障害者雇用率が未達成!企業名が公表されるとどのようなリスクがある?
更新日:2023年09月28日
令和3年3月1日から法定雇用率が引き上げられて、民間企業はこれまでの2.2%から2.3%となりました。そして対象となる事業主の範囲が、従業員43.5人以上と広がりました。法定雇用率が未達成の企業には、障害者雇用促進法という法律に則って、給付金の徴収や行政指導などが行われます。この記事では、障害者雇用率が未達成の場合にはどんなリスクがあるのかや、障害者雇用を促進する方法について解説します。
目次
障害者雇用促進法と法定雇用率とは
民間企業、国や地方公共団体、都道府県等の教育委員会には、常用雇用労働者に対して一定割合以上の障害者を雇用する義務が法律で定められています。この法律が「障害者雇用促進法」で、障害者を雇用する割合が「法定雇用率」です。
障害者雇用促進法とは
障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)は、障害者が職業生活において自立することを促進して、障害者の職業の安定を図ることを目的とした法律です。1960(昭和35)年に制定された「身体障害者雇用促進法」が元になっており、以降何度か改正されてきました。直近では、2022年に改正sされ、2023年および2024年の2段階で施行されます。
障害者雇用促進法では、「職業リハビリテーションの推進」「障害者に対する差別の禁止」「障害者の雇用義務に基づく雇用の促進」など、障害者が働くことができるようにするための内容が定められています。
法定雇用率とは
障害者雇用促進法に定められた方策のメインとなる「障害者の雇用義務に基づく雇用の促進」では、民間企業、国や地方公共団体、都道府県等の教育委員会に対して、一定割合以上の障害者を雇用することを義務づけています。この割合を法定雇用率といいます。
この法定雇用率は、令和3年3月1日から引き上げられて、次のようになっています。
また、2022年に改正された障害者雇用促進法に基づき、2026年7月には民間企業の障害者雇用率が2.7%に引き上げられます。
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・障害者雇用とは?
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法定雇用率が未達成の場合どうなるか
従業員が43.5人以上の企業は、毎年6月1日現在の障害者を何人雇用しているかの報告(障害者雇用状況報告といいます)をハローワークに提出する義務があります。
なお、障害者雇用状況の報告は、6月1日現在の状況を報告することから通称「ロクイチ報告」と呼ばれています。この報告で法定雇用率が未達成の企業には、次のような罰則や行政指導が行われます。
障害者雇用納付金の徴収
法定雇用率が未達成の事業者は、不足している障害者の人数1人当たり月額50,000円の障害者雇用納付金が徴収されます。なお、徴収の対象となっているのは、常用労働者が100名以上の企業です。
ハローワークから行政指導
障害者の雇用義務を履行しない事業主には、ハローワークを通じて次のような行政指導が行われます。
①雇入れ計画作成命令
翌年の1月を始期として2年間で障害者を雇用するための計画を作成して提出するように、公共職業安定所(ハローワーク)の所長が命令を出します。この計画に基づいてハローワークから定期的に指導が行われます。
なお、雇入れ計画作成命令が出される基準としては、以下のいずれかに該当する場合と厚生労働省から基準が示されています。
・実雇用率が前年の全国平均実雇用率未満、かつ不足数が5人以上であること。
・不足数が10人以上であること。
・法定雇用障害者数が3人または4人であり、雇用障害者数が0人であること。
②雇入れ計画の適正実施勧告
計画1年目の12月に実施状況が悪い企業に対しては、計画の適性実施勧告が行われます。
③特別指導
障害者の雇用状況改善が特に遅れている企業には、計画期間終了後に9か月間、企業名公表を前提とした特別指導が行われます。
④企業名の公表
最終的に改善が見られないと判断されると企業名が公表されます。また、不足数が特に多い企業の幹部に対しては、厚生労働省からの直接指導も行われます。
企業名公表で考えられる影響
ハローワークの特別指導が行われても、最終的に障害者雇用の状況に改善が見られない場合には、厚生労働省のホームページで企業名が公表されます。企業名が公表された場合、どのような影響が考えられるのでしょうか。
公表された企業名数
厚生労働省が令和5年3月にホームページに掲載した「障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について」では、障害者の雇用状況に改善が見られないとして5社の企業名が公表されています。なお、過去に公表された企業数は次の通りです。
企業名が公表された場合の影響
企業名が公表された場合には次のような影響がでると考えられます。
・企業イメージの低下
企業名の公表は厚生労働省のホームページに掲載されるため、障害者雇用が達成できていない企業として、世間に広く知られることになります。障害者を雇用することは、法律で定められた義務であり、企業の社会的責任(CSR)でもあります。公表されることで企業イメージが低下して、今後の業績や取引に影響が出る可能性があります。
・採用計画や人員計画への影響
就職活動や転職活動を行う人のほとんどが、業界研究や企業研究を行う際にインターネットから情報を得ています。したがって、応募しようと思っていた企業の名前が障害者雇用の義務違反で社名が厚生労働省のホームページで公表されていると知った場合、応募に少なからず影響が出る可能性も考えられます。
企業は人材採用のために、多くの採用経費や人的コストをかけています。企業名を公表されることによって、応募者が集まらないなど採用計画や人員計画に悪影響があれば、障害者雇用給付金を徴収される以上の経営リスクが発生します。
・社員のモチベーション低下
社員の中には、家族や知人に障害者がいることもあるかもしれません。自分が働く会社が障害者を雇用しない企業として社名を公表されたら、会社に対しての愛着が持てなくなったり、それによって帰属意識が低下を引き起こすことがあるかもしれません。
社名の公表は、社員のモチベーションの低下を招き、結果的には会社の業績が悪化する可能性もあります。また、モチベーションの低下が、社員の離職・退職につながる可能性もあります。
障害者雇用を促進するために
企業名の公表などペナルティを受けないために、法定雇用率の達成だけを目的に障害者を雇い入れても、社内の受入体制が整っていないと定着できず早期離職してしまったり、周囲の社員が障害者雇用に負担を感じてしまう可能性があります。
障害者雇用を促進するためには、事前にしっかりとした準備を行うことが大切です。
障害者への理解を深める
まずは、障害者を雇用するにあたって障害者への理解を深めることが大切です。経営のトップを含めて社員全員が、障害の原因や特性、配慮が必要なことなどの知識を得た上で、障害者雇用を計画しましょう。
合わせて障害者雇用の制度や支援制度、障害者雇用の事例などについても理解を深めておきましょう。
関連機関と連携する
障害者雇用を進めるには、障害者の雇用を支援する地域の関連機関と連携することが重要です。障害者雇用においては、ハローワークが中心的な役割を果たして、障害について専門的な知識を持った職員や相談員が配置されています。
障害者の採用計画を立てる段階から、相談して必要な受入準備や求人や雇用のタイミングなどアドバイスを受けるとよいでしょう。
職場定着のためのサポート体制
配属先の不安や負担を軽減するためにも、人事部を中心に全社的なサポート体制を作ることが大切です。そのためには、障害者本人としっかりと話をして、障害の特性や必要な配慮などについて把握して、配属先と情報共有することが必要です。
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障害者を募集する方法としては、ハローワークによる職業紹介サービスを利用するほかに、民間企業が運営する求人情報サイトに掲載する、民間の職業紹介事業者に依頼する方法もあります。
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