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聴覚障害のある方とはどのような方法でコミュニケーションを取れば良いの?

更新日:2021年09月08日

聴覚障害のある方が会社に入社してきたとき、どのような方法でコミュニケーションを取れば良いのか悩まれる方も少なくないでしょう。本記事では聴覚障害のある方と円滑にコミュニケーションを取る際に知っておきたい事について解説します。

聴覚障害とは

聴覚障害とは、音や人の声が聞こえづらい、または全く聞こえないという障害のことを言います。

 

聴覚障害は生まれつきのものもあれば、事故や病気、加齢が原因となるものもあります。

 

聴覚障害は、障害がある部位によって伝音性難聴、感音性難聴、そしてこの二つの特徴をあわせもった混合難聴の三つに分けることができます。

 

伝音性難聴は外耳から中耳までに障害があるもののことをいい、感音性難聴とは内耳から中耳神経にかけて障害があるものを言います。

 

聴覚障害と一口に言っても、聞こえ方はひとりひとり異なります。

 

音が小さくなったり聞き取りづらくなったりするタイプや、音質がゆがんだようになるタイプ、補聴器を付けても声や音が全く聞こえないタイプなどさまざまです。

聴覚障害のある方のコミュニケーション手段

聴覚障害のある方がコミュニケーションを取る手段には、以下のようなものがあります。

 

口話

口話とは、聴覚障害のある方が発話者(健常者)の口の動きを読み取って(読唇)、相手の言いたいことを理解し、聴覚障害のある方は口の形と音声で表現するというコミュニケーション方法です。

 

この口話は、ろう学校などで言語聴覚士と訓練をして身に付けます。

 

しかし、全く声や音が聞こえない聴覚障害を持つ人は、口の形を真似することができても、音声を正確に表現することが非常に難しいため、苦手な聴覚障害者もいます。

 

 

筆談

筆談とは、紙や専用のボードに聴覚障害者と健常者が文章を書き、コミュニケーションをとる方法で、特別な技術を必要とせずに正確な意思の疎通を行うことが可能です。

 

筆談を行う場合には、楷書で読みやすい字を書くことと、短文で具体的な文章を書くことに注意する必要があります。

 

 

手話

手話とは、聴覚障害のある方の生活の中から生み出されてきた言語のひとつで、手や体、顔の向き、動きなどで単語などを表現し、コミュニケーションを取る方法です。

 

同じ単語などを表現する場合でも、表情や口の形、方向や位置、ジェスチャーの強弱によりニュアンスを持たせることができます。

 

 

指文字

指文字とは、指を使って日本語の五十音を表す方法です。

この方法は、手話の単語を知らない場合に補助的に使われることもあります。

実際に指文字だけでコミュニケーションを取ることは少なく、手話通訳の際にも補助的に使われることが多い方法です。

 

聴覚障害のある方が普段の生活や仕事でコミュニケーションに困るポイント

聴覚障害者のある方は普段の生活や仕事を行ううえで、コミュニケーションに困る独特のポイントがあります。

ここではそのポイントの中から、4点について解説していきます。

 

 

呼びかけや生活音に気付けない時がある

聴力が非常に低い、または全くないため同僚や上司からの声による呼びかけに気付くことができないという場合があります。

また、社内放送などの大事な情報を聞き逃してしまうこともあるでしょう。

社外では、歩行中に背後から来た車の音や自転車のベルなどにも気付くことができないこともあります。

聴覚障害があると、重要な音による情報をキャッチすることができない可能性があり、時には命に係わる問題になることがあります。

 

複数人での会話が難しい

聴覚障害者のある方は、一対一のコミュニケーションであれば問題なくこなすことができる場合でも、複数人の会話の場合に必要な声だけを聞き取ることが難しいケースがあります。

 

雑談などの場合には、聞き流したりその都度確認すれば解決する問題ですが、会議などの場合には、非常に大きな問題となります。

 

このような問題を解決するためには、リアルタイムで文字起こしをすることができるアプリや、チャットツールの利用ができないか上司に相談して見ることをおすすめします。

 

周囲の空気に合わせてしまう

聴覚障害者のある方は話すことができても、聞こえづらさまたは聞こえなさがあるため、雑談などの際であっても、周囲の人の配慮が足りず健常者と同じような対応をしてしまうことがあります。

 

そのような場合に聴覚障害者のある方は自分から「配慮をしてほしい」と言い出すことができずに、周囲の空気にあわせてしまい、結果として情報を手に入れることができないなどの不利益を被ってしまうことがあります。

 

会話が聞こえにくいことで他人の会話に割り込んでしまうことがある

聴覚障害のある方は複数人で会話した場合に、会話の内容が聞こえにくく他の人の会話に割り込んでしまい、厚かましい人だと思われてしまうという困りごともあります。

 

