夫や妻が適応障害になったら?正しい対応やサポートについて
更新日:2023年03月10日
適応障害は、誰でもなってしまう可能性がある病気です。そのため、夫や妻などのパートナーが適応障害になってしまうこともあるでしょう。そのような時、適応障害になってしまったパートナーを、どのように支えればよいのでしょうか。適応障害になってしまったパートナーを正しい方法で支えるためには、まずは適応障害という病気について正しい知識をもつ必要があります。ここでは適応障害とは何かといったことから、適応障害のきっかけとなりやすい出来事、適応障害の症状、そして正しい接し方や治療法について解説していきます。
目次
適応障害とは
適応障害とは、ある特定の出来事や状況がその人にとっての主観的な苦悩を生んでしまい、そのために気分や行動に症状が現れてしまうというものです。
適応障害の症状の中に憂鬱な気分や不安感が強くなるというものがありますが、このような症状が身体にも影響を及ぼし涙もろくなってしまう、過剰に心配してしまう、神経が過敏になってしまう、などといった行動に現れることもあります。
このような症状を聞いて「うつ病とどう違うの?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。
適応障害とうつ病の違いは、原因がはっきりしているかどうかという点です。
うつ病になる原因が不明確であるのに対して、適応障害はその原因が明確であるためその原因を取り除くことで症状が改善するケースがほとんどです。
適応障害になりやすい人の特徴
同じようなストレスにさらされても、適応障害になってしまう人とならない人がいます。
その理由は、ストレスの感じ方やその対処法、ストレスに対する耐性などの特性が人により異なるためです。
適応障害になりやすい人には、次のような特徴があります。
・責任感が強く真面目
・几帳面な性格で物事を徹底的にやらないと気が済まない
・他人の目や評価を非常に気にする
・人からの頼まれごとを断れない
・心配性で傷つきやすい
・気持ちを切り替えるのが苦手
・人に頼るのが苦手なためどんなことでも自分で解決しようとする
・繊細で物事の変化を敏感に感じとってしまう
・完璧主義であるため物事の白黒をはっきりさせないと気が済まない
・自分より他人を優先してしまう
・その場の空気を読むのが苦手
このような性格が適応障害の原因のひとつではありますが、これらに当てはまる人が必ず適応障害になるという訳ではありません。
しかしあまりにも強いストレスに晒された場合には、個人の特性がどのようなものであっても適応障害を発症する可能性があるため、誰にでも起こる可能性がある病気であると言えます。
適応障害が起きやすいケース
適応障害は、原因となるストレスが明確であるという特徴があります。
外因的なストレス原因となりうる事象はどこにでも存在しますが、どのような外因的ストレスがその人にとって大きなストレスになってしまうかは、人により異なります。
外因的ストレスを自分で解決できないとき、または簡単に除去できない場合に適応障害が起こりやすくなります。
外因的なストレスになりやすいのは、以下のような事柄です。
仕事で起るケース
仕事をしていく上で適応障害の原因となるストレスになりやすいのは、上司や同僚との人間関係が上手くいっていない、業務の内容が自分の性格や能力に合っていない、環境の変化に順応できていない、管理職でプレッシャーを感じる仕事が多い、仕事量が多く常に仕事のことを考えているなどの事柄が挙げられます。
プライベートで起こるケース
プライベートで適応障害の原因となりやすいストレスには、夫や妻などのパートナーの不仲、母親や父親など家族関係に悩みを抱えている、育児に対する悩みがあったり疲弊している、慢性疾患やがんの治療、被災経験などからトラウマを抱えているといった事柄があります。
適応障害の症状サイン
適応障害になってしまった場合に、サインとなる症状があります。
それは抑うつ気分や不安感、喪失感、焦り、緊張や意欲の低下などです。
例えば明るかった人がなんとなくボーっとしていることが多くなったり、いつも笑顔が絶えなかった人が全く笑わなくなったりなどの今までとは真逆の方向の変化が見られるようになった時には、特に注意が必要です。
適応障害の症状サインとして多いものには、以下のようなものがあります。
精神面の変化
適応障害になってしまったときに精神面に現れる変化には、ぼんやりしていることが多い、怒りっぽくなった、笑顔がなくなった、涙もろくなった、最近よく緊張している、常に焦っている感じがするというものがあります。
身体面の変化
適応障害になると、身体面にも変化が現れます。
その変化は人によってさまざまですが、良く眠れなくなる睡眠障害や、食欲不振を訴える人が多い傾向があります。
身体面の変化はこれだけにとどまらず、時には日常生活に大きな影響を及ぼしてしまうものもあります。
身体面の変化の例として、腹痛や嘔吐で体調が悪くなってしまう、良く眠れない、食欲がない、疲労感がとれない、めまいを起こすといったものがあります。
行動の変化
適応障害は、行動にも変化を及ぼしてしまうことがあります。
心や体に不調を感じることから、仕事が手につかなくなり効率が低くなる、遅刻や欠席が増えるといった行動がみられることもあります。
適応障害による行動の変化には、仕事の効率が落ちる、遅刻や欠席が増える、一人でいることを好むようになる、身だしなみに気を遣わなくなる、飲酒量や飲酒回数が増える、攻撃的な行動が見られるようになるといったものがあります。
