発達障害だとどういう支援が受けられるのか?利用できる制度やサービスをご紹介
更新日:2022年09月06日
発達障害は身体障害、精神障害、知的障害に比べると、今ひとつ一般での認知度は低くなっています。また発達障害に関する福祉制度は「発達障害者支援法」が制定されたのが2004年ですから、第二次世界大戦後まもなく制定された身体障害者福祉法や精神衛生法(現精神保健福祉法)や1960年に制定された精神薄弱者福祉法(現知的障害者福祉法)に比べると、半世紀以上も差があり、発達障害という障害の発見や認知が他の障害に比べて非常に遅れていることがわかります。一方で、2018年の厚生労働省の調査では、発達障害と診断された人は48万人を超えており、その数は年々増加傾向にあります。このように増加する発達障害者に対して、国はどのような支援をしているのでしょうか?今回は発達障害が利用できる制度やサービスなどをご紹介していきます。
目次
発達障害とは
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症はこれまでの研究、定義付けにより、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群など、さまざまな呼び方がされてきました。医学界では国際的な基準となっているアメリカ精神医学会の診断基準の最新版「DSM-5」において、これらは自閉スペクトラム症として一つに統一されました。また、日本でもここ数年で”自閉症スペクトラム障害”という呼称から”自閉スペクトラム症”へと変化しています。
この自閉スペクトラム症の主な症状は対人コミュニケーションに問題があること、例えば言葉、視線、身振り手振りなどをうまく使うことができない、相手の感情を読み取ったり、自分の感情を伝えるのが下手などです。またある一定の行動パターンや好みなどいわゆる”こだわり”が強い(同一性の保持)ことも特徴です。
注意欠如多動性障害(ADHD)
注意欠如と多動性が特徴としてある発達障害です。注意欠如とは行動や思考がストレートで、周囲の状況の確認や場の空気を読むということが苦手です。また、物事を指示通り、時間通りにおこなう、整理整頓をするのが苦手などの特徴があります。多動性の部分では落ち着きがなく、じっとしている、待つ、集中することが難しいという特徴があり、両方の特徴をあわせ持つものを注意欠如多動性障害と呼びます。数年前まで”注意欠陥多動性障害”と呼ばれていました。
学習障害(LD)
現局性学習障害とも呼ばれ、主に以下の3つのタイプがあります。
1.読字の障害を伴う
2.書字表出の障害を伴う
3.算数(計算)の障害を伴う
特に小児期に出現する書字、読字の障害を発達性ディスレクシアと呼びます。
発達障害に関する相談窓口
発達障害の疑いがある場合は病院で検査
症状等から発達障害が疑われる場合は、基本的には「心療内科」で診断を受けます。心療内科にも発達障害を専門にしていない医院もありますので、まず電話等で相談したり、ホームページを確認しましょう。発達障害を専門にしている医院を探して受診します。進学や就職などストレスが多い春や、地域で有名な医院などは予約がいっぱいで1~2か月待ちというケースもあります。
せっかく受診しても、 場合によっては、診断基準を満たすほど特性が強くないことから診断書が下りないケースもあります。いわゆるグレーゾーンですが、この場合は自主的な症状への対処で問題なく生活できる場合もありますが、後述する発達障害者支援センターなどに相談するとよいでしょう。グレーゾーンであっても、社会生活の中でストレスを受け、二次障害が出ることもあります。
利用できる相談窓口
・発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは都道府県や政令指定都市が設置している発達障害者(児)の相談支援機関です。 発達障害者に対して、保健、医療、福祉、教育、労働など、すべての地域生活に必要な支援を総合的におこなう発達障害者支援の中枢的役割を果たす機関といえます。日常生活での困りごと、就労に向けてのアドバイスなど幅広い情報を提供してくれます。また、診断書が下りていなくても相談が可能なため、グレーゾーンでも社会生活に息苦しさを感じたり、困りごとがある場合は気軽に相談してみましょう。
・障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは身体、知的、精神、発達などすべての障害者に対して就労支援機関と連携した仕事探し、仕事に関する専門機関の紹介、日常生活・地域生活についてのアドバイスなどをおこなう機関で、就労と生活の両方の面で相談内容に応じて他の専門機関と連携を取りながら支援をしてくれます。2023年4月現在で全国に300か所以上のセンターが設置されています。
