アスペルガー症候群の方が上手にコミュニケーションをとるコツとは
更新日:2023年11月06日
アスペルガー症候群は、発達障害の特性の1つです。アスペルガー症候群という診断名は2013年から日本では「自閉スペクトラム症」に含まれるようになりました。しかし、一般的には現在でもアスペルガー症候群と呼ばれることが多くあります。アスペルガー症候群の方は、他人とのコミュニケーションをとるのが苦手という特性があるため、学校や会社で生きづらさを感じることが多々あります。ここでは、アスペルガー症候群の方のコミュニケーションの特性と、アスペルガー症候群の方が他人と上手にコミュニケーションをとるコツについて解説していきます。
目次
アスペルガー症候群とは
アスペルガー症候群とは、対人関係の障害、コミュニケーションの障害、パターン化した興味や活動の3つの特性がある発達障害の一種です。
このような特性から、グループでの業務や活動が苦手、やり取りが上手くかみ合わない、伝えたいことを言葉にまとめるのが難しい、人の話に関心を持てない、自己流の方法で物事を進めたがるという症状があります。
子どものころにアスペルガー症候群であることに気付かなくても、大人になってから困りごとが増えて精神科を受診し、初めて自分がアスペルガー症候群であることに気付くケースもあります。
その理由は、大人になって仕事に就くと、創意工夫や臨機応変な対応を求められるシーンが増えるため人間関係もより複雑になり、それに伴ってコミュニケーションを上手にとることが難しくなってしまい、アスペルガー症候群によって起こる困りごとが多くなってくるケースがあるからです。
このようなことからストレスを感じることで、二次障害を引き起こすこともあります。
アスペルガー症候群のある方のコミュニケーションの特徴
アスペルガー症候群のある方のコミュニケーションの特徴には、以下のようなものがあります。
相手の立場に立つことが難しい
アスペルガー症候群の方は中枢神経系が上手く働かず対人的な情報を自動的に絞り込むことが困難なため、他の人の表情や言葉よりも見た目や出来事の詳細に関心が向いてしまい、相手が置かれている立場を理解したり、相手に共感することが苦手な方が多くいらっしゃいます。
そのため思っていることをそのまま口にしてしまい、自分の発言が相手にどのような影響を与えるのか、自分に対して相手がどのような気持ちを持つのかを理解することを苦手としています。
周りから「空気が読めない」と思われてしまうことが多い
その場の「空気」や「暗黙のうちに成立している社会的ルール」を理解するのが苦手であるという特徴があります。
そのため、会話の流れを無視して全く別の話を始めてしまい相手を戸惑わせてしまったり、自分が話したいことだけを延々と話してしまい、会話が一方通行になったりしてしまうことがあります。
また、文脈や間接的な表現を読み取ることが苦手なため相手の言葉をそのまま受け止めてしまい、ユーモアやお世辞、皮肉や揶揄を理解することが難しいという特徴もあります。
こだわりや自分の中のルールがある
アスペルガー症候群のある人の中には、話す順番や挨拶、言葉の使い方に強いこだわりのある方もいらっしゃいます。
曖昧さが苦手で白黒をはっきりさせたいという思いが強いため、人が話しているときにその話の内容の真偽や自分がその会話の中で気になった部分を、相手の話をさえぎって逐一確かめることがあります。
また、物事が決められた手順やパターン化されていると安心する傾向があるので、新しい人や環境を苦手とし、強い不安を感じたり人付き合いを避けるようになってしまうこともあります。
アスペルガー症候群のある方のコミュニケーションのコツ
アスペルガー症候群のある方が上手く他人とコミュニケーションを取るためには、以下のようなコツがあります。
まずは自己理解を深めたり、コミュニケーションのトレーニングを行う
アスペルガー症候群の方で自分を客観視することが難しいという方の場合は、自分の話し方や行動が他の人からどのように受け止められているかということについてできるだけ周囲の人から意見を聞くようにし、自己理解を深めることをおすすめします。
また、自分が持つアスペルガー症候群という障害の特性を理解し、コミュニケーションや段取りの型を覚えるためのトレーニングを受けることで、周囲の人とコミュニケーションをとりやすくなります。
周囲に自身の障害について伝えることも大切
アスペルガー症候群の方が自分の障害の特性についてしっかりと理解することで、周囲の人に対して自身の困りごとについて伝えやすくなります。
どのような困りごとがあり、どのようなコミュニケーションの方法であればスムーズなやり取りができるかといったことを周囲の人に伝え、理解を得ながら環境を整えていくことも大切です。
職場でのコミュニケーションのコツ
これはアスペルガー症候群以外の方にも言えることですが、報告・連絡・相談をしっかりと行うことが重要です。
相手に伝えたいことがある時には、その内容をあらかじめメモにしておくのも良いでしょう。
アスペルガー症候群の方は会話が一方的になりがちなので、他の人に話しかける時には「今よろしいですか?」などという言葉で相手に尋ねてから話し掛けるようにしましょう。
また、指示を受けるときは図やイラスト、作業の順番などを細かくはっきりと指示してもらえるようにあらかじめ上司や周囲の人に伝えておきましょう。
自身の障害の特性に合った仕事を選ぶ
アスペルガー症候群の方は、強いこだわりを持っていることがほとんどです。
