【障がい者総合研究所アンケート調査】コロナ禍における障害者の雇用管理とは
更新日:2023年11月13日
世界的なパンデミック感染症となったコロナウィルス。依然として外出自粛要請や都道府県間の移動制限もあり、可能な職業では在宅勤務へのシフトも見られ、それ以外にもコロナウィルスが起こした職場環境の変化により、障害者の雇用管理にも影響が出ていると思われます。そこで今回は、障がい者総合研究所が5月に実施した「外出自粛要請下における、就労状況の変化に関するアンケート」より、雇用管理上のポイントをコミュニケーションの観点で考察します。第2波、第3波があるとも予想されるコロナ禍、今後の障害者の雇用管理のご参考になれば幸いです。
目次
障害者を取り巻く環境変化
障がい者総合研究所のアンケート結果によると、コロナウィルスの影響により、障害者枠での就労者には以下のような変化があったとされています。
また、障がい者総合研究所「外出自粛要請下における就労状況の変化に関するアンケート調査」へのリンクはこちらです。
「新型コロナウイルスによる就労状況の変化についてはどう受け止めていますか?」
コロナによる就労状況の変化として悪くなったと回答した方(33%)は、良くなったと回答した方(17%)の約2倍となっています。
「あなたの勤務スタイルに生じた変化を教えてください」※複数選択可
「あなたの仕事上の変化を教えてください」※複数選択可
「今の働き方でのコミュニケーション面の状況について教えてください」
今の働き方でのコミュニケーションについて、コミュニケーションが取れていると答えた方は全体の47%、コミュニケーションが不足していると答えた方は過半数の53%という結果が出ています。
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業務の切り出しから雇用後まで、よくある課題と具体的な対応例をご紹介します。
障害者が職場に求めている「コミュニケーション」とは何か
「今の働き方のもとでコミュニケーション面で職場に求めたいこと」
障害者への影響と課題
以上から、在宅勤務を始めとする環境面の変化が大多数で見られていることがわかりました。これを良い変化と捉える人も一定数はいるものの、悪い変化と捉える人もおり、悪い変化と捉える人にはコミュニケーションの面での改善要望が多いようです。
アンケート結果やゼネラルパートナーズに日々寄せられる障害者の声からは、在宅勤務などの環境変化により、周囲の状況が読み取りづらい状況に不安を感じる人が一定数いることが想像されます。ゼネラルパートナーズへの生の声の例としては、「職場にいれば声掛けをしていいタイミングかどうかがなんとなくわかるが、在宅勤務だとそれがわからない」「相手が忙しいかもしれないので、雑談やちょっとした質問をすることに抵抗がある」、「仕事の完了報告をした時、上司の態度で良かったのか悪かったのかだいたいわかるが、チャットだとわからない」等があります。
このような状況下においては、コミュニケーションのズレが生じやすく、疑心暗鬼になってしまう人もいるかもしれません。
また、同じく障がい者総合研究所の記事には以下のようにも述べられていることから、障害者から相談がなかったとしても、水面下で不安を感じている可能性があります。
「(中略)『会社に希望する具体的な対策案を持っていても要望をあげたことがある人』は全体の13%」という結果からも、会社に意見をすることに抵抗を感じる人が多いということも見受けられます。」
障害者の職場定着には相談体制やコミュニケーションが重要だと言われているため、現在の状況は、これまでよりも管理者側や周囲が退職リスクに気付けないことも考えられます。また、在宅勤務下に限らず、普段からコミュニケーションを取りあえる関係性を作っておくことが大事だと思われます。
では、障害者の希望にはどのようなものがあるのでしょうか?アンケートからは、「職場のコミュニケーションにおいて、実際してもらえて良かったこと」として以下のような生の声が聞こえてきました。
・業務で困った時、オンラインでのチームMTGを誰からでもセットできるようにしてもらった(女性 30代 注意欠陥/多動性障害(ADHD))
・ツールを使用しての雑談機会の増加(男性 40代 視覚障害)
・いつでも何でも相談してくださいと上司や同僚から言われ、定期的に声かけしてもらえること(女性 40代 統合失調症)
・社用スマホを支給してもらえたことで、いいタイミングだからと業務の幅、裁量が広がったなど(女性 30代 統合失調症)
以上のアンケート内容やゼネラルパートナーズの知見を元に、お互いに気持ちよく働くための工夫例を以下に挙げてみました。半数の人は問題なくコミュニケーションを取れていると感じているため、全員に全ての工夫をするまでの必要はありませんが、以下を参考に、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
職場で今からできる工夫例
障害者社員に「聞く」こと
例)在宅勤務で、何か困っていることはありますか?
