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中途失明の方の困りごととは?どのような方法で仕事探しができるのか?

更新日:2021年09月08日

視覚から得ることができる情報は80%以上であるといわれていますが、人生の途中で視覚に障害を受傷した場合に、就くことができる仕事はあるのでしょうか。中途で目が見えなくなった場合には、その時点から初めて体験する「見えにくい、または見えない」世界をどう生きていくかを模索しなければなりません。ここでは中途失明の方の困りごとや、転職や就職を希望する際に抑えておくべきポイントなどについて解説していきます。
 

中途失明とは

中途失明とは、生まれつきではなく人生の途中で病気や事故などの原因により視機能が著しく低下し、日常生活に支障をきたすことを言います。

 

子どものころに失明した人を指すこともありますが、一般的には15歳から60歳ぐらいのいわゆる就労年齢にあたる時期に視機能に障害を負った方を指すことが多いようです。

 

中途失明と言ってもその程度はさまざまで、弱視、強度弱視、盲、全盲などがあります。

 

弱視と強度弱視では拡大鏡などの矯正器具を使って普通の文字を使うことができる場合もあります。

 

明暗しかわからない盲や全く明暗を感じることができない全盲の場合には、主に点字を使用します。

 

また、視野(物の見え方)の障害にもさまざまなものがあります。

 

視野の一部や中心部分が見えない方や、眼球の揺れにより物が見にくい方、暗いところでは見えにくい方、ぼやけて見える方など、中途失明の状態には多くのタイプがあります。

 

中途失明した方が生活で困るポイント

中途失明をしてしまった方は、生活の中で困ることが非常に多くあります。

ここではその困りごとのうち、主な3つについて解説していきます。

 

外に出づらくなってしまう

視覚に障害のある方が外出をするためには、白杖を使ったり付き添いの人と一緒に行動する必要があります。盲学校などの専門の機関で歩行訓練を受けていないと、うまく白杖を使ったりエスコートしてもらうことが難しいという問題があります。

専門的な歩行訓練を受けていても、電車のホームからの落下などによる事故は後を絶ちません。

 

街中には多くの点字ブロックなど、視覚障害者のための設備が整えられていますが、中途失明の方はそのような設備を直ちに使いこなすことは難しいでしょう。

 

中途失明の方はある日を境に目が見えなくなるので、今まで目から得ていた情報のほとんどが得られなくなり、外出時の危険が増します。

 

そのため、外に出づらくなってしまいます。

 

 

気持ちを理解してもらうことが難しい

視覚は、人間が生きていくための情報のうち約80%を提供してくれる感覚です。目が見える状態ではその情報に頼りきりになっています。

 

この絶対的な感覚であった視覚を中途失明によって失うことで、視覚情報以外の器官から入ってくる情報だけを頼りに生活していくことが不自由になり、心理的に不安定な状態になって時には絶望のあまり自死を考える人も少なくないといいます。

 

中途失明の方は失明以前は視覚に頼って生活していたため、当事者もその家族も「これから先、何もできない状態になってしまう」と大きなショックを受けることになります。

 

このように中途失明の方は、周囲の人に気持ちをきちんと理解してもらうことが非常に難しいといえます。

 

 

仕事を探したり就職したりすることが難しい

中途失明の方は、失明するまでさまざまな職場で活躍していた方も多いと思います。

 

しかし失明してしまったことで、今まで従事してきた仕事を続けることができなくなり、転職を余儀なくされることもあります。

 

中途失明の場合、他の就職先を探す際に「見えない」というハンディキャップが立ちはだかり、なかなか就職先や転職先を見つけることができないケースも少なくありません。

 

そのため、中途失明の方が就職先や転職先を見つけることが難しくなっているのが現状です。

 

重度の視覚障害者の就業状況

令和2年度に厚生労働省が発表した「障害者の職業紹介状況」によると、身体障害者の全体の就職件数は20,025件ありました。

 

そのうち視覚障害者の就職件数は全体のおおよそ7.5%にあたる1,500件となっており、身体障害者全体の就職件数の中では低くなっているのが現状です。

 

