障害者雇用は解雇できる?解雇の種類や条件について解説
更新日:2024年05月04日
障害者雇用であっても一般雇用と同様に、解雇される可能性はあります。しかし、無条件で解雇されることはありません。企業側が障害者雇用で雇用している障害者を解雇するためには、条件を満たす必要があります。また、解雇の種類には3つの種類があり、これらの種類を知っておくことで、不当に解雇されることを防ぐこともできます。ここでは、障害者雇用で雇用されている障害者の解雇について解説していきます。
目次
障害者雇用の「解雇」とは
そもそも解雇とは、障害の有無にかかわらず従業員の同意なく企業側から一方的に雇用契約を終了させることを言います。
しかし、解雇はどのような場合でも自由に行なえるものではありません。
解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3つの種類があり、それぞれ必要な条件を満たした場合のみ行なえるという法律上のルールがあります。
解雇を行う場合には、客観的に見て合理的な理由があり、なおかつ解雇が社会通念上相当であるといえる場合にのみ可能になります。
なお、障害者雇用促進法では障害を理由に解雇することそのものを一切禁止しています。
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この資料でわかること
・障害者雇用とは?
・障害者を雇用するメリット
・障害者を雇用しないデメリット
・障害者雇用が進まない企業が抱える課題
・課題を解消するポイント
・押さえておくべき障害者雇用の法律・制度
解雇の種類とその条件
解雇には、3つの種類があることは前述しました。
ここでは、その3つの解雇の種類と解雇を行うことができる要件について解説していきます。
普通解雇
普通解雇とは、従業員の能力不足や勤務態度の不良などを理由として行う解雇のことを言います。
普通解雇の要件には、客観的に合理的な理由があること、社会通念上相当であると認められること、解雇が禁止されている状況でない場合であることというものがあります。
懲戒解雇
懲戒解雇とは、懲戒処分のひとつとして行われる解雇のことです。
懲戒解雇の要件には、就業規則に懲戒解雇の根拠規定がありその内容が周知されていること、客観的に合理的な理由があること、社会通念上相当であると認められることがあります。
整理解雇
整理解雇とは、企業の経営状態が悪化した場合などに人員を削減する目的で行なわれる解雇のことで、リストラとも呼ばれます。
整理解雇の要件には、企業の経営状態が悪化した場合などに人員削減の必要性があること、解雇を回避する努力を行なったこと、解雇する労働者を選ぶ際に明確で合理的な基準があること、解雇手続きが妥当であることが挙げられます。
障害者を解雇する際の注意点
障害者を解雇する際には、以下のような注意点があります。
合理的配慮を提供したかどうか
障害者雇用促進法において、企業は障害のある従業員の能力を正当に評価し、雇用の安定を図るように務めることが義務付けられています。
例を挙げると、障害の特性に配慮した設備の整備を行う、障害がある従業員に通院のため休暇を与える、体調に配慮して適切な休憩時間を設けるなどといったことです。
障害のある従業員が企業側に合理的配慮を求めたり、または相談したことを理由にして解雇することは法律で禁止されています。
障害の特性を理解したうえで適切な注意や指導を行なったか
障害がある従業員の問題行動や能力不足等を理由として解雇する場合には、企業側がそれまでに適切な注意や指導を行ったかという点が重要になります。
これは障害者雇用促進法により定められているため、企業側は障害者を支援する必要があり、これを怠った場合には障害者を解雇することはできません。
配置可能な業務があるか検討したか
従業員ができる業務が限られていることや、作業を行う上で必要とする時間が一般の従業員よりも長くなることは採用時に明らかになっているため、他の仕事に携わることができないか、配置転換の検討を行なったかが重要になります。
これを怠った場合には、障害者を解雇することはできません。
また入社後に障害を負った場合には障害を踏まえた雇用契約はできないので、雇用契約の内容から予定された業務を履行できなくなった場合には解雇は可能になりますが、他の業務であれば履行可能である場合には、すぐに解雇するのではなく配置転換の検討を行う必要があります。
障害の原因が労災である場合は解雇制限に注意が必要
障害の原因が労災により負傷したり病気や障害を持った場合には、労働基準法に基づき療養のための休業期間中及びその後30日間は解雇することはできません。
障害者を解雇した場合の企業側のリスク
障害者を解雇した場合には、企業側に以下のようなリスクがあります。
解雇の撤回を求めて訴訟や労働審判を起こされる可能性がある
解雇は企業側からの一方的な通知によって雇用契約を終了させるものであるため、トラブルが起こりやすくなります。
特に障害者を解雇した場合には、障害者差別と捉えられることもあるので注意しなければなりません。
そのような場合には訴訟や労働審判に発展することもあり、金銭的にも労力的にも大きな負担となります。
裁判で不当解雇と判断された場合には、解雇は無効となり企業は従業員を復職させ解雇期間中の給与もさかのぼって支払う義務があります。
労働基準監督署から指導や勧告が行なわれることがある
障害がある従業員を解雇した場合に、その従業員が不当解雇であると労働基準監督署に相談すると、労働基準監督署から指導や勧告を受ける可能性があります。
助成金や障害者雇用納付金に対する注意が必要になる
障害がある従業員を解雇した際に、法律で定められた障害者の雇用率を下回ってしまうと、障害者雇用納付金を徴収されることがあります。
また企業都合で障害者を解雇した場合、今まで受け取っていた障害者雇用の助成金が受け取れなくなる可能性があります。
障害者を解雇する際の手続き
障害者を解雇する際には、以下のような手続きを行う必要があります。
1.解雇理由の整理
障害への配慮を十分に行なったかどうか、配置転換や他の業務ができるか検討したかどうか、解雇以外に手段がないか、不当解雇に該当しないかをといったことを確認します。
2.解雇通知書を作成する
解雇通知書を作成します。
この解雇通知書は、解雇を通知した証拠にもなります。
3.解雇の通知
解雇予告は、解雇の日よりも30日前までに行なわなければなりません。
解雇予告を行なったのが30日前よりも近い日付の場合には、解雇予告手当を支払う必要があります。
4.解雇手当の支払い
解雇手当は、解雇予告を行なったのが解雇を行う30日以上前でない場合、不足する日数分支払う手当のことを言います。
そのため解雇予告が解雇の日より30日以上前でない場合には、この解雇手当を支払わなければなりません。
5.障害者雇用の届け出
解雇を告知したら、企業側は速やかに解雇届をハローワークに提出する義務があります。
これは障害がある従業員の再就職のために、早期の求人の開拓や職業指導などのバックアップが必要になるためです。
6.各種保険の手続き
社会保険の喪失手続きや、住民税を徴収している場合の変更手続きが必要になります。
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まとめ
ここまで、障害者雇用された従業員を解雇する際の解雇の種類や解雇できないケース、企業側の手続きの方法やリスクなどについて解説してきました。
障害者が解雇される際に一番重要視されるのは、障害を理由とした解雇ではないこと、障害に対して企業側が十分な配慮を行なったかということです。
そのため解雇予告が行なわれた際には、障害を持つ従業員は特にこの2点について企業側が努力を怠っていなかったかをしっかりと確認する必要があります。
もし不当解雇であると考えられる場合には、労働基準監督署に相談しましょう。
ただし、解雇が正当なものであると判断された際には、いち早く再就職先を見つけるために、障害者雇用専門転職サービスを提供しているatGPに相談することをおすすめします。