発達障害の方がIT企業と相性がいい理由|適した仕事・特性の活用
更新日:2023年04月11日
発達障害に対する認識や支援は2000年以降充実し、障害者権利条約や障害者雇用促進法の改正で労働面での社会参加が拡大しました。IT業界は労働力不足の中、発達障害者と相性が良いIT仕事に注目していると言われています。今回は、その理由と相性について具体的にご紹介します。
目次
障害者雇用の現状
障害者雇用率は年々増加している
厚生労働省の発表によりますと、障害者雇用全体では令和3年6月1日時点で雇用障害者数、実雇用率ともに前年度を上回り過去最高となっています。
コロナウイルスの影響で全体の求人件数は減少したものの、令和3年3月の障害者雇用率引き上げなども関係し、障害者雇用を積極的に行う企業が増えているのが現状です。
発達障害者については、平成18年度より、精神障害者に含む形で雇用率算定の対象となっています。手帳を所持する障害者全体の被雇用者は約60万人で、そのうち精神障害者は約10万人、前年度より約1万人増加しています。具体的な発達障害者の割合は不明ですが、この中には少なくない数の発達障害者が含まれていると考えられます。
産業別でみますと、情報通信業での精神障害者の被雇用者は約7000人で、前年度より1000人弱増加しています。
法定雇用率については令和5年から8年にかけて段階的に2.7%に引き上げる方針を厚生労働省が打ち出しています。このため、発達障害者に関わらず、障害者雇用は当面は増加を続けると見込まれます。
これからも障害者手帳を持つ方の就労には大きなチャンスがあると考えてよいでしょう。
参考資料:厚生労働省令和3年 障害者雇用状況の集計結果
IT業界で発達障害人材が注目されている理由
IT企業での業務と発達障害の特性とは相性が良い
発達障害がある場合、「特定分野に対しての集中力や強いこだわりを持つ」ことや、「細部への観察力が高い」などの特性にある傾向が、IT企業での業務との相性が良いです。特性を逆手に取るというか、普段の社会生活の中では課題ともいうべき特性を長所として活かせるのが、高い集中力や観察力を必要とするITのお仕事なのです。
また、発達障害の特性ではコミュニケーションが苦手な傾向もあるため、対人関係のストレスが少なく1人で黙々と作業をすることが多いエンジニアや、分業化やリモートワーク化が進んでいるIT業界では自分が働きやすい環境を作り出しやすいのも相性がよい部分です。
IT業界は外資系の企業も多く、コンピューターを使うため、考え方が合理的で働き方も比較的自由です。在宅勤務を選択できることも多く、自宅であれば安定して、かつ集中して仕事ができるのは他者とのコミュニケーションが苦手な人には魅力的な仕事といえます。しっかりしたスキルと一定の経験が得られれば、会社に所属せず仕事を請け負う、フリーランスの道も開けて、発達障害がある人にはよりやりやすい環境となるでしょう。
世界屈指のIT企業では発達障害人材の割合が多い
GoogleやMicrosoftなど、大手IT企業では社員全体の10%程度が発達障害を持つ人材となっており、発達障害を持つ方を積極的に採用しています。中には、採用後にITスキルに関する一定期間の研修を受けられるような障害者雇用(要障害者手帳)をおこなっている企業もあります。
日本のIT産業は、アメリカと比べると遅れをとってはいるものの、やはり、人気のある業種であることには違いがなく、日本でのIT関連の求人は衰えることなく、今後もIT業界における人材不足は続き、障害者雇用率も上がっていくと予想されます。
IT業界における発達障害の方に向いている仕事
エンジニア・プログラマー
一口にIT系のエンジニアといっても、実際のところ様々なエンジニア(専門職)があります。いわゆるシステムエンジニアは顧客の要望に合わせて要件定義や設計書の作成をする仕事です。
それ以外にも、インフラ系エンジニア、機械系エンジニアなどがあります。それに対してプログラマーは作成された設計書に従ってプログラムを入力していくのが仕事となりますが、実際のところ、エンジニアはプログラマーも兼ねていることが多く、開発する内容や目的によって業務内容が大きく変わります。純粋にプログラマーとしての採用であれば、基本はプログラミングをするのが仕事ですが、経験を積めば、システムエンジニアになることもできます。