会話をしている人の中に聴覚障害者がいる場合には、ゆっくり、言葉のリズムを崩すことなくはっきり話すことや、一度に複数人が話すのではなく発話者を一人に絞るなど工夫をすることで、聴覚障害者も複数人の会話に入りやすくなる可能性が高くなります。

 

 

聴覚障害のある方がスムーズにコミュニケーションをとるには

聴覚障害のある方がスムーズにコミュニケーションを取るには、以下の5つのポイントを抑えておく必要があります。

 

聴覚に障害があることを周囲に伝え、理解してもらう

聴覚障害者は、外見からは障害のある人であるとは分かりません。

 

そのため、自分で聴覚障害者であることを伝え、周囲の理解を得る必要があります。

 

また、聴覚障害にも聞こえの程度に差があるため、自分が必要とする配慮や支援についてもしっかりと同僚や会社側に伝えておく必要があります。

 

 

大切なことは筆談などテキストにして残す

仕事の打ち合わせや、友人との約束など忘れてはいけないことや間違って伝わってしまっては困る大切なことは、極力筆談を用いてテキストにして残しておきましょう。

 

この場合は後に残すことができるように、筆談用のボードなど消してしまえるものではなく、メモ帳など書いた内容を消せないもので持ち歩くことができるものを利用すれば、内容を確認しやすくなります。

 

 

パソコンやスマートフォンの音声認識アプリケーションを利用する

会議など複数の人がそれぞれ発言するシーンでは、聴覚障害者は誰がどのような発言を行ったかを聞き分けることが難しいケースがあります。

 

そのようなときには、パソコンやスマートフォンの音声認識アプリケーションの利用がおすすめです。

 

近年では、いろいろな音声認識アプリケーションが出回っているため、その中から自分が使いやすい物を選ぶことができます。

 

このような場合は、会議の内容は社外秘などの理由で外部への持ち出しが禁じられていることもあるため、アプリケーションを利用する前に上司の許可を得ておくようにしましょう。

 

 

しっかりと顔を見ながら話す

人と話をする際には、しっかりと顔が見える位置で顔をよく見ながら話すことで、話の行き違いや間違った情報の伝達を防ぐことができます。

 

また、正面からの音は耳に届きやすいので聞き取りやすくなり、口語を使う方は口の形も良く見えるため意思の疎通がしやすくなります。

 

 

わかったふりをしない

聴覚障害のある方が、自分の耳が聞こえづらいまたは聞こえないということにコンプレックスを抱いている場合や、話の流れを止めたくないと思った場合には「わかったふり」をしてしまうことがありますが、このようなことはやってはいけません。

 

わかっていないのにわかったふりをしてしまうと、わかっていなかった部分が重大な内容だった場合に後で大きなトラブルになる可能性があるからです。

 

特に仕事上の会話の場合には、聞くことだけに捉われず、筆談を使うなどしてわからない部分を無くすようにしましょう。

 

聴覚障害者が受けられる支援

聴覚障害者が受けられる支援には、以下のようなものがあります。

 

障害年金

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事が制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です。

聴覚障害のある方はその障害の程度によって、障害年金を受け取ることができます。

 

 

税金の減免

聴覚障害者は、税金の減免を受けることができます。

 

減免を受けることができるのは、所得税の控除、住民税の非課税、利子等の非課税、自動車・軽自動車・自動車取得税の減免、個人事業税の減免、関税の減免、相続税の減免、贈与税の減免です。

 

これらの減免を受けるためには、身体障害者手帳を持っている必要があります。

 

 

補装具費支給制度

聴覚障害者が日常生活を送る上で必要な補装具、例えば補聴器などを購入する場合、補装具費用支給制度により費用の一部または全額が自治体から支給されます。

 

身体障害者手帳が必要となり、また等級も一定以上であることが求められます。

 

 

交通機関運賃の割引

聴覚障害者は、JRやバスなど公共交通機関の運賃の割引を受けることができます。

この制度を利用するためには、身体障害者手帳が必要になります。

 

まとめ

ここまで、聴覚障害とはどのようなものかといったことから、聴覚障害者のコミュニケーションの取り方、聴覚障害がコミュニケーションを取る際の困りごと、聴覚障害のある方がスムーズにコミュニケーションを取るための方法、受けられる支援について解説してきました。

 

聴覚障害のある方がコミュニケーションのどのような場面で困りごとを抱えているか、それらを解決するためにはどのような手段を取ればいいかなどといったことについてお分かりいただけたと思います。

 

聴覚障害のある方が一般の会社で働く場合には、本人の工夫も大切ですが、周囲の人の理解と配慮もまた重要になってきます。

 

聴覚障害のある方もない人も、双方がスムーズなコミュニケーションを取ることができるように、コミュニケーションの方法を考え、時にはスマートフォンのアプリケーションなども活用しながら、円滑な関係を築いていけるようにしましょう。

 

atGPエージェント

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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