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他人の視線や人と会うのが怖いのは病気?社交不安障害について

更新日:2025年10月29日

人の前でスピーチしたり、他の人から注目されるような場面では、誰でも多少の緊張はするものです。しかし、過度な緊張から強い不安や恐怖を感じ、日常生活に支障がある場合には、「社交不安障害」という病気かもしれません。本記事では、「社交不安障害」の特徴や症状、原因と治療法、自分でできる対処法などを紹介します。
 

他人の視線や人と会うのが怖いと感じるのは病気?

大勢の人の前で話す時など他の人の視線を感じる場面で、緊張して心臓がドキドキしたり、頭の中が真っ白になって言葉が出てこなかったり、声が震えてしまうなどの経験は、誰でも一度はあるのではないでしょうか。

 

多くの場合は、何度か経験をすることで緊張しなくなるものですが、不安な気持ちや緊張により日常生活に支障がある場合は、「社交不安障害」という精神疾患の可能性があります。

 

「社交不安障害」は、不安障害の一種で「対人恐怖」と呼ばれてきました。赤面恐怖やスピーチ恐怖、会食恐怖などさまざまな症状が見られ、日本にはおよそ200万人の患者がいるとされています。しかし、人見知りや内気など性格の問題だと思われがちで適切な治療を受けていない患者さんも少なくありません。

 

「社交不安障害」の方は、人の視線を感じる場面で「強い恐怖」や「不安」を感じて、手足の震え・動悸・呼吸困難、赤面などの症状が現れます。また、そのような場面を回避しようとするなど異常な行動もみられます。そうした回避行動は、緊張する場面だけでなく日常生活の普通の場面にまで拡大して、多大な支障をきたすこともあります。

社交不安障害の特徴と症状

「社交不安障害」の特徴と症状は次の通りです。

 

社交不安障害特徴

「社交不安障害」の大きな特徴の一つに、発症する年齢が若いことがあげられます。10代から20代で発症することが多く、30代以降に発症することは稀です。ただし、30代以降で社交不安障害と診断されることが少ないという訳ではありません。

 

「社交不安障害」の発症には、もともと神経質で小さなことにこだわったり、怖がりで恐怖心を持ちやすかったり、子どもの頃に人見知りがあったりなど、生まれつきの性格や育った環境が関係すると考えられています。

 

社交不安障害の症状

「社交不安障害」は、大きく分けて2種類のタイプがあります。

 

● パフォーマンス限局型

「パフォーマンス限局型」は、特定のシーンでのみ、強い不安や恐怖を感じるタイプです。

症状が出てくるシーンに対して、次のような名前が付けられることもあります。

 

スピーチ恐怖:人前で発表するのが怖い

赤面恐怖:人前で顔が赤くなるのが怖い

電話恐怖:電話対応するのが怖い

視線恐怖:他の人の視線が怖い

震え恐怖:人前に出ると手足が震える

会食恐怖:人前で食事をするのが怖い

発汗恐怖:人前に出ると汗が止まらない

書痙(しょけい):緊張で手が震えて文字が書けない

 

● 全般型

人と関わること全般に、強い不安や恐怖を感じるタイプです。

 

対人関係に影響を及ぼすことが多く、症状が重くなると「家から出られなくなる」「学校や会社に行けなくなる」など、不登校や引きこもりに発展するケースもあります。

社交不安障害のチェック方法

ひょっとしたら自分は「社交不安障害」なのでは?と不安に思っている方は、まずはセルフチェックをしてみましょう。ただし、チェックシートはあくまでも参考です。詳しくは専門の医師やカウンセラーにご相談してください。

社交不安障害の治療法

「社交不安障害」は、脳内にある「GABA」や「セロトニン」という神経伝達物質のバランスが悪くなることが原因といわれています。

 

社交不安障害の診断方法

米国精神医学会が発行する「DSM-5」の診断基準を満たすには、以下が見られる必要があるとされています。

 

・他の人から注目を受ける場面で、持続的(6カ月以上)に恐怖または不安を感じている。恐怖には、他者による否定的な評価(屈辱を感じる、恥をかく、拒否される、他の人の気分を害する)などが関連している必要がある。

 

さらに以下の全てに該当する必要もあります。

・同じ場面が常に恐怖または不安を引き起こしている。

・その状況を意図的に回避している。

・恐怖または不安が現実的な恐れと釣り合わない。

・恐怖や不安、または回避が苦痛を引き起こしているか、社会的または職業的に支障をきたしている。

 