この特性を活かした仕事を選ぶことで、一般の人と同等かそれ以上の成果を挙げることができるでしょう。
向いている仕事の特徴は、作業工程の全てまたはほとんどを一人で行う仕事や論理的分析と事実に関する強い記憶力を生かすことができる仕事、強い集中力を生かすことができる単純作業を繰り返し行う仕事です。
具体的には、プログラマーやデザイナー、建物の整備管理、校正などです。
一般雇用で働くことが難しいと感じたら障害者雇用枠で働くことを検討してみる
上記のような工夫をしても職場でコミュニケーションを上手にとることができず仕事に支障をきたしてしまう場合には、一般雇用ではなく障害者雇用枠で働くことも視野に入れておきましょう。
「どうやって仕事を探せばいいんだろう・・」そんなあなたには簡単1分でタイプ別にわかる!仕事の探し方診断がおすすめです。
困りごとがあったら無理せずに支援機関を活用しよう
アスペルガー症候群による困りごとがある場合には、支援機関に相談することをおすすめします。
支援機関には、以下のようなものがあります。
【相談窓口】
アスペルガー症候群に関する困りごとの相談窓口には、以下のようなものがあります。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、アスペルガー症候群を含む発達障害者(児)への総合的な支援を行うことを目的とした専門機関です。
都道府県や指定都市自ら、または都道府県知事等が指定した社会福祉法人、特定非営利活動法人等が運営しています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就労・生活支援センターとは就職を希望している障害のある方、あるいは在職中の障害がある方が抱える課題に応じて、雇用及び福祉の関係機関との連携の下、就業支援担当者と生活支援担当者が協力して就業面及び生活面の一体的な支援を行う機関です。
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業とは、高齢や障害によって一人では日常生活に不安がある方が地域で安心して自立した生活を送ることができるよう、利用者との契約に基づいて福祉サービスの利用援助などを行うものです。
1999年10月から「地域福祉権利擁護事業」として始まり、2007年4月から現在の名称に変更されました。
【仕事に関する相談窓口】
アスペルガー症候群のある方の仕事に関する相談窓口には、以下のようなものがあります。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、【相談窓口】一覧の障害者就業・生活支援センターで解説している内容のサポートを行ってくれます
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは、障害がある方に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している機関です。
全国の各都道府県に最低1か所ずつ設置されていて、運営法人である独立行政法人高齢者・障害者・求職者雇用支援機構が運営しています
ハローワーク
ハローワークでは、障害のある方の就職活動を支援するため障害に関する専門的な知識を持つ職員や相談員を配置し、仕事に関する情報を提供したり、就職に関する相談に応じたりするなどのきめ細かい支援体制を整えています。
また、障害がある方でも一般の求人に応募することもできます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、学校のように通所しながら就職に向けたサポートを受けることができる機関です。
個別の支援計画に沿って、他の利用者と一緒に就職に役立つ知識や必要なスキルを学び、就職の準備をする事や、就労支援員に就職や体調に関する相談をするなど、必要なサポートを受けることができます。
障害者虐待防止センター
障害者虐待防止センターは、障害者に対する虐待の防止や早期発見、迅速な対応等、適切な支援を行うため、障害者への虐待を防止するための体制を構築することを目的とした業務を行います。
atGPとは
atGPとは、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する各種障害者就職および転職支援サービスの総合ブランドです。
20年以上障害者の就職や転職の支援を行ってきた日本の障害者雇用のパイオニアともいえる存在が、このatGPです。
atGPが提供する就職や転職に関するサービスは、基本的に無料で受けることができます。
障害や難病を抱える方の将来のビジョンや金銭的な課題も含めて、ひとりひとり異なる不安や悩みに関して専属のエージェントが二人三脚で寄り添い、サポートを行ってくれるというものです。
アスペルガー症候群を抱える方が生活や就労に関する困りごとを抱えている場合には、atGPに相談することを念頭に置いておくことをおすすめします。
まとめ
ここまで、アスペルガー症候群の方のコミュニケーションの特徴や、コミュニケーションを上手くとるためのコツなどについて解説してきました。
アスペルガー症候群の方は他人とスムーズにコミュニケーションを取ることが困難なケースが多いのですが、コツを知っておくことで上手くコミュニケーションを取ることができるようになる可能性が高くなります。
アスペルガー症候群の方がコミュニケーションのとり方について悩まれた際には、ここに記載したコツを試してみることをおすすめします。