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発達障害のある方がコミュニケーションで困るポイントやその対処法とは?

更新日:2022年09月09日

発達障害のある人の全ての人が、発達障害であることが子どものころに判明し、適切な療育を受けて社会に巣立っていくわけではありません。中には子どものころには発達障害であると診断されることなく、社会に出てから「自分は発達障害ではないか?」という疑いを持ち、病院に行って初めて発達障害であることが発覚するケースがあります。またきちんと子どものころから療育を受けていても、大人になってから「他人と良好にコミュニケーションを取ることが出来ない」といった発達障害の特徴に悩まされている人も少なくありません。では、他人とのコミュニケーションを上手くとることが出来ないという発達障害の特徴によって、どのようなシーンで困りごとが起こるのでしょうか。また、それらの困りごとに対する対処法はあるのでしょうか。ここでは、発達障害の人が他の人とコミュニケーションを上手に取ることが出来なくなるシーンとその対処法について詳しく解説していきます。

発達障害の人が他人とコミュニケーションを取るうえで問題となる事柄とは?

発達障害には、大きく分けて3つの種類があります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(LD)です。

 

それぞれの特徴として、自閉症スペクトラム障害(ASD)は相互の対人関係を上手く築くことができない・人間関係を発展、維持、理解することが難しい、注意欠如・多動性障害(ADHD)は注意力散漫で集中力を維持することが困難・落ち着きがなく衝動的な行動や言動が多い、局所性学習障害(LD)は読字の正確さや読字の速度または流暢性に欠ける・読解力がないなどといったことが挙げられます。
この3種類の発達障害の中で、コミュニケーションに問題を抱えやすいのは、自閉症スペクトラム障害(ASD)と局所性学習障害(LD)の障害がある人です。

注意欠如・多動性障害(ADHD)のある人は、ケアレスミスや忘れものが多いなどの行動面での問題は見られますが、他人とのコミュニケーションスキルに関しては注意欠如・多動性障害(ADHD)が問題となることはさほどないと考えられています。

 

また、上記の他人とのコミュニケーションに問題を抱えやすい発達障害のある人の中でも、発達障害が重度の人より軽度の人のほうがより人間関係に悩んでいるケースが多いと言われています。

軽度と言っても、発達障害のある本人が生きづらい思いをしていることに変わりはありません。なぜなら、軽度であるためにこれまで発達障害であることに自分や保護者が気付かなかったため、適切な療育を受けてこなかった人も少なくないからです。

そのため、発達障害特有の特徴により起こる問題の原因やそれに対する対処法などが一切分からないまま大人になってしまい、それとともに周囲の社会構造も複雑化して、他人とのコミュニケーションなどの問題が生じているのです。

 

学生時代であれば、「空気が読めない人」としてからかいやいじめの対象になることもあり、さらに就職してからは仕事を覚えることができなかったり、臨機応変な対応が出来なかったりするためトラブルを生じさせたりしてしまい、発達障害がある人の評価は非常に低いものとなってしまいます。

 

また、仕事上のミスを繰り返すことで上司や取引先を巻き込んだトラブルに発展させてしまう可能性もあります。
このような事が続けば、本人のキャリアも傷つき、また人としての信用も失ってしまう可能性が高くなります。

 

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他人とのコミュニケーションに問題が起こる原因は何?

 

発達障害の中でも、自閉症スペクトラム障害(ASD)と局所性学習障害(LD)の障害のある人は、これらの障害のどのような特徴が原因となって他人とのコミュニケーションに問題を起こしてしまうのでしょうか。以下に発達障害の種類ごとに解説していきます。

 

1.自閉症スペクトラム障害(ASD)

  • 【表情やジェスチャーから相手の気持ちを推し量ることができない】
    コミュニケーションは大きく2つの種類に分けることができます。それは「言語によるコミュニケーション」と「言語によらないコミュニケーション」です。
    このうちの言語によらないコミュニケーションは、ジェスチャーや表情、声のトーンなどによってコミュニケーションをとる方法を言います。
    同じ言葉でも、表情や声のトーンによっては全く反対の意味を持つ表現になることがあります。
    自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は、このようなジェスチャーや表情の変化から相手の心情や意図を汲み取ることが難しいといった特性を持っています。
    そのため、言語による表現のみで相手の気持ちを受け止めてしまい、相手の真の心情を理解する事が出来ないといったことが多々あるのです

 

  • 【曖昧な表現を適切に受け取ることができない】
    仕事をしている場合だけでなく、日所生活を送る上でも発達障害を持っていない人は「適当に」や、「ちょっと」というような曖昧な表現を使うことも多々あります。
    しかし、自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は言葉を文字通りに受け取ってしまうため、「適当」や「ちょっと」とはとはどの程度の事なのか、理解することが出来ないためさじ加減が分からず、上手くコミュニケーションをとることが出来ない傾向があります。

 

  • 【人間関係を理解しづらい】
    職場では上司と部下などの上下関係があり、その関係性により言葉使いを変えたりなどといった気遣いをする必要があります。
    しかし、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある人は、対人関係や社会関係のような曖昧なものを理解することが難しいため、例え自分より上の立場にいる人に対しても、同じ環境にいるというだけで、自分と同じ立場の人に対するような対応をしてしまうことがあります。
    それを失礼なこととして認識することができないため、そのことに対して腹を立てたりする人がいても、なぜその人が怒っているかということを理解することができないのです。

 

このような特性から、良好な人間関係を築くことを不得意とするのが自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴であるといえます。

 

2.局所性学習障害(LD)

  • 【情報伝達の手段が合致しない】
    局所性学習障害(LD)のある人が良好な人間関係を築くのに問題となる障害の特性は、情報伝達の手段が合致しないという点です。
    局所性学習障害(LD)のある人は、自分が苦手とする手段で情報を伝えられても、その内容を正確に理解することが出来ません。
    たとえば読むことに困難さを覚える人に、文字で指示をしても内容を正確に把握することは困難です。
    その後、文字で指示された内容に関して対応できなかった場合に「コミュニケーションをとることが出来ない」と判断されてしまうのです。
    このような場合は、口頭で指示するなど局所性学習障害(LD)の人が得意とする方法で情報を伝えることで解決することができますが、局所性学習障害(LD)に対して理解が浅い人から良い評価を得ることは難しくなってしまいます。

 

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発達障害の人が他の人と上手にコミュニケーションを取るための対処法

自閉症スペクトラム障害(ASD)と局所性学習障害(LD)のある人は、どのような方法をとれば他人と良好なコミュニケーションをとることができるのでしょうか。それぞれの障害が持つ特性を、発達障害者本人と、周囲の人が理解することでその対処法が見えてきます。

以下に発達障害を持つ人が、他人と良好なコミュニケーションをとるための対処法について解説していきます。

 

1.自閉症スペクトラム障害(ASD)

  • 【指示を出す(貰う)ときは具体的に】
    自閉症スペクトラム障害(ASD)のある人が他人と上手にコミュニケーションをとることが出来ない原因に、「曖昧な表現を理解できない」といったものがあります。
    そのため、指示を出す人は自閉症スペクトラム障害(ASD)のこのような特徴を理解し、具体的に指示を出すようにしましょう。
    また、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある本人も、自分が持つ障害の特性を指示を出す相手に伝え、理解してもらうように努める必要があります。

 

  • 【自分専用のマニュアルを作る】
    一般的に社内で使用するマニュアルは、その業務を行う人全員が理解できるように作成されています。
    しかし、その中には曖昧だったりそのマニュアルの作成者の意図を汲み取ったりしなければならない表現がなされていることもあります。
    自閉症スペクトラム障害(ASD)のある人には、このような表現で書かれたマニュアルを理解することが難しい場合が多くあります。
    そのようなマニュアルを利用しながら業務を行うと、業務中に混乱してしまったり極端な対応をとってしまったりすることで、業務に支障をきたす恐れも出てきます。
    このような問題を起こすことが無いように、自分の特性に合ったマニュアルを作成し、元のマニュアルの作成者に内容に問題がないかを確認してもらうとよいでしょう。

 

 

2.局所性学習障害(LD)

  • 【図形や文章で説明をしてもらう】
    局所性学習障害(LD)のある人は、打ち合わせなどのシーンで、苦手な情報伝達の手段で解説されると、内容を上手く理解できないという傾向があります。
    これは、局所性学習障害(LD)のある人だけの力で克服できる問題ではありません。
    このようなシーンで内容をしっかりと把握するためには、局所性学習障害(LD)のある人が自分にとって理解しやすい情報伝達手段を知っておくことが必要です。
    打ち合わせなどのシーンでは相手に文字や図など、自分が理解しやすい情報伝達手段を使って説明してもらうようにお願いすることが重要になります。
    また、情報を受け取る側の局所性学習障害(LD)の人が、音声での情報伝達を苦手とする場合には、ICレコーダーなどを活用し、後から自分のペースで内容を確認できるようにすることも有効な手段の一つです。
    近年では、文書読み上げ機能がある機器などもあるため、局所性学習障害(LD)の中でも文字を読むことが苦手な書字障害のある人は、このような機器を活用することで、自身の障害をカバーすることも可能です。

 

 

3.自閉症スペクトラム障害(ASD)と局所性学習障害(LD)共通でできること

  • 【支援機関にアドバイスを求める】
    現在、発達障害のある人の就労を支援する専門機関は、公的なものから民間のものまで多く存在します。
    そのような専門機関の中には、会社と発達障害のある人の間に入って双方が良好なコミュニケーションをとる方法についてアドバイスをしてくれたり、働きやすい環境を整えたりする手助けをしてくれるところもあります。
    例えば、国の法律に基づいて設置されている「就労移行支援移行事業所」では、仕事で役に立つ技能の修得や、日常生活や会社で良好な人間関係を築くためのコミュニケーションについてのアドバイス、定期面談による心理的なケアに至るまでのさまざまな福祉サービスを提供しています。
    発達障害に特化している「発達障害者支援センター」や、臨床心理士が対応する「精神保健福祉センターなどの支援機関にも、発達障害を持つ人がさまざまな事柄を相談することが可能です。
    このような支援機関は、基本的には公的なものが多いため、利用したい支援機関がどこにあるかといったことや、自分にはどの支援機関が向いているかといったことについては、住んでいる自治体の役所に相談してみると良いでしょう。

まとめ

ここまで、発達障害がコミュニケーションに及ぼす問題やその原因、そして対処法について解説してきました。

 

一口に発達障害といっても、発達障害には種類がありその種類ごとに異なる特性があります。その特性に合った対処法を知ることで、コミュニケーションをスムーズにとることがお分かりいただけたと思います。

 

ここで紹介した対処法を上手に利用するためにも、自分の発達障害の種類とその特性についてしっかりと把握することが大切です。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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