知的障害のある方が障害年金を受給できる条件や申請の仕方について
更新日:2024年07月25日
知的障害とは、知的能力の発達が同年代の人に比べて低い水準にあるため、生活に支障が生じている状態です。症状の程度は個人によって差があるため、生活に支障が生じる程度も異なります。知的障害によって日常生活や仕事などが制限される場合には、障害年金が受給できる場合があります。本記事では、知的障害の方の障害年金の受給要件や判定方法、申請方法と注意点などについて詳しく紹介します。
目次
障害年金とは?
「障害年金」は、病気やけがが原因で日常生活や仕事などが制限される場合に、支給される年金です。「国民年金」や「厚生年金」は一定の年齢に達しないと受け取ることができませんが、「障害年金」は現役世代も受給することができ、原則として20歳から65歳になるまで(65歳の誕生日の2日前まで)請求できます。
「障害年金」は、傷病名ではなく日常生活や仕事にどの程度支障があるかで支給対象かどうか判定されます。知的障害であっても、日常生活や仕事に支障がある場合には「障害年金」の支給対象です。
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知的障害の方の障害年金受給要件
「障害年金」には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。病気やけがで初めて医師の診療を受けた時に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」を請求できます。「障害年金」を受給するには一定の要件が必要となります。「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の受給要件は次の通りです
「障害基礎年金」の受給要件
次の3つの要件を全て満たしている場合、障害基礎年金が支給されます。
1.障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの間にあること。
・国民年金加入期間
・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
2.障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること。
3.初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。また、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。
参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
「障害厚生年金」の受給要件
次の3つの要件を全て満たしている場合、障害厚生年金が支給されます。
1.厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること。
2.障害の状態が、障害認定日に、障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当していること。ただし、障害認定日に障害の状態が軽くても、その後重くなったときは、障害厚生年金を受け取ることができる場合があります。
3.初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
先天性の知的障害の場合には、最初に医療機関を受診した日にかかわらず、出生日が初診日となります。出生日に厚生年金に加入していることはあり得ないので、先天性の知的障害の場合は「障害基礎年金」を申請することになります。
軽度知的障害でも障害年金はもらえるのか?
知的障害は、「障害年金」の認定基準では「精神の障害」の中に位置づけられていて、「知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう」と定義されています。
その上で、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要で、会話による意思疎通が不可能か極めて難しく常時援助が必要な人を1級、食事や身の回りのことを行うのに援助が必要で、会話による意思疎通が簡単に限定されるため日常生活に援助が必要なものを2級、働くことに著しい制限を受ける人を3級としています。
知的障害がどのような状態の時に「障害年金」の対象となるかを示した「障害認定基準」は以下の通りです。
知的障害は「障害基礎年金」での申請になるため、1級または2級に該当しないと「障害年金」は支給されません。
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参考:日本年金機構「障害認定基準」
障害年金の判定方法
前章の「障害認定基準」に基づく障害の程度の認定については、ガイドラインで定められた「障害等級の目安」を参考としつつ、「総合評価の際に考慮すべき要素の例」で例示するさまざまな要素を考慮したうえで、障害認定診査医員が専門的な判断に基づき、総合的に判定します。
障害等級の目安
診断書に記載された項目のうち、「日常生活能力の程度」の評価と「日常生活能力の判定」の評価の平均を組み合わせたものが、どの障害等級に相当するかの目安を示したものです。
●日常生活能力の程度
「日常生活能力の程度」とは、日常生活全般における制限度合を包括的に評価するものです。
●日常生活能力の判定
「日常生活能力の判定」は、日常生活の7つの場面における制限度合を、それぞれ4段階で評価するものです。
日常生活の7つの場面
4段階評価
認定される等級の目安について
等級判定ガイドラインでは、「日常生活能力の判定」の平均値と「日常生活能力の程度」の評価によって認定される等級の目安が示されています。障害等級の目安は、下記の表で判断することができます。
障害年金の申請方法
知的障害の方が障害基礎年金を申請する場合、下記の必要書類を年金事務所または年金相談センターに提出します。※詳しくは近くの年金事務所に問い合わせしてください。
年金請求書
市区町村役場、年金事務所または年金相談センターの窓口に備え付けてあります。
添付書類
・基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類
・戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
・医師の診断書(所定の様式あり)
・病歴・就労状況等申立書
・受取先金融機関の通帳等(本人名義)
知的障害の方が障害年金を申請する際の注意点
知的障害の方が障害年金を申請する際の注意点は以下の通りです。
申請できる時期
知的障害の場合、20歳到達日(20歳の誕生日の前日)が障害の程度を認定する日です。20歳になったらすぐに障害年金を申請することができます。検査を受けなかったことから、20歳を過ぎてから知的障害と診断される場合があります。この場合は、初診日から1年6か月待つ必要はなく、すぐに障害年金を申請できます。
20歳になった時点で申請を行う場合は、原則、20歳到達日の前後3か月以内の障害状態を記載した診断書の提出が必要です。20歳を過ぎてから申請を行う場合には、請求日以前3か月以内の障害状態を記載した診断書の提出が必要です。
すぐに診断書を書いてもらえない場合がある
知的障害は、服薬の必要がないため病院を受診していない場合が多くあります。そのため、診断書を書いてもらうために病院を受診しても、すぐに診断書を書いてもらえない場合があります。
障害年金の手続きをする際には、申請する少し前から病院を受診して、医師に生活状況や就労状況を伝えるなどの準備が必要です。
診断書の内容を確認する
知的障害の方の障害年金認定では、診断書裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」が重要なポイントとなります。
日常生活の自立状況が、正しく診断書に記載されているのか確認しましょう。医師に診断書の作成を依頼する時には、保護者から客観的に見た子供ができることとできないことを伝えるようにします。
知的障害のある方の働き方
厚生労働省が公表した「令和5年度障害者雇用実態調査の結果」によると、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は110万7,000人で、そのうち知的障害者は27万5,000人でした。
産業別に割合を見ると、卸売業・小売業が32.9%と最も多く、次いで製造業の15.4%、サービス業の13.2%となっています。障害の程度別では、重度が11.8%で重度以外が81.0%です。
知的障害の方の働き方としては、企業などでの一般就労、障害者雇用枠での就労、福祉的就労(就労継続支援A型・B型)の3つの働き方があります。知的障害の方が仕事を探す場合には、近くの「ハローワーク」や「地域障がい者職業センター」「障がい者就業・生活支援センター」に相談してみましょう。
また、障害者に特化した「転職サービス」を利用する方法もあります。