夫や妻が発達障害の場合にはどのように接すればいい?最適な付き合い方とは
更新日:2023年07月26日
近年、発達障害という言葉をよく耳にするようになりました。発達障害にはさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴があります。この発達障害によって生きづらい思いを抱えている人は少なくありません。他人とのコミュニケーションを上手くとることができなかったり、家事や仕事に支障を来したりするような特徴を持っている方もいます。発達障害の方がきちんとした療育を受けないまま大人になってしまうと、本人の生きづらさが大きくなってしまうのはもちろんのこと、周囲の人も疲弊してしまうことがあります。特に相手が配偶者である場合には、疲弊の度合いも大きくなってしまいます。ここでは、夫や妻が発達障害である場合の適切な対応方法について解説していきます。
目次
発達障害とは
発達障害とは、先天性の脳機能の障害によって認知や行動に発達障害特有の特性が生じ、発達障害を持つ人の特性と、本人が生活している環境や人間関係などの相互関係により社会生活にうまく対応できないという問題が起きている状態をいいます。
この発達障害には、さまざまな種類があります。
ここでは、発達障害について解説していきます。
自閉スペクトラム症(ASD)・アスペルガー症候群
自閉スペクトラム症(ASD)は生まれつきの脳障害が原因で起る発達障害のひとつで、遺伝的な要因が複雑に関与して起こる発達障害のことをいい、この発達障害を抱える人は人口の約1%に及ぶと言われています。
自閉スペクトラム症(ASD)の中で知的障害を伴なわないものを、アスペルガー症候群といいます。
自閉スペクトラム症(ASD)の人々の状態像は非常に多様であるため、信頼できる専門家のアドバイスのもとでこの発達障害を正しく理解し、個々のニーズに合った療育や教育的支援に繋げていく必要があります。
注意欠如・多動症(ADHD)
現在、注意欠如や多動症(ADHD)の発症原因はまだはっきりとは分かっていません。
しかし、生まれつきの脳の発達の偏りが関係しているのではないかと推測されています。
それ以外にも遺伝との関係についての研究が進められていて、脳内の神経伝達物質が関与していることが明らかになっています。
つまり脳の機能的な面が問題となり、発達や成熟に偏りが生じることから注意欠如や多動症の症状が現れるのではないかと考えられています。
学習障害(LD)
学習障害(LD)の原因はまだはっきりとは分かっていませんが、目や耳、皮膚などのさまざまな感覚器官を通して入ってくる情報を受容し、整理し、関係づけ、表すといった脳の機能に何らかの障害があると考えられています。
学習障害(LD)のある子どもの特性や必要な支援はひとりひとり異なりますが、環境を整えて学習方法を工夫することで困難を軽減することができます。
チック症、吃音
チック症は、運動機能を調節する脳機能の障害であることは分かっています。
その原因は、生まれ持った体質や、脳内の神経伝達物質の異常が原因ではないかと考えられていますが、現在のところまだはっきりと解明されていません。
また、ストレスがかかると症状が悪化することが知られています。
吃音もまた、そのはっきりとした原因は分かっていません。
言葉が急激に伸びる2歳から4歳ごろに、10人から20人に1人の割合で吃音が起こると言われています。
緊張を強いられるシーンでは症状が重くなり、時間が経つと軽減することもあることから、吃音の症状に波がある人も少なくありません。
発達障害の特徴
ここでは、それぞれの発達障害の特徴について解説していきます、
自閉スペクトラム症(ASD)・アスペルガー症候群
自閉スペクトラム症(ASD)とは言葉や、言葉以外の視線や表情、身振りなどから相手が考えていることを読み取ったり、自分の考えを適切に伝えたりすることが苦手であるといった特性や、特定のことに非常に強い興味を持ちこだわり行動があるといった特徴があります。
アスペルガー症候群も、社会性やコミュニケーション、想像力、共感性、イメージすることが苦手だったり、強いこだわりを持っていたりと自閉症スペクトラム(ASD)とよく似た特性を持っています。
自閉スペクトラム症(ASD)の具体的な症状として、日常的な会話のやり取りができない、表情の変化が乏しい、愛情表現が少ない、強いこだわりを持っている、空気が読めない、人間関係の構築が苦手といったものがあります。
このアスペルガー症候群は、自閉スペクトラム症(ASD)のうち、知能や言語の遅れがないもののことをいいます。
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症(ADHD)とは、標準的な発達水準と比較して不相応に注意を持続させることが困難であったり、順序だてて行動することが苦手だったりといった特徴があります。
具体的には、常に体を動かしており落ち着きがない、一方的に話をする、忘れ物や落し物が多い、約束を忘れたり時間によく遅れる、感情が高ぶりやすいといったことが挙げられます。
また落ち着きがない、行動の抑制が困難であるといった特徴も継続的に見られ、このような特徴によって日常生活に不便や困難が起っている状態をいいます。
学習障害(LD)
学習障害(LD)は、計算力などの算数機能や読み書き能力などに関する特異的な発達障害の1つです。
学習障害(LD)の特性としては、読字の障害を伴なうタイプや書字表出の障害を伴なうタイプ、算数の障害を伴なうタイプの3つの種類があります。
