家族がうつ病になった場合の対応方法や支援制度
更新日:2022年11月04日
うつ病の早期発見や早期治療には、家族のサポートが不可欠です。しかし、実際に家族がうつ病になってしまったら、どうしたら良いのかわからないという方がほとんどではないでしょうか。本記事では、うつ病の症状やサイン、家族がうつ病になった場合の対応、家族が抱えがちな困りごとや解決法などを詳しく解説します。
目次
うつ病とは
「うつ病」とは、精神的・身体的ストレスなどが原因で、脳がうまく機能していない状態をいいます。気分障害の一つで、「気分が強く落ち込んで憂鬱になる」「やる気がでない」などの精神的症状の他、「眠れない」「疲れやすい」「食欲がない」などの身体的な症状も現れて、日常生活に支障が出る病気です。
うつ病がなぜ発症するかについて、原因は正確には分かっていませんが、感情や意欲をコントロールする脳の働きに何らかのトラブルが起こっていると考えられています。
精神的や身体的ストレスが、うつ病を引き起こすきっかけになるとされていて、いじめや受験や仕事の失敗、家族や親しい友人との死別などの悲しい出来事だけでなく、結婚や進学、妊娠、出産など嬉しい出来事の後にも発症することがあります。
家族がうつ病になったら
日本では、100人のうち約6人が、うつ病を発症するという調査結果があり、決して珍しい病気ではありません。もし、家族がうつ病になったらどのように接したらよいのでしょうか。
うつ病の知識をもち、症状を理解する
うつ病は、とてもつらい病気ですが、家族でもそのつらさを理解するのは難しいものです。家族がうつ病になったら、まずうつ病についての知識を持って、うつ病の症状について理解しましょう。
一番大切なのは、うつ病が病気であるということを理解することです。うつ病の治療には休養が必要です。本人の気持ちの持ちようでは、どうにもならないので励まし過ぎないようにしましょう。
家族にうつ病の疑いがある時の適切な対応
家族がうつ病かなと感じたら、次の点に注意して対応しましょう。
・いつもと違う様子に気づく
こころの病気は、本人はなかなか気づきにくいものです。中には、気づいていても周囲に心配や迷惑をかけたくないと、自分自身で抱え込んでしまうケースがあります。
そこで大切なのが家族など周囲の人が、いつもと違うことに気づくことです。うつ病の症状やサインについては、次の章で詳しく解説します。
・話を聴く
家族がいつもと違う様子だったら、本人の話に耳を傾けてみましょう。本人があまり話したがらない場合には、無理に聞き出す必要はありません。
また、過剰に気を使うのも、本人にとってはかえってストレスに感じます。家族はできるだけ普段通りに接するようにして、そっと見守るというスタンスがちょうど良いケースもあります。
医療・専門施設を頼る
本人が相談できそうな時には、医療や専門施設に相談するようにアドバイスするとよいでしょう。本人が相談することに抵抗があったり、あまり話したがらない時には、家族が相談してみるという方法もあります。
うつ病の主な症状やサインのチェックポイント
先ほども書きましたが、うつ病の場合には本人が気づきにくい、気づいていても自分自身で抱え込んでしまうケースがあります。そのため早期治療には、家族がうつ病のサインを見逃さないことが大切です。
周囲が気づくうつ病のサイン
家族は次のような点に注意しましょう。
・表情が暗い
・口数が減った
・ため息をつくことが多くなった
・涙もろくなった
・反応が遅い
・落ち着きがない
・飲酒量が増えた
・失敗が増えた
身体に現れるうつ病の症状やサイン
・食欲が無い
・眠れない、過度に寝てしまう
・疲れやすい、身体がだるい
・頭痛
・肩こり
・めまい
・便秘や下痢
・動悸
支援制度や相談窓口
うつ病の方が利用できる支援制度や相談窓口には次のようなものがあります。
うつ病の方が利用できる支援制度
・傷病手当金
傷病手当金は、病気やケガで働けず会社を休んだ際に、健康保険の被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。会社を4日以上連続で休み、休んだ期間に給与の支払いがないことが条件となります。
・自立支援医療制度
自立支援医療制度は、心身の障害で通院が必要な場合などに、医療費の自己負担額を軽減する公費負担の医療制度です。原則として医療費の1割が本人の負担になりますが、所得に応じて自己負担上限額があります。
・障害年金
障害年金は、病気やケガによって仕事や生活に支障が出た場合に、受け取ることができる年金です。障害の原因となった病気やケガの初診日が、国民年金または厚生年金保険の被保険者期間中であること、年金の納付状況などの条件があります。