例)コミュニケーションの取り方に不安はありますか?
例)最近調子はどうですか?
こうした質問を投げかけることで、職場には直接言いづらい困り事を早期にキャッチしやすくなります。それだけではなく、投げかけ自体が、相談に応じる体制があることを伝えることにつながります。関係構築のためにも、是非投げかけをしてみてください。
障害者社員に「伝える」こと
例)(成果物に対して)とてもよくできています。ありがとうございます。
例)現在、部署では、今週までの納期の仕事があるのでバタついていますが、来週位には落ち着く予定です。
例)業務上、少しでも心配なことがあったら気軽にチャットやメール、電話をしてくださいね。間違えた方向に進めてしまうことの方が大変なので。
在宅勤務では、小さなことでも重要な情報です。言わなくてもわかるだろう、と思わず積極的に伝えていくことで、障害者の不安が解消されたり、仕事の能率が上がることにつながります。
障害者社員と「関わる」こと
例)直接業務と関係なくても、障害者にもチームMTGに参加してもらう
例)雑談の場として、ビデオ通話で昼食を一緒に取る
例)1on1のMTGを設定する
例)出勤時、退勤時にはチャットやメールでコメントをすることをルールにする
コミュニケーションを取らない時間が長いと、誰でも孤立感を感じるリスクがあります。コミュニケーションの場を設けることで、チームの一員なんだと感じることができたり、そこから周囲の状況がわかる効果もあります。また、仕事について、職場が障害者社員に求めることと、障害者が進めようと思っているやり方とを擦り合わせるとより良いと思います。努力の方向性が合っているとわかることは、障害者の安心につながります。
Withコロナの雇用管理について
5月25日、全国で緊急事態宣言が解除されたことで、在宅勤務から出社しての勤務へと移行している企業も増加しています。ここまで記載したようなコミュニケーション上の工夫が必要になるなら、このまま在宅勤務をなくしていった方が良いかと言うと、必ずしもそうとは限りません。
例えば、精神障害や身体障害のある方にとっては、通勤面での負担が減ることで、体調が安定しやすく勤怠の安定につながるかもしれません。
また、聴覚障害や発達障害のある方にとっては、口頭ではなく、メールやチャットを中心とした業務上のやり取りになることで、業務指示のすれ違いが軽減するかもしれませんし、生産性が上がるかもしれません。デメリットへの対策をしっかりしたうえで、働き方の多様性を模索していくことが大切だと考えます。
昨今、ダイバーシティという言葉が一般化しつつありますが、ここに加えてコロナウィルスの影響で『新しい生活様式』を日本全体で取り入れていく必要がある情勢となりました。変化し、ますます複雑化していく社会状況の中で、どう適応していくかが企業の課題となっていると言えます。
障害者雇用を取り巻く環境面の変化としては、企業の関心が、採用だけでなく入社後の定着、活躍へと移ってきていることを感じます。今いる社員が定着、活躍できるような工夫を模索することが法定雇用率の達成、維持のためにも必要とされているのではないでしょうか。
今回のコロナウィルスの影響をポジティブな変化のきっかけとして、社員全員が働きやすい環境を少しずつ整えていっていただくことを願っております。
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