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障害者雇用で気をつけるべきアセスメントについて

更新日:2023年08月08日

障害者雇用で気を付けるべきアセスメントについて

障害者の法定雇用率引き上げによって、企業は障害者をただ雇用するだけでなく、自社に貢献する重要な戦力として、育成・定着させることが求められています。そのためには、障害者雇用においても自社が求める能力や資質を持った人材かどうかを、適切に評価するアセスメントが重要です。そこで今回は障害者雇用で気をつけるべきアセスメントについて詳しく解説します。

障害者雇用におけるアセスメントとは

アセスメントは、英語で「評価する」や「査定する」といった意味の(assessment)が語源です。日本語では、人や物ごとなど対象を客観的に分析・評価することの意味で使われます。

 

アセスメントは、一般的には環境分野で使用される言葉ですが、障害者雇用では、障害者の雇用の拡大や職場への定着、働く力を伸ばして活躍できるように、人材を適切かつ客観的に調査・評価することを指しています。

 

障害者雇用におけるアセスメントの目的

障害者雇用におけるアセスメントの目的としては、主に次の3つです。

①担当させる予定の業務や配属予定の部署に対する適性を把握すること

②職場への定着と採用後の活躍の可能性を判断すること

③面接した応募者を定量的に評価して、採用の精度を高めること

 

 

障害者雇用でのアセスメントの特徴

健常者と違って障害者は、人によって就労意欲や職務能力、働くための必要な周囲の理解や配慮が大きく異なります。

 

周囲から配慮があまり必要なく、自立的に働く力のある障害者は、仕事の成果や職務能力のレベルが重視されます。

 

一方で、働く力にサポートが必要な障害者に対しては、毎日職場に通勤することができるかや、継続的に就労できるかを重視することが大切です。

 

障害者雇用における特徴的なアセスメントとしては、就業する上で障害への配慮がどの程度必要かという「配慮提供」と、障害に対してどの程度のケアが必要かの「ケア要件」とがあります。このように障害者雇用では、障害の程度や就労意欲、職務能力などによってアセスメントの項目が異なります。

 

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福祉機関によるアセスメントとの違い

就労移行支援事業所などの福祉機関では、以前から障害者の就労支援の手法として就労アセスメントが行われてきました。しかし、福祉分野で行うアセスメントと、民間企業で行うアセスメントでは次のような違いがあります。

 

福祉機関(就労移行援事業所など)におけるアセスメント

就労移行支援事業所など福祉機関が行うアセスメントは、障害者が働く力を発揮して活躍できるために、支援の方向性や支援計画を作るための根拠として必要なものです。障害者に対してどのような支援や訓練をすれば、就労可能かを判断するのが主な目的となっています。

 

一般就労を視野に入れたアセスメントの内容としては、「日常生活」や「対人関係」「作業力」「作業への態度」などをチェックすることで、どのような支援や訓練が必要かなどを評価します。

 

 

民間企業におけるアセスメント

福祉機関で行われるアセスメントは「就労できるかどうか」を判断するために行われますが、一方で民間企業でのアセスメントは、ただ単に就労できるかだけでなく、組織の一員として企業に貢献できるかどうかを判断するのが主な目的となります。

 

具体的には、

 

与えられた職務を遂行できるか」

「担当する職務に必要な能力があるか」

「主体的に働くことができるか」

「計画的に業務を進めることができるか」

「チームで働くため上司や同僚とのコミュニケーションが取れるか」

「キャリアアップへの意欲があるか」

 

などが挙げられます。

 

福祉機関でのアセスメントの評価項目は、民間企業においても重要です。しかし法的義務の遵守という目的だけで雇用するのではなく、障害者を自社の戦力として採用する場合には、福祉的なアセスメントに加えて入社後にどのくらい活躍できるかや、どのように自社に貢献できるかを評価するためのアセスメントを行うことは重要です。

障害者雇用におけるアセスメントのポイント

障害者雇用におけるアセスメントは、採用時と採用後の大きく2つのタイミングにわけられます。採用時に実施するアセスメントのポイントは次の通りです。

 

