従来のうつ病とは違う非定型うつ病とは?その原因や治療法について詳しく解説
更新日:2023年07月26日
最近よく非定型うつ病(新型うつ病、現代うつ病)という言葉を聞くようになりました。非定型うつとは、従来のうつとは逆の症状が出るタイプのうつ病です。気分の変動が激しく、夕方から夜にかけて憂鬱になりやすく、また過食傾向になることが多いことが特徴といわれています。20代から30代の女性に多く診断されます。若い女性に多く、誤解されやすい病気とも言われるこの非定型うつ病は、精神障害の中でももっとも患者数の多い従来の(定型)うつ病とはどう違うのでしょうか?この稿では同じうつ病でも定型うつ病とは違う、非定型うつ病の特徴や原因、治療法など、定型うつ病と比較しながらそれらの違いなどを詳しく解説していきます。
目次
非定型うつ病は今までの(定型うつ病)とは違う病気
非定型うつ病とは時に”新型うつ病”とも呼ばれていますが、これは医学的ではなくメディア等でそう呼ばれるというだけで、正式な医学的な病名は英語のAtypical(非定型)depression(うつ)を訳したものです。
多くの疾患はWHO(世界保健機関)のICD(疾病及び関連保健問題に関する国際統計分類)やアメリカ精神医学会のDSM(精神障害の分類と統計マニュアル)に定義されることによって国際的にその診断基準が認知されます。非定型うつ病はDSM-Ⅳ(1994年)において定義されたことから広く認知されるようになりました。その意味では比較的新しい病気と言えますが、実際は1900年代半ばにはいわゆる定型(typical)うつには当てはまらないタイプ=非定型のうつ病としてその存在は確認されていたようです。
現状では、発症率はうつ病の方が圧倒的に高く、1990年代のアメリカの調査では(定型)うつ病患者は全人口の約10%、非定型うつ病患者は約4%でした。これは他の先進諸国でもそう大きくは変わらないと考えられます。
それでは、非定型うつ病とはどのような特徴を持つ病気なのかを見ていきましょう。まずは様々な病気の診断基準として取り上げられる、アメリカ医学会のDSMにおける非定型うつ病の診断基準を見てみます。
DSM-5に見る非定型うつ病の診断基準(症状)
アメリカ精神医学会のマニュアルであるDSMの最新版、DSM-5(2013)によると、非定型うつ病は以下の様な診断基準となります。
- 1.気分反応性がある(良いことが実際に起こっている、または起こりそうな時に反応として明るい気分になる)
- 2.少なくとも以下のうち二つが当てはまる
・顕著な体重増加、または食欲の増加
・過眠
・鉛様の麻痺(手足に重さを感じ動かすのが困難となる)
・顕著な社会的、職業的障害を引き起こす長期に渡る対人関係拒否過敏性(気分障害の発症に限らず)
・同様の症状発現時にメランコリー型(従来の定型)うつ病、緊張性うつ病の特徴の基準を満たさない
非定型うつ病はまだまだ研究途上の病気ではありますが、上記の症状以外の特徴としては、不安抑うつ発作(急に泣き出す)や怒り発作が多く見られるようです。非定型うつ病と診断される人は20~30代の女性に多く、実に男性の3~4倍という罹患率になります。また比較的思春期などの若い時期にうつ症状が発現し、慢性的に継続しているケースが多いようです。パーソナリティ障害、強迫性障害、不安障害を併発することもしばしば見られ、それが自傷行為(リストカットなど)や、過量服薬、自殺企図につながることもあるようです。双極性障害(躁うつ病)の患者に非定型うつ病が多く見られることもわかってきています。
例えば、職場の女性同僚が上司に怒られてへこんでしまい、その後、体調が悪いと言って仕事を数日欠勤した、とします。しかし、アイドルのコンサートでノリノリで楽しそうな写真や、その後おしゃれなレストランで食事を満喫している写真などをアップしていたのをSNSで見かけた場合、一般的にはどう思われるでしょうか?「あの人は病気で休んでいるはずなのに楽しそうに遊んでいる」とみなされる場合が多いと思われます。
病気、そしてうつ病なら楽しくなれるはずもないという知識がある人からすると、余計に「ずるい」、「適当に仕事をしている」、「仮病かも」などと判断されることがありますが、非定型うつ病はまさにそういうことがあり得る病気なのです。
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非定型うつ病の原因:その人の性格的傾向が影響する
非定型うつ病の原因としては、ある一定程度、遺伝要因があるようです。ある調査では、非定型うつ病患者の7割が一方の親がうつ病だったとの結果が出ています。遺伝的要因があるにせよ、ないにせよ、育った環境や形成された本人の性格から思春期に問題を抱え、20代になって症状が現れるというパターンが一般的とされています。
