片耳難聴になる原因とその症状とは?仕事をする上での注意点について解説
更新日:2021年11月09日
難聴にはさまざまな種類がありますが、その難聴の中には片耳だけが難聴になる「片耳難聴」というものがあります。もう片方の耳が聞こえているならあまり問題はないのではないかとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いで、片耳難聴は生活や仕事をしていくうえで不便な思いをすることが多々あります。では、片耳難聴にはどのような症状があり、どのような原因で片耳難聴を発症してしまうのでしょうか。ここでは片耳難聴の症状と発症の原因のほかに、片耳難聴を抱えながら仕事を行う上で注意すべき点などについて詳しく解説していきます。
目次
片耳難聴とはどのようなものか
片耳難聴とは、片方の耳が聞こえづらかったり、全く聞こえないという状態のことをいいます。生活や仕事を行う上で大きな不便はありませんが、声のする方向が分からないため複数の人が話す会議などのシーンで、誰が何を話しているか理解しづらかったり、聞こえにくいまたは聞こえないほうの耳の方から話しかけられることで、内容を理解できなかったり、時には話しかけられたことに全く気付かずに相手に「無視された」と思われたりなどの不便を感じることがあります。
耳の構造は、大きく分けて外側から「外耳」「中耳」「内耳」の3つに分けられます。この3つの場所のうち、どこに異常が出たかによって難聴の種類が決まり、それにより治療方法も決まります。投薬などにより症状の改善が期待できるものもあれば、改善しないものもあり、治療方法にも大きな違いが出てきます。
しかし、片耳難聴を重度化させないためには、耳に異常を感じたらすぐに病院に行くことが重要です。完治しない片耳難聴の場合でも、進行を遅らせたり、投薬等で症状の改善が期待できる場合には、治療期間が短くて済みます。
片耳難聴は時に脳梗塞など命に係わる病気の初期症状である場合もあるため、早めの受診を心がけましょう。
片耳難聴の主な原因と症状
片耳性難聴には、主に5つの種類の原因と症状があります。ここではその原因と症状について解説していきます。
突発性難聴
突発性難聴とは、急に左右の耳のうち片方または両方の耳が聞こえにくくなる病気のことをいいます。幅広い年代に起こりますが、特に働き盛りの40代から60代の人が多く発病します。
前の日まで全く問題が無かったのに、朝テレビを付けたら音が聞こえにくかったり、電話の音が聞こえにくかったりすることで発病に気付きます。
聞こえにくさは人によって異なり、高音など一部の音が聞こえなくなる人もいれば、全く音が聞こえなくなる人もいます。
一部の音だけが聞こえなくなる人の場合には、会話に不自由しないことが多いため、突発性難聴を発病していることに気付きにくくなってしまいます。
突発性難聴は発病と前後して耳が詰まった感じや耳鳴り、めまい吐き気などを伴うことも多く、この時点で受診することで突発性難聴であると診断が下されることもあります。
突発性難聴の原因は、音を感じ取って脳に伝える役割を果たす有毛細胞が何らかの原因により傷ついて、壊れてしまうことです。
それ以外にも有毛細胞への血流障害や、ウイルスに感染することが原因であるといわれることもありますが、まだ確定的な証拠はありません。
ストレスや過労、睡眠不足によって突発性難聴が起こりやすくなるとは良く知られています。また、糖尿病が影響して突発性難聴になるともいわれています。
中耳炎
中耳炎とは、鼓膜の奥にある中耳という部分に炎症が起こる病気のことをいいます。
中耳炎には滲出性中耳炎、真珠腫性中耳炎、癒着性中耳炎などの種類がありますが、48時間以内に発症したものを急性中耳炎といいます。
中耳は鼻の奥と細い管でつながっていて、風邪を引いたりしたときに鼻の奥を通りさらに耳管を通って中耳に微生物が侵入することにより感染が起こります。
子どもの耳管は特に菌が通りやすい形をしているために、子どもに多い病気です。
