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転換性障害とはどんな病気?転換性障害のある人が、仕事をする際に注意するポイントや向いている仕事を解説 

更新日:2023年07月26日

転換性障害は、ストレスや葛藤などの精神的な要因によって引き起こされる身体表現性障害のひとつです。原因ははっきりとはわかっていませんが、心の葛藤やストレスによって無意識に抑圧されることから発症すると考えられています。同様の要因で引き起こされる病気に解離性障害がありますが、主に意識や人格の統合などの精神面に症状が現れるケースを解離性障害、身体面に症状が現れるケースを転換性障害と呼んでいます。転換性障害は、随意運動機能や感覚機能に異常が現れるため、発症するとさまざま働きづらさや不安を感じることがあります。この記事では、転換性障害の症状と原因、仕事をする上での問題点、仕事を続ける際のポイント、転換性障害のある人に向いている仕事について詳しく解説します。
 

転換性障害とは

転換性障害は、昔は一般的にヒステリーと呼ばれていた病気です。現在は、身体表現性障害の一つと考えられています。

 

身体表現性障害とは、身体的な疾患がないのに、痛みや吐き気、痺れなどの身体症状が現れる病気です。心理社会的要因や心身の過労、身辺の環境変化などによる不安やストレスが要因とされています。この身体表現性障害は、「身体化障害」「疼痛性障害」「転換性障害」「心気症」に分類されています。

 

転換性障害は、身体的には疾患などの問題がないのに、随意運動機能や感覚機能に異常が現れる障害です。随意運動とは、自分の意思によって行う運動で、随意運動機能に異常が現れると、からだの姿勢を保てなくなる、立つことができなくなる、歩けなくなる、声が出せなくなることがあります。

 

なお、運動には自分の意思でからだを動かす随意運動と、自分の意思とは関係なくからだが動いてしまう異常運動である不随意運動とがあります。転換性障害は、随意運動機能に異常が見られますが、不随意運動が起こることはありません。

 

感覚機能は、いわゆる視覚や聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を指します。感覚機能の異常としては、見えなくなる、聞こえなくなる、においがわからなくなる、味がわからなくなる、物に触っても熱いや冷たいがわからないなどの症状が現れます。

転換性障害の主な症状

転換性障害は、精神的な要因が身体症状として現れる精神疾患です。ストレスや葛藤などの精神的な要因が、原因になると考えられていて、そうしたストレスや葛藤が身体症状として変換されます。

 

そのため変換症とも呼ばれます。具体的には、次のような運動障害や感覚障害、発作症状が認められます。

 

運動障害

運動障害では、運動麻痺、力が抜けて歩けないなど歩行障害、手が上げられないなどの部分的脱力、手足が震える振戦、筋力の低下、起立障害、ジストニア運動(体や顔が勝手に動く)のような異常な運動、体幹の不自然な動き、物が飲み込めない嚥下困難、尿が出なくなる排尿困難といった運動系機能に障害が現れます。

 

 

感覚障害

感覚機能の障害としては、目が見えなくなったり、ものが二重に見える複視や、耳が聞こえなくなる聴覚障害、においが分からなくなる嗅覚障害、味がわからない味覚障害、ものに触れているのにその感覚がない、痛みを感じない触覚障害や痛覚障害、声が出なくなる失声、ろれつが回らなくなる構音障害、喉がつまった感覚などの症状が現れることがあります。また、「無反応」といって失神や昏睡に似た症状になることもあります。

 

発作症状

子供の場合には、発作やけいれんの症状が見られることがあります。

 

転換性障害の発症が多い年代

転換性障害の発症率は、10万人あたり11~300人と考えられています。また、成人の患者の男女比は1:2から多くて1:10の割合で女性が多くなっています。

 

一般的に転換性障害を発症しやすい年代は、小児期後期(10歳)から成人期のはじめ(35歳)の年代といわれていて、それ以外の年代で発症することはまれです。

 

発症後の症状はそれほど長くは続かないケースが多く、入院患者を対象に調査した結果では、急性例の95%が2週間以内に自然に寛解(病気が完全に治った状態ではないが、症状が消失した状態)していました。症状が6カ月以上も続く持続例では、症状の寛解率が50%以下です。初めて発症してから1年以内に20~25%の割合で再発が起こります。

転換性障害の原因

転換性障害の原因ははっきりとはわかっていませんが、無意識な心の葛藤やストレスによって抑圧されることから発症すると考えられています。心理的ストレスや身体的ストレス、心的外傷が関連している可能性もあります。また、子どもの頃に受けた虐待や育児放棄などが関係していることもあるかもしれません。

 

子どもや知的障害のある人の場合には、ストレスに対処する能力が低いため、葛藤やストレスにさらされた時に、転換性障害を起こしやすいと考えられます。

 

ただし、心理的ストレスや身体的ストレスが伴わない場合でも、転換性障害の症状が現れることがあります。たとえば本来、対処が非常に困難な問題に対処する手段として、症状が現れることがあると考えられています。

 

意識の中で「何らかの症状があることで、周囲の人から心配されたり世話を焼かれたりといった特別な配慮をしてもらえる」ことを知っていることで、身体に症状が現れることがあります。この状態は、疾病利得と呼ばれていて詐病(仮病)ではありません。