社交不安障害に似ている病気

「社交不安障害」などの精神疾患は、似ている症状が現れる他の病気と混同されることがあります。「社交不安障害」と似ている病気には次のようなものがあります。

 

● HSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)

「HSP」は、病気や障害ではなく生まれ持った気質です。非常に感受性が強く敏感な気質をもった人を指しています。

 

● 全般性不安障害

「全般性不安障害」は、日常生活のあらゆることに過剰な不安や心配を感じる病気です。「社交不安障害」と「全般性不安障害」では、症状が強くなる状況が異なります。

 

社交不安障害:他の人から注目される状況で症状が出る

全般性不安障害:日常生活すベてにおいて強い不安や緊張がつきまとう

 

● うつ病

「うつ病」は、脳のエネルギーが欠乏して憂うつな気分や意欲の低下といった精神症状に加えて、食欲不振や不眠などの身体症状が現れる病気です。「うつ病」の症状には、動悸や息切れ、強い不安感など、「社交不安障害」で現れる症状もあるため、混同されることがあります。

 

● 統合失調症

「統合失調症」は、思考・感情・行動を統合する能力が低下して、幻覚や妄想、意欲低下などの症状が現れる病気です。目立った症状が出てくる前には、周囲に対する過敏さといった形で現れることもあり、診断が難しいことがあります。

 

社交不安障害の治療方法

「社交不安障害」の治療には、一般的に「薬物療法」と「精神療法(認知行動療法など)」が行われます。

 

「薬物治療」としては、症状が現れた時に抗不安薬(アルプラゾラムやクロチアゼパムなど)を投与して、セロトニンの機能障害を調整するためにSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われます

 

しかし、「薬物治療」は症状を抑えたりコントロールするのには有効ですが、根本的な恐怖や不安を取り除くには限界があります。そのため「心理療法」などと併用することが重要です。「心理療法」としては、認知行動療法(CBT)、マインドフルネス、自律訓練法(AT)などがあります。

人前に出るのが怖い時の対処法

周囲の人から注目される場面で、不安や恐怖を感じ難くする対処法には、次のようなものがあります。

 

深呼吸をする

深呼吸をして呼吸を整えることで、気持ちが落ち着いて緊張が和らぐ可能性があります。深呼吸する時は腹式呼吸が効果的です。背筋を伸ばして、ゆっくりと鼻から息を吸い込みながらお腹を膨らませて、息を口から吐き出す際にお腹を凹ませることを意識します。

 

イメージトレーニングをする

イメージトレーニングをすることで、成功のイメージを心に刻むことができると言われています。その結果、相手から否定的な評価を受けるのではないかというイメージを払拭でき、気持ちに余裕ができる可能性があります。

 

心配しすぎない

神経質な方や慎重な性格の人は、過度に心配しすぎてしまい緊張して不安や恐怖を感じてしまいます。人前に出るなどの苦手なシーンで、失敗してしまうことばかり考えて、不安にならないようにすると良いでしょう。

 

緊張感に慣れる

「社交不安障害」の方は、人の視線や他人から見られることが必要以上に気になります。しかし、周りの人たちはそれほどあなたに注目していません。自分は注目されていないと考えると気が楽になります。

 

経験を重ねる

あまり不安や恐怖を感じない環境を設定して、経験を積み重ねるのも効果的です。何度も経験することで、「心臓がドキドキしたが次第に収まった」「赤面しなかった」というような成功体験が増えて、不安や恐怖が薄れるとともに自信を持てるようになります。

障害や病気で就職・転職が不安な人は

今回ご紹介した「社交不安障害」など精神疾患のある方は、病気や障害のない方と比べると就職や転職で苦労するケースが多くなります。

「就職活動の進め方がわからない」「自分に合った仕事がみつからない」「就職しても働き続けることができるのか不安」などで困っている方は、就職や転職のプロに相談するのがおすすめです。

 

「atGP(アットジーピー)」は、障害や難病がある方の就職・転職を支援するサービスです。転職支援サービス「atGPエージェント」、求人情報サービス「atGP転職」、転職・求人スカウトサービス「atGPスカウト」、就労移行支援サービス「atGPジョブトレ」の4つのサービスで障害や難病の方の就職・転職をサポートしています。

まとめ

他の人から注目されるような場面では、誰でも多少の緊張はするものです。しかし、緊張により不安や恐怖を感じる場合には、「社交不安障害」という精神疾患の可能性があります。過度な不安や恐怖は日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

 

人前に出ることに強い不安や恐怖を感じる方は、早めに専門医やカウンセラーに相談することが大切です。適切な治療を受けることで、症状を改善することができます。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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