってくれます。
発達障害がある人に関する不安がある場合には、抱え込まずに早めに相談するとよいでしょう。
ペアレント・トレーニングによる良好な親子関係の構築
ペアレント・トレーニングとは、アメリカで生み出された親が子どもの発達障害による行動を理解し、対応方法を習得するための訓練プログラムです。
このトレーニングを行うことで親子の絆を深め、良好な関係を築くことができます。
就労移行支援事業所への相談
就労移行支援事業所とは、就職または転職を希望する障害がある方を対象にした、就職や職場定着へのサポートを行う施設のことをいいます。
この就労移行支援事業所とは、就職または転職を行う際に仕事面や対人面におけるスキル習得のための訓練を受けることができる施設です。
就労移行支援事業所にはさまざまな障害を持つ人が通所しますが、発達障害はその特性から発達障害のある人が多く通所している事業所を選んで通所することをおすすめします。