うつ病の方が利用できる相談窓口
・保健所
各自治体に設置された保健所では、こころの健康や保健、医療、福祉に関することなど幅広い相談を行っています。
・精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、各都道府県に設置されていて、心の問題や病気で困っている本人や家族からの相談を受けています。匿名でも電話で相談ができ、簡単な助言や専門の医療機関または相談機関に関する情報を提供してくれます。
・働く人の「こころの耳電話相談」
働く人の「こころの耳電話相談」は、全国の労働者やその家族、企業の人事労務担当者からの相談を電話で受けています。メンタルヘルスの不調や過重労働による健康障害などについて相談できます。
よくある困りごと
うつ病を抱えた方には、家族の理解やサポートが欠かせません。その一方で、サポートしている家族が心身ともに疲れてしまうことも少なくありません。この章では、うつ病の方をサポートする家族が抱える困りごとについてまとめてみました。参考にしてください
本人が病院に行きたがらない
無理やり病院に連れて行ったり、病院に行くことを強要するのはストレスとなるので避けましょう。精神科や心療内科の受診を避けている場合には、身体的な様子を客観的に伝えることで、受診につながる可能性があります。
例)
「最近、眠れていないようだから、病院で相談してみない?」
「痩せてきたようで心配。食欲のことだけでも先生に聞いてみない?」
病院を受診した方がよいとストレートに伝えると、言われたというだけで否定的な感情になり拒絶することがあります。「私は病院に行ったほうが良いと思う。抵抗があるなら1週間くらい様子を見て良くならなければ、病院で相談したらどうかな?」というように、2つの選択肢を与えて本人に選ばせると抵抗感が少なくなります。
本人が薬を飲んでくれない
薬の必要性を本人が理解していないと、自己判断で必要ないと飲むのを拒否することがあります。ちゃんと医師に相談するように促しましょう。
薬の副作用がつらい場合には、薬の種類を変えたり、副作用を抑える薬を処方するなどの方法もあります。副作用がある場合にも、主治医に相談するように促しましょう。
本人とどう接していいかわからない
どう接していいかわからないときには、そっと見守っていてください。心配でついついアドバイスを与えたくなりがちですが、その行為は反対に本人の気持ちを追い詰めることになりかねません。
本人から話しはじめるのを待ってみましょう。話しはじめたらじっくりと話を聞いてあげてください。ただし、判断力が落ちている状態なので、転職や退職などの重大な決断は病気が治ってから考えるようにアドバイスしましょう。
医療機関・専門機関を上手に活用しよう
うつ病を抱える方をサポートする家族の困りごとには、サポートに疲れてしまったという相談も少なくありません。家族だけで抱え込んでしまうと、うつ病を抱える本人との関係が上手くいかなかったり、家族が疲れてしまうことがあります。医療機関や専門機関を積極的に活用しましょう。
家族が実際に心身の不調を感じている場合には、精神科や心療内科、メンタルクリニックなどを受診して、専門医に相談しましょう。
「本人が治療を拒否している」「本人とどう接したらいいのかわからない」などで、困っている時には、精神保健福祉センターに相談できます。精神保健福祉センターは、うつ病を抱えた本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。
ほかの家族の経験を聞いてみたい、悩みを共有したいという場合には、家族会や家族向けのコミュニティサイトを利用してみてはいかがでしょうか。サポートする家族の心身の健康も大切です。1日5分でも自分の時間を作ってリフレッシュするなど、家族自身が自分の心と身体を大事にしましょう。
うつ病の方が、就職や転職を目指す際には、就労移行支援サービスを活用するのもおすすめです。「atGP ジョブトレ」には5つの障害別コースがあり、障害と付き合いながら働き続けるスキルが身につきます。「うつ病症状コース」では、症状の理解、ストレスマネジメント、アンガーマネジメント、認知行動療法などのうつ病専門プログラムが組まれています。
まとめ
うつ病は、本人が気づきにくい病気です。また、気づいていても自分自身で抱え込んでしまうケースがあります。早期治療するためには、家族が症状やうつ病のサインに早く気づくことが大切です。また、うつ病の治療には家族のサポートが不可欠ですが、家族で抱え込んでしまうと家族自身が疲弊することになりかねません。一人で抱え込まずに、専門の医療機関や相談窓口に相談しましょう。