職業別就職件数(平成27年度厚労省発表の「障害者の職業紹介状況」より抜粋)は、「あはき業」といわれるあんま・はり・灸に従事する専門職が半数以上を占めていて、オフィスでの事務職にあたる「事務的職業」につくに至っては、視覚障害者全体では13.4%の307件にとどまり、重度の視覚障害者に至っては9.8%の135件となっています。

 

 

昔と比べて障害者の職務領域が広がる現代においても、視覚障害者に限って言えば伝統的なあんま・はり・灸業に雇用が偏っていることが分かります。

 

とくに重度の視覚障害者に対しては、全く目が見えないとオフィスでの仕事を任せるのは難しいという考えが根強く残っており、重度の視覚障害者の事務的職業への雇用の妨げになっていると考えられます。

 
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中途失明した方におすすめの働き方

中途失明した方でも、働き続けることは不可能ではありません。

ここでは、中途失明した方におすすめの働き方を紹介していきます。

 

 

PCスキルなど、現状持っているスキルを活かして働く

中途失明の方は失明する前に行っていた仕事で特別なスキル、例えばPCのスキルなどを活かして働くことが可能です。

 

しかし、以前と同じ職種について同等の実力を発揮するためには、作業をサポートしてくれる機器を導入する必要があるため、会社側がそのような機器の導入を認めてくれるか打診してみることをおすすめします。

 

 

音声ソフトが利用できる仕事をする

中途失明の方は、健常者と共に働く場合に普通の文字(墨字)を理解する必要がありますが、拡大鏡などの矯正器具を使っても普通の文字を読むことが難しい場合は、音声読み上げソフトを利用することで、普通の文字を理解することができます。

 

この音声ソフトの利用が可能な仕事を探すことで、中途失明をハンデとせずに仕事をすることができます。

 

 

視覚以外の感覚を活かして働く

視覚障害者は、健常者より視覚以外の感覚が優れています。

 

これは健常者にはない強みであるため、この強みを活かすことで健常者以上の結果や成績を残すことができる仕事があります。

 

中途失明の方は、このような仕事を探してみることをおすすめします。
 
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中途失明した方が就いている職業

では実際に中途失明した方は、どのような職業についているのでしょうか。

ここでは、中途失明者が多い職業について解説していきます。

 

 

専門職、技術的職業

一口に専門職や技術的職業といってもさまざまなものがありますが、その中で中途失明の方に向いている職業は、あんま・鍼・灸のいわゆる「あはき業」といわれる職業やマッサージ師、企業内理療師(ヘルスキーパー)です。

 

このような仕事は、健常者より視覚以外の感覚が優れている中途失明の方に非常に向いている職業です。

 

このような専門職や技術職は、視覚障害者の健常者より視覚以外の感覚が優れているという強みを十分に活かすことができるため、盲学校や特別支援学校で企業内理療師の国家試験合格に向けたカリキュラムを設けている学校が非常に多くなっています。

 

中途失明の方でも、理療師を目指して国家試験に臨む方も少なくありません。

 

 

事務職

視覚障害がある方には、事務職はできないとお考えの方も少なくないと思います。

 

しかし、近年ではICT技術の発展により、重度の視覚障害のある方でも、PCの入力作業などを行うことができるようになったため、オフィスワークに従事するハードルが下がってきています。

 

例えば、「NVDA」や「PCトーカー」などの音声読み上げソフトを利用することでテキストデータの内容を把握することができ、それ以外にもExcelを利用したデータ入力や集計、計算、調査業務も行うことが可能になりました。

 

また、電話やメールによる社外とのコミュニケーションや、語学力を活かした簡易翻訳業務に従事する中途失明者も増えてきています。

 

しかし、画像や紙媒体、書類の対応には電子顕微鏡や拡大鏡を用いるため、量が多くなると中途失明の方の負担になり、周囲のサポートが必要です。

 

 

中途失明の方が就職または転職する際のポイント

中途失明の方が就職または転職する場合には、3つのポイントがあります。

ここでは、その3つのポイントについて解説していきます。

 

スキルを身に付ける

中途失明の方が就職または転職を行う場合には、障害者枠での雇用が一般的です。

このとき企業との面接などの時に、「何ができるか」と聞かれると思っておきましょう。

そのような場合に、応えられるようなしっかりとしたスキルがないと、不採用になる可能性が非常に高くなります。

事務的職業を希望している場合は、パソコンの知識を得るために独学や専門学校に通うなどして勉強しておきましょう。

このように、就きたいと思っている仕事に就くために必要なスキルを身に付けておくようにしましょう。

 