非定型うつ病にかかりやすいとされる性格の特徴は、何かにつけて不安を感じやすい、特に対人関係において不安が強く、人前で極度に緊張する、目立つのを嫌がる、他者の評価が気になり周囲に気を遣う、物事の捉え方に偏りがあり、不満が多く被害者意識が強い、自己愛傾向などが挙げられます。いずれにせよ、このような性格からくる行動特性が他者とのスムーズなコミュニケーションを阻害し、軋轢を生み、精神の不安定につながり、やがて非定型うつ病となります。
一部の研究では、非定型うつ病患者には僅かながら、甲状腺に異常が見られるという結果も出ています。甲状腺機能低下症に効果がある薬の投薬が、非定型うつ病にも効果があるといった研究もあり、このように具体的な機能障害が明確になって行けば治療も飛躍的に進むと考えられます。
うつ病と非定型うつ病の違い
【症状の特徴と定型うつ病との違い】
非定型うつ病はうつ病の一種(亜種・サブタイプ)と位置づけられていますが、明らかに違う部分があります。
まず症状として非定型うつ病が従来の(定型)うつ病と明らかに違う点は、DSMによる診断基準でいうところの「楽しい、嬉しい出来事」には正しく受け止め反応できるという点です。定型うつ病では何事に対しても憂鬱で気分が明るくなることがありません。
また、定型うつ病では不眠が主な症状の一つであり、人によっては過眠もあり得ますが、非定型うつ病では比較的若い患者に過眠の傾向が見られ、不眠は症状にありません。
非定型うつ病では、年齢が高くなるほど顕著な過食、体重増加が症状として現れやすくなりますが、定型うつ病では食欲の増減と体重の増減両方があり得ることが大きな違いと言えます。
非定型うつ病の場合、手足が鉛のように重く感じる倦怠感があるという特徴があり、全体的な倦怠感を伴う定型うつ病とはこの点でも異なります。
また、非定型うつ病では、対人関係の中で拒否されていると感じる傾向があり、学校や職場の人間関係で強いストレスを感じると欠席が多くなることがあります。気分が滅入る、落ち込むなどの抑うつ状態は定型うつ病では朝に見られるのに対して、非定型うつ病では夕方に見られることが特徴です。
このように、同じうつ病であっても顕著な症状の違いがあり、非定型うつ病は一見、「ただのわがまま、気分屋」という誤解を受けやすい病気なのです。
【発生原因の違い】
非定型うつ病になりやすい育成環境や性格は、定型うつ病になる原因と概ね一致しています。子どものころは「素直で従順ないい子だった」、逆に言うとストレスが多かった人が多いようです。また、非定型うつ病患者の一方の親がうつ病の確率も高く、遺伝的要素も少なからずあるとされています。
一方で、定型うつ病はそのような要素のあるなしに関わらず誰でもなる可能性が高く、今まで精神面でも健康でストレスとは無関係、もしくはストレスに対応できていた人も急にうつ病になり得ます。定型うつ病の方が罹患率が高いのもこの違いが一因と考えられています。
【非定型うつ病の治療法】
非定型うつ病の治療については、投薬とカウンセリングが中心で、現状では定型うつ病の治療と基本的には変わらないようです。ただし、定型うつ病の治療に使われる薬でも種類によって非定型うつ病に効果がないこともあります。また、性格や考え方の偏りには認知行動療法が有効であるようです。
認知行動療法とは心理療法の一種で人の認知や行動を把握、改善することでストレスを軽減するもので、精神障害や発達障害の治療によく用いられます。
それ以外にも、脳に磁気刺激を与える磁気刺激治療や、生活リズムの改善トレーニング、自律神経の働きを活発にする適度な運動なども有効なようです。
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非定型うつ病はまだまだ一般的認知度が低い精神障害
非定型うつ病は、新型うつ病とも呼ばれることもある、比較的新しいうつ病(精神障害)です。
最近ようやく、社会におけるうつ病の認知と理解は高まってきましたが、そもそも、一見して分かりにくい精神障害や発達障害、身体障害における内部障害などはなかなか他者に理解してもらいにくい障害でもあります。
特に、非定型うつ病は常に抑うつ状態である定型うつ病と違い、楽しいことには前向きになれて、明るい表情も見られる、睡眠も必要以上に取り、食欲もあるだけに”都合よく”病気になる人という誤解を受けやすい障害です。非定型うつ病も定型うつ病同様に重症化する前に早期発見、早期治療することが非常に重要です。そのためには、非定型うつ病という決め手がない、または何かの障害なのかがわからない状態でも、本人が生きづらさを感じた時、もしくは家族など周囲が変化に気づいた時にためらわずに心療内科や精神科で受診する事が大切です。
加えて、社会全体の長期的な取り組みとして、非定型うつ病を含む、精神障害や発達障害などに対する理解と受容を推進していく必要もあるでしょう。
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