人の感情がわからないのは病気?原因と改善法
更新日:2025年10月23日
人の感情や気持ちがわからず、日常生活や人間関係でトラブルになったことはありませんか。他人の感情や気持ちを完全に理解することはできません。しかし、人の感情がわからなくて、困っている場合には何か原因があるのかもしれません。本記事では、人の感情がわからないと感じた時に考えられる原因や、原因の一つでもある「アレキシサイミア(失感情症)」の特徴や改善法などについて解説します。
目次
「人の感情がわからない」と感じたとき考えられること
人の感情がわからない原因を特定するのは難しいですが、次のようなケースが考えられます。
心理的な要因
他の人の感情がわからない人は、心理的に問題があることも考えられます。
「自分の意見を優先しがち」「コミュニケーションが一方的」といった特徴がある人は、共感的な姿勢が不足している可能性があります。共感的な姿勢が不足していると、他の人の感情を無視したり軽視する傾向が強く、相手の気持ちに気づかないことが増えます。
自己中心的な思考が強い人は、人の立場に立って物事を考えることが難しく、相手の感情を理解する能力が低下します。
また、ストレスの影響を強く受けている場合には、心に余裕がなくなり自分自身の感情に集中しがちで、他の人の感情に関する関心が薄れてしまいます。
技術的な要因
私たちは他の人の気持ちを理解するためのさまざまなスキルを、幼いころから無意識に身につけています。人の感情がわからない人は、それらのスキルが不足している可能性があります。
年齢が若かったり、人と接する機会が少なかった人は、経験不足から人の感情がわからない可能性があります。また、言語スキルが不足している場合もあります。言語スキルが不足していると、自分の思いが正確に伝わらず、コミュニケーションがうまくいかないことが多くなります。また非言語コミュニケーションが苦手な人も、人の感情がわからないと思われるケースがあります。
医学的な要因
発達障害の方は、他人の感情や意図を読み取るのが難しいことがよくあります。特にASD(自閉スペクトラム症)の人は、他の心を推測する能力の欠如やコミュニケーションの障害、感覚過敏などさまざまな要因によって、他の人の気持ちを理解したり、共感したりすることが難しい場合があります。
一方で、自分の感情をうまく認識・言語化できない「アレキシサイミア(失感情症)」という病気もあります。「アレキシサイミア(失感情症)」は、自分の感情を自覚したり、言葉で表現したりすることができない状態ですが、その影響で他の人の感情がわからないこともあります。
アレキシサイミア(失感情症)の特徴
「アレキシサイミア(失感情症)」は、精神疾患の正式な病名ではなく、自分の感情を自覚・認知したり、言葉で表現したりすることが不得意な状態を指す心理的な概念です。ギリシャ語の「a(ない)」「lexis(言葉)」「thymos(感情)」を組み合わせた言葉で、感情を表現する言葉がないという意味を持ちます。
「アレキシサイミア(失感情症)」には、いくつかの代表的な特徴がありますが、人によって現れ方が異なり、全てが当てはまるとは限りません。
感情の認識・言語化が難しい
「嬉しいや悲しいといった感情を自分の中で識別するのが難しい」「どんな感情なのか言葉にできない」といった「アレキシサイミア(失感情症)」の中心的な特徴です。
身体感覚と感情を結びつけて理解するのが苦手
動悸や発汗、体のこわばりなどの身体的な変化と感情が関係していることがあります。「アレキシサイミア(失感情症)」の方は、例えば「緊張する場面でドキドキしても、それが不安が原因と認識できない」など、身体感覚と感情を結びつけて理解するのが苦手なことがあります。
コミュニケーションが上手くできない
「アレキシサイミア(失感情症)」の方は、感情の認識や表現が難しいため、コミュニケーションが上手くできず対人関係に問題を抱えることがあります。また、相手の表情や声のトーンから感情を読み取ることが苦手で、周囲から人の感情がわからないと思われることもあります。
アレキシサイミア(失感情症)の症状
前章で述べた通り、「アレキシサイミア(失感情症)」とは、自分の感情を自覚・認知したり、言葉で表現したりすることが不得意な状態を指す心理的な概念であり、病気ではありません。しかし、「アレキシサイミア(失感情症)」に関連して、さまざまな心身のトラブルを引き起こすことがあります。
依存症や摂食障害
「アレキシサイミア(失感情症)」の方は、漠然とした不安感があっても、それをどんな気持ちか表現できず、心に大きなストレスを抱えることがあります。その結果、依存症や摂食障害になりやすいと言われています。
うつ病や統合失調症の発症
「アレキシサイミア(失感情症)」の方は、自分の感情や精神的なストレスに気づくことができないため、対処することができず「うつ病」や「統合失調症」を発症してしまうケースがあります。
「うつ病」や「統合失調症」は、ストレスが大きく影響する精神疾患です。「うつ病」になると集中力や意欲の低下、食欲不振や不眠などの症状が現れます。また「統合失調症」は、幻覚や妄想、意欲の低下、思考の混乱、認知機能の低下などの状態になり、日常生活にさまざまな影響を与えます。
アレキシサイミア(失感情症)の改善策
「アレキシサイミア(失感情症)」は、病気でないため治療法はありません。しかし、自分の特性と上手く付き合うためのトレーニングを行うことで改善できる可能性があります。
医師やカウンセラーを頼る
「アレキシサイミア(失感情症)」によって生きづらさを感じている方は、精神科や心療内科を受診して相談してみましょう。感情の変化が見られない場合、他の精神疾患の可能性もあるため、専門家の診断を受けることが重要です。
「アレキシサイミア(失感情症)」は、カウンセリングなど精神療法によって、自分では認識できなかった感情に気づき、言葉にする練習をすることで、徐々に状態を改善できます
日常生活でできるトレーニング
医師やカウンセラーのサポートと並行して、自分でできるトレーニングもあります。
● その日あった出来事とその時の「身体的な変化」や「気分」を簡単に記録します。「感情」がわからなくても、「身体的な変化」から記録を始めるのがポイントです。
● 映画やドラマなどを観て「この登場人物はどんな気持ちだろう?」と考えてみましょう。さまざまな感情や表現を知る良い機会になります。
人の感情がわからない方が就職に困っている時には
人の感情がわからないという方の中には、発達障害や統合失調症が原因のケースもあります。発達障害や統合失調症の方の中には、人の感情がわからないことをはじめさまざまな特性によって、就職や転職が上手く進まないと悩んでいるのではないでしょうか。
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まとめ
「アレキシサイミア(失感情症)」は病気ではなく、自分の感情を自覚したり、言葉で表現したりすることができない状態を示す心理的な概念です。しかし、その影響で他の人の感情がわからないこともあります。「アレキシサイミア(失感情症)」の特性によって、生きづらさを感じている方は、精神科や心療内科に相談してみましょう。感情の変化が見られない場合には、発達障害や統合失調症など他の精神疾患の可能性もあります。