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障害者雇用を進める際のポイントは?受け入れ体制の整え方について

更新日:2023年09月27日

民間企業の法定雇用率が、2021年3月に引き上げられて2.3%となりました。これにより43.5人以上の従業員を雇用している事業主は、1人以上の障害者を雇用する義務があります。法定雇用率は、2024年に2.5%、2026年に2.7%に引き上げられる予定です。 一方で、令和4年に法定雇用率を達成した企業の割合は48.3%と半分以下で、障害者雇用はなかなか進んでいません。障害者雇用には、どのような課題や問題点があるのでしょうか。本記事では障害者雇用を進める際のポイントや社内の受け入れ体制の整え方などについて解説します。

障害者雇用とは

障害者雇用とは、障害のある人のために「障害者雇用枠」を設けて雇い入れることです。

 

障害のある人が就職を目指す場合、障害のない人と比べると様々な面で不利になることがあります。そこで、障害のある人の働く機会を確保するために設けられているのが「障害者雇用枠」です。

 

「障害者雇用促進法」では、対象となる障害者を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者」と定めています。

障害者雇用をするにあたってのポイント

障害者雇用をする際には、採用計画を立案しておく必要があります。障害者雇用であっても一般の採用と基本的な考え方は同じですが、次の点に特に注意しましょう。

 

雇用すべき障害者の人数を把握

「障害者雇用促進法」では、従業員が一定数以上の事業主に対して、従業員に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にするように義務付けています。民間企業の法定雇用率は、2021年3月から2.3%となっていて、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、1人以上の障害者を雇用する義務があります。
法定雇用率が未達成の企業からは、不足1人当たり月額5万円の障害者雇用納付金が徴収されます。自社が何人の障害者を雇用する義務があるか把握しましょう。

また、2022年に障害者雇用促進法が改正され、障害者雇用率も引き上げられることになりました。2024年には民間企業の障害者雇用率は2.5%、2026年には2.7%に引き上げられることが決定しています。

業務の選定と配属先の検討

障害者雇用の場合には、法定雇用率を達成するために人数重視の採用を行う傾向があります。その結果、「業務と障害者の能力がマッチしない」「障害者に担当してもらう業務がない」などの問題が生じて、早期離職してしまうことも少なくありません。

一般の採用と同様に、最初にどのような業務を担当してもらうのかを決めた上で、「その業務に従事できるのはどのような人材か」という採用要件を決定しておきます。

労働条件の決定

障害者雇用率の算出は、週の所定労働時間が30時間以上の常時雇用労働者を1人としてカウント、20時間以上30時間未満の場合には短時間労働者として0.5人分としてカウントします。労働条件を決定する際には、雇用率についても意識して検討することが大切です。

 

障害者雇用の関連機関と連携する

障害者雇用をスムーズに進めるには、障害者雇用に関連する地域の支援機関と連携することが大切です。主な支援機関は、「ハローワーク」「地域障害者職業センター」「障害者就業・生活支援センター」です。

この中でもハローワークが中心的な役割を担っていて、障害者の就職活動の支援だけでなく、障害者雇用を進める企業からの相談窓口、他の就労支援機関との連携窓口の役割もあります。普段からハローワークの担当者とコミュニケーションを図り、障害者雇用について相談しましょう。

 

障害者雇用の問題点や課題

厚生労働省が公表した「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、雇用するに当たっての課題について(複数回答4つまで)、以下の回答が多くなっていました。

 

・社内に適当な仕事があるか
身体障害者 71.3%、知的障害者 74.4%、精神障害者 70.2%、発達障害者 75.3%

・障害者を雇用するイメージやノウハウがない
身体障害者 45.6%、知的障害者 51.0%、精神障害者 49.7%、発達障害者 52.9%

・採用時に適性、能力を十分把握できるか
身体障害者 32.3%、知的障害者 38.8%、精神障害者 37.2%、発達障害者 39.6%

・従業員が障害特性について理解することができるか
身体障害者 23.3%、知的障害者 35.9%、精神障害者 37.4%、発達障害者 37.8%

・職場の安全面の配慮が適切にできるか
身体障害者 40.9%、知的障害者 31.9%、精神障害者 29.9%、発達障害者 31.5%

 

障害者雇用の課題としては、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者ともに「社内に適当な仕事があるか」が最も多い回答になっています。

 

また、同調査で「障害者を雇用しない理由」の質問では、「当該障害者に適した業務がないから」の回答が最も多く、身体障害者(81.7%)、知的障害者(84.0%)、精神障害者(79.6%)、発達障害者(82.6%)となっていました。このように多くの企業が「業務の創出や切り出し」を障害者雇用の課題と感じているようです。

参考:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査」

障害者雇用の受け入れ体制を整えるためには

課題を解決して、スムーズに障害者雇用を進めるには、社内に受け入れ体制を整備することが大切です。

 

社内理解を深める

「平成30年度障害者雇用実態調査」で雇用するに当たっての課題として、「障害者を雇用するイメージやノウハウがない」や「従業員が障害特性について理解することができるか」と回答した企業が多かった通り、障害者雇用の課題や問題点は、障害者に対する理解不足が大きな原因となっています。

 

まずは経営層や人事部から障害者雇用の目的や意義の確認、障害に対する知識や理解を深めましょう。さらに、「なぜ障害者を雇用するのか」「どのような方針で採用と職場定着を進めるのか」を、現場と共有し理解を得ることが大切です。

 

普段、障害者と一緒に働くのは現場の社員です。その社員らの理解や協力がなければ、職場定着は難しくなります。理解が深まらないまま障害者を採用しても、次々と課題が出てきてしまうものです。受け入れる現場の社員の不安を解消するためにも、社内研修を実施して障害に対する知識や理解を深めることが必要です。

 

障害者のサポート体制を構築する

障害の有無に関わらず、働くことに対する不安は誰もが抱くものです。特に障害者は、障害によって出来ることが制限されるため、障害のない人と比べると不安になりやすいと言えます。また同時に、障害者を受け入れる現場も不安や負担感を感じるでしょう。

 

障害者雇用を安定的・継続的に進めるには、現場任せにせず組織全体で障害者雇用に取り組む姿勢を示すことが重要です。現場の不安や疑問などを解決しながらサポートできる体制を構築しましょう。支援担当者を決めて、障害者本人も受け入れる現場も相談しやすい環境を作ることが大切です。

 

助成金の活用

障害者雇用促進法に基づいて、障害者雇用に取り組む企業に対して、国はさまざまな助成金を用意しています。様々な助成金制度を活用することで、障害者雇用にかかるコストを軽減できます。

詳しい内容は、以下のリンク先をご参考にしてください。

まとめ

障害者雇用を進める際には、障害者雇用の課題や問題点を把握した上で、受け入れ体制を整えることが重要です。また、ハローワークなど障害者雇用に関連する機関と連携も欠かせません。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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