 

転換性障害の場合には、このような疾病利得は病気の結果であって、寛解までの期間が長引くことに影響することはあっても直接的な原因ではありません。

 

最近では転換性障害には生物学的要因や神経心理学的要因が関係しているという報告が増えてきています。脳の機能障害によって感覚障害が生じている可能性もあります。

 

転換性障害と解離性障害の違い

心理社会的要因や心身の過労、身辺の環境変化などによる不安やストレスが要因となって、主に意識や人格の統合などの精神面に症状が現れるケースを解離性障害身体面に症状が現れるケースを転換性障害と呼んでいます。

 

解離性障害では、主な症状として解離性健忘、解離性同一性障害、離人感・現実感消失症などが現れます。

 

解離性健忘

普通のもの忘れでは忘れることがないような重要な個人情報などを、思い出すことができなくなります。解離性健忘は、さらに限局性健忘、選択的健忘、全般性健忘、系統的健忘、持続性健忘、解離性とん走に分けられます。

 

 

解離性同一性障害

かつては多重人格障害と呼ばれていました。自分の中にいくつもの人格を持って、その人格が交代で現れます。ある人格となっている時には、他の人格について記憶がないことが多く、生活をする上でさまざまな支障が生じます。

 

離人感・現実感消失症

身体や精神から自分が切り離されている感じで、自分が自分でないかのような感覚だったり、夢の中にいるような感覚にとらわれます。自分を外から観察しているように感じる離人感と、周りのみんなが不自然な演技をしているように感じる現実感消失とに分けられます。

 

転換性障害の治療法

一般的に転換性障害といっても、その程度は人によってさまざまです。転換性障害に対して有効な薬はないため、環境調整と精神療法が主な治療となります。

 

程度が軽い場合には自然に寛解するケースも少なくありませんが、心の緊張をやわらげることで治療効果を高めることが期待できるので、補助的に抗不安薬を使うことがあります。

 

転換性障害の治療は、環境調整と精神療法が中心となります。まずは本人が抱えている葛藤やストレスの状況を明らかにして、その中で改善できるものから環境調整を行うことが大切です。そのためには本人と医師の間に、協力的な信頼関係を築くことが重要です。

 

また、治療には催眠や精神療法(心理療法)が役立つことがあります。ただし、これらの治療は一般に時間がかかるので、そのことをよく理解しておく必要があります。

転換性障害のある人が仕事を続けるためのポイント

転換性障害は、心理社会的要因や心身の過労、身辺の環境変化などによる心理的ストレスや身体的ストレスが原因で、随意運動機能や感覚機能に異常が現れる障害です。仕事における強いストレスによって、症状が悪化したり治療が長引くことがあるため、仕事を続ける際には次のようなポイントに注意することが大切です。

 

定期的な治療カウンセリングを受ける

まずは、一般的に転換性障害で見られる症状があったとしても、医師によってその原因が身体的疾患や精神疾患でなく、転換性障害であるという診断をしてもらうことが大切です。その上で、症状が寛解するまで定期的な理療やカウンセリングを受けるようにしましょう。

 

急性例の転換性障害のケースでは、ほとんどが2週間以内に自然に寛解しますが、持続例では6か月以上も症状が続くこともあります。また再発するケースもあるため、主治医の指示に従って定期的に受診することが大切です。

 

 

周りの人に相談する

健康な人であっても、仕事に対しては多かれ少なかれストレスを感じるのが一般的です。特に転換性障害のある人は、その原因が心理的なストレスであることが多いため、仕事によって強いストレスを受けると、症状が悪化する可能性があります。

 

職場でストレスを感じる場合には、上司や同僚など周りの人に相談して、職場の環境を整えてもらったり、仕事の内容について配慮してもらうようにしましょう。

 

また、始めのうちは心配してくれていた家族や周囲の人たちも、時間が経つにつれて心の中で、わざとやっているとか甘えているだけといった批判的な気持ちが生まれることがあります。こうした批判的な気持ちや態度が、新たなストレスとなって病気が長引いてしまうことがあります。

したがって、家族や周囲の人たちに病気について十分に理解してもらうことが重要です。

 

 

生活習慣の乱れに注意する

生活習慣を規則正しくすることは、ストレスに対する心身の抵抗力を高めてくれます。ストレスが多い状態では、食事や運動、休養、飲酒、喫煙といった生活習慣が乱れがちになります。生活習慣の乱れは、生活習慣病など他の病気を引き起こす可能性があります。

 

日常でのストレスを減らして、心身ともにリラックスして過ごすためには、生活習慣の乱れに注意して、規則正しい生活を送ることが大切です。

 

ストレス対処法を身につける

人間が生きて行くうえで、ストレスは切っても切れない関係です。そのため、ストレスの原因を減らすだけでなく、ストレスに対する耐性を高めるための対処法を身につけることも重要です。

 

心理的には、以下を心がけることがポイントです。

・完璧主義を捨てる

・過去にこだわらず前向きに考える

・柔軟な思考を持つ

・一人で抱え込まないようにする

 