 

視覚障害の特性を把握し活かし方を見つける

自分が持っている視覚障害という障害の特性と程度を把握し、自分にできることとできないことを面接の際などにしっかりと説明できるようにしておきましょう。

 

例えば強度弱視のために文字が全く読めないという特性の視覚障害を持っている場合、パソコン上のデータであればほとんどの文字は音声読み上げソフトを利用することで、内容を把握することができます。

 

紙媒体の資料の場合には周囲のサポートが必要になります。

この時に同僚など周囲の人に、自分が持つ視覚障害という障害についてきちんとした説明を行うことで、マイナスの感情を持たれることなく紙媒体の資料を読み上げてもらったり、紙媒体の資料をパソコンのデータ化してもらったりすることが可能になります。

 

自分にできることとできないことをしっかりと把握することで、自分の能力を活かしながら、できない部分については周囲のサポートを受けることができるようにしておきましょう。

 

 

障害に配慮してくれる職場を探す

視覚障害者の採用枠がある会社であっても、視覚障害者に対するサポートや周囲の理解が進んでいない会社も存在します。

就職や転職をする前には、どの程度の周囲の理解とサポート、環境の整備をしてもらえるかを確認しましょう。

 

中途失明した方の仕事の探し方

中途失明の方は、特別な方法でしか仕事を探すことができないのでしょうか。

ここでは、中途失明の方の仕事の探し方について解説していきます。

 

ハローワーク

ハローワークは一般の方が仕事を探す際に利用する機関だと思われがちですが、障害のある方のための障害者雇用枠での求人もあります。

 

それだけではなく、障害がある方を対象にした就職や働き方に関する相談やカウンセリングなどの支援を受けることもできるので、視覚障害がある方も積極的に利用してみるとよいでしょう。

 

 

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、ハローワークや行政機関、就労移行支援事業所などの福祉施設、特別支援学校などと連携して障害を持っている方の終了支援や、企業への雇用支援を行ってくれます。

就労相談や訓練、求職活動、企業とのマッチングなどの雇用前準備支援から、本人や企業への定着支援、雇用契約の調整、就職後のフォローアップなどの雇用後定着支援に至るまで手厚い支援を受けることができます。

 

 

障害がある方専門の転職エージェント

障害のある方専用の転職エージェントを利用することも、障害のある方の就職や転職を成功させるためのひとつの手段です。

転職エージェントを利用すると専任のエージェントが付き、雇用前準備支援から雇用後の定着支援まで一貫して行ってくれます。

また、企業側から採用したい障害者のスキルや特性などをヒアリングしているため、求職者に合った企業とマッチングしてもらうことができ、ミスマッチが起こりにくいというメリットもあります。

 

・就労移行支援サービス

就労移行支援施設とは、一般企業への就労を目指す障害がある方や持病をお持ちの方に対して、求職から就職までの一連の流れをサポートしてくれる機関です。

就労移行支援サービスの利用者は、事業所に通所してビジネスマナーや職業トレーニング、面接や履歴書対策などの支援のほかに、就職活動のサポートや、就職後の定着支援を受けることができます。
 
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アットジーピーとは

アットジーピーサービスとは、障害者向けの就職・転職サービスで、専任のキャリアプランナーが就職・転職活動を二人三脚でサポートしてくれるサービスです。

 

また、障害別に就職・転職のためのトレーニングを受けることもでき、就職や転職に必要なスキルを身に付け、さらに就職活動のサポートや、就職後の職場定着のためのサポートを受けることができます。

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まとめ

ここまで、中途失明とは何かといったことから中途失明の方の困りごと、仕事を探す際に抑えておきたいポイントなどについて解説してきました。

 

目は情報の約80%を得るために必要な器官であり、その視力を失うことで中途失明の方は大きな不便を抱えること、就職や転職をする際にも気を付けるべきポイントがあることがお分かりいただけたと思います。

 

中途失明の方の中には、就職や転職を希望される方も多いと思います。

 

そのような場合にはここで解説したポイントを抑えた上で、ハローワークなどの公的機関と並行して障害者専門の就職・転職サービスの利用も検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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