高次脳機能障害で障害年金は給付される?それ以外に利用できるサービスは?
更新日:2022年09月06日
くも膜下出血や脳梗塞などの脳の血管障害や、事故などによる脳の外傷、心肺停止による低酸素脳症などによって脳を損傷してしまうと、怒りっぽくなったり物覚えが悪くなったり、物事に強いこだわりを見せるようになったりなど、以前には見られなかった症状が現れることがあり、これを高次脳機能障害といいます。高次脳機能障害にはこれらの症状以外にも、さまざまなものがあり日常生活における困りごとが増え、サポートを受けずに生活していくことが困難になるケースもあります。この高次脳機能障害は、どのような症状が表れるのかは人によって異なります。ここでは、高次脳機能障害についての解説や障害年金など受けることができるサービスなどについて解説していきます。
目次
高次脳機能障害とは
医療技術の進歩により、脳の外傷は脳卒中などの血管障害の救命率は向上していますが、その一方で脳の損傷による後遺症に悩まされる方も少なくありません。
「高次脳機能障害」とは、さまざまな原因によって脳に損傷が起った際に注意力や記憶力、感情のコントロールの能力に問題が生じ、そのために日常生活や社会生活が困難になる障害のことを言います。
高次脳機能障害は外見からは障害があることが分からないため、他人からの理解が得づらいという問題があり、周囲の人から誤解を受けたり、本人や家族の負担が大きなものになってしまう可能性が高い障害です。
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高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害には、さまざまな種類の症状があります。
ここでは、高次脳機能障害の症状について解説していきます。
記憶障害
記憶障害とは、新しいことを覚えられなくなったり、以前のことを思い出せなくなってしまう障害のことを言います。
具体的には、約束を守れない・すぐに忘れてしまう、同じ話や質問を何度も繰り返す、物を置いた場所を忘れてしまう、事実と異なる話をしてしまうなどの症状があります。
注意障害
注意障害とは、注意力や集中力が低下してしまう障害のことをいいます。
具体的には、作業にミスが多くなる、疲れやすくなり長時間作業を行うことが困難になる、気が散りやすくなるなどの理由でひとつのことに集中することが難しくなるといった症状があります。
遂行機能障害
遂行機能障害とは、仕事や日常生活の内容を整理・計画・処理という一連の作業を行うことが困難になることをいいます。
具体的には、行動が行き当たりばったりになる、優先順位が決められない、ひとつひとつ指示されないと行動に移すことができない、何かを行う際にどこから手を付けていいのか分からないといった症状があります。
社会的行動障害
社会行動障害とは、感情や行動を自分で調節することが困難になることを言います。
具体的には、場違いな場面で泣いたり笑ったりする、急に怒り出したり泣き出したりする、気持ちが落ち込んで引きこもったりする、思い通りにならないと興奮して暴力を振るったりするという症状があります。
失語症
失語症と聞くと「話せなくなる」というイメージが強いのですが、実は話せなくなるだけではなく、症状の程度によりますが多かれ少なかれ「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」といった言葉に関する能力のすべてにおいて何らかの影響が出ます。
相手が何を言っているのか理解できなかったり、自分が何か言いたくても言葉が出てこなかったり、発音が上手くできなかったりなどといった症状が出てきます。
読み書きに関しては、文字や文章が読めなかったり、文字を書こうとしても字が思い出せないなどの症状が出ることもあります。
失行症
失行症とは、物事のパターンや順序を覚える必要がある作業を行う能力が失われてしまう障害のことを言います。
失行症を抱えている人は、複雑な作業や単純であっても技巧を必要とする作業を行う際に、身体的にはそのような作業を行う能力があっても、その作業を行うために必要な一連の動作を行えなかったり、その順序を覚えることができなかったりするため、作業を完遂することができない状態になってしまいます。
失認症
失認症とは、感覚障害がないにも関わらず人の顔や物体などを認知することができない状態のことを言います。
あるひとつの感覚を介して対象物を認知することができなくなってしまうため、目でハサミを見てそれが何であるかを理解することができなくても、手で触れるなど他の感覚を介した場合にはその物体がハサミであると認知できることもあります。
病態失認や半側空間無視なども、失認症に含まれます。
高次脳機能障害も障害年金の対象となる
高次脳機能障害も「障害認定基準」を満たす状態であれば、障害年金の支給対象となります。
ここでは、障害年金とは何かといったことや、障害年金の受給要件、認定基準(障害の等級)について解説していきます。