身体的には、以下のようなことが効果的です。

・忙しくてもリラックスできる時間を作るなど時間をコントロールする

・十分な睡眠をとる

・アルコールや薬に頼らないようにする

 

スポーツや音楽、食事、入浴など自分なりのストレス解消法を見つけるようにしましょう。
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短時間勤務などを利用する

職場環境の改善や仕事の内容の見直しなどを行っても、仕事によってストレスを感じるようであれば、無理をしてフルタイム勤務するのではなく短時間勤務などを利用して、少しずつストレスに慣れるようにする方法もあります。

職場に短時間勤務の制度があるかどうかを人事部などに確認してみましょう。

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専門の支援機関を頼る

転換性障害など精神障害のある人が、仕事について悩んでいる場合や、体調の不調によって仕事を続けるのが困難だと感じた時には、専門の支援機関に相談すると良いでしょう。

 

保健所や保健センター

保健所や保健センターは、全国都道府県や市町村に設置され、こころの健康や医療などに関する相談といった幅広い対応を行っています。電話相談や面談による相談ができ、保健師や医師、精神保健福祉士などの専門職が対応してくれます。

 

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、各都道府県と政令指定都市ごとに1か所ずつ設置されていて、「こころの健康センター」と呼ばれている場合もあります。こころの健康についての相談、精神科医療についての相談など精神保健福祉全般にわたる相談に対応してくれます。

 

地域活動支援センター、相談支援事業所

人間関係や仕事のことなど、さまざまな生活上の悩みについて相談できます。障害福祉サービスを利用するための情報の提供や支援も受けられ、相談には相談支援専門員などの専門職が対応しています。

 

転換性障害のある人が向いている仕事環境

転換性障害のある人に向いている仕事や働きやすい職業としては、一般的にストレスが少ない仕事が考えられます。ストレスの感じ方は、人それぞれなので一概には言えませんが、次のような仕事はストレスが少ないといえるでしょう。

 

勤務時間が短い

仕事の内容に関わらず勤務時間が長ければ、それだけストレスを感じる可能性が大きくなります。できるだけ残業がない仕事を選ぶようにしましょう。

 

もしフルタイム勤務で、強いストレスを感じるようであれば短時間勤務やパートタイムの仕事を選ぶことも考えてみましょう。

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マイペースで働ける

周りの人や時間を気にせずにマイペースで進めることができる仕事は、ストレスを感じにくいため転換性障害のある人に向いているといえます。マイペースでできる仕事は、具体的には一人でできる仕事や業務量や時間に追われず自分のペースで進めることができる仕事などです。

 

 

単純作業

倉庫や工場での組み立てやピッキングなどの単純作業は、一人で黙々と仕事に没頭することができ、他の人とあまり会話をする必要がないため対人関係にストレスを感じやすい人には向いています。

 

柔軟に休みが取れる

転換性障害は、再発することもあるため、症状が良くなっても定期的に医師の診断を受けるようにすることが大切です。

 

通院のため柔軟に休みを取れたり、遅刻や早退ができるように職場の理解を得るようにしましょう。また体調が良くない時には、無理せず休むことも必要です。

 

ノルマがない

転換性障害はストレスが原因となるため、できるだけ時間や仕事量、成果などのノルマがないような仕事がおすすめです。

 

 

転換性障害のある人が職業生活に困った時の相談先

転換性障害と診断されて、現在の仕事に悩みを抱えていたり、転職を考える際には一人で悩まずに、次のような機関や専門家に相談しましょう。

主治医・専門医

転換性障害のある人が、ストレスと上手くつき合いながら仕事を続けていくには、心療内科やメンタルクリニックなど専門医のアドバイスに従いましょう。

 

定期的に診察や治療を受けるだけでなく、心身共に疲れてストレスを感じるような状況であれば、仕事を休むことも必要です。その際にも自分の判断で我慢することなく医師に相談するようにしましょう。

 

ハローワーク

ハローワークは、正式名称を公共職業安定所といい、国が運営する職業紹介機関です。ハローワークには、障害のある人や病気の人の就労を支援する窓口があり、専門の相談員が配置されています。長期にわたる治療が必要な人の就職支援をする就職支援ナビゲーターもいて、仕事の継続や就職・転職の相談を受けています。

 

保健所

全国都道府県や市町村に設置されている保健所や保健センターでは、こころの健康や医療などに関する幅広い相談を行っています。保健師や医師、精神保健福祉士などの専門職が対応してくれ、電話相談や面談での相談が可能です。

 

転換性障害のある人はストレスと上手く付き合うことが大切

転換性障害の原因ははっきりとはわかっていませんが、無意識な葛藤やストレスによって、心が抑圧されることから発症すると考えられています。

心理的ストレスや身体的ストレス、心的外傷が関連している可能性もあります。仕事によって強いストレスを感じる場合には、症状が悪化したり治療が長引く可能性があります。

 

転換性障害と診断された人は、できるだけストレスを感じないような仕事を選ぶことが大切です。

 

どのような仕事であっても多少のストレスはあるものです。自分なりのストレス対処法や解消法を見つけることも重要です。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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