障害年金とは?申請するために満たしておかなければならない要件と申請の流れを解説
更新日:2022年09月06日
年金と聞くと、老後の生活を支えるための老齢年金を思い浮かべる方がほとんどだと思います。 しかし、年金の種類には現役世代の方が病気やけがなどで障害を負ってしまった際に受給することができる「障害年金」という年金もあります。 障害年金は手脚などの肢体や目や耳などの障害だけではなく、がんや糖尿病などの病気で長期療養が必要な場合にも支給の対象になります。 ここでは、そもそも障害年金とは何かといったことや受給するための要件、申請手続きの流れなどについて解説していきます。
目次
障害年金とは
日本では、20歳以上の国民のすべてに「公的年金」への加入が義務付けられています。
公的年金には国民年金と厚生年金などがあり、自営業や主婦、学生などの方は国民年金に、サラリーマンや公務員などの方は厚生年金に加入するのが一般的です。
障害年金は、病気やけがなどで障害を負ってしまった場合やがんや糖尿病などで長期の療養が必要となったときに支給される、重要な社会保障制度です。
障害を負ってしまった場合に生活を支えるために支給されるものですが、障害年金を受給できる障害は聴覚や視覚、肢体の障害以外にも心疾患や呼吸器疾患などの内部障害、統合失調症やうつ病などの精神疾患などの精神障害により仕事や生活が著しく制限を受ける状態になった場合にも受給を申請することができます。
また障害年金は、障害者手帳を持っていない場合でも受け取ることが可能です。
障害年金の申請対象者
障害年金の申請対象者は、基本的に病名を問わず日常生活や仕事を行う上で支障があるかどうかという点で判断されます。
極端な例ですが、片頭痛でもその程度が重い場合には支給されることがあります。
しかし、一般的には外部障害、内部障害、精神障害を抱える人が申請の対象となります。
外部障害とは身体障害とも呼ばれ、視覚や聴覚、手足などの肢体の障害を言います。
精神障害とは、うつ病、統合失調症、認知障害、知的障害、認知障害、発達障害などを抱える人が受給申請の対象となりますが、人格障害(パーソナリティ障害)と神経障害の方は原則として受給申請の対象外となるため、注意しましょう。
内部障害とは、呼吸器疾患、腎疾患、心疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなどのことを言います。
これらの障害や疾患の程度によって、障害年金の等級が決められます。
障害年金の等級とは
障害年金が支給される障害の程度については、国民年金法施行令および厚生年金保険施行令によって1級から3級までの障害等級が定められています。
障害等級1級とは、「身体の機能の障害または長期に渡る安静を必要とする症状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」と定められており、これは他人の介助がなければ日常生活のことがほとんどできない状態のことを言います。
身の回りのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動ができない方または制限されている方や、入院や在宅介護を必要とし活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に該当します。
障害等級2級とは、「身体の機能の障害または長期の安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度もの」を言います。
必ずしも他人の介助などを必要としなくても、日常生活が極めて困難であり労働によって収入を得ることができない程度の障害を負っている状態の方が、この2級に相当します。
障害等級3級とは、「労働の著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」を言います。
日常生活においてはほとんど支障がなくても、労働については制限がある方が3級に相当します。
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障害年金の支給額
障害年金は、国民年金に加入している場合には障害基礎年金が、厚生年金に加入している場合には障害厚生年金が支給され、その支給額は障害の程度が同じぐらいであっても違いが出てきます。
障害基礎年金の支給額は、障害年金の等級が1級の場合には780,900×1.25+子どもの加算、2級の場合には780,900+子どもの加算となっており、1級の場合は2級の場合よりも子どもの加算を除くと支給額が1.25倍多くなります。
子どもの加算は1人目と2人目の場合にはそれぞれ224,700円、3人目以降はそれぞれ74,900円となります。