症状には、文字をスムーズに読めない、単語のまとまりを認識できないため1文字ずつ読む、正しく漢字を覚えられない、文章を読むときにどこを読んでいるのか分からなくなる、形や音が似ている文字を判別できないなどのものがあります。
チック症、吃音
チック症とは、急に出現する不随意な運動や音声を繰り返すという特徴のことをいいます。このような特性は無意識に行ってしまうもので、自分で行うつもりがなくても運動や音声が出てしまうというものです。
具体的な症状は、まばたきをしたり顔をしかめるなどのことを自覚なく繰り返すといったもので、初期症状の多くは顔面に出ます。
吃音とは、「どもり」や滑らかに話すことができない状態のことをいいます。
100人のうち5人から8人に発症すると言われており、そのほとんどが4歳までに症状が現れます。
吃音は話したい言葉があっても滑らかに発音することが難しい、また言いたいことの最初の言葉が出づらいため力を込めて話すといった症状が出ます。
吃音は自然に治ることもありますが、大人になっても吃音が続くことがあります。
パートナーが発達障害かもと感じたら
夫や妻が発達障害ではないかと感じたら、どのように対応すればよいのでしょうか。
ここでは、そのような場合の対処方法について解説していきます。
まずは医療機関や専門機関で診断
パートナーが発達障害ではないかと思ったら、まずは医療機関や専門機関に相談しましょう。
専門家から「発達障害である」という診断をされることで、本人も事実を受け入れやすくなります。
また発達障害の症状は薬を飲むことで軽減することもあるため、必要であれば薬を処方してもらいましょう。
医療機関などに連れて行くのは簡単なことではありませんが、発達障害が疑われる本人と良く話し合い、理解を得られるよう努力することが大切です。
コミュニケーションの方法を工夫する
発達障害の種類によっては、人と上手にコミュニケーションをとるのが難しい人も少なくありません。
「察してほしい」と思っていても、空気を読んで行動するのが苦手な人もいるため、お願いしたいことがあれば相手に察してもらうのを待たずに、お願いの内容を具体的かつ手短に伝えることが大切です。
感情的になったり、むきになったりしても発達障害の人はなぜ相手が怒っているのかを理解することができません。
改善してほしいことがある場合には、冷静に相手に伝えることが大切です。
細かくルールを決める
発達障害の中でも特に「アスペルガー症候群」の人は、空気を読んだり、暗黙の了解を理解したり、一般常識とされていることを理解することが難しい傾向があります。
そのため、使ったお皿は流し台に持っていく、出かけるときは鍵を閉めるといった普通の人には当たり前の事でも、きちんと明文化して細かくルールを決め習慣にしましょう。
発達障害の特性を理解する
発達障害にはさまざまな種類があり、その種類や人によって症状や最適な対応方法は異なります。
そのため、相手が持つ発達障害の特性を理解するとともに、相手や自分を責めるようなことはしないようにしましょう。
カサンドラ症候群に注意
発達障害のパートナーと生活を共にしていると、自分がカサンドラ症候群になってしまう可能性があります。
ここでは、カサンドラ症候群とは何かといったことや、パートナーの発達障害を相談できる機関などについて解説していきます。
カサンドラ症候群とは
カサンドラ症候群とは、相手の気持ちや立場を理解することが困難な発達障害を持つパートナーと生活を共にしていく上で、パートナーと上手くコミュニケーションをとることができないことが苦痛になってしまい、自分も精神的・身体的な不調を起こしてしまうことをいいます。
症状としては抑うつや不眠、体重の増減、パニック障害、偏頭痛、無気力などがあります。
発達障害の発症率は男性の方が高いため、カサンドラ症候群に陥ってしまうのは女性が多い傾向があります。
パートナーの発達障害を相談できる機関
子どもの発達障害を相談できる機関は多くありますが、大人の発達障害はどのような機関に相談すればよいか分からないという人もいらっしゃると思います。
大人の発達障害を相談できる機関は、心療内科などの医療機関以外に発達障害者支援センターと障害者就業・生活支援センターがあります。
発達障害者支援センターは、医師の診断を受けていなくても相談することができます。
また本人ではなくても相談できるため、発達障害の疑いがあるパートナーも利用可能です。
具体的な支援内容は利用する支援センターにより異なりますが、日常での困りごとやコミュニケーションに関して気になっていることを相談できたり、就労に関するアドバイスを受けたりする機関が多くなっています。
センターによっては、必要に応じて保健・医療・労働などの関係機関と連携して支援や指導を行ってくれることもあります。
障害者就業・生活支援センターは、障害がある方の就業と生活に関するサポートを行ってくれます。
その内容は、就労支援機関と連携した仕事探しや入社前後のサポート、仕事に関する専門機関の紹介など就業に関することや、日常生活や地域生活についての助言など日常生活に関することなどがあります。
この機関でサポートを受けることができるのは、障害があり就業している人と就業を希望している人です。
ひとりで抱え込まないことが大切
パートナーが発達障害またはその疑いがある場合、その夫や妻は非常に大きなストレスを抱えるケースがほとんどです。
このような状態を誰にも相談できないと、カサンドラ症候群に陥ってしまう可能性があります。
近くに相談できる人がいない場合には、前述した専門機関に相談し問題の糸口を見つけ出して徐々に解決していくようにしましょう。
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