障害年金とは
障害年金とは、病気やけがによって仕事や日常生活に支障が出るようになった場合に現役世代の方も含めて受け取ることができる年金のことです。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、病気やけがで医師の診察を初めて受けた日に国民年金に加入していた場合には「障害基礎年金」を、厚生年金に加入していた場合には「障害厚生年金」を請求することができます。
しかし、これらの障害年金を受給するためには、年金の納付状況などの要件を満たしている必要があります。
障害年金の支給対象とならなかった場合でも、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。
障害年金の受給要件
障害年金の受給要件には、以下の3つがあります。
1.初診日の特定
初診日とは、障害の原因となった病気やけがで初めて医療機関を受診した日のことを言います。
その後、転院した場合であっても、一番最初の病院を受診した日が初診日となります。
初診日は、基本的に医療機関のカルテなどによって特定します。
2.年金加入期間3分の2納付要件
20歳の時点から「初診日の前々月まで」の期間の3分の2以上が保険料納付済み期間である必要があります。
この保険料納付済み期間には、保険料免除期間や学生納付特例期間、若年納付猶予期間も含みます。
ただし、納付要件の例外として「初診日の前日」までの時点で、その前々月までの1年間に保険料の未納期間がなければ障害年金の申請を行うことができるという特例があります。
3.障害認定基準(障害の等級)
障害の状態が、障害認定日に障害等級表に定める障害の等級に該当している必要があります。
自分の障害がどの等級に定められているかは、障害基礎年金・障害厚生年金ともに国民年金法施行令別表(31 国民年金法施行令別表 (mhlw.go.jp))で確認することができます。
障害年金の申請を行う際に押さえておくべきポイント
ここでは、障害年金の申請を行う際に押さえておくべきポイントについて解説していきます。
まずは自分の症状を医師に確認し、また初診日の特定を行う
障害年金の申請を行った場合に認可されるかどうかを判断するために、現在自分に現れている高次脳機能障害の症状を確認します。
高次脳機能障害の症状は人によって大きな違いがあるため、自分では気付かない症状が現れていることもあります。
家族などにも協力を仰ぎ、自分の症状を正確に把握することが大切です。
また、初診日を特定するために最初に受診した病院に問い合わせを行っておきましょう。
必要書類の記載欄にはできるだけ明確に記載を行う
障害年金の申請を行う際の必要書類に、「日常及び就労に関する状況について」というものがあります。
この書類に、障害が日常生活や仕事に及ぼす影響を記入していきます。
その際、どのような症状が現れているかといったことだけではなく、障害によってどのような支障があるか、どのような支援を受けているかということを具体的に記入しておくようにしましょう。
高次脳機能障害以外の障害がある方は別途診断書が必要
高次脳機能障害者は、前述した記憶障害や失語症などの症状以外にも、手足のマヒなどの障害が残ってしまう可能性もあります。
そのような場合には、高次脳機能障害の診断書だけではなく、肢体の障害の診断書も提出するようにしましょう。
障害年金以外に高次脳機能障害の人が受けられるサービスとは
障害年金以外に高次脳機能障害の方が受けることができるサービスには、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、高次脳機能障害の方が受けることができるサービスについて解説していきます。
障害者手帳
高次脳機能障害の方は、障害の程度に応じて障害者手帳の交付を受けることができます。
障害者手帳の交付を受けていると、等級に応じて税金の控除や公共交通機関の運賃や通行料の割引などを受けることができます。
自立支援医療制度
自立支援医療制度とは、通院による精神医療を継続的に必要とする症状がある方が利用できるサービスで、一般的な精神科の受診だけではなく精神医療に関わる調剤、往診、デイケア、訪問介護の自己負担額が1割になる制度のことです。
申請に基づいて審査が行われ、承認されると「受給者証」が発行されます。
障害福祉サービス
障害者福祉サービスは、個々の障害がある人々の障害程度や勘案すべき事項を踏まえたうえで、個別に支給決定が行われる「障害福祉サービス」と、市町村の創意工夫により利用者の方々の状況に応じて柔軟に実施できる「地域生活支援事業」に大別することができます。
障害者福祉サービスには、介護の支援を受ける場合には「介護給付」、訓練等の支援を受ける場合には「訓練等給付」に位置付けられ、それぞれ利用の際のプロセスが異なるため、受けたい障害者福祉サービスがある場合には、その内容や利用方法について良く調べてからサービスを利用するようにしましょう。