ここでいう子どもとは、「18歳到達年度の末日を経過していない子ども」と、「20歳未満で障害等級1級または2級の障害者」のことです。
障害厚生年金の支給額は、1級の場合報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金(224,700円)、2級の場合は報酬比例の年金額+配偶者加給年金(224,700円)、3級の場合は報酬比例の年金額となり、585,700円が最低保証額となります。
報酬比例の年金額は、平均標準報酬月額×(7.125÷1,000)×2003年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×(5.481÷1,000)2003年4月以降の被保険者期間の月数で求めることができます。
障害年金の受給要件
障害年金を受給するためには、3つの要件を満たしておく必要があります。
ここでは、その要件について解説していきます。
初診日が特定できること
障害の原因となった病気やけがで、初めて医師または歯科医師を受診した日のことを言います。
その後病院を転院した場合でも、最初の医療機関を受診した日が初診日となります。
この初診日は基本的にカルテで証明することになりますが、何らかの理由でカルテで初診日を確認できない場合は、障害者手帳や医師の診断書、おくすり手帳や診療報酬請求明細書(レセプト)などの書類を用いて証明します。
知的障害については出生日が初診日となりますが、発達障害の場合には子どものころから症状が出ていた場合でも20歳以降に受診した場合にはその受診日が初診日となります。
保険料が納付されていること
以下の条件のうち、どちらかに当てはまる必要があります。
1.初診日の前日の時点で、初診日の前々月までの年金加入月数の3分の2以上が保険料納付済みまたは免除されている月であるとき
2.初診日の前日の時点で、初診日の前々月までの年金加入月数の12か月すべて保険料納付済みまたは免除を受けた月であるとき
障害認定日を調べる
障害認定日とは、障害の原因となった病気やけがなどの初診日から1年6か月を経過した日、または1年6か月以内に症状が固定化した日のことを言います。
この障害認定日以降に障害の状態が障害年金給付の条件を満たした障害の状態であれば、障害年金の受給対象となります。
ただし、初診日が20歳よりも1年6か月以前の場合には、20歳になった日を障害認定日とします。
障害年金の申請の流れや受給方法
障害年金の申請手続きは、障害基礎年金の場合お住いの市区町村の窓口で行います。
障害厚生年金の場合には、年金事務所で行います。
障害厚生年金の申請を行う場合には、障害基礎年金の申請も年金事務所で行うことができます。
障害の状態が重く本人が窓口に行くことができない場合には、家族などの代理人に委託することも可能です。
申請後は、日本年金機構が審査を行い支給の有無や等級を決定します。
支給の決定までは、およそ3か月半程度の時間がかかります。
申請の流れは、以下のようになります。
障害認定日請求
障害認定日から1年以内に請求する方法で、障害認定日以降3か月以内の状態について書かれた診断書が必要となり、障害認定日の翌月分からの年金を受給することができます。
1年を経過した後も請求は可能ですが、時効があるためさかのぼって受給することができるのは5年分までです。
この場合には、障害認定日当時の診断書と請求日以前3か月後の2枚の診断書が必要となります。
初診日が20歳より前で、国民年金と厚生年金のどちらにも加入していない場合には、障害認定日前後の3か月以内の状態について書かれた診断書が必要となります。
事後重症請求
障害認定日の時点では障害の状態には該当しなかったが、その後悪化し65歳に達する前の日までに障害に該当した場合には、事後重症請求を行います。
この方法で障害年金を受給する場合には、請求日の翌月分から支給されることになります。
事後重症請求を行う場合には、請求日以前3か月以内の診断書が必要になります。
過去にさかのぼって受給することはできない点に注意しましょう。
障害年金で困ったときには
障害年金受給のための手続きが煩雑であるため、受給をあきらめてしまう方も少なくありません。
そのような場合には、お住いの自治体の国民年金窓口や年金事務所に相談してみることをおすすめします。
それでも手続きの方法が良く分からない場合には、社会保険労務士(社労士)に相談してみるとよいでしょう。
社労士とは、労働や社会保険に関する法律や人事・労務管理の専門家であるため、書類の準備や不支給が決定した場合の対応など、申請手続きの具体的な作業を行ってくれます。
社労士への相談は初回は無料のケースが多いため、まずは社労士の事務所に問い合わせてみましょう。