大人になってからも中耳炎の治療効果が悪い場合や、中耳炎を繰り返す場合は、耳管や中耳の変形が無いかを調べる必要があります。
急性中耳炎の最も大きな原因は、風邪などの感染症によるものですが、それ以外にも大量の鼻水をすすったり、急激な気圧の変化によっても発症することがあります。
急性中耳炎を放置すると、滲出性中耳炎に進行してしまうことがあります。
中耳炎の症状は、耳の痛みや発熱が主なものとなります。
耳の違和感や、膿の量が多い場合には鼓膜が破れてしまったり、耳だれとして耳から出てきてしまったりすることもあります。
中耳炎による耳の痛みや発熱などの症状は、多くの場合数日で改善しますが、膿は1か月程度は残っていることが多いため、その間に風邪を引いたりすることで、急性中耳炎を再発しやすくなってしまいます。
加齢性難聴
加齢による聴力の低下は一般的に高音域から始まるため、加齢による聴力の低下は40代のうちはまだ自覚することはないことがほとんどです。
しかし、この聴力の低下は確実に進んでくるため、早い時期から対策を行うことが大切です。
加齢性難聴は60代ごろになって初めて「軽度難聴」のレベルにまで聴力が低下する音域が増え、聞こえにくさを感じる人が多くなってきます。
70歳を超えるとほとんど音域の聴力が「軽度難聴」から「中等度難聴」というレベルにまで低下し、65歳から74歳までの人のうち3人に1人が、75歳以上の人の中では実に半分以上の人が加齢性難聴に悩んでいるといわれています。
加齢性難聴には、加齢以外の特別な原因がありません。
加齢性難聴とは、音を感じる部位が阻害される感音難聴のことをいいます。
その主な原因は、加齢により蝸牛の中にある有毛細胞がダメージを受け、その数が減少したり、聴毛が抜け落ちたりすることです。
有毛細胞には、音を感じたり、感じた音を増幅したりする働きがあるため、この有毛細胞がダメージを受けると、音を情報としてうまく脳に送ることができなくなってしまいます。
内耳の問題以外にも、内耳から脳へと音を伝える神経回路に障害が起きたり、脳の認知機能が低下することも影響しているといわれることもあります。
このように、加齢性難聴はさまざまな原因が絡み合って起こると考えられています。
メニエール病
メニエール病は、激しい回転性のめまいと難聴、耳なり、耳の閉塞感の4つを繰り返す病気です。
内耳を満たしている内リンパ液が過剰に貯まる「内リンパ水腫」が原因で起こります。
めまいの発作は数分で治まることもあれば、数時間続くこともあります。
発作の間隔も週に1回程度から、年に1回程度と個人により大きな差があります。
メニエール病になってしまう人は30代から50代の人の多く、高齢者には少ないという点が特徴です。
発症してから1年から2年程度で軽快することが多い病気ですが、数年かそれ以上に渡って続くこともあります。
メニエール病の発作は繰り返すことで、耳鳴りが慢性化したり、難聴が進んだりすることもあるため、注意が必要です。
疲れや睡眠不足、ストレスが原因となることが多く、難聴や耳鳴りの悪化を伴う回転性のめまいの発作がおこります。
メニエール病が進行すれば中高音域にも感音性難聴を生じてしまいます。
メニエール病の症状のうち難聴は、罹患期間が長期化して発作を繰り返すごとに悪化していきます。
病気の経過中に反対側の聴力にも変動を生じ、両側の聴力の悪化が見られることもあります。
急性音響性難聴
急性音響性難聴とは、コンサートなどで大きな音の曲を数時間聞いたり、ヘッドフォンを利用して大音量で音楽を長時間聞いたりすることで発症します。
音は、空気の振動により外耳道から鼓膜を介して中耳へと伝わります。中耳にある骨が振動することで内耳への情報が伝わり、内耳の中にある液体が振動を受けます。
この振動を有毛細胞と呼ばれる細胞が感知することで、脳へと音の情報が伝わります。
