発達障害を持つ方が受けられる手当や控除にはどんなものがあるのか?
更新日:2024年05月02日
発達障害という障害は他の障害(身体、精神、知的)に比べると非常に新しい障害といってよいでしょう。その医学的理解や認知は1980~90年代に広がり、多くの発達障害を抱える人の存在が明らかになりました。それまで「変わった人」、「空気の読めない人」、「勉強ができない子」などと認識されていた人の多くは発達障害を抱えていたことがわかりました。発達障害は現在でもその発症や治療については明らかでない部分も多く、これからの研究が待ち望まれています。必然的に発達障害を持つ人への制度やサービスもまだまだ十分とは言えませんが、ここでは現在、受けることができる国や自治体の手当や控除などについてご紹介していきます。ご参考にしていただき、少しでもこれからの生活や社会参加にご利用ください。
目次
発達障害に含まれる障害
自閉スペクトラム症
以前は自閉症スペクトラム障害と呼ばれていた発達障害で、自閉症には人によってさまざまな症状があるために、従来は自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群など多様な分類がありましたが、現在は自閉スペクトラム症に統一されています。
主な症状としては、対人コミュニケーションが苦手であることから人との関係が築きにくい、またこだわりが強く、環境や状況の変化に弱いという特徴があります。
注意欠如多動性障害(ADHD)
注意欠如と多動性が主症状である発達障害です。注意欠如とは行動や思考が短絡的で、注意力が足りないため、失敗が多く、ケガや事故に遭うことも多い傾向にあります。多動の部分では、落ち着きがなく、一つのことに長く集中することが困難です。この両方の障害がある場合、他者からは空気が読めない、自分勝手、短絡的、思いやりがない、無駄な動きが多い、共同作業をしない、遅刻・欠席が多く時間にルーズなどと思われてしまいます。
学習障害(LD)
現局性学習障害とも呼ばれる発達障害で、主に以下の3つのタイプがあります。
1.読字の障害を伴う
2.書字表出の障害を伴う
3.算数(計算)の障害を伴う
日本語にはひらがな、カタカナ、漢字があるため、そのどれかの書字、読字が苦手という場合もあります。
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発達障害と診断された方が受けられる手当など
特別児童扶養手当法における3つの手当
特別児童扶養手当
20歳未満の精神または身体に障害のある児童を家庭で監護、養育する父母等に支給されます。支給額(月額)は以下のとおりです。
ー1級 52,400円
ー2級 34,900円
障害児福祉手当
20歳未満の精神または身体に重度の障害があって日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の者に支給されます。支給額(月額)は以下のとおりです。
ー14,850円
特別障害者手当
20歳以上の精神または身体に重度の障害があって日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の者に支給されます。支給額(月額)は以下のとおりです。
ー27,300円
特別児童扶養手当と障害児福祉手当の違いは障害児福祉手当の方が重度で常時介護を必要とする児童となりますが、特別児童扶養手当と障害児福祉手当は条件等が当てはまれば併給することができます。特別障害者手当は障害児福祉手当の成人版と言えますが、20歳以上では特別児童扶養手当を併給できませんので、その分手厚くなっています。
障害者手帳による支援
税金の控除
障害者の場合は27万円、特別障害者の場合は40万円を所得税から控除されます。また、障害者が相続人であるとき85歳に達するまでの年数1年につき10万円、特別障害者の場合は20万円を控除されます。
自立支援医療制度
障害者総合支援法により自立支援医療制度の対象になった場合、その障害にかかる医療費を原則1割負担とし、自己負担を軽減します。
公共サービスの割引
その他、JRなどの鉄道会社、航空会社、バス、タクシーなどにおいて、障害者やその介護者(付き添い人)に対して割引があるほか、NHKの受診料、水道料金の割引も市町村ごとにあります。その他、公立の施設、ホテルなどの宿泊施設、遊園地、映画館などの娯楽施設についても独自の障害者割引が多くありますので、確認してから利用するようにしましょう。
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障害年金について
障害年金とは
障害年金は国民年金法により一定の障害状態になった20歳以上の年金加入者に対して年金を支給するものです。自営業者は国民年金のみ加入できますが、任意加入です。被雇用者は原則、厚生年金への強制加入となりますが、障害状態になったとき、厚生障害年金と障害基礎年金の両方を受け取ることができます。
対象者 | 任意・強制 | 障害年金概要(支給額) | |
障害基礎年金 | 自営業者など | 任意 | 等級表で定める1級または2級の額 |
厚生障害年金 | 被雇用者 | 強制 | 報酬比例の額+等級表で定める1~3級の額 |
厚生年金の加入者は1~3級に該当しない場合でも、「障害手当金」をもらえる可能性があります。また厚生障害年金には配偶者加給年金、障害基礎年金には子の加算があります。
発達障害がある方も、条件を満たせば障害年金を受け取ることができる
・障害等級の条件(診断書によって総合的に判断される)
各障害者手帳とは別に国民年金法独自の等級表がありますので、必ずしも障害者手帳の等級がそのまま障害年金の等級になるわけではないことを理解しておきましょう。
障害年金の受給の諸条件
初診日の条件
申請する障害の原因となるケガや病気の初診日が年金の被保険者期間中にあること
20歳前、または60歳から65歳未満の年齢で年金に加入していなかった期間(国民年金のみ)に初診日があること
保険料の納付の条件
初診日がある月の2か月前までの被保険者期間中の納付済み期間と納付免除期間が合わせて2/3以上あること
申請方法や受け取れる金額などの詳細についてはこちら
→もしもの為の障害年金!種類、等級、必要な手続きまで詳しく解説します!
障害者手帳による支援について
発達障害のある方が障害者手帳を取得する場合、「精神障害者保健福祉手帳」が交付されます。
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、 医療費の助成や税金の控除、公共サービスの割引などの支援が受けられます。市町村によりますが、手帳交付までは1~2カ月ほどかかります。手続き期間が長いため取得したい場合は早めに申請することを心掛けましょう。
国および自治体の制度・サービスは多くの場合障害者手帳の提示が利用条件となります。また、等級によって利用できる内容や割引率が変わるものもあります。一方で、障害年金や自立支援医療など障害者手帳を持たなくても受けられるサービスもあるため、自身にとって必要なサービスがあれば取得するとよいでしょう。障害のために労働に制限があり、経済的に困難が生じたり、車の運転ができないため公共の交通機関を頻繁に利用する場合は手帳の取得をお勧めします。
申請の流れや申請方法などの詳細についてはこちら
まとめ
発達障害という障害については身体、精神、知的障害と違い、その認知と制度の歴史は浅く、まだまだ十分とは言えません。また、その障害の特徴上、発達障害単独では自他共にそれが障害であると認識できないことがあり、発見や診断が遅れることで、本人が人間関係や社会生活の中で生きづらさを感じるのが大きな問題といえます。発達障害者を支援する制度やサービスを充実させることと同時に、早期発見、早期療育も重要課題となっています。しかし、発達障害があっても、精神障害保健福祉手帳を取得することで、利用できるさまざまな優遇や割引を利用し、少しでもご自身の経済的負担を軽くすることは、充実した生活、社会参加につながるのではないかと思います。