パートナー(妻・夫)が適応障害と診断されたら
夫や妻などのパートナーが適応障害と診断されたら、どのように対応すればよいのでしょうか。
ここでは、適応障害になってしまったパートナーへの正しい接し方について解説していきます。
病気や症状に関する正しい知識を身に付ける
夫や妻などのパートナーが適応障害になってしまった場合に最も大切なのが、接する側が適応障害という病気について理解を深めることです。
そのためには、適応障害についての正しい知識を身に付ける必要があります。
適応障害の症状から、「単なるなまけ心や甘えが出ているのでは?」と思うこともあるかもしれません。
しかし、適応障害はれっきとした病気であるため、このような対応をしてしまうとその症状をさらに悪化させてしまう可能性があります。
適応障害という病気について正しく理解することで、このような事態を防ぐことができるでしょう。
ストレスの原因が見つかれば排除する
適応障害の原因となったストレスの原因を発見し、取り除くことで適応障害の症状が軽くなる可能性があります。
そのため、ストレスを減らすための環境を整えてあげることは非常に大切です。
本人がつらい状況であることを理解し、干渉しすぎない
夫や妻といったパートナーが適応障害になってしまったら、何とかして症状を軽くし自分の力を貸して治してあげたいと思うでしょう。
しかし、適応障害の原因は何なのかといったことなどを深く詮索したり、また過剰な気遣いをしてしまうと、かえって相手を疲れさせてしまったり、傷つけてしまったりすることもあります。
あまり深入りしすぎてしまうと、力になりたいと思っている方が疲れて苦しくなってしまうこともあるため、注意が必要です。
無理強いはしない
適応障害になったパートナーに元気がないと、「何かで気分転換をしてみたら?」などの提案をしてしまいたくなるでしょう。
しかし、このような提案は本人にとって負担に感じられることが多いようです。
適応障害になってしまうと、何事も楽しめない心の状態になってしまうことが多いため、まずはゆっくりと休むことができる環境に置いてあげることが大切です。
本人に「何かやってみよう」という意欲が湧いてくるまで、何かを無理強いしてはいけません。
否定はせず、肯定的な声かけを心がける
適応障害になってしまった人の話を聞くときは、否定をしないようにしましょう。
話に耳を傾けて、相手が話す内容を理解する姿勢を示すことが大切です。
相手の話を受け入れることで、安心感を与えることができます。
適応障害の治療法と対処法
適応障害を治しもとの状態に戻すためには、適切な対処と治療が必要です。
ここでは、その対処法と治療法について解説していきます。
ストレスの原因を排除する
適応障害になってしまった場合、まず最初にするべきことは安心できる場所で十分に休息することです。
そのため、ストレスの原因となっていると思われるものを周囲から排除した環境を整え、そこでしっかりと心身を休めるようにしましょう。
認知行動療法
認知行動療法とは、心理・精神療法のひとつで精神科医や理学療法士とともに行う、ストレスへの対処の仕方や考え方を変える治療です。
徐々に自分の考え方や行動を変えていくことによって、ストレスに対して適切な対処ができるようになります。
薬物療法
薬物療法は医療行為としても一般的に行われる治療法で、精神医療でも医師の処方により心を安定させたり、睡眠をとりやすくするなどの方法で適応障害の辛い症状を緩和することを目的として行われます。
復職または転職をする際の注意点
適応障害が回復し、復職や転職を行う場合には以下の注意点に気を付けておくことが大切です。
異動や業務量の調整を申し出ることがおすすめ
異動が原因で適応障害になった場合には、在宅勤務にしたり一人でもできる仕事やプレッシャーが少ない仕事にしたりして、なるべくストレスがかからないように働き方への配慮を申し出るようにしましょう。
また、業務量が多すぎて適応障害になってしまった場合には、業務量の調整をしてもらえるよう上司などに相談することをおすすめします。
社会復帰を急がず就労移行支援や職業訓練所を利用しリハビリをする選択肢もある
就労移行支援や職業訓練所では仕事に必要なスキルを学ぶ以外に、体調を整えながら復職に備えて徐々に仕事に慣れさせるという訓練を行っているところもあります。
自分の体調を把握し勤怠を安定させるとともに、仕事に必要なスキルを身に付け職場復帰に備えることができます。
状況が改善しない場合は産業医や支援機関に相談する
適応障害の状況が改善しない場合には、産業医や支援機関に相談しましょう。
適応障害の治療に長けた医師を紹介してもらったり、長期に渡る休職で適応障害以外の困りごとが出てきた際に相談に応じてもらうことができます。
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まとめ
ここまで、パートナーが適応障害になった際にどのような方法でサポートすべきか、どのような治療法があるのかといったことについて解説してきました。
適応障害は誰でもなる可能性がある病気ですが、適応障害から回復するためにはパートナーのサポートが欠かせません。
適応障害を正しく理解し、正しい方法で接し、適切な治療を受けさせることで適応障害の症状は軽快していきます。
パートナーが適応障害になった場合には、単なる甘えや怠け心として受け取らず、正しい方法で対応するようにしましょう。