・相談支援事業所
相談支援事業所には指定特定相談支援事業所と指定一般相談支援事業所の2種類があります。前者は障害者総合支援法の計画相談支援の対象となる障害者に対してサービス利用計画の作成を主に行います。後者は障害福祉サービスなどの利用についての案内、就労に向けての準備や定着支援、ピアカウンセリングなどをおこないます。
発達障害の支援制度
自立支援医療制度(精神通院医療)
自立支援医療制度は、心身の障害を除去、軽減するためにおこなわれる医療にかかる費用の自己負担を軽くするための公費負担制度(障害者総合支援法下の事業)です。この制度に該当する医療を受けた場合、その費用は自己負担は1割となります。1割が負担となる場合もあるため、所得により負担上限が設定されています。
自立支援利用制度のうち、精神通院医療にはいわゆる精神疾患以外の発達障害への通院治療(外来、外来での投薬、デイケア、訪問看護等)が対象となります。
・自立支援医療費を受給するための手続き
申請は自立支援医療支給認定申請書を記入し、医師の診断書を添えて市町村の障害福祉関係窓口に提出します。認定されると、自立支援医療受給者証が交付されますので、以降はその市町村の自立支援医療制度の対象となる病院に受給者証を持参し、医療を受けることになります。
障害年金
ある一定の障害状態になった時に国民年金または厚生年金の加入者がその障害の程度によって障害年金を受給できる制度です。
障害年金の詳細については以下のリンクの記事にてご紹介しています。
→障害年金っていくらもらえるの?その金額や申請方法について解説
障害者手帳による支援やサービス
・ 医療費の自己負担軽減
上記の精神通院医療以外にも、独自の自己負担軽減をおこなっている自治体が多くあります。それらは精神通院医療の範囲外をカバーする場合もあります。多くは精神保健福祉手帳を取得していることが条件になるようです。
・ 税金の控除や、公共サービスの割引
その他、精神保健福祉手帳を取得しているとNHKの受診料金、JRなどの鉄道料金、航空会社の料金の割引、所得税、住民税などの税金の控除・減免、携帯電話の通信料金の割引、公立、私立の文化・娯楽施設、宿泊施設などで入場・利用料の割引が多くあります。
障害者雇用枠での就職
手帳を取得している障害者に対しておこなっている国の障害者雇用促進制度です。障害者のみが応募し就労できる求人に応募することができます。求人のみでなく、就労に必要なトレーニングや必要な知識の提供もおこなっています。
「どうやって仕事を探せばいいんだろう・・」そんなあなたには簡単1分でタイプ別にわかる!仕事の探し方診断がおすすめです。
就労移行支援
就労移行支援は障害者総合支援法下のサービスの一つで、一般の事業所で働きたい障害者について、就労移行支援事業の通所条件に合う場合に、就労に向けたさまざまな支援をおこなってくれるサービスです。利用期限は原則2年となっています。
就労移行支援についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています
atGPジョブトレとは?
私たちatGPは障害者の転職・就職を総合的にサポートするいわゆる障害者専門の転職エージェントです。
atGPでは障害者雇用枠の求人をご紹介するだけではなく、少しでも就労のチャンスを広げたい障害者の皆様に対して、atGPジョブトレという就労移行支援サービスも展開しています。
atGPジョブトレの4つ特徴は・・・
①5つの障害別コースでそれぞれの障害に適切な支援を提供します。
うつ病コース
発達障害コース
統合失調コース
聴覚障害コース
難病コース
②事務職で活躍できるスキルが身につく
事務職に強いジョブトレでは活躍するための実践的なトレーニングを提供します
③就職後を意識した就職活動サポート
就職は始まりに過ぎない・・・就職後の満足、定着を目指したサポートをします
④一人ひとりと向き合う満足度の高い支援
障害は同じでも個性は違うということを理解した専任のスタッフがサポートします
まとめ
発達障害という障害はまだ一般的な認知度もそれに対する社会的支援も他の障害に比べるとまだまだ整備が遅れているのが現状といえます。ただ、発達障害の認知が進むとともに、発達障害という診断を受ける人も増えており、また同時に発達障害だと気が付かずに社会の中で苦しんでいる人も多くいるのです。必要なのは、認知というよりも社会全体が発達障害を理解し、適切な関わりをすることではないでしょうか。
一方で日本における発達障害者を支援するための制度やサービスを充実させていくことは国の急務といえます。現状では発展途上とは言え、発達障害のある方にも使える制度やサービスがあることを知っていただき、できるかぎり活用してご自身やご家族が納得できる社会参加を目指していただきたいと思います。