急性音響性難聴は、大音量によって有毛細胞がダメージを受けることにより発症します。めまいや耳の痛みを伴うこともありますが、それは一時的なものの場合が多く、片耳のみにこのような症状が現れることもあれば、両耳に現れることもあります。
軽度の急性音響性難聴の場合には、音から離れることにより自然に治ることもありますが、重度の場合には、耳鳴りや聞こえの低下が永続化することもあります。
片耳難聴の治療法にはどのようなものがあるのか
前章では、片耳難聴の主な原因と症状について解説してきました。これらを原因とした片耳性難聴には、治療法はあるのでしょうか。また、治療法があるとすればどのようなものなのでしょうか。ここでは、片耳難聴の治療法について解説していきます。
突発性難聴
突発性難聴の治療には、内服薬や副腎皮質ステロイドの点滴を用いるなどの薬物療法を中心に行います。それ以外にも血管拡張薬やビタミン12製剤、代謝促進薬を使用することもあります。
突発性難聴の原因がストレスや疲労、睡眠不足の場合には、安静が求められることもあります。
このような治療を行っても十分に回復しない場合には、耳の中に直接ステロイドを注入する「ステロイド鼓室内注入療法」を行うことがありますが、その効果に対する評価は現在のところ定まっていません。
突発性難聴は耳の聞こえに異常を感じてから1週間以内にこれらの治療を行うことで、約40パーセントの人は完治し、50パーセントの人には症状の何らかの改善が見られます。
しかし、発症から時間が経過してしまうと、治療を行ってもその効果は下がり、症状の完治や改善が難しくなってしまうため、早めに専門医を受診するようにしましょう。
中耳炎
急性中耳炎の場合、症状が軽度であれば最初の3日間は経過を観察します。それでも治癒しなかった場合や、感染症の悪化が疑われる場合には、抗生物質を使用して症状を押さえます。
慢性中耳炎の場合には、抗菌薬などで炎症を押さえるという方法が基本の治療法となりますが、症状が悪化している場合には、感染した組織をきれいにする必要が出てきます。
滲出性中耳炎の場合は、発症から3か月程度建っても治癒しない場合に治療を開始します。チューブなどを用いた耳管の通りを良くする処置を行ったり、鼓膜を切開し中耳に溜まった滲出液を排出する外科手術を行うこともあります。
副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など、別の症状が原因となって中耳炎を引き起こしている場合には、それぞれの病気に応じた薬を使用して治療を行います。
真珠腫性中耳炎の場合には、真珠腫を摘出する手術を行いますが、真珠腫性中耳炎の症状が初期段階の場合には、耳管の通期をよくしたり、鼻をすするなど中耳炎の原因となる行動を押さえるなどして経過観察を行います。
加齢性難聴
加齢性難聴には、加齢が原因なので根本的な治療法はありません。
加齢性難聴と診断されたら、耳鼻咽喉科の中でも補聴器相談医がいる耳鼻咽喉科を受診し、その医師の指導の下に連携している認定補聴器技能士がいる補聴器販売店で、自分の加齢性難聴の程度に合った補聴器を購入して、聴力を補うようにしましょう。
加齢性難聴と診断された後に、適切な補聴器を使用していても聞こえ方がどんどん悪くなる場合には、遺伝性難聴という他の病気の可能性があるため、もう一度耳鼻咽喉科を受診して検査をしてもらいましょう。
メニエール病
メニエール病の治療法は、対症療法が主なものとなります。
めまいが起きている間は横になり安静を保ったり、めまいや吐き気がひどい場合には、応急処置として内耳循環改善薬(抗めまい薬)や制吐剤(吐き気止め)、炎症を押さえるためのステロイド薬、抗不安剤などを処方してもらいましょう。
メニエール病の症状が比較的軽い場合には、内服治療を行って症状の改善を待つのが一般的ですが、重い場合には注射や点滴を使用することもあります。
発作が治まった後には、メニエール病の原因である内リンパ水腫を軽減するために、利尿剤をはじめとして、ビタミン剤、自律神経調整薬、抗不安薬、副腎皮質ホルモン薬による内服治療を行います。