人材要件を明確にする

採用時のアセスメントでは、どのような人材を採用すべきか「人材要件」を明確にしておく必要があります。人材要件を明確にすることで、アセスメントの評価項目を整理することができます。

 

人材要件を定めるポイントは、入社後の職種や業務の内容やレベルをある程度決めておくことです。

 

入社後に配属先や担当業務を検討する方法もありますが、採用時に職種や業務内容が決まっているほうが、適性の有無、必要とされる能力、提供できる配慮の内容などが明確になるため、アセスメントの精度を高めて入社後のミスマッチを防ぐことができます

 

また、人事要件は人事部だけでなく配属先ともすり合わせしておくことが重要です。

 

採用戦略と整合性のとれたアセスメントの実施

採用時に実施するアセスメントでは、自社が求める能力を持った人材か、自社の採用戦略にマッチした人材かどうかを確認することが必要です。

 

具体的には以下の4つのポイントで確認するようにしましょう。

「キャリアアップ志向か安定志向か」

「自社の人事制度とのマッチング」

「職種や職務内容とのマッチング」

「提供可能な配慮や環境」

以下で詳しく見ていきます。

 

①キャリアアップ志向か安定志向か

周囲から必要な配慮や支援を受けて安定的に就業したい人と、自立的に働きキャリアアップ志向が強い人とでは、必要なマネジメントや人事制度が異なります。

 

そのため、自社の採用戦略ではどちらの人材を採用すべきか、また応募者がどちらの志向に近いのかを見極める必要があります。

 

 

②自社の人事制度とのマッチング

キャリアアップ志向が強い人が入社しても、自社に障害者が昇進や昇給できる制度が整っていなければ、モチベーションを保てずミスマッチによって離職につながる可能性があります。

 

 

③職種や職務内容とのマッチング

障害者に限ったことではありませんが、募集している職種や職務内容に必要な能力や資質を有している人材かを見極めることは大切です。

 

実習が可能な場合には、実習を通じて該当業務への適性があるかどうかを判断しましょう。

 

 

④提供可能な配慮や環境

法律によって企業には障害者に対して、合理的な配慮の提供が義務づけられています。合理的な配慮の内容や程度は人によって異なるため、面接時などに本人の希望を確認する必要があります。その上で、自社が提供できる配慮や環境をチェックしましょう。

 

採用後の人材アセスメント

障害者雇用におけるアセスメントは、採用時だけでなく採用後の実施も定着や育成を行うために必要です。アセスメントを実施する際には、以下のポイントに注意しましょう。

 

障害の変化

障害者の中には、障害や病気が進行したり、別な障害を発症したり、薬が変わり体調が変化する人もいます。

 

アセスメントを実施する際には、対象となる障害者の体調や生活環境などの変化を把握することが必要です。

 

 

仕事や働くことへの意識・モチベーションの変化

企業が実施するアセスメントは、組織の一員として企業に貢献できるかどうかを判断するのが主な目的です。そのため、仕事や働くことへの意識やモチベーションの変化にも気づくことが大切です。

 

もしモチベーションが低下しているようであれば、悩みや不満などを抱えている可能性もあるので、しっとりと話を聞いてサポートしましょう。

 

 

適切な目標設定ができているか

就業意欲やモチベーションを維持するためには、適切な目標を持っているかが大切になります。

 

キャリアアップ志向の高い人には、昇給や昇格の可能性を示して、適切な目標を設定できるように導きましょう。

まとめ

少子高齢化による労働人口減少により、人材確保は企業にとって深刻な経営課題となっています。

 

一方で、法定雇用率引き上げによって、今後ますます障害者雇用を進めなければなりません。

 

自社が求める能力や資質を持った人材を見極めて、活躍できる障害者を雇用することは、企業の経営戦略にとって非常に重要です。また、入社後のミスマッチを防ぎ、育成や定着を図るためにも、人材要件に沿ったアセスメントが必要です。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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