エンジニアでもプログラマーどちらにしても設計やプログラミングなど作業の繰り返しが多いのが特徴ですが、エンジニアの仕事には顧客とのコミュニケーションが必須となってきます。それでも1人で黙々と作業することが多いため、対人関係のストレスが少ない職種といえます。
さらに専門的な知識やスキルをつけることで、インフラエンジニアやIoTエンジニアなど幅広く活躍することもできる可能性もあります。
Webデザイナー
Webデザイナーはデザイン系が好きな人におすすめの職種です。顧客の要望に合わせてウェブサイトをデザインします。美術的なセンスが必要ですが、デザインするためのソフトを駆使するため、プログラマー同様技術・知識も必要となります。コーディングの知識やスキルをつけることで、デザインだけではなく、サイト制作などでも活躍することができます。
エンジニア同様、1人で黙々と作業することが多いため、対人関係のストレスが少ない仕事といえるでしょう。
ADHDの特性にある「発想力や想像力が豊か」な点が活かしやすく、また、デザインは後から修正可能なため、ケアレスミスの多いADHDを持つ方と相性がよいといえます。
Webライター
ウェブサイト上で顧客の要望に沿って様々な記事を書くお仕事です。インターネットにつながるパソコンがあればできるため、場所や時間を問わず、自分のペースで仕事がしやすく、文章を書くことが好きであれば好きなだけ集中して仕事ができ、エンジニアやWebデザイナーのような専門技術や知識は特に必要ありません。
他者とのコミュニケーションもSNSやメールで済むことが多く、1人で黙々と作業することが多いため、対人関係のストレスが少ない仕事です。むしろ、ある特定の方面に深い関心や知識がある場合、それがライティングに活かせる点も魅力的です。
発達障害の方がIT企業で働きやすくなるポイント
IT系のお仕事がいかに発達障害を持っている方に向いているかをお話してきましたが、かと言って、すべての発達障害を持っている方にできるわけではありません。ここでは発達障害の方がIT企業で働きやすくなるポイントをいくつかご紹介いたします。
IT分野に興味を持ち、業務を理解する
発達障害の特性として「特定分野への集中力や強いこだわり」の傾向があることが集中力が必要なITの仕事に向いていると話しましたが、しかし、そのこだわりがIT分野に向いているか、もしくは向けることができるかという部分はとても重要です。逆に他のことに興味関心があっては持続して仕事をすることは不可能なのです。少なくとも、普段からパソコンを使い慣れていて、基本的なソフトや機能を使えなければ興味は持てないかもしれません。
一口にIT関連の仕事といっても、たくさんの職種や業務があるため、どんな仕事があるのかを知り、理解する事前学習は必要です。
自分自身の障害の特性について理解する
IT関連の仕事をする時だけに限らず、発達障害の特性の現れ方は人によってさまざまなため、自分はどんな特性を持っているか、どんなことが得意で苦手かなどの自己理解を深めることは必要な努力です。それによって、その仕事は自分に向いてるのか、向いていないのか判断しやすくなり、またできないこと、難しいことをどうやってクリアするのか考えることもできます。
また、正しく自己理解ができていると、就職の面接や就労した時に、周りに自分のことを伝えやすくなるため、どのような配慮が必要なのかもわかり、事業所側も安心して採用できるでしょう。一緒に働く現場の同僚も変な誤解がなく、お互いに接しやすい雰囲気が作りやすくなります。
「団体戦」よりも「個人戦」
対人関係の構築が難しい発達障害の方はチームで作業をする仕事よりも、エンジニアやデザイナーといった個人で作業をすることが多い仕事が向いている傾向があるため、なるべく個人でできる仕事を探すようにしましょう。
ADHDやLDだけなら、特性的にコミュニケーションが不得意な訳ではないため、普通に人の輪の中に入っていける人もいますが、実際は、その特性により他者との関係がうまくいかず、人と関わるのがストレスに感じるようになっている人も多いため、長く継続してやっていくのであれば、ストレスを避けて個人で行動することが多い仕事を選択するほうが無難といえます。
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