メニエール病が難治性の場合には、経鼓膜的に内耳へ薬を注入する局所療法や、内リンパ液を減らすための外科手術、前庭神経を切除する外科手術を行うこともあります。
メニエール病はストレスや心身の疲労が蓄積すると起こりやすくなるといわれているので、日常生活においては、仕事などで無理をせず、リラックスして過ごすことも大切です。
急性音響性難聴
急性音響性難聴の治療は、基本的に突発性難聴の場合と同じものが用いられます。
ステロイド薬や血管拡張薬の使用に加えて、必要であれば首の付け根に注射を行い、頭部への血行を改善することで難聴の改善を促す星状神経節ブロック注射などの補助療法を行います。
急性音響治療も、突発性難聴と同じく早期に治療を開始することが大切になります。また、原因となった音の大きさやそれを聞いていた時間の長さも回復を左右します。
外来で治療できる場合もあれば、入院が必要な場合もあるため、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
片耳難聴を発症したら仕事はどうする?
片耳難聴を発症し、それが治癒までに長い時間を要するものであった場合には、どのように対応すれば良いのでしょうか?
「どうやって仕事を探せばいいんだろう・・」そんなあなたには簡単1分でタイプ別にわかる!仕事の探し方診断がおすすめです。
片耳難聴になってしまうと、音声が聞き取りづらかったり、目で見て分からない障害であるために他人から「声を掛けたのに無視された」などど勘違いされてしまうことも多くなることが予想されます。
この片耳難聴をオープンにすることで、周囲に配慮を求めることができますが、その前に直属の上司などに相談してみることをおすすめします。
周囲の人に自分の聞こえの状態を知ってもらうことで、騒がしいところでの会話や電話対応が難しいことを伝えたり、大勢の人が話すシーンでの言葉の聞き分けがうまくできない場合には、会議の内容を要約してもらうなどの配慮を求めてみましょう。
また、雑音が少ない場所に席を変えてもらったり、重要なやり取りは口頭で行わずメールなどの文字で行うようにすれば、片耳難聴でもぐっと働きやすい職場環境になります。
それ以外に、私生活を見直すことも大切です。症状を良い状態のままコントロールするために、ストレスを減らし規則正しい生活を行うようにしましょう。
聴覚障害の方の職探しに利用したいサービス
聴覚障害の方が職探しをする際に、利用できるおすすめのサービスはハローワークです。
ハローワーク
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その場合難聴の人にどのような仕事が向いているかといったことなどについてアドバイスを受けることができます。ハローワークのこのような窓口の担当者は、障害と求職活動の双方の専門知識を持った人なので、安心して相談することができます。
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転職や就職に不安のある障害のある方の就職活動をサポートしてくれる障害者専用転職サービスというものがあります(ただしこちらのサービスを利用するためには障害者手帳を有することが必要です)。
この障害者専用転職サービスは、簡単にいうと障害者を雇用したい会社と就職を希望する障害のある方のマッチングサービスの提供を行ってくれます。
この障害者専用転職サービスを利用すると、専属のエージェントが付き、どの企業へ応募するかといったことから始まって、面接対策や必要書類の添削、採用が決まれば入社日や給与の交渉、そして長く職場に定着できるように就職後も相談に乗ってくれるなどのサービスを受けることができます。
ハローワークでは扱っていない求人も数多くあり、企業との連絡も密であるため、職場環境などを知ることも可能です。
就職先を見つけるための手段の1つとして、ハローワーク以外に障害者専用転職サービスも選択肢の中に